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沈黙の同期(リンク)、あるいは密やかな鼓動

部室は封鎖され、公式な連絡手段はすべて当局の監視下に置かれた。

学内を歩けば、見えない監視のアークラインが自分たちの「誠実の温度」を測り、異常値を検知しようと光っているのを感じる。


ゆいは自室で一人、あずさから預かったあの「記録ノート」の最後のページを見つめていた。


「……接触禁止。でも、私たちの理論は『距離』に屈するほどヤワじゃないわ」


その時、ゆいの手元にある古いアナログ時計が、不自然なリズムで刻み始めた。

トン、トトトン、トン。

それはつむぎが事前に仕掛けていた、超短波による独自の信号――「究極マナー」の理論式を応用した、監視をバイパスする共鳴通信だった。


「つむぎね……。解析完了、というわけ」


ゆいは自身の「理性ガード」を特定の周波数に同調させる。

すると、脳内に直接、仲間の「気配」が流れ込んできた。


『ゆいっち先輩! 聞こえる? あたしは全然平気! むしろ、このコソコソした感じ、禁呪の修行っぽくて燃えてきた!』

みおの奔放なパルスが、孤独な部屋に色彩を運ぶ。


『監査委員として、不当な封鎖に対する法的根拠を精査中です。和先輩の論理には、致命的な「感情の欠落」という欠陥があります。そこを突きましょう』

りつの冷静な決意が、ゆいの背筋を伸ばす。


『先輩……。離れていても、ノートに刻んだあなたの温度を思い出せます。審査当日、私たちの「弾性」がどれほど強固か、世界に見せつけましょう』

あずさの柔らかな声が、ゆいの心を震わせた。


5人は物理的にバラバラでありながら、精神的にはかつてないほど深く「同期リンク」していた。

ゆいは、真っ白なノートの余白に、新たな理論の断片を書き記す。


「マナーとは、強制される沈黙ではない。……沈黙の中でも相手を想う、誠実な『同期』のことよ」


倫理審査委員会まで、あと三日。

ゆいたちは、直接会うことなく、暗闇の中で一つの巨大な「解答」を作り上げていく。

それは、管理社会アークラインが最も恐れる、誰にも支配できない「魂の連帯」だった。


窓の外では、和先輩が操作する監視ドローンが空しく旋回している。

だが、そのセンサーは、5人の間に流れる「青いクラゲ」のような美しい共鳴を、決して捉えることはできなかった。

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