8-9 偵察報告と展望
ご愛読、ありがとうございます。
済みません。前回の予告の内容まで届きませんでした。
今回は偵察を元に展開を予測します。
ペルセポネの着任引継ぎです。
オリンポスのマイアとハデスがレオンの情報を探ろうとしてエージェントを派遣した。
マリーは今まで勝てなかったレベル5に勝利して、準決勝にコマを進めた。
アキラの店 食堂
レオン達はマリーの勝利を祝った後、フェリ様達と分かれ、アキラの店に来ていた。
店は週末は休みにしており、神狼娘達もレオン達と一緒に無駄話に花を咲かせていた。
「レオン殿が遅いから訓練にも行けないじゃないですか」
「そんなこと言って、午前中に買い物に行ってはしゃいでいたんですよ」
「まったく、洋服なんか見て回って何が面白いのか」
ハビの言葉をノアが否定して、ジェリルが茶々を入れる。
「そんなに訓練したいなら自分達で行けばいいのに」
アンナはなぜレオンを巻き込むのかと言いたげだ。
「私達だけじゃビーストグローが使えないじゃないですか」
ハビの言葉にそれもそうかと納得するアンナ。
「おい、お前ら、アタイ達にも収納庫をくれよ」
ジェリルが奥の机で話していたミラとキラに頼む。
「あんた達はレオンの従者じゃないから駄目!」
ミラはあっさりと否定する。
ジェリルは露骨にいやそうな顔をする。
「アタイには神狼族がぶら下がってるんだよ」
彼女の仕送りで神狼族は少しではあるが文化的な生活が出来ている。
「おい、レオン、戦争の報奨金はまだか」
思い出したのであろう。レオンに夜襲の料金を請求するジェリル。
「多分来週には支払われると思うよ。何なら先渡ししようか?」
レオンは将来のためにお金を貯めている。戻ってくると分かっているなら気前よく使えるのだ。
「いやいい、アタイ達が傭兵として参加していることを忘れなければ良いんだ」
「もう、ジェリルさん、ここに居ればお金もかからないし、店員としてお給料も貰えるから私達は大丈夫ですよ」
ノアにいわれてウッとか言ってる、本当は優しいくせに悪ぶりたいジェリルであった。
「話は変わるんですけど、レオン様は最近刀を使わないじゃないですか。どうしてですか?」
コトネは、刀を使わないレオンに疑問を抱いていた。いくら二式を使えると言っても刀があった方が攻撃の幅が広がる。
「ああ、刀か。最近アーレスとかと戦ってると刀が凄く痛むんだよ。大切な刀だし、将来、ひとかどの者になれたらヨシムネ先生にも会いに行きたいしな。その時に刀が無いと会えないだろ」
刀はヨシムネからの拝領品で、ホウライ国では身分を明かすものとなる。
「ホウライ国か、アタイもその時は付いて行こうかな」
「ホウライ国って東の端っこじゃないですか。行くのに半年は掛かりますよ」
「何言ってんだよ。ノルンに乗せて貰えば一週間ぐらいだろう」
「そっかー、ノルンさんに乗せて貰えば速いですね」
神狼娘達は付いて行くことに決定したらしい。
「でもよ、レオンもアーレスやポセイドンなんかに、素手で勝っちまうんだから強いよな」
ジェリルがしみじみと言う。
「何言ってんだよ。お前やコトネ、アンナの方が強いだろ。ビーストグローも使えるし」
レオンはとんでもないと反論する。
「お前、ビーストグローの訓練でアタイに勝ってたじゃねえか」
「いや、あの時は、お前初めてだったし、慣れてなかったからだろ」
「レオン様は四式を使わなくても私達より強いです」
「レオン様、そこまで言うと謙譲を通り越して皮肉ですよ」
アンナにまで難しい言葉で窘められるレオン、本人は全く意識してないから始末が悪い。
「うう、そこまで言わなくても良いじゃないかあ」
少し拗ねるレオン。彼はいつも緊張した生活を送っていたのだが、仲間に囲まれ、徐々に少年らしい感情を取り戻してきたのかもしれない。
その時サクラが食堂に入って来てレオンの横に立った。
「レオンさん、ヤヌウニさんが応接室で呼んでいます」
ヤヌウニとサクラの治癒院は本来なら昼までの営業なのだが、患者が多く今まで掛かったのである。
「ありがとう。行って見るよ」
レオンは皆に手を振って隣の応接室に行く。
ヤヌウニはゴロやブラウニーを使って近隣諸国の情報を集めていた。
バルドゥール王国へのハーヴェル諸国連合の侵攻が失敗したことが、そろそろ聖金字教国に伝わった頃だ。
「失礼します」
応接室にはヤヌウニとアキラが居た。レオン率いるこの軍団の軍師がアキラ、情報収集がヤヌウニを担当している。
レオンが腰掛けるとヤヌウニが話し始める。
「ゼウスの指示は待機だ。諸国連合とエドゥアルト王国の政治・軍事の再編を指示した」
「その期間はどれくらいになるのでしょうか?」
「短くて三カ月、長くて半年と言った所だろう」
今度はアキラが話す。
「今度は何処に行くと思われますか?」
「帝国・バルドゥール王国・ユグドラシル聖皇国・エルハイホ共和国・ヴァイヤール王国には行かないと思う。聖金字教国に攻め込む国も無いから、北に向くんだろうな」
アキラは難しそうな顔をする。
「北へ行かれたのでは手が出せません。どうしたら良いでしょうか?」
「教国も本来、帝国を弱体化して占領、返す刀でヴァイヤール王国を屈服させれば、後はなし崩し的に降伏すると思っていたはずだ。だから北の小国に構ってはいたくないはずだ。時間が掛かるばかりで実入りが少ないからな」
アキラは大きく息を吐く。
「今の状況で言えば、教国は再編しないと帝国どころかヴァイヤール王国程の力もない。帝国も急に軍備増強を図っても半年は掛かる。両国とも動けないのが実情だ」
「でも、バルドゥール王国へは侵攻したじゃないですか。諸国連合は帝国の追撃が下手であまり数を減らしていないし」
あの後、帝国の追撃は甘く、ほとんどの兵が諸国連合に逃げ帰った。
「あれは電撃戦だから成立した作戦だ。相手に身構えられれば簡単には勝てない」
レオンが思っていたより敵も脆弱だったようだ。
「でも教国の正規軍は強いんですよね。正規軍を使うことは無いのですか」
「教国の正規軍は強いが、それをすり減らすような作戦は取らないだろう」
「では我々はどうすれば良いんですか?相手が攻めてくるまで待つのですか?」
「まあ、待て。私は今、エドゥアルト王国やハーヴェル諸国連合で味方になる勢力を探している」
「そう言う事だ。教国を破ったとしても、すでに行政機構を失っている国を放って置く訳にも行かないからな。今年中には筋道をつける予定だ」
すごい、レオンは思った。自分は相手を倒す事ばかり考えて、その後の事は全く失念していた。それを彼らは既に考えるだけでなく実践しているとは。
しかし、帝国に戦わせるのでは無かったのか。
「帝国はどうするのですか?」
「帝国には大災厄に備えて貰わんとな」
ヤヌウニは当然と言い切る。
レオンが食堂に戻るとアキラが言った。
「レオン君に反乱軍を率いて貰う。それが大前提だ」
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帝都 マイアの拠点 <ペルセポネ>
私の名はペルセポネ、もちろんコードネーム。本年取って十五歳の黒猫獣人の美少女よ。
幼い頃、私の村が戦争に巻き込まれて孤児になったの。
村長は私を犯罪組織に売った。そこで私は殺人や泥棒の技術を叩きこまれたの。
私の性質と合ったのか十二になる頃、組織には私より優れた者はいなかった。
二年前、私の組織は敵対した組織に滅ぼされた。その時に私はハデスに拾われたの。
この組織はオリンポスと言って前の組織より緩くて、私の性格に合ったみたい。
去年、エドゥアルト王国の諜報や暗殺をやってハデスからペルセポネの名前を貰ったの。
現在、私はハデスからレオンハルト=イエーガーの情報収集を頼まれて、リヒトガルド帝国の帝都に居るマイアという、ヘルメス系列のエージェントを尋ねてここに来てるって訳なの。
それにしても待たせるわねえ。私、気は短くないから良いけど・・眠くなるでしょ・・。
「・・・え、ちょっと!起きなさいよ!」
目を開けると濃いめの金髪のアラサー女が私に向かって騒いでる。
「うん、誰だ?」
任務中でなければ私はこんなものだ。寝起きも悪い。
「アンタねえ。人の家に来るならもっと緊張しなさいよ!」
「お前がマイアか?待たせるのが悪いんだろ」
ちょっと目が覚めて来た。
「年上を敬いなさいよ。敬語を使いなさい!」
ああ、ヒステリーな女は苦手だな。
相手を観察すると事務系の仕事をしているみたいで隙だらけだ。二秒で殺せるな。
マイアがビクッと身を守る。ああ、仕事柄殺気には鋭いらしい。
「あ、あんたねえ、レオンは殺気に敏感らしいよ。そんなんじゃ仕事にならないから」
偉そうに上から目線はやめないらしい」
「大丈夫、仕事になったら気配を断つから」
私は眠そうに言ってやるとまた腹を立てる。
「ま、まあ、いいわ。現在解ってることを説明するけど、良い?」
「分かった。教えて」
ようやく仕事の話になるみたい。
「レオンハルト=イエーガー、愛称レオンは現在十五歳でハイデルブルグ学園高等部一年生。高等部の寮で十歳の狐獣人の従者と住んでるわ。
レベルは1だけど、アーレスと同等の強さよ。気功術っていう東洋の武術で戦うらしいわ。
狐獣人の従者は女の子で名前はアンナ。ヴァイヤール王国の小さな村の出身で、村は魔獣の襲撃で全滅して生き残りはこの子だけ、魔法は覚醒前だけど探索と精霊魔法が使えるらしい。うちの手下は接近前に見破られてる。
もう一人従者が居て十二歳の猫獣人の少女コトネ、現在同じ学園の初等部の二年生、この子はレベル5で同じような東洋の武術で戦うわ。魔法は覚醒してると思うけど、今の所スキンアーマーだけよ。
強さはレベル5のフォボス、ダイモスと同等ね。
東洋人の奴隷を引き取ったと言われているわ。
レオンについては未確認情報が多いのよ。ロバくらいの針鼠や大きな鳥を飼ってると言う目撃情報はあるけど、帝都で見た者はいないわ。もしかしたら帝都の外で飼ってるのかもしれないわね」
本部で聞いた情報とは変わらないね。
「次は仕事ね。レオンは第二皇女のフェリシダスの剣術指南役をしているわ。他に弟のジークフリート、エルフのルシーダが一緒に習ってるみたい。学園内に情報提供者は作ったけど皇族と在って近寄りがたいみたい。
遺跡の事件は知ってる?。そう、じゃあ省くわね」
彼女は私が頷くと話を飛ばしたわ。
「探り易そうで探れてないのがアキラの店ね。アキラの店はここね。結構大きな店よ。
左側が治癒院になっているわ。従業員が中年の女性ヤヌウニ、助手の少女サクラの二人ね。隣の薬屋のポーションを使って治癒してるみたいだけど、かなり高度な治療もしているみたい。評判は高いわ。
中央が薬屋、従業員がゾフィっていうおばさん、唯一外から来てる人だけど店の内容はあまり知らないの。薬はアキラとシャラって言う若い夫婦が作っているわ。アキラが錬金術師なんだけど、材料を何処から仕入れてるのかが分からないの。
そうそう、このアキラがここのオーナーね。最近犬を飼い始めたわ。
中央奥から右側が服飾店・革製品・金属製品の店ね。ドワーフの家族と狼獣人の少女4人がやってるわ。
店の裏には工場があるみたい。商品はここで作ってるみたいね。
最後に用心棒、地元のやくざをけしかけたんだけど、こいつにやられたわ。名前はジェリル、狼獣人の女よ。狼獣人の店員はこの女の縁戚みたい。レベルは6、ガララトのジェリルって有名な傭兵みたいよ」
「あ・・た寝て・・」
私は意識を手放して、ユートピアに旅立つのであった。
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この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。
次回はコトネとペルセポネの関係が解る予定です。




