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凍てつく帰還、あるいはシステムの拒絶

合宿を終えたバスが大学の正門を潜った瞬間、ゆいは肌を刺すような違和感を覚えた。

キャンパスを包む空気は、外界の森とは対照的な、無機質で計算され尽くした「静寂」。


「……戻ってきたのね。私たちの『檻』に」


ゆいが呟くと同時に、部員たちのスマートフォンが一斉に、聞き慣れない警告音を鳴らした。

画面に表示されたのは、大学当局からの公式通知。


『性文化研究部、及び所属学生各位。規律違反、及び研究倫理不適合の疑いにより、当面の間、部活動の停止を命ずる。部室は封鎖済みである』


「なっ……! 何これ、意味わかんないんだけど!」

みおが憤慨して叫ぶが、正門に控えていたのは警備員と、あの和先輩だった。


「言ったはずだよ、ゆい。君たちのやっていることは、この光都大学の秩序に対する『毒』だ。合宿での異常なパルス、すべて記録されている」


和は、冷徹な手つきでタブレットを操作し、つむぎのデバイスとのリンクを強制的に遮断した。


「あずさ、君もだ。君が抱えているその『記録』……。不適切な精神汚染の証拠として没収させてもらう」


「そんな……! これは、私の……私たちの……!」

あずさがノートを強く抱きしめるが、大学の権威という名の「理性ガード」は、個人の感情など塵ほども考慮しない。


「……待って。和先輩」

ゆいが一歩前に出る。その瞳には、かつて追放された時のような絶望ではなく、外界で得た「しなやかな強さ」が宿っていた。


「私たちの理論が秩序を乱すというなら、正々堂々と学術的に証明して。封鎖や没収なんて、それこそあなたの信じる『正義』に反する不作法(マナー違反)じゃないの?」


「……。一週間後、倫理審査委員会が開かれる。そこが君たちの最後の舞台だ。それまで、一切の接触を禁じる」


和は背を向け、去っていった。

部室は物理的に閉ざされ、研究データも凍結。

5人は帰還早々、物理的にも精神的にも「沈黙」を強要されることになった。


「先輩……」

不安に震えるあずさの手を、ゆいは人目を憚らず握りしめた。


「大丈夫よ。ノートは渡さない。……一週間、理性の火を絶やさないようにしましょう。オレたちはもう、独りじゃないんだから」


冷たい時計塔の影が、5人を分かつように長く伸びていた。

それは、理論の真価を問う「審判」へのカウントダウンだった。

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