第11章 恋の時間
昼休み、学食の片隅で、美咲はクラスメートと他愛もない話をしていた。
話題は、週末の予定や最近の授業のこと。
誰もが自然体で、無理に盛り上げようとするわけでもない、心地よい空気が流れている。
そんな中、ふと、視線を感じた。
そっと顔を上げると、少し離れた席に悠馬が座っているのが見えた。
何気ない素振りで食事をしているが、たまにこちらを見ている気がする。
(……気のせいかな)
胸の奥が、ふわりと温かくなった。
初めて悠馬と話した日のことを思い出す。
あの時は、ただ「同じマスクをしている人」という、共通点だけで少し心が和らいだだけだった。
でも今は、違う。
悠馬の笑った顔や、何気ない優しさを思い出すたびに、胸が高鳴る。
(……これって、もしかして)
自分でも、驚く。
今まで、誰かにこんな風に心を動かされたことなんてなかった。
マスクをしている自分にも、変わらず接してくれる――そのことが、こんなにも嬉しいだなんて。
放課後、美咲はいつものベンチで、そっと空を見上げた。
透き通るような青空が広がっている。
「私……」
小さな声で、ひとりごとを漏らす。
(悠馬くんのこと……好きなのかもしれない)
頬が熱くなる。
誰にも聞かれたくない、けれど心の奥でずっと言葉にしたかった想い。
そんな自分を、どこか不思議そうに、けれど優しく見つめる綾乃の姿が、少し離れた場所にあった。
何も言わず、ただ静かに――まるで、すべてを受け止めるように。




