表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/21

第15章 小さな幸せ

週末、待ち合わせ場所に向かう美咲の足取りは自然と軽くなっていた。


今まで誰かとこんな風に約束をして、どこかへ出かけるなんて、数えるほどしかなかった。

ましてや、好きな人と一緒に過ごすなんて——初めてだ。


悠馬と出会って、話して、少しずつ距離が近づいて。

気づけば、隣にいることが、こんなにも嬉しくなっていた。


「お待たせ、美咲ちゃん」


駅前のロータリーで手を振る悠馬の姿を見つけて、思わず胸が跳ねる。

今日の悠馬は、カジュアルなシャツに黒いパンツ。

ラフなのに、どこかきちんとしていて、やっぱりかっこいい。


「ううん、私も今来たところ」


笑顔で応えながら、小さく胸をなで下ろした。

自分でも驚くほど自然に、悠馬と話せるようになっている。


向かった先は、駅近くのショッピングモール。

人は多いけれど、悠馬となら怖くない。

歩きながら、店先に並んだかわいい雑貨を覗いたり、カフェでひと休みしたり。

何でもない時間が、特別に感じられる。


「ねぇ、美咲ちゃん、これ似合いそう」


悠馬が指さしたのは、小さなシルバーのネックレス。

シンプルだけど、さりげない可愛さがあった。


「えっ……私には、もったいないかも」


思わずそう返すと、悠馬は優しく笑った。


「そんなことないよ。きっと似合う」


そんな風に言われたのは、初めてだった。

マスクの下の頬がじんわり熱くなる。


そのままネックレスは買わずに終わったけれど、

美咲の心には、確かに小さな宝物のような記憶が刻まれた。


帰り道。

夕暮れの色に染まる街を並んで歩きながら、美咲はふと思った。


(こんな風に、普通に笑って、普通に過ごせる日が来るなんて)


マスクのことも、自分の弱さも、この瞬間だけは忘れていられる。

ただ、隣に悠馬がいる——それだけで、満たされていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ