15/21
第14章 報告
日差しが柔らかい午後。
美咲は、いつものベンチで綾乃と向き合っていた。
「……それで」
いつものベンチに腰掛けながら、美咲は小さな声で切り出す。
「……悠馬くんと、付き合うことになりました」
言葉にするのが、なんだかこそばゆくて、マスクの下でそっと顔が熱くなる。
綾乃はと言えば、相変わらず落ち着いた表情で、美咲の話を聞いていた。
「へえ。良かったじゃない」
それだけ。
嬉しそうでも、驚いた様子でもなく、ただ穏やかに。
でも、美咲はそれで十分だった。
綾乃が、自分の話をちゃんと聞いてくれている。
それが伝わったから。
「……うん。すごく、嬉しい」
美咲がそう言うと、綾乃はふっと小さく笑った。
それは、どこか優しく、少しだけ寂しそうにも見えた。
「恋はいいものよ」
「……綾乃さんも、誰かと恋愛したことあるんですか?」
思わずそんなことを聞いてしまう。
けれど、綾乃は答えなかった。
ただ、遠くを見ながら、ぼんやりと微笑んでいる。
「まあ、そんな時代もあったかもしれないわね」
それだけを呟いて、綾乃はそっと立ち上がった。
「……がんばりなさいね。美咲ちゃん」
柔らかな声とともに、赤いコートの裾が風に揺れる。
(……がんばる)
心の中で、小さく頷く。
そんなふうに、美咲は思っていた。




