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フェリロジカ  作者: 小林月春
おまけ
24/24

フェリロジカ小劇場

台本書きです。

【小劇場とは】

マル「本編では書ききれなかった、または書く必要は無いが設定だけはあるので、どこかで発表したい……そんな希望を叶えるべく生まれた、フェリロジカ本編外で僕たちが説明するという小劇場になります〜」

アラン「それってどうなんだ?有りなのか?」

マル「しょうがないです〜。僕たちは所詮書かれたキャラクターなので」

アラン「そういうのメタいって言うんだ、俺は知ってる。……で、最初は何の説明しろって?」

マル「まずはフェリロジカの舞台、セネテーラ王国についてですが……」

アラン「“ですが”?」

マル「時間が無いのでこの辺で。さようなら〜」

アラン「それってどうなんだ……」




【セネテーラ王国とは】

マル「小劇場の時間です〜。さっ、今日はセネテーラ王国についてです。アランさん、セネテーラ王国はどこにあるでしょーかっ!」

アラン「大陸の最北西にある山岳地帯のちょうど真ん中辺りだな。領土内は標高が高いところが多い」

マル「さすが、よく分かってますね〜。国民なら当然ですけど!セネテーラ王国の通貨はサラ。お店に行くと麦水一杯十サラ、パン一つで百サラが相場ですね〜」

アラン「アレクシは全盛期でひと月五十万サラ稼いでいて、これは高所得に入る」

マル「ご、五十万サラ〜!?そ、そんな稼げたら、王都でコーヒー何百杯飲めるっていうんですかぁ!」

アラン「王都の安いところでもコーヒーが一杯七百サラだっけ?高いよなぁ」

マル「そのお陰で巷じゃあ薄めたコーヒーが五百サラで出回って……おおっと、話が逸れる〜!ごほん!えー、ちなみに、セネテーラという国名の意味は分かります?」

アラン「建国の話に出てくるから知ってるぞ。セネテーラがある地域は、元々山ばかりで人が住めないところだったんだが、隣国のウェントース皇国から政権争いで破れた皇子一派が逃げ込んで来た。すると山の奥から一人の老人が降りてきて、逃げてきた理由を聞くと、彼らのために山岳地帯の真ん中を、人が住めるように魔法で一瞬にして削ってくれたという。老人はその後、特例貴族の始祖となる二人の青年を残して去った。そして皇子たちは老人に感謝して、老人がいた証を国名に残すことにした。古代ウェントース語の老人が元々住んでた土地という意味のセネクステッラが訛り、今のセネテーラになったってわけだ」

マル「わぁ、よく覚えてますね〜。半分くらいは本編でも語られてましたよね?」

アラン「国名の由来はここが初じゃないかな」

マル「それでは!産業は!」

アラン「本編内でも語られてたと思うけど……これは大丈夫か。改めて言うと、傭兵、鉱石や宝石、それに伴い製鉄業、あとは……木材だったかな。服飾面でも割と有名なんだぜ、うちの国」

マル「セネテーラ産の宝石や防寒具は、どこにいっても人気高いですよね〜。セネテーラブランド!」

アラン「ただ、とにかく食料自給率は低い。麦が存在しない世界だったら危なかったと思う」

マル「結局はそこですよね。自分たちで食べていけないんじゃ、国としてやっていけません」

アラン「だから食料の輸入で依存しきってたウェントース皇国とちょっと揉めると、飢え死にを覚悟しなきゃなんねぇんだよ」

マル「寒いし、水も飲めたもんじゃないですし、雪も降らないから雪解け水を利用できないし、なかなか大変な国ですね〜」

アラン「いや、雪解け水ならあるぞ。西側に高い山々があって、そいつらが全部の雪を奪って行くんだけど、春を過ぎるとそこから川に流れて来るんだ」

マル「へー、それは知らなかったです。でも確かに、冬には西の山は白くなってますね〜、天辺だけ」

アラン「建国の話に出てきた老人が雪を嫌ったから雪が降らないんだって言われてはいるけど、実際はあの山のせいなんだよ。あ、これ、ブランシェ家とベルトラン家の人に言うなよ?知られたら怒られる」

マル「え〜っ、なんでですか?」

アラン「それは……」

マル「“それは”?」

アラン「本編内で」

マル「ほんとかなぁ」




【ソリエール教とは】

マル「今回はソリエール教についてです〜!セネテーラ王国の国教ですよね?」

アラン「というか、大陸の西は基本的にソリエール教国だ。マルは東の出身……でいいのか?旅芸団だったわけだけど」

マル「両親が大陸の東の方出身で、その影響つよつよなので、一応その認識で大丈夫です〜」

アラン「東の方はソリエール教とは違う宗教があるって聞いてるぞ」

マル「そうなんです。だから改めて、ソリエール教についてアランさんの方から教えてください!」

アラン「分かった。まずソリエール教っていうのは、神ソリエールを崇める宗教だ。ソリエールは世界唯一の光。この世の光は全てソリエールの分身って言われてる。太陽はソリエール自身、月はソリエールの分身でありながらほぼ本体と同じで、慈悲の姿だ。星はソリエールの慈悲の心の、特に人に寄り添う姿だ。こんな感じだから、ソリエール教の人達は何かと光という単語を使いがちだったりする」

マル「なるほど〜。うーん、太陽は皆を照らし、月は皆を慰め、星はさらに寄り添う姿って解釈で大丈夫ですかね……?」

アラン「んー、そんな感じ。でも、国によってこの辺は解釈が分かれるってイネスが言ってたかな」

マル「革命軍時代に仲間だった聖職者さんですね」

アラン「うん。ちなみに、火もソリエールの分身で、火をつけるのに使う油は全て聖なるものとされている。だから油は教会で管理されていて、決まった日に行くと無償で分けて貰えるんだ」

マル「あ〜、そういえば僕も何回か油を取りに行かされたような……」

アラン「エリエントのところで?」

マル「雑用もやってましたので!」

アラン「じゃあ信頼されてるよ。油は神聖なものだけど、一度使い方を間違えると大惨事。だから取り扱いは慎重で、俺のところではいつもアレクシが取りに行ってたよ」

マル「ふ〜ん、なんだか意外です」

アラン「信頼されてるところが?」

マル「慎重じゃなきゃいけないことをアレクシさんがやってるところです〜」

アラン「……ここにアレクシがいなくて良かったな」




【もっと!ソリエール教とは】

マル「ソリエール教に関しては何度も本編に出てくるので、もうちょっと詳しくやっちゃいましょう〜」

アラン「前回ので十分じゃないか?」

マル「ソリエール教圏内から見ると気づかないかもしれませんが、外から見てると“どういうこと?”っていうのが多いんですよ〜」

アラン「ふぅん?」

マル「そうだ、神話とかあるんですか?」

アラン「あるよ。色んな話が入ってるけど、正直、覚えてればいいのは一つの話だけ」

マル「それは何ですか〜?」

アラン「神話の始まりの章だな。ええと……。

 遥か昔、世界は灰色に覆われていた。そこに一つの光が降り立ち、灰色を消し去った。その光がソリエールである。

 ソリエールはその強い光で世界を包み込んだが、己のまばゆさに耐えられず、自分の光をいくつも分けて、それが植物や動物、そして人間となった。小さくなったソリエールは、自分以外のものたちがよく見えるよう天高く昇った。その先には闇がいた。闇は寂しさで泣いていた。闇は黒い涙を流し、それは雨となって地面に降り注いだ。ソリエールは泣き止まない闇のために自分の光を二つに分けた。一つは太陽となって地上の全てを見守り、もう一つは月となって闇と共にあった。それでも泣き止まない闇のために、月は毎日少しずつ体を砕き、星を作った。そうして闇は泣き止み、月と星と共に夜となって、地上を静かに見守るようになった」

マル「……よく諳んじられましたねぇ?」

アラン「教会に行くたび聞かされたし、親にも聞かされたし、イネスたちにも聞かされたし……。英雄譚の次に、読み物として人気だったからな」

マル「お〜出た、英雄譚。まあそれは次回に取っておくとして。最初に出てきた灰色ってなんですか〜?」

アラン「灰だと解釈されてる。だからソリエールでは油と同じくらい、灰も聖なるもの扱いされてるよ。ソリエールが降り立つ物質だってさ。だからソリエール教の葬式では、遺体は完全に灰になるまで火の中。遺体があると魂を覆ってしまって、ソリエールの導きの光が届かないって理由もあるけど」

マル「そういえば、ソリエール教にはお墓無いですもんね。みんな死んだら光に導かれて即転生だって」

アラン「おはか……ああ、お墓。確かに無いな。でもそれって必要か?なんだって魂の無いものを置いとくんだよ」

マル「あ〜、ソリエール教の人ってそうですよねぇ。お墓はね、生者が死者を偲び、死者は何ものにも侵されない安らかな眠りを得られる場所ですよ〜!」

アラン「東の方だとそうなのか」

マル「そうです。ちなみにですけど〜……遺体を火葬してその灰をお墓に埋めると思ってます?」

アラン「違うの?」

マル「その場合もありますけど、東は土葬文化のところが多めですね」

アラン「ど、どそう?」

マル「燃やさずに、土の中に埋めるんです」

アラン「はあぁぁ!?それじゃあ転生できねぇじゃん!光が届かないし、魂は縛り付けられたまんまだろ!大罪人がされるやつ!!死者への冒涜だ!!」

マル「火葬が死者への冒涜だって地域もどこかにあったような……。いやあ、色んな宗教観がありますね〜」




【英雄譚とは】

マル「セネテーラ王国では武を尊び、英雄譚が好まれるんですよね」

アラン「どの英雄譚から話す?やっぱり英雄フェリックス!?最近だとディディエか!」

マル「最近だと、それこそあなたでは〜?」

アラン「……」

マル「なんか、すみません」

アラン「……で、英雄譚?」

マル「あ、はい、英雄譚です〜。武を尊ぶ理由は本編内でも言われた通り、ウェントース皇国に攻撃されるかもしれないため、軍の数に負けるセネテーラ王国が国民全員に戦えるようになることを義務付けたことが今でも残っているから、ですね。これに伴って、戦いの中で目立った活躍を見せる英雄譚がかなり広く普及したとかどうとか」

アラン「そう!俺は英雄譚がかっこよくて面白いから広まったんだと思ってるけど!」

マル「……それも可能性があるとして。それで、セネテーラ王国での英雄譚の立ち位置を今一度、“簡潔に”!お願いしますね〜!」

アラン「任せとけ。セネテーラ王国において英雄譚は娯楽であり、教えであり、指標だ」

マル「娯楽は何となく分かります。教えと指標っていうのは〜?」

アラン「英雄譚で必ずあるのが、強大な敵でも立ち向かう話。その立ち向かい方も色々で、修行して一人で立ち向かうものもあれば、頭脳を活かして立ち向かうものもあるし、仲間たちと立ち向かうものもある。どう立ち向かうかという点に、学びが詰まっているんだ。そしてそれは、英雄一人一人によって色んな種類がある。どれを参考にしても、より良い生き方ができると思うよ。例えば英雄フェリックスは“失敗の無い成功は、失敗に劣る”という言葉を残しているけど、これはつまり、失敗なんか気にすんな!次行け!ってことだと俺は思ってる。くよくよ悩むより断然そっちの方が良いもんな。昔はこれによく助けられたなぁ……」

マル「へぇ〜。ちなみに、一番人気の英雄って誰なんですか?」

アラン「そりゃあやっぱり英雄フェリックス!……って言いたいけど、この辺は個人差がかなりあるからなぁ。確か、アレクシは英雄ダミアンが好きだったはず」

マル「じゃあ、一番強いのは?」

アラン「おいッ!!」

マル「え、な、なんでそんな大きな声出すんですかぁ!?」

アラン「それをセネテーラ王国民の前で言ったら、革命どころじゃない、大戦になるからだよ!」

マル「えぇ〜っ、厄介!」




【特例貴族とは】

マル「かなり重要なものが来ましたね〜」

アラン「いつか来るとは思ってたけど」

マル「この辺はアランさんが特に詳しいと思います〜。教えてください!」

アラン「俺だってそんな詳しくはない。マエリスに聞いた方が絶対いい」

マル「あ〜、ブランシェ家のお嬢様ですね」

アラン「ここに呼べない?」

マル「呼べないみたいです〜」

アラン「じゃあ結局俺か……。ええと、どこから話せばいい?」

マル「そもそも特例貴族って何なのさってことで〜」

アラン「そうだなぁ……特例貴族ってのは、そのまんま、特例の貴族だ。貴族でありながら爵位を持たない。王国内に領地を持つけど、その領地に王国法は適用されなくて、独自の法がある。他の貴族の領地にも独自の法があるけど、その法は一度王の目に通り、許可されたものだ。特例貴族にはその必要が無い。特例貴族はブランシェ家とベルトラン家のことを指す」

マル「確か、特徴があるんですよね〜?」

アラン「そう。何回か本編内でも言及されてるけど、改めて言うぞ。ブランシェ家は白い髪に黄色の目、ベルトラン家は黒い髪に青い目だ。ブランシェ家の方はかなり特徴的だから目立ちやすいが、ベルトラン家は案外目立たない特徴なんだ」

マル「じゃあ姉さんもブランシェの……ごほん!ええと、ああ、黒髪も普通にいますし、青い目も普通にいますもんね〜。でも実際は、どっちも持ってるのはベルトラン家の人だけなんですよね」

アラン「そう。ベルトラン家の特徴を知ってるのは、同じ特例貴族のブランシェ家か、貴族くらい……いや、貴族でも知らないやつもいるんだよな」

マル「他に特徴とか無いんですか?」

アラン「……見た目の話で言うなら、両家の人達はみんな老けにくい。というか、成長が遅い」

マル「ま、まさか僕も……!」

アラン「お前は明らかに違うだろ。丸い髪型と東の顔立ちで分かりにくいけど、顔とか年相応だよ」

マル「むむ。でも確かに、アランさんって二十六歳になるって言う割に、見た目十六歳ですもんね〜」

アラン「まあな。で、しかも両家は長寿だ。平民は五十、六十くらいが寿命で、貴族は七十くらいが寿命だけど、この両家は九十まで生きる。中には百まで生きる人もいるぞ」

マル「ええっ!?長命〜っ!!」

アラン「あとは……ソリエール教の信者じゃない、かな」

マル「あれぇ、そうなんですか?」

アラン「信者のふりはしてるけど……あの人たち特有の宗教があるというか……」

マル「なんていうか、中央から危険視されやすいですね〜……?」

アラン「だよな。建国の老人が国のために残していった始祖の家系だから、国のために南北から監視をしてるんだけど、中央の王族や貴族には昔から目の上のたんこぶだった。それに追加して特有の宗教がある感じと、特異な見た目、独自の法律……そして極めつけは迎賓館だ」

マル「本邸に絶対に外の人を寄せ付けないために作られた、来客対応全てを行うお屋敷ですね〜」

アラン「そう。だからセルジュ四世の数代前から排除されかかってた。今は関所にそれぞれの私兵が一人二人置かれているけど、革命前までは王国軍人が十人体制で関所に立ってたんだ。それで移動規制が行われて、両家の領地を行き来する人間は極小数に限られた。だから両家の領民は、他の領地の人間……特に中央の人間を嫌う傾向にある」

マル「ふむふむ。だから王国軍人のお坊っちゃんはあそこまで警戒されていたわけですね〜」

アラン「そういうこと」

マル「あとは無いですか〜?」

アラン「あと?……んー、中身の傾向、くらいか?」

マル「というと!」

アラン「あくまで傾向だからな。ブランシェ家の人は暑がりが多くて、ベルトラン家の人は突発的」

マル「…………え、それだけですかぁ?」

アラン「……何を期待してたんだよ」

マル「実は魔法が使えたりとか〜」

アラン「ねーよ」




【始祖とは】

マル「一番の謎では〜?」

アラン「俺にはお前の袖が一番の謎だけど」

マル「ただの袖です〜」

アラン「いつか説明を頼まれると信じておくわ。……んで、始祖?確かに謎か」

マル「ベルトラン家の始祖はネーレスさん、ブランシェ家の始祖はレコットさんという方ですが〜……」

アラン「言いたいことは分かる。建国の老人が国のために残してくれた二人が、何故今も生きているか、だよな」

マル「何なんですか?フェリロジカって魔法が存在するんですか?」

アラン「無い……よな?メタいことは言うなって言われてるけど、無いよな?」

マル「僕も呪いしか分からず……」

アラン「え?」

マル「何でもないです〜。魔法は僕たちが観測できていないだけで、普通にあるかもしれませんね〜。それで、話を戻して始祖ですが。そもそもあの人たち、妻帯してるんですか?」

アラン「してないはずだな」

マル「じゃああの家系の方々はいったい〜?」

アラン「この人たちについては、説明も限られるんだよなぁ。本編で書かれていることだけで十分、らしい」

マル「謎が深まるばかりですねぇ」




【アランが英雄となった革命とは】

マル「何か変わりました?」

アラン「……正直言うと、そんなに大きく変わってない。特例貴族の権力が前より増幅したくらいじゃないか?ああでも、それは排除する方針を取っ払っただけか」

マル「革命とは」

アラン「いや、革命ではあるんだよ。王家の血を引く貴族とか、他国ではなく、平民が自国の王朝を倒したっていうのは。他のところでは聞かない話だよ。どっかの国がそれでちょっと危機感持ったらしくて、さらなる圧政を敷いて、平民から力を奪ったなんて聞いたな」

マル「お〜、平民側からすると厄介この上ないですねぇ」

アラン「……本当にな」

マル「でも革命の立役者であるアランさんも、幹部の人達も、なんだかんだ貴族でしたよねぇ?リシャールさんなんて、倒したアルノー王朝の血を引いてるじゃないですかぁ」

アラン「俺は貴族じゃない。血は引いてるかもしれないが。リシャールだって、血こそ引いてるけど五人兄弟の末っ子だから」

マル「革命軍時代から、王家の血を引いてるってまことしやかに囁かれましたよねぇ」

アラン「でも、軍主は俺だった。俺は平民で元傭兵だって、みんな思ってたはずだよ。ベルトラン家の特徴は地味なものだしな。そして俺の前の初代軍主だって平民だった。俺は彼の意思を継いだ。それに特例貴族や王家の血を引くリシャールが協力をしてくれたってだけ。だから平民が王朝を倒した……ってことになったんだ」

マル「平民的には胸熱展開だったってわけですね。王家の血筋が平民に協力って、なかなか無いですからね〜」

アラン「俗な言い方をするならな。それに、セネテーラ王国の王家は、建国当初からウェントース皇国の皇帝の血筋でもあった。そしてセネテーラ王国の貴族のほとんどが、皇位継承戦争に破れ、皇国からここへ逃げてきた皇子の一派だった皇国貴族だ。つまりウェントース皇国と深い繋がりがあったわけだ。それをウェントース皇国と関わりのない特例貴族の血を引いた俺が王家という根元から絶った。これもかなり意味を成したらしいな」

マル「今まで血統という変えられないもののせいでウェントース皇国の目を気にせざるを得なかった国を、その原因たる血統ごと変えた……確かに、それは国を丸っと変える革命かもしれませんね〜」

アラン「政治体制はほぼ変わってないけどな……」

マル「圧政は無くなったので!」




【傭兵とは】

マル「セネテーラ王国といえばですね〜」

アラン「そうだな。稼ぎも良いし、英雄といえば戦い、戦いといえば傭兵ってことで、昔からかなり人気の職業だ。両親が生きていても、俺は一度は傭兵を夢見ただろうな」

マル「セネテーラ王国における傭兵とは!ささっ、アランさん、語っちゃってください〜」

アラン「語るほどでもないと思うけど。本編でも言ってたけど、セネテーラ王国ではそこそこ大きな町には必ず一つは傭兵団がある。俺たちペリエ家が過ごしてたアプリクスには春光の傭兵団ってのがあって、俺もアレクシもそこに所属してた。戦場で戦うのが一番稼ぎがいいけど、それ以外にも、警備、護衛、野盗狩り、荷物の運搬、迷い猫探しと、依頼があれば何でもやるのがセネテーラ王国の傭兵だな」

マル「何でも屋?」

アラン「依頼さえあればな。本拠地の中には依頼書が貼られていて、それを見てどの依頼を受けるか決められる。そしてその依頼書を持って、本拠地内にある受け付け所に行く。確認作業の後に、依頼書を持って依頼主のところに行って契約を結ぶ。だから不当な契約を結ばされないように本拠地内では文字を教えていて、いつしか傭兵以外も教わりに来て……そのおかげで、今じゃ国の識字率は他の国に比べてかなり高いってわけだ。他国では、貴族たちはガッコウってのに通うらしいけど、平民はそうじゃないんだってな。だからうちより識字率が低いらしい」

マル「そうですね〜。でも東の方が識字率は高いですよ〜。平民向けの学校もありますから」

アラン「そうなんだ。お前行ってたの?」

マル「旅芸団でしたから僕は通ってませんが、両親が昔通っていたそうです〜。おっと、話が逸れた。ええと、傭兵団っていくつもあるんですよね?有名どころは?」

アラン「やっぱり王都にある黎明の傭兵団だな。革命前にディディエが団長をしてたとこ。あそこはとにかく強い奴らが多いから皆の憧れだ。入団試験が設けられたくらいに。あとは……殺しの依頼しか受けない傭兵団とか、迷い猫の捜索しか受けないおばさん傭兵団とか色々」

マル「ん?冗談?」

アラン「まじで色々あるんだよ、傭兵団……。ちなみに春光の傭兵団は、本当に何でも受けてたから、中にはとんでもない依頼があったんだぞ。思い出しただけで……はぁぁぁ……」

マル「へぇ、例えば〜?」

アラン「……言わなきゃダメ?」

マル「ここまで来て言わないとか無いですから」

アラン「……」

マル「アランさん〜」

アラン「──ごっこ」

マル「え?」

アラン「……近所の女の子と、お姫様ごっこ」

マル「……それは……あー…………おいくらでした?」

アラン「五万サラ」

マル「高っ」




【大陸とは】

マル「大雑把なのが来ました〜」

アラン「大雑把過ぎるだろ。大陸っていうのは、大きい陸地のことだよ」

マル「もっと詳しく!」

アラン「えー……そうだなぁ……。まず、この大陸っていうのは四方を海に囲まれてる。島もいくつかある。大昔はもっと大きな大陸で、島とも地続きだったり、もっと多くの島があったって話もあるけど、こういう話を信じてるのはちょっと頭がおかしな奴って印象が強い」

マル「なんでそんな印象に?」

アラン「あいつら、太古の昔に大いなる力で大陸が破壊されたーって大真面目に語るんだよ。なんだよ大いなる力って。大陸を破壊とかできるわけないだろ。……あ、でも、そういう奴らに限って、どっかの貴族に勉強を教えてたことがあるとか、凄い経歴持ちらしいな」

マル「つまり頭が良いってことですかぁ?」

アラン「勉強はできても、他はおかしくなったみたいだけどな」

マル「なるほど〜。じゃあ次は大陸や海の名前をお願いします〜」

アラン「何で大陸に名前が?」

マル「……あれ?」

アラン「大陸の名前が大陸なんじゃねぇの?」

マル「えっ、そんなことあります〜?東の方ではちゃんと名前つけられてましたよ。確か、ウーラン大陸です」

アラン「何だその名前」

マル「昔は他にも大陸があったそうです〜」

アラン「まさか、お前もあいつらと同じ──」

マル「違いますからねぇ!?西と東じゃ常識が違うんですよっ!と、いうことで」

アラン「……ということで?」

マル「次回はウーラン大陸の東について大雑把にご説明します」




【大陸の東とは】

マル「僕の独壇場来ましたね」

アラン「だな。西の方には俺たちのセネテーラ王国や隣国のウェントース皇国、そのまた隣国のフルスラント王国、すこし南に行くとアウラルス帝国とか色々あるけど、東の方はどんな国があるんだ?」

マル「そうですねぇ……じゃあまずは……。僕の両親が生まれた国は、大陸の最東の国、ミズホです」

アラン「みずほ?」

マル「そうです〜。僕もそんなに国名を知ってるわけじゃないですけど〜。ミズホの北にはテヤンクッカ、南にはシェンハイがあります」

アラン「何だその発音っ!覚えられる気がしねぇ」

マル「四季の、特に夏と冬じゃあ、こっちよりもかなり違いがありますね〜。でも基本は温暖な気候なので、食料自給率は西の国々よりは高いですよ。農耕民族地域です〜」

アラン「そりゃ羨ましい限りで」

マル「面する海も穏やかですから、魚も豊作!川の水もこちらと違って飲みやすいですし、お茶文化が盛んですね」

アラン「お茶って、あのお茶?めちゃくちゃ高いって噂の」

マル「西で出回ってる茶葉は、東の方よりもかなり劣化はしてるらしいですけどね〜。東と西じゃあ文化的にも結構違いはありますけど、一番の違いはやっぱりあれですよね」

アラン「あれ?」

マル「宗教!」

アラン「ああ!」

マル「長くなるので次回で!」

アラン「またかよ」




【東の宗教とは】

マル「まず初めに言っておくと、ソリエール教圏内ではありません」

アラン「らしいな」

マル「というか、国や地域によって宗教バラバラです。ソリエール教みたいに大きな力を持つ宗教はないです〜。ですが、共通点があります」

アラン「何だ?」

マル「ソリエールのような、唯一の神はいません」

アラン「……ん?んんん?神がいないってどういうことだ?神に見放されてるとかそういう……?」

マル「違いますぅっ!なぁんって不吉なこと言うんですか!」

アラン「えぇっ、だって──」

マル「話は最後まで聞いてください!」

アラン「はい……」

マル「こちらと違って、あちらには神が複数いることがほとんどです。宗教によってどんな神がいて何柱いるかは違いますけど、必ずいるのが破壊の神と再生の神です」

アラン「柱?」

マル「あ、そこですか?ミズホでは神は一人じゃなくて一柱って数えるんです〜」

アラン「へえ〜。で、破壊の神と再生の神っていうのは?」

マル「そのまんまです。破壊する神と、再生してくれる神です」

アラン「破壊する神って必要か?怖すぎる。敵?」

マル「違います。そりゃ破壊は悪いことも多いですが、古きものや悪しきものを破壊してくれる素晴らしい神様でもあるんですよ〜」

アラン「ってことは、再生の神にも良いところだけじゃなくて、悪いところもある?」

マル「はい。せっかく壊した悪いものを再生してしまう面もあります。でも、再生の神は慈悲も司ることがほとんどですから、それほど悪く語られることは無いですねぇ」

アラン「慈悲?あ、ソリエールと似たような感じか!」

マル「いえ、むしろソリエールは破壊の神側ですね」

アラン「何で!?破壊する要素無くないか!?ソリエールだぞ!」

マル「ここが西の……というか、ソリエール教圏内との大きな差ですね〜。【ソリエール教とは】でも取り上げましたけど、神ソリエールは光の神様で、灰色の世界に降り立って、灰色を消し去ったんですよね?」

アラン「うん」

マル「東の方では破壊の神が世界を破壊し、灰に灰を降らせた……っていう話が伝わっています。残された大地に降り立ったのが再生の神」

アラン「じゃあ再生の神がソリエールなんじゃねぇの?」

マル「破壊の神は、必ず大きな光として描かれます」

アラン「……え?」

マル「世界を凶悪なる光で破壊し、草木が千年生えることを許さなかった神。それが破壊の神です」

アラン「……え?え?」

マル「あ、アランさんが混乱しちゃいましたね……。じゃあ今回はこの辺にしておきましょう!次回で!」

アラン「え?え?え?」




【東での伝承とは】

アラン「お、落ち着いた……はず……」

マル「しっかりしてくださいよ〜。信じてたことが実は〜、な展開で脳が破壊されるのは分かりますけど」

アラン「……そ、それで?東でのソリエール……神って、どういう……?」

マル「それを話すには、共通する伝承を話さなくちゃならないですね〜。準備はいいですか?」

アラン「……うん!大丈夫」

マル「まず、東の方では光は破壊を表し、闇は安らぎと再生を表します。ある時、人々は争いを始め、それは世界を汚したので、破壊の神は世界を新たに作り直し、人々に罰を与えるため、特に争いの激しかった西に降り立ちました。そして破壊の光は西を何度も大きく照らしました。東では建物を溶かすほどの熱風が吹き荒れ、世界は一度死に絶えました。光を恐れた人々は地下や洞窟に潜り、再生の神が彼らを守るために作り出した闇によって救われました。再生の神は人々のために空から闇と同じ色の涙を降らせ、死したものたちを流しました。そして生き残った人々は破壊の神に謝罪をした後、再生の神とともに世界を新たに作り始めました。これが共通する伝承の要点です」

アラン「あ、西が出てくるんだ……。建物を溶かすほどの熱風って何?」

マル「凄い熱って鉄も溶かすじゃないですか?それくらいの熱い風が吹き荒れたらしいですよ〜。昔は、鉄で建物が出来てたとか!」

アラン「あの鉄でぇ?まさか」

マル「人間は空飛ぶ馬車に乗れたとか!」

アラン「あはは、冗談下手すぎだろ」

マル「東の方では、古代の世界は今よりも文明が進んでいたって言われてるんです〜。遺跡も発見されていますからね。僕は見たことありませんけど……父さんに聞いた話によれば、何に使うか分からない薄くて真っ黒な箱?みたいなものが、固まった泥の中から出てきたらしいですよ。中には気持ち悪い糸がたくさん入ってたとか!その箱っていうのが、土でも石でも鉄でも無い、全く未知のもので作られていたって!」

アラン「ええ?本当かよ」

マル「そりゃ僕だって又聞きですけど〜、なんかこういう話を聞くとワクワクしません?」

アラン「マルだけじゃね?」

マル「……英雄譚にはうるさくなるくせに」

アラン「喧嘩は買いたくないんだけど」

マル「売ったつもりもありません〜。まあとにかく、東では光とは破壊であるっていうのは、理解してくれました?」

アラン「……まあ。そういう伝承が残っているならな」

マル「別にそちらの神様を否定するわけじゃないですけど、場所によってはこういう違いもあるんですよ〜。面白いでしょう?どうしてこんな違いが出るのか、神とは何か……ね!考えたら止まらなくなるでしょ〜!」

アラン「お前が俺の英雄語りに文句言う気持ちが少しだけ分かるよ」

マル「はぇ?」




【魂とは】

アラン「え?何?」

マル「全く分からないの来ましたよこれ」

アラン「魂は……魂はあの……身体の中にある、生命の源?みたいな」

マル「肉体の内側にある、肉体とは別のその人、ですよね」

アラン「ソリエール教では、肉体が限界を迎えて死ぬと、魂が解放されて、生まれ変わる……別の肉体に入り込むって言われてる。うーんと、新しい肉体ができたと同時に、元の肉体から抜け出るっていうか……つまり、死んだ瞬間にはもう生まれ変わってるんだ」

マル「だからお墓って概念無いですもんねー。ソリエール教のとこで言ってましたね」

アラン「うん。一応俺はソリエール教の信徒だからな。こういう解釈かな」

マル「それでしたらわざわざ“魂とは”なんてやらないと思うんですけど〜。何か知らないですか?魂について」

アラン「知るわけ無いだろ……」

マル「ちなみに東の方の主流な考えとしては、魂は有限で消耗品ってものがありますよ。一応あっちにも生まれ変わり概念はあるので」

アラン「消耗品?」

マル「はい。魂にも耐久性があるんです。普通は肉体よりも途方の無い時間を耐えることができるんですけど、例えば、普通の人以上に苦労すると肉体だけでなく魂にも衝撃がいくので、耐久性が少し下がってしまうんです〜。そして耐久性が完全に無くなると、その魂は消える。もう生まれ変われない……っていう。ちなみに、一度衝撃を受けると、魂は回復しません」

アラン「あ!それなら聞いたことある!っていっても、ほんと薄らとしか覚えてないけど。衝撃を受けるほど魂が傷つくんだよな!」

マル「意外なところで東西の共通点が!じゃあこれ知ってます?魂の限界は肉体にも出るって!」

アラン「それは知らない」

マル「ふふーん」

アラン「なんかムカつく」

マル「一番分かりやすいのは、病気がちになるとかですかね〜。魂が肉体の修復に力を使えなってくるとかどうとか」

アラン「ふぅん」

マル「ちなみに僕は風邪を引いたことがないので〜……お分かりですよねっ!?」

アラン「魂が元気だってことだろ。良かったな」

マル「ふふーん!……ま、病気がち以外でも出ることはあるそうですけどね。昔話によくあります」

アラン「何?」

マル「東の方の昔話にあるんですよ。病気がちだった女の子が、来世は元気な人間になりたい!って願って、その願いは叶うけど、その分他のところで魂の限界が現れるって。実はその願いでより魂に衝撃がいっていた──という最後だったような」

アラン「……可哀想」

マル「ね〜」


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