運営のミス
ハク達イベント中──
「レイドPvPの仕様いつ入れた?」
「ん? 先週くらいに一応機能的に入れておいたやつだろ? 仕様の確認とか。でも、イベント前に削除したはずじゃないか?」
「今、レイドPvPになってんだけど」
「はぁ!?」
「今から戻せるか?」
「もう始まってるから厳しいな。一応、レイドPvPの分の報酬も設定にはあったが、色々と補填が必要だろう」
「マジかよ……削除忘れか? てか、仕様上キル数が異常に高いプレイヤーが現れないと無理だろ?」
「例の神プレイヤーが、百キル近く取ってたな」
「はぁ? 何でだ?」
「兵隊や分身体でかき乱しながら、上で砲台になっていたみたいだな」
「だから【分身体生成】も封印しろって言っただろ。神の祝福もあるんだから異常な強さになるに決まってるだろ」
「そもそも祝福を一人でこんなに持つ事自体想定外じゃない?」
「AIの好みの問題か……理由が何にせよ、AIの研究が進むって事だから良いんじゃね?」
「まぁ、資金提供を受けているわけだから、重要ではあるよな」
「いや! そこじゃない! 今の問題は、レイドPvPだろ!?」
「いかん。現実逃避していた。取り敢えず、補填と説明を考えよう。まずレイド対象となったプレイヤーには……何が必要だ?」
「もはや必要なものは、自分で用意出来るようなプレイヤーだぞ。他のプレイヤーなら神との接点を作るきっかけとかが出来るんだが……」
「寧ろ、新しい神との接点は嬉しいんじゃないか?」
「いや、スキルで、ほぼ全ての神に存在を知られているし、そもそも勝手に接点が生まれるだろうから要らないだろ。寧ろ武器……は……神器と魔剣があるんだよな……」
「根源もあるしな……」
「何ならないんだ……?」
「大罪持ち、【熾天使】、竜系統もあれば、精霊でもある……そうだ! 精霊!」
「神霊が仲間にいるから、新しく精霊を仲間にするのは無理だぞ?」
「違う違う! 精霊界! 前人未踏のエリアへの切符は!?」
「時間の問題じゃね?」
「そうだよな。入口を見つけられる資格はあるから」
「あぁ~……えっ? 何が必要なんだ?」
「全く分からん」
「あっ」
「ん? 何か思い付いたか?」
「いや、神がシステムに介入し始めた。これ奇跡のシステム介入の力だわ」
「はぁ!? いや、確かレイドPvPは封印解除の要素があったよな?」
「ああ、さすがに封印状態で全プレイヤーを相手にするのは無理があるって話になったからな」
「祝福による顕現と奇跡の組み合わせか……ヤバい事になるぞ!」
「えっと……テイムモンスターは対象外だとして、神と悪魔が出て来るか」
「後、妖怪な。玉藻がテイムされているから。一応テイムモンスターとしても扱うが、本質はNPCだから」
「あっ……パイモン仲間にいるわ」
「絶望だな。ほぼ確実に敗北だ。いや、失敗する事を祈るか」
「勝利の果実食べてんだけど」
「よし! 補填を考えるぞ。通常プレイヤーには、選択式レアアイテムボックス一個と百万Gを出せ。レイド対象のプレイヤーには、取り敢えず選択式レアアイテムボックスを十個に二千万Gだな。ここに何か追加するぞ」
「まぁ、そこが最低ラインだよな。後は……スキル系で何か出すか?」
「スキル……」
「あっ」
「今度は何だ。もう何が起こってもあまり驚かないぞ」
「神と悪魔、妖怪がイベントに乱入したのと神格が発現した」
「はぁ!? このタイミングで!?」
「神格か……何の神格だ?」
「調停者と寵愛」
「何なんだ? たらしの権化なのか?」
「まぁ、ここまで色々なNPCを籠絡していればそうなるよな」
「やっぱり出会い系の補填じゃないか?」
「言い方に問題があるが、まぁ、それが良いかもな。いっそ、ギルドエリアに精霊界への入口を作るか」
「ああ、それは有りかもな。開くための条件は満たしているし」
「よし。補填は精霊界の苗木だな。準備を進めろ。遅くても明日には補填を出すぞ」
運営のミスによる補填を考える突発的な会議は、こうして終わった。その後、運営が徹夜で作業していったのは言うまでもない。




