8-7 次の日
ご愛読、ありがとうございます。
夜襲から帰って来た次の日の出来事です。
夜襲から報告、打ち上げまでの長い一日を終え、次の日から学園に通う日々に戻るレオン達であった。
ハイデルブルグ学園 練習場 <レオン>
誰もいない練習場に来たレオン達。
「見物客が居なくなったね」
アンナの独り言にルジータが返す。
「武闘会、ドタキャン」
そうか、なんか忘れてると思ったら週末に武闘会の予選があったんだった。
「公務で欠席したのですからドタキャンにならないと思いますが?」
コトネが首を傾げる。そうだよ皇帝の依頼で欠席したんだから、ドタキャンと言われるのはひどいんじゃないか。
「すまん、フォローを忘れておったのじゃ」
フェリ様が頭を下げる。
「まあ、いいですよ。どうせ今年は出るつもりも無かったし」
俺は今年は武闘会に出場するつもりは無かったのだが、フェリ様に無理やり出場させられたのだ。
注目されなくなった方が気楽で良い。どうせこの事件で俺の事が公になるかは微妙だからな。
「何とか実行委員会に言って見るのじゃ」
「いや、良いですよ。出場しない方が気楽ですから」
「おまえが臆病風に吹かれたとか噂されて居るのじゃぞ」
「別に気にしません」
「ワシが気にするのじゃ」
どうも、おれが皇帝の頼みを聞いて、悪い噂を立てられているのが気に入らないらしい。
「仕方ないじゃ・・・」
俺のフェリ様を慰める言葉は、乱入して来た女の子に遮られた。
「お前がレオンハルトかあ!!」
輝く金髪をポニーテールにまとめた美少女だった。制服のネクタイの色は二年生のものだ。
長身でボン・キュッ・ボンなフォルムは俺達には不釣り合いと思われた。
「左様ですが、あなたはどちら様でしょうか?」
先輩が相手だから丁寧に対応しよう。
「マルガリーテ=ヴァルムヘルムだ!知らんとは言わせんぞ!」
いやー、美人が怒ると迫力があるなあ。で、マルガリーテさん?どこかで聞いたような?
「馬鹿、週末の対戦予定者じゃ」
俺が困っているとフェリ様が助け舟を出してくれた。
「ああ、対戦できなくなくて申し訳ない。ちょっと急用ができてしまって」
「帝国の急務じゃ。許すのじゃ」
俺とフェリ様が謝っているので許してほしい。まだ帝国の発表が無いから、どこまで言って良いか分かんないんだ。決して君を馬鹿にしてるわけじゃないんだ。
「姫様まで!そのように・・嘘は結構です。ヴァイヤール王国人がどうして帝国の急務に関わるのですか?」
うん、そりゃそうだよね。俺の秘密を知らないとありえない話だよね。怒るのも解るよお。でも本当なんだよお。
「うー、面倒臭いのじゃ。どうせ相手をしてやらねば収まるまい。やってやれ」
あ、投げた。俺に全部丸投げしましたねえ。
「え、いや、そうではなくてですね。何と言いますか。その・・・」
急に歯切れが悪くなるマルガリーテさん・・どういうこと?
アンナの目がキラーンと光る。
「これはドタキャンされたことを、自分を無視されたと怒ってここに来たわけでは無さそうですね」
「うん、どう言う事じゃ?」
「これは剣の道に生きる少女が、お家存続のため、強くて男兄弟の多いレオン様に目をつけて、ちょっかいを掛けようとしてるのよ」
トロンとした目で語るアンナ。コトネが慌てる。
「この娘、最近、少女向けの恋愛小説に嵌ってて、ちょっと妄想が・・・」
マルガリーテさんがアンナの言葉に驚いている。どうしたんだろう。そんなことはないはずなのに。
うん、フェリ様がマルガリーテさんの腕を引いて俺から離れる。諦めるように話してくれるのかな?
暫くすると二人は戻って来て、俺の前に立つ。
「今日からマルガリーテも訓練に加える。出来るだけ勝ち上がるように鍛えて差し上げるのじゃ」
俺に不戦勝で勝ったから武闘会には出場できるが、予選は二週間後だよね。あまり期待しないでね。
「私の事はマリーとお呼びください。効率よく強くしていただけるそうで、よろしくお願いします」
「おまえが優れた指導者であることを示すチャンスじゃ。頑張って勝たせろ」
彼女の家は「剣のヴァルムヘルム」と呼ばれる家だが、今代は女性しか生まれずに家の存続が危ぶまれているらしい。四人姉妹の長女である彼女は、家の為に強い男を欲しているらしい。
鍛錬具合を伺ったところ、基礎も出来ているし、家に伝わる剣技も会得していた。これなら短期間で伸ばすことも可能だろう。まずは気功を知り、内気功を会得して貰おう。
彼女が武闘会で良い成績が残せれば、良い縁談もあるのだろうし、本人が軍人として大成するかもしれない。これから帝国は軍備増強に向けて動くはずだしな。
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学園の正門のそば
訓練が終わって寮に帰るレオン達と分かれたフェリ達とマリー。
「お前達はここに居れ。マリー、ちょっと来い」
護衛とジークを残し、人目につかぬところで密談を始める。
「奴は伯爵家とは言え、三男坊じゃ。外に出ることに嫌とは言うまい。じゃがあまり、くっ付くな。奴は色気づいた女は嫌いじゃ。あくまでも自然を装うのじゃ」
「姫様、私でよろしいのでしょうか?姫様も・・・」
「それは言うな。なに、奴が帝国に残る決心をすれば何とでもなるのじゃ」
「左様ですか。では遠慮なく」
「うむ、それで良い。なんなら妹達も参戦させても良いのう」
「中等部に二人居りますので、今度呼んで来ましょう」
「お主も悪よのう」
「いえ、姫様にはかないません」
「「わはははは」」
とまるでどこかの代官と回船問屋のような会話をする二人であった。
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アキラの店
アキラ、コニン、マサユキの三人は毎晩仕事終わりに三人で酒を飲んでいる。
「アキラさんよう、なんでレオンは子供を戦わせてるんだ。子供は保護すべきだろう」
マサユキはいつもより酔うのが早いようだ。
「ここは日本じゃないんだ。子供だからと言って保護して貰える訳じゃないんだ」
アキラに変わり、コニンがマサユキを嗜める。
「でもよ、アンナちゃんなんて十歳だぜ。いくら本人が戦うと言ったって戦わせちゃ駄目だろう」
「まあな、その通りだと思うよ。でもな、彼女達は厳しい世界で生きて来たんだ。彼女たちは自分や近しい人を傷つけられると思ったら、敵に対して遠慮はしない。そう言う世界に生きているんだ。
それにレオンだって、おまえ、獣人の孤児を引き取って育てられるか?仕事を与え、勉強をさせて、コトネちゃんなんか初等部で二番だ。それでも面倒見てくれてるレオン君に申し訳ないって言ってるんだぞ」
「俺には無理だ。そこまでの責任は負えねえ」
「今、レオン君は帝国でコトネちゃん、アンナちゃんが幸せに暮らせるようにその権力を欲してる」
「可能なのか?」
「難しいだろうな。出来上がった組織で前例があればともかく、新しい事をやるには抵抗が大きくて、それだけで一生かかるかも知れない」
「じゃあ、どうするんだよ」
「レオン君に新しい国を造らせる」
「へ、そんなことが可能なのか?」
「大災厄でつぶれる国が出てくる。そこに造る」
「もしかして、今作ってるのは大災厄のためだけじゃないと言う事か」
「そのつもりだ」
「よし、俺も頑張る」
「人間も亜人も精霊も皆平等な世界か。ワシも頑張るぞ」
「ホムンクルスもな」
おっさんたちは理想を肴にして盛り上がるのだった。
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ハイデルブルグ学園 高等部寮 <レオン>
従者通信の様子をうかがうアンナ。
「どうでしたか?」
「帝国軍はまだ追付いてない様だ」
今、情報の収集はヤヌウニさんに集中しているので、ゴロからの連絡もヤヌウニさんを通してのものとなる。
連絡から一日半経っても追いつけないとは、どんな追撃戦を展開しているのやら。
「帝国軍は情けないですね」
「まあな。ここで叩いておくと再起に時間が掛かるから良いんだけどな」
ハーヴェル諸国連合に侵攻する元気はあるまいから、兵数だけでも減らして置いて欲しい。
『帝国では、国軍の派遣を中止する要請が出てるぞ』
ヤヌウニさんから新しい情報がきた。
馬鹿なんだろうか?バルドゥール王国に帝国軍が少ないなら聖金字教国正規軍が来るぞ。あれが来れば俺達ではどうしようもない。
まだ敗報は聖金字教国には伝わっていないはず。一か月ぐらいが勝負だと言うのに。
俺から言えば情報を収集してることがバレるし、どうするかな。
明日フェリ様を通じて釘を差しておくか。悠長なことだが。
「レオン様、お顔が怖いです」
アンナが俺をからかう。いかん、顔に出てたか。未熟だな。
「すまん、怖かったか?」
アンナはニシャッと笑った。
「私がレオン様を怖がるなんて無いですよお」
うーん、あざとい。何処で覚えるのか。最近あざとい仕草をやるようになった。
可愛いから良いけどさ。
「体拭いて下さいね。下着は洗いますから出してください」
アンナはいつの間にか桶に湯を入れて、俺の前に置いた。
アキラさんの家で風呂に入ることに慣れちゃったので、少し寂しい。
俺は全裸になって湯で体を拭く。それなりに気持ちがいいもんだ。
アンナは俺の下着を籠に入れて洗濯の用意をする。
洗濯は明日、俺が学園に行ってからだ。
俺が新しい下着を着ているとアンナがメイド服を脱ぐ。
「アンナ、ここで洗うのか?」
「うん、使用人部屋狭いから」
俺の残り湯で体を拭き始める。
「見て、ちょっと膨らんできたでしょう」
アンナは胸を反らしてふくらみを強調する。そう言えば僅かに膨らんだか。
「あ、笑った。酷いんだあ」
「笑ってないって」
「見てなさいよお、そのうちマリーさんより大きくなるんだからね」
「はいはい、期待してますよ」
アンナは怒っていた俺を気遣ってくれたのだろう。本当に良い子になった。
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ハイデルブルグ学園 初等部寮 <コトネ>
裸になって体を拭く。胸の膨らみは去年に比べれば、かなり大きくなったけど今日のマリーさんには余裕で負けてる。レオン様に気があるようだったけど、どうなんだろ。
レオン様は大きいのが好きなんだろうか。
ヤダヤダ、他の人と自分を比べてどうするの。生まれ持った物は変えられないし、そのままを好きになって貰わないといけないでしょ。
取敢えず考えることを変えましょ。レオン様の事を考えると学園に入ってから一緒の時間が少ないからどうしても暗くなっちゃう。
来年には初等部を卒業して中等部に進学するでしょ。再来年中等部を卒業したらどうなるのかしら。高等部に行けたとしても次の年には、レオン様が卒業だから帝国に居ないかも知れないわ。
中等部で終わると最後の年は学園に居られないから、ますますレオン様との時間が取れなくなるじゃない。
話題を変えても落ち込むコトネちゃんでした。
面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。
この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。
次回はレオンとオリンポスの情報戦の予定です。無線が無いと進みが遅くって。




