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青いクラゲの迎撃、あるいは調律の防壁

深夜。古民家の周囲を、光都大学・特殊監査チームの黒い車両が包囲した。

「精神汚染源の隔離を開始する。対象、古民家内の全被検体」

和先輩の冷徹な号令と共に、強力な妨害電波ジャミングと「強制沈静化パルス」が放たれる。


「……来たわね。みんな、準備はいい?」


ゆいの声に、4人が無言で頷く。

デバイスは使えない。だが、今の彼女たちには「沈黙の同期」がある。


「あたしの色彩で、視覚情報をジャックしてあげる!」

みおが古民家の縁側に立ち、暗闇に向かって絵筆を振るう。

それは実際の絵具ではない。彼女が放つ奔放な「揺らぎ」のパルスが、監査チームの暗視ゴーグルに、極彩色の「青いクラゲ」の残像を焼き付け、彼らの隊列を乱していく。


「規律を乱すのは、あなたたちの方です。……『いびつな石』の重さを知りなさい!」

りつが庭の石を組み替え、風の流れを物理的に操作する。

規律ルールを知り尽くしているからこそできる、自然環境を味方につけた「配置の妙」。突入を試みる隊員たちは、なぜか足元をすくわれ、古民家の敷地内に一歩も入れない。


「解析……いえ、直感完了。パルスの隙間、見えました」

つむぎが、壊れた演算機の熱をそのまま自身の指先に宿し、空中に「論理の回路」を描く。

彼女の身体そのものがアンテナとなり、和の放つ強制パルスを、心地よい「子守唄」へと書き換えて周囲に放射し返した。


「先輩……! 私の『記録』は、もう誰にも奪わせません!」

あずさがゆいの手を握る。

二人の間に流れる「誠実の温度」が最大出力に達したとき、古民家全体が青い光の繭に包まれた。


「これが私たちのマナー……『弾性理論』の真価よ!」


ゆいが解き放った共鳴波は、監査チームの冷徹なロジックを次々と「感情の波」で上書きしていく。

モニター越しにそれを見ていた和先輩は、震える手で画面を叩いた。

「……馬鹿な。理論だけで、これほどの……物理的干渉が可能だというのか!? まるで、古の『禁呪』そのものではないか……!」


迎撃は成功した。監査チームは撤退を余儀なくされる。

だが、勝利の余韻に浸る間もなく、奥の部屋で祖母が静かに倒れた。

理論の源流を守るために力を使い果たした彼女の姿に、ゆいは自身の理論が持つ「代償」の重さを突きつけられる。


「おばあちゃん……!」


潮風が止まり、夜の静寂が戻る。

それは、ゆいが「完璧な理論」の限界を知り、崩壊へと向かう終盤戦への幕開けだった。

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