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反逆のデモンストレーション、あるいは宣戦布告

「廃棄……。解散……。和先輩は、そう言ったのね」


ゆいは机に置かれた封筒を見つめたまま、絞り出すように呟いた。

部室に集まった5人の間に、通夜のような静寂が広がる。和先輩が持ち込んだ「不正記録」という言葉は、かつて独りきりで追放されたゆいにとって、何よりも重い呪縛だった。


「……私のせいで、みんなを巻き込んでしまった。これ以上、あなたたちのキャリアを汚すわけにはいかないわ。この部を、解」


「――却下です!」


あずさが、ゆいの言葉を遮って叫んだ。

普段の穏やかさからは想像もつかないほど強い意志を宿した瞳で、ゆいの正面に立つ。


「先輩、昨日の『青』を忘れたんですか? あの時、私たちは確かに繋がっていた。あれを『ノイズ』だなんて呼ばせない。……壊されるのが怖いなら、壊せないくらい証明してやりましょうよ」


「そうそう! 逃げたら、あいつらの『テンプレート』通りになっちゃうじゃん。あたし、そういうの死んでも嫌なんだけど!」

みおが机を叩いて同調し、つむぎも眼鏡を押し上げながら淡々と続けた。


「和先輩の警告は論理的ですが、彼の解析は古い。私の最新の測定器によれば、ゆい先輩の弾性理論は社会のシステムを破壊するのではなく、より『効率的な調和』を提案しています。データで、彼を黙らせることは可能です」


「……私も、監査委員として言わせていただきます」

りつが、厳格な仕草で手帳を閉じた。

「伝統とは、変化を恐れることではありません。真に価値ある型は、時代の荒波に耐えうるものです。この理論を、密室の汚点として終わらせることは、私の美学に反します」


四人の言葉が、ゆいの凍りついた「理性ガード」を内側から溶かしていく。

ゆいは顔を上げ、かつて異世界で「描く」ことを決意した時のような、凛とした表情を取り戻した。


「……みんな、ありがとう。そうね、隠れているから狙われる。なら、光を当てる側に回りましょう」


ゆいはノートの新しいページを開き、力強く『第一回・校内公開デモンストレーション計画』と書き込んだ。


「ターゲットは、来週行われる学術交流会。和先輩や大学当局が見守る前で、私たちの『究極マナー』を披露するわ。理論が『ノイズ』なのか、それとも人を救う『温度』なのか、その目で確かめさせる」


「ゆいっち先輩、超カッコいい! で、何を披露するの?」

みおの問いに、ゆいはあずさと視線を交わした。


「究極マナー理論・第2段階(β)。『多人数同期による沈静化の型』よ。……和先輩、あなたの信じる『管理』という名の静寂より、もっと深く、美しい静寂を、私たちが教えてあげる」


それは、管理社会アークラインへの、そして自分を縛り付けていた過去への、明確な宣戦布告だった。

窓の外の時計塔が、かつてないほど激しくゆれる青い光に包まれる。

戦いは、もう始まっていた。

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