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8-4 夜襲(1)

ご愛読、ありがとうございます。

今回は敵の野営地に夜襲を掛けるレオン達です。

 バルドゥール王国に攻め込んだオリンポスのポセイドン、数人で襲撃することを選んだレオンは目的を果たすことが出来るのか。


 バルドゥール王国 王都エーレンフリート手前の街道 <レオン>

 帝国の有る西大陸中部は鬱蒼とした常緑広葉樹の森がいたる所にあり、人の侵入を阻んできた。帝国とその周辺国は森を伐採して耕作地に変えて繫栄してきた経緯がある。しかし、人間の入り込んだ地域は乏しくまだまだ森の勢力は大きい。


 その森を縫うように街道が走り、今、諸国連合軍が北上して王都に向かっている。

 それを阻まんとする帝国軍も帝国から東進している。

 このまま行けば、両軍は明日の昼頃に王都の手前で戦端を開くことになるだろう。


 しかしだ、両軍とも王国軍が籠城したことをそろそろ知るだろう。そうなると諸国連合軍は帝国軍が王国軍と合流するのを嫌がるはずだ。戦争期間が大幅に伸びるからだ。

 まあ、帝国軍が諸国連合軍を引き離して籠城できるとは考えにくい。となると帝国軍はここらで足踏みして、諸国連合軍が王都を包囲するのを待って挟み撃ちにするのが最善だが、それを諸国連合軍がさせるとは思えず、さてさて両軍がどのように考えるのか面白い所である。


「レオン様あ、何をブツブツと言ってるんですか?」

 アンナが呆れ気味に聞いてくる。ありゃ、声に出てたんだ。少し恥ずかしい

 ここは両軍の上空二千m、ノルンに乗せて貰ってアンナと共に偵察を行っている。

 上空から見ると将棋の盤面を見ているような気分になってしまって、解説をしていたようだ。


「アーレス達がどこにいるか解るか?」

「騎馬であちらの森を抜けてもうすぐ敵軍に合流します」

 アーレスはいつものメンバーでちょこちょこと帝国軍にちょっかいを掛け、兵数を減らしていたようだ。

 決戦目前で合流してそのまま戦力となるようだ。


「そろそろ野営の設営に掛かる頃だが・・・」

「帝国軍は停止しましたね」

 帝国軍は荷物を降ろしてテントやかまどを組み始めた。


「いつまで偵察を続けるのですか?」

「諸国連合軍が野営の準備が出来るまでかな」

 俺は諸国連合軍の野営の状況を見て、皆が居るいつもの家に戻った。


 敵の野営地から約五km離れた位置に俺達の家がある。もちろん、森の中に外から見えないようにして、窓は全部蓋して灯火が漏れないようにした。

 ここに集まったのは俺、コトネ、アンナ、ジェリル、ノア、ナル、ハビ、ロッケ、ゴロ、ノルンだ。

「今夜、夜襲を掛ける」

 俺は敵の野営の見取り図を描いて、各々の役割を説明する。


「まず、コトネ、ジェリル、ノア、ナル、ハビ、ロッケはビーストグローで変身して貰う」

 コトネ達が頷く。

「ノルンには大フクロウに変身して貰って、全員を乗せ、この大きな天幕の周辺でアンナとゴロを除いて全員降下。アンナはゴロに乗って空中から皆の援護だ。見える敵はすべて撃て」

 大フクロウは飛翔音がしないから夜襲に最適だ。


「大きな天幕の中には俺とコトネが入る。中にいる者は全て斬る。ジェリル達は外で集まってくる敵兵を倒して欲しい。レベル6のアーレスも来ると思う」

「分かった」

 ジェリルが了承する。


「俺が合図をしたらノルンはここからこうドラゴンブレスを発射。ここに降りて全員を乗せたら一時撤退だ。明るくなったら敵は逃げ出すと思うが逃げなかったら再襲撃もある」

 俺は作戦を皆に説明した。


 俺達は食事をして敵が寝静まる時間を待った。


 ******


 オリンポスの野営地 <レオン>

 ノルンの大フクロウはゆっくり敵の野営地中央にある大きな天幕に向かった。

 ゴロ、アンナが一番前、次が俺、後は獣変化(ビーストグロー)をしたコトネ、ジェリル、神狼族の四人の順番でノルンの背中に居る。

「レオン様!おかしい!!天幕の中にアーレス達がいる!多分起きてる!」

 アンナが叫ぶ。バレたのか?敵が待ち伏せをしている?


「アンナ!!ポセイドンは何処に居るか判るか?!」

「判りにくいけど多分一緒に居ると思う」

 ポセイドンを逃がすと作戦は失敗だ。指揮系統は生き残る。

 天幕が近付くと殺気を感じる。間違いない。奴らは俺達を待ってる。


「天幕の周りにも千人くらいの兵隊がいるわ」

 そうか!奴らは地上から来ると思ってるから兵を周りに配置してるのだ。俺達の来た方向にアーレス達を送るつもりなのだろう。まさか音を立てずに空から来るとは思っても居まい。


「作戦変更だ。全員で天幕に降りる。俺が三式戦飛燕で天井に穴を空けるからそこから飛び込め!」


「戦闘用意は出来たか?!後ろから二人づつ順に飛べ!ノルン速度を落として天幕の上を飛べ!」

 俺は無手、コトネは脇差、ジェリルが大剣、神狼族の四人は刃渡り七十cmの双剣だ。


 ノルンが天幕に近付いた時、俺は飛燕を放つ。天幕の屋根が裂けて明かりが漏れる。ハビとロッケが飛び降り、開いた穴に吸い込まれていく。


 ノルンはすぐに旋回する。また飛燕を放つとノアとナルが飛び込む。


 旋回すると今度はコトネとジェリルが飛び込む。


 北、東、南、最後は西に俺が行く。

「アンナ、お前はゴロに乗って空中から近付く敵をやっつけろ!」

 ノルンの背中を走って飛燕であけた穴に突っ込む。


 天幕は直径二十五m位、中には机やベッドが置いてあるので結構狭い。特に大剣を使うアーレスやジェリルは大変だ。


 神狼族の四人は北側でアーレスの部下レベル4の女三人と初めて見る女二人と戦っている。九人共スキンアーマーなので見ごたえがある。


 ジェリルは東側でフォボスとダイモスのレベル5二人と戦っている。


 コトネは南側でアーレスと戦ってる。


 俺は西側の椅子に座る黄金の鎧を着た金髪壮年の男、将軍然とした顔つきからこいつがポセイドンだろう。そいつの前には黒髪の若者がこれも黄金の鎧と三叉戟(トライデント)で武装する。


「お前が首狩りの三男坊か?来るとは思っていたが、空からとはな」

「俺がレオンハルト=イエーガーだ。襲撃を予測されるとは思っていなかったよ」

「今までのお前の戦い方を見ればわかるさ。しかし張っていた罠も役に立たなくなったし、ここからは肉弾戦だな」


「ポセイドンの猶子トリトン、参る!」

 三叉戟が鋭く突き出される。


 ◇ アンナとゴロ

 ぬえ形態で大きくなったゴロに跨るアンナ、天幕の上空に待機する。

「最初に出て来た四人以外出て来ないし、誰も来ないね」

「そうだな、なんでここでこんなに騒いでるのに誰も来ないんだ?」

「もしかしたら諸国連合軍とオリンポスって、仲が悪いのかも知れないね」

 天幕の周り少し離れた所には兵隊が隠れてるけど、ここには誰もいないのでのんびりと会話する二人。


「天幕の中へ応援しに行った方が良いんじゃないか?」

 ゴロが心配そうに言う。

「大丈夫よ。私達のご主人様は負けないわ」

「そうかあ?結構ギリギリな感じじゃないかなあ」

「フフフ」

 アンナは結構余裕がありそうだ


 ◇神狼族四人 対 女兵士五人

 ビーストグローで強化をしてるので神狼族の四人が圧倒的であるが、スキンアーマーを抜けないでいた。

「ノア、駄目だ!ダメージが通らない」

「弱音を吐かないで!向こうの攻撃も通らないわ」


 彼女たちはアーレスの残した強化付与付きの鎧を斬る訓練をしてきたので、斬撃には自信をもって挑んだのだが、刃は当たるのだが敵を傷つけることも出来ないでいた。


「とにかく、他に回られないようにしなさい」

 敵が他の戦いに関与しないようにするのに精いっぱいだった。


 ◇ジェリル 対 フォボス・ダイモス

 バキンッ!!音と共に鎧はひしゃげ、フォボスの肋骨は砕けた。

「グウォーッ!!」

 フォボスは吹っ飛んだ。もう立ち上がれない。

 ダイモスもすでにベコベコになった鎧を着たままうつぶせに倒れていた。


「フウ!随分硬い鎧だったが、剣はもっと訓練した方が良いぞ。ってもう聞えないか」


 ジェリルは二人の呼吸を確認すると神狼族の四人の方に向かった。


「お前ら!!剣は一本にして当たる瞬間に霊力を込めろ!」

 四人は双剣の一本を後に放ると一本の剣を両手で握った。


 ◇神狼族四人 対 女兵士五人

 ノアはアーレスの部下のエリスと対峙していた。

 エリスの打ち込みを跳ね上げたノアは剣に両手で霊力を込めて袈裟切りにした。

 手ごたえがあった。エリスは肩から胸を斬られて血が吹き出る。


 ナルはエニュオを斬り下げた。


 ハビはハルモニアを突いた。


 ロッケはポセイドンの部下のロデーを倒した。


 ベンデシキュメは逃げ出そうとしたところをジェリルに真っ二つにされた。


 ◇コトネ 対 アーレス

 アーレスはコトネ相手に苦戦をしていた。

「お前、神獣人とか言う奴か!」

「違います。これは獣人専用の強化魔法です」

 コトネは丁寧に訂正してやる。


「くっそー、お前らと会ってから俺は弱くなる一方だ!どうしてくれんだよ」

「そんなの知りません」

 コトネが呆れ気味に返答する。


 アーレスは大剣を振り回すとコトネは避ける。攻撃が止まると懐に入って一撃を浴びせる。

 さっきからこの繰り返しである。

 吹き飛ばされ、追撃を喰らわないようにすぐに立ち上がり、構える。


「なぜだ、ヘパイストスに作って貰った鎧に、ポセイドンの加護をつけても完全には止められない」

 アーレスは呟く。もう、あばらのニ三本は折れてるだろうし、兜の中は血まみれだ。

 アーレスの攻撃は一つも当たっていない。


「あなたはレオン様を傷つけました。許せません」

 コトネは剣を上げ構える。突きの構えだ。


「そうか、あの時のガキか。あれから半年で、なぜそんなに強くなる?俺が弱くなった訳じゃないよな?」

「そうですね。弱くなった訳ではありませんが、強くなってもいません」

 コトネは放って置けば良い物をきちんと返答をする。


「チクショー!!」

 煽られたアーレスは残った力を振り絞って大剣を振り上げた。


 コトネの姿が滲む。アーレスにはコトネが消えたように見えた。


「えっ!!?」

 アーレスの胸にコトネの剣が突き立っている。鎧を貫通したのだ。


「そんな・・・・」

 コトネが剣を引き抜くとアーレスの残っていた力が抜けて行く。


 アーレスは走馬灯と言う奴を見ている。

 孤児だったアーレスは聖金字軍の兵卒として雇われた。レベルが5と分かると特別な訓練を受けた。

 アルテミスって奴が魔法を掛けるとレベルが6になった。そしてアーレスと言う名前を貰って幹部にして貰った。

 平兵士から幹部になったのはアーレスとヘスティアだけだった。

 教皇に命じられて何人の人を殺したのかも覚えていない。

 そんな時にミソッカスの三男坊と言われた男の腕試しを命じられた。

 それが悪運の始まりだった。・・・


 アーレスの意識は無くなった。自分がどんな格好で床に寝っ転がっているのかも分からなかっただろう。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回は戦いを終えて帰ります。

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