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8-5 夜襲(2)

ご愛読、ありがとうございます。

前話の戦いの続きです。

 帝国の混乱を嫌ったレオンは、ハーヴェル諸国連合軍に夜襲を掛けます。狙いは将軍ポセイドン。

 後はポセイドンとトリトンを倒すのみ。


 ◇レオン 対 トリトン、ポセイドン <レオン>

「おい、武器も持たずに戦う気か。忘れたのなら待ってやってもいいぞ」

 兜を付けたトリトンは素手で対峙する俺に余裕を見せる。


「あなた達が必要以上に硬い鎧を着こむので、剣が痛むんですよ」

「馬鹿なことを!!」

 トリトンは馬鹿にされたとでも思ったのか三又の矛で腹を突いて来た。


「二式戦!!」

 左腕に「鐘馗」を発生させ、矛を止め、右手に「屠龍」を発生、奴の左肩を斬る。


「屠龍」は鎧に阻まれ十cm位しか入らなかったが、奴は矛を取り落とした。

「ま、待て!降参する。降参するから殺さないでくれ」

 奴は右手を開けて俺に向けて攻撃をやめるように懇願した。左肩からは血が流れ出る。


 俺は右手に霊力の渦を作って、奴の兜の顔面に打ち付ける。

 兜はバラバラに吹き飛び、奴の頭の形は残らなかった。

 トリトンは支えを失ったように崩れる。


「なんだ許してやらないのか。厳しいんだな」

 椅子に座ったままのポセイドンが呟くように言った。


「済まないが指揮系統を残すわけには行かないんだ。全員を殺すのは疲れるからね」

 俺の狙いは指揮系統の上部を消して敵軍を弱体化させることだ。うまく行けばここにいる人間を消せば、軍は用をなさなくなる。


「ふん、まあ、正解だろうな。しかし、一月前とは力が違い過ぎるな」

 ポセイドンはゆっくり立ち上がると兜をかぶり、剣を抜いた。


「皇女様襲撃の時かい。あの時は殺す必要が無かったから手加減していたんだ」

「アーレス相手に手加減していただと?」

 ポセイドンは信じられんと言う顔をした。


「そうさ、じゃあ、行くよ」

 俺は「屠龍」で斬りかかる。ポセイドンは左腕を上げて止める。

 不可視の刃が止められる!気で止めただと!!


「気功技を使うのはお前だけじゃない」

 ポセイドンは右手の剣を横に振り胴を払う。

 俺は後ろに跳んで避ける。


 その時だった。ポセイドンの左手が手首の所から折れて、穴が見えた。

 まだ空中に居た俺は危険を察知したが避けられるはずもない。

 見えない力で殴られる、何発も、何発も。

 一応、両手でガードはしているが、天幕の端っこまで弾き飛ばされる。


「レオン様!!」

 アーレスを倒したコトネが驚いて声を上げた。


「百歩神拳か・・・」

 コトネを手で制しつつ俺は立ち上がった。


「ほう、鎧も着ていないのにタフだな」

「お前からは気を感じない。どういうことだ?」

 ポセイドンからは気を感じていない。そう、霊力を持っているようには感じないのだ。


「フハハハハハ!お前の父親に斬られたこの左腕は、奴を倒すための秘密兵器に生まれ変わったのだ」

 ポセイドンは俺を見て笑う。


 こいつ、親父の関係者か?いや、今はオリンポスの目的を聞かなくっちゃ。

「お前達はオリンポスだろ。なぜこんな侵略を繰り返すんだ?」


「なんだ俺の左腕には興味はないのか?それにオリンポスってなんだ。知らんぞ」

 やっぱり簡単に吐いてはくれないか


「左腕はどうでもいい。能力が解れば警戒するほどのものじゃない」

 四式「疾風」全身に気を纏っている俺には百歩神拳では致命傷を与えられない。ましてや地面に足を着けている状態なら当たる訳もない。


「なんだとぉ!!くらえぇぇ!!」

 次々気功の弾をを撃ち出すポセイドンだが、避けるのも面倒臭いので両腕に纏わせた霊力で弾く。


 二十発くらい打つと霊力が切れたのか撃てなくなった。

「話す気が無いなら殺すが、どうする」


 自分の武器が弾切れで弱気になったポセイドンが周りの味方を見るが無残に殺されていた。

「待て!待ってくれ!話す、話すから・・俺達が侵略を始めたのは大災厄に対して、国々の力を一つにして対処するためだ」

 残っているのが自分一人と分かると剣を投げ出し、ビビり始めた。


「建前はやめろ。オリンポスが西大陸を侵略しようとしていることは判ってる。武力侵略された国がまともに大災厄に立ち向かえるとは思えんが」

「本当だ。俺はそれしか聞いてない。本当なのだ」


 こいつはオリンポスの本質が何であっても構わないのか。

「ではオリンポスの構成員を教えろ。ゼウスが聖金字教会の教皇であることは知っている」


「言えん・・言えんのだ。言ったら俺は殺される」

 俺は「飛燕」で兜の面当て部分を斬り飛ばす。


 兜の中でポセイドンは汗びっしょりになっていた。ここまで怯えるとはな。

「俺が匿ってやってもいいぞ。話せ」


「だ、駄目なのだ。しゃべ・・シャベ・・ガッがっ・・ガーアアアア」

 突然、ポセイドンは気が狂ったように暴れ始めた。俺達に危害を加える様子が無いので見守った。


 左上腕の鎧が内側から盛り上がった筋肉に吹き飛ばされた。その後、胸部や腹部、とにかく鎧が弾き飛ばされていく。

 現れたのは筋肉が十倍にも膨れ上がった怪物だ。


『レオン様!霊力が急激に・・風船みたいに膨れ上がってます』

 アンナが従者通信を入れて来た。

『ああ、分かってる』

 アンナにはそう返すしかなかった。


「レオン様、こいつは一体・・」

 コトネが駆け寄ってくる。

 ポセイドンは筋肉の化け物の様になっていた。膨れ上がった筋肉に浮き出る血管、赤黒くなった皮膚、もう顔があった部分も胸の筋肉の中に埋まっていた。


 しかし、左腕の気功砲だけはそのまま残っていた。この部分にこの変身の装置があって、秘密を話そうとすると起動するようになっていたのかもしれない。いや、アーレスの鎧を調べた時には、そんなものは見当たらなかった。


 筋肉の塊はまだ大きくなる。あれだけ筋肉が膨れ上がっていたら関節がまともに動けるはずもない。

 知性は残っているのか?顔が埋まってるから五感も触覚しか残ってないよな。


『レオン様、霊力の塊が爆発しそう。早く逃げて!!』

 アンナが叫ぶ。俺は皆に天幕の外に出るように指示をする。

「外に出ろ!!爆発する!」

『ノルン!来てくれ!!』


 天幕の外に舞い降りたノルンの背中に全員飛び乗る。

 あれだけの霊力が爆発すればどれくらいの被害が出るのか想像が出来ない。

「ノルン、なるべくここから離れてくれ!」

 上空に居たアンナとゴロも着いて来る。


 天幕から一km位離れた時に爆発は起きた。閃光が辺りを照らす。


 ドーン!!!。

 少し遅れて爆音と爆風が届いた。

 今は夜なので、どれ程の被害が出てるのか見当もつかない。


 取敢えず人気のない草原に降りて、家を建て休憩を取った。どうせ朝までやることはない。

「おい、これからどうするんだ?」


 湧かした湯で体に着いた返り血などを拭き取って、着替えていると変身を解いたジェリルが話し掛けて来た。

「明るくなってから敵軍の様子を見て、逃げるようなら放って置く、軍を再編して侵攻を続けるなら、また指揮官を潰す」


「コトネに偵察して貰ったらどうだ?」

「相手は人間だからな。明るくなってからしか行動できないだろう」

「それもそうか。じゃあ、ちょっと寝るか」

 そう言ってジェリルは奥の女性用に作った部屋に戻って行った。


 ジェリルと入れ替わりにコトネが俺のそばに来た。

「アンナはどうした?」

「もう寝ました。ちょっと疲れたようです」

「それでどうした?」

 コトネは俺に何か用があるんだろうと思った。


「はい、あのポセイドンですが、伯爵さまと関りがあったのですか?」

「親父に左腕を斬られたとか言っていたから二十年前のヴァイヤール王国の貴族派に居たのかも知れんな」

 親父の武勇伝を聞くつもりは無かったから聞いてないけど、コトネは聞きたかったのか?


「あの人はどうして爆発したのでしょうか?秘密を守る為でしょうか?」

「命は惜しかったみたいだけど、あの左腕の魔道具に仕掛けがあったみたいだね。本人が負けを認めると爆発するみたいな・・・時間が掛かったのは霊力を溜めるのに時間が掛かったみたいだ」

 コトネの顔色が変わった。ポセイドンがオリンポスに裏切られたと感じたのだろうか?


「私が敵に摑まったら自害した方が良いんでしょうか?」

 コトネは忍者(アヤメさん)の修行を受けているから自分の命を軽く考えるのだろうか?

「何を言ってる。俺の秘密なんか全部喋って良いから、生きて帰ることを考えてくれ」


「でも戦いにくくなったり、生活しづらくなりませんか?」

「お、おい待て!!お前を戦いの中で失ったら、一生もんのトラウマになっちゃうよ。俺もアンナもな。頼むから死なないでくれ」

 俺は必死で言う。冗談ではない。


「ありがとうございます。休みますね」

 ニコッと笑って奥の部屋に入って行く。コトネの策略に掛かったのか?

 奥の部屋で明るい笑い声が聞こえる。まあ良いか。俺も夜明けまで三時間ぐらい休むことにしよう。


 夜明け前に作ってあったおにぎりとちょっとしょっぱい野菜スープで朝食を摂る。

 再度、変身させてノルンに乗る。


 夜明けと同時ぐらいに天幕の有った場所に向かう。


 酷いものだ・・・。魔道具もアーレス達の死体も見えなかった。

 天幕の周囲にも死体が散乱してた。

 俺達が地上から来ると考えて天幕の周囲に待機していた兵隊だろう。

 爆発にやられて天幕を中心に放射状に倒れている。


 野営地に行って見るともう兵はほとんど残っていなかった。ケガをした兵と少人数のそれを治療でもしているのだろうか元気そうな兵隊も見える。


「アンナ、残りの兵隊がどこへ行ったかわかるか?」

「うーん、こっち」

 南方向を指差す。ハーヴェル諸国連合へ続く街道方向だ。


「なんだ、逃げ出したのか」

 暴れ足りなかったのか、ジェリルががっかりしている。


「ノルン、様子を見に行こう」

「了解!」

 黒鷲に変身しているノルンは大きく旋回する。


 密集してるところ、まばらな所、結構バラバラに兵隊が街道を歩いている。

「あれならアタイ達でやっつけられるぞ」

「却下だ」

 ジェリルの提案を即座に否定する。


 兵隊の敗走は先頭まで四~五km続いてるだろうか。

「あれじゃあ再編は無理そうだな。良し、帝国軍に報告して帰ろう」


 ******


 帝国軍野営地 <レオン>


 俺達は野営地から少し離れた所にノルンを降ろした。

 そこで着替えて夜営地に向け歩き出す。

 さすがにど真ん中に降りるといきなり攻撃されるだろうからな。


 百m位まで近付くと五人の女兵士が俺達の方に走ってきた。

「止まれ!!何者か!!」

 俺は命令書を広げ、名乗る。

「レオンハルト=イエーガーだ。皇帝陛下と元帥閣下の命令でここに来た。司令官に伝言がある!」

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回は今回の続きと聖金字教国軍に対しての動きになります。

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