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第14章 報告

日差しが柔らかい午後。

美咲は、いつものベンチで綾乃と向き合っていた。


「……それで」


いつものベンチに腰掛けながら、美咲は小さな声で切り出す。


「……悠馬くんと、付き合うことになりました」


言葉にするのが、なんだかこそばゆくて、マスクの下でそっと顔が熱くなる。

綾乃はと言えば、相変わらず落ち着いた表情で、美咲の話を聞いていた。


「へえ。良かったじゃない」


それだけ。

嬉しそうでも、驚いた様子でもなく、ただ穏やかに。


でも、美咲はそれで十分だった。

綾乃が、自分の話をちゃんと聞いてくれている。

それが伝わったから。


「……うん。すごく、嬉しい」


美咲がそう言うと、綾乃はふっと小さく笑った。

それは、どこか優しく、少しだけ寂しそうにも見えた。


「恋はいいものよ」


「……綾乃さんも、誰かと恋愛したことあるんですか?」


思わずそんなことを聞いてしまう。

けれど、綾乃は答えなかった。

ただ、遠くを見ながら、ぼんやりと微笑んでいる。


「まあ、そんな時代もあったかもしれないわね」


それだけを呟いて、綾乃はそっと立ち上がった。


「……がんばりなさいね。美咲ちゃん」


柔らかな声とともに、赤いコートの裾が風に揺れる。


(……がんばる)


心の中で、小さく頷く。


そんなふうに、美咲は思っていた。

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