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第13章 告白

その日は、少し風が強かった。


講義を終えた美咲は、大学の裏手にある小さな中庭で、悠馬を待っていた。

特に待ち合わせをしていたわけではないけれど――

最近、授業の後に偶然顔を合わせることが増えていた。


「……あれ、美咲ちゃん?」


軽やかな声と一緒に、悠馬が駆け寄ってくる。

いつもと変わらない、優しい笑顔だった。


「今日もここ、いたんだね」


「……うん」


ぎこちなく頷く美咲に、悠馬は隣に立って、同じように空を仰いだ。

高い空に、薄い雲が流れている。


しばらく、二人は並んで空を眺めていた。

特別なことは何もないのに、妙に心臓がうるさい。


(なんでだろ……)


そんなふうに思っていると、ふいに、悠馬が声を落とした。


「美咲ちゃん」


その呼びかけだけで、美咲の胸は大きく跳ねた。


「……俺さ」


一拍、ためらうように言葉を飲み込んで、

それから、少し照れたように続けた。


「美咲ちゃんのこと、たぶん……好きだと思う」


静かな言葉だった。

派手な演出も、大げさな言い回しもなかった。


ただ、真っ直ぐな気持ちだけが、美咲に届いた。


「……俺と、付き合ってくれませんか?」


美咲は、何も言えなかった。

頭が真っ白になって、何も考えられなかった。


でも――


自然と、頷いていた。


「……はい」


かすれた声だったけど、悠馬にはちゃんと聞こえたらしい。

彼は、ぱっと嬉しそうに微笑んだ。


「よかった……」


そう呟く悠馬の声が、風に乗って、美咲の耳に優しく響いた。


(……夢みたい)


そんなふうに思いながら、美咲はそっとマスクの下で笑った。


大好きな人と、これから一緒に歩いていける。

それだけで、胸がいっぱいだった。


――まだ、素顔を見せる勇気はない。

けれど、美咲の世界は、確かに少しずつ変わり始めていた

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