表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/21

第9章 縮まる距離

最近、美咲は、大学に行くのが少しだけ楽しみになっていた。


以前は、ただ課題をこなすだけだった日々に、小さな楽しみができたのだ。

その理由は、言うまでもなく、悠馬だった。


特別に何か大きなことがあったわけじゃない。

それでも、教室で偶然目が合うたび、廊下ですれ違うたび、軽く交わす挨拶や、たわいない雑談。

そんなひとつひとつが、少しずつ、美咲の心にあたたかいものを灯していた。


──こんなふうに誰かと関わるのって、悪くないな。


そう思えるようになった自分に、美咲自身も少し驚いていた。


ある日の昼休み、カフェのテラス席。

テーブルには二人分のコーヒー。美咲のカップには、ストローが刺さっている。


「美咲ちゃん、最近、顔つきが柔らかくなった気がする。」


悠馬が、コーヒーをひとくち飲みながら言った。

美咲は一瞬、何のことか分からず、きょとんとする。


「前は、もっとこう……話しかけづらいオーラあったけど。」


「……そんなに?」


思わず苦笑してしまう。


「うん。でも今は、すごく話しやすい。……俺だけ、だったりして?」


悠馬が冗談めかして言い、美咲はストロー越しに小さく笑った。


「そんなこと、ないと思うよ。」


けれど、本当は。

悠馬といるときだけ、自分が少し自然体になれている気がする──そんな予感もあった。


風が少し強く吹いて、テラスに置かれた紙ナプキンがふわりと飛んだ。

美咲は慌てて手を伸ばして、それを押さえる。

マスクの端がふわりと揺れたが、特に気にすることなく、ふたりはまた自然に笑い合った。


何でもない時間。

でも、美咲にとっては、とても大切な時間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ