8-3 レオン出撃
ご愛読、ありがとうございます。
今回はレオンが出撃するまでの会話を中心に書いてます。
ハーヴェル諸国連合がバルドゥール王国に攻め込んだことで帝国は大混乱、軍備縮小が仇となりバルドゥール王国に援軍を送れない事態に。そこでレオンに白羽の矢が立った。
帝城 謁見室 <レオン>
謁見室は俺が帝国の持っていない情報を話したことで大混乱となった。
「それは何処で手に入れた情報なのだ!!」
文官の老人が俺を指差して追及する。
「私は帝国に所属している訳ではありません。情報のソースを明かす訳無いじゃないですか」
俺は澄まして言ってやった。
「グヌヌ、お前は嘘を言って、帝国を混乱させる気だな」
「ではどうするのですか?私は準備をしないと大変なことになりますよって、言ってるだけじゃないですか」
俺の言葉に激高する老人。立場が下と思っていた人間にやり込められると怒り出すって、器が小さすぎるよ。
「ちょっと待ってくれ。先ずはハーヴェル諸国連合のことを話そう。レオンハルトよ、手伝ってくれるのか」
流石、皇帝。話を戻しましたね。
「ここでは言えません」
「どういうことだ」
皇帝は首を捻った。
「私はこのような大人数の場所で、大事な話をするほど迂闊ではありません」
言ってやった。またあの老人が茹蛸みたいになってるよ。
「アハハハハ」
フェリ様がいきなり笑い出した。
「陛下の負けよ。執務室に場所を変えましょ」
「そうね。その方が良さそうよ。陛下」
フェリ様に続いて帝妃様も言った。
「やれやれ、慣れんことはやらん方が良いな。皆の者、聖金字教国の事は誰にもしゃべるな」
皇帝の言葉にまあ、どこかから漏れるだろうな。本当に平和ボケしてるよと思ったが、口に出すことはしなかった。
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帝城 皇帝執務室 <レオン>
場所を皇帝の執務室に移して、再度話し合われることになった。
出席者は俺、皇帝、フェリ様、ジーク様、後知らない人が四人、いや一人は知ってる・・・か。
「さあ、場所を移したぞ。こやつらなら秘密が漏れる心配は無い。話してくれ」
皇帝は本当に平和ボケしている。
「私はヴァイヤール王国イエーガー伯爵の三男、レオンハルト=イエーガーと申します」
俺は自己紹介から始めた。
「それはここに居るもの全員が知っているぞ」
皇帝は気短に俺に言う。
「陛下、レオンはここにいる者の紹介をして欲しいのだと思います」
俺の隣に座るフェリ様がフォローした。せめて名前と役職ぐらいは教えてくれよと言う話だ。
まず右側に座る老人が咳ばらいをした。
「わしは丞相を務めるヴォルガンフじゃ。よろしくな」
その横に座る三十代後半ぐらいの男が続く。
「私はヴォルガンフ様の筆頭秘書ルードヴィッヒと申します」
次は左側に座る初老の男だ。
「俺はマキシミリアン=オステンドルフ、一応元帥だ」
この人が干されてる元帥さんか。なんか普通だな。丞相さんの方が怖そうだ。
「久しぶりだな、元帥の秘書官を務めるロンメル少佐だ」
俺をヴァイヤール王国まで誘いに来てくれた人だ。元帥の秘書官と言うことは閑職なんだろうな。
「ありがとうございます。では私が調べた情報を話します」
俺がどこまで知っているのかを推し量れずに困った表情をしているな。帝国は外部の情報に疎すぎるからな。
「まず今回の事件は聖金字教国の仕業です。教国の目的としては西大陸の力を結集して、大災厄に備えると言っています」
「バルドゥール王国に攻め込んでいるのは諸国連合軍だ。教国は関係ない」
文句を言ったのは丞相だ。
「諸国連合軍を指揮しているのは教国の裏組織オリンポスのポセイドン将軍です。そして彼の下にはフェリシダス様を襲ったアーレスが居ます」
「そんな馬鹿な」
「いえ、今日の朝入った報告では敵の将軍の名はポセイドンと言うそうです」
丞相の言葉に筆頭書記が答える。
「そのオリンポスという組織について丞相たちにも簡単に説明してくれ」
皇帝にはオリンポスの事を説明してあったのだが、共有はしなかったみたいだ。信用してなかったか。
「私がオリンポスを知ったのはまだヴァイヤール王国に居る時です。詳細は言えませんが身近で起きた事件にオリンポスという組織が王国を狙っていることを知ったのです。オリンポスは貴族派を使ってクーデターを計画しましたが失敗して狙いを帝国に変えたようです」
「なぜ、ヴァイヤール王国を諦めて我が国に?」
「はい、ヴァイヤール王国がイエーガー伯爵家を使って軍備増強を行ったからです。一方帝国は言い方悪いのですが、平和ボケして軍備削減、狙い易かったようです」
「平和ボケとはなんじゃ!」
丞相が怒鳴って来た。本当の事だから怒らないでね。
「では言いますが、今年、連続して起きた獣人の村への海賊襲撃事件、帝国は何か手当をしましたか?してないですよね。あれもオリンポスの仕業です」
「何い、わが軍を試したと言うのか?」
元帥が立ち上がる。
「はい、資金の調達と軍の観察を兼ねたようですね」
「すると敵の目的は、わが軍の脆弱さを属国に示して離反を招くと言う事か?」
おお、流石、元帥、分かってらっしゃる。
「その後、旧属国と帝国に攻め込んで来るでしょう。用意をしなければ帝国は終わりです」
帝都に入った時に思った有事に備えていない町並み、これも平和ボケの一つだった。
「しかし、軍備を整えるにしても予算が無い」
「では私も戦いません。フェリシダス様達を逃がす用意でもしますか」
俺は丞相の言葉に呆れた。これほど煽ってやっても腰を上げないのか。
「ちょっと待て、君はこれほど危機を煽って何もしないのか。千人くらいの軍事力を持っているのに」
皇帝が俺に言うが俺はびくともしない。
「それは私に言う言葉ではないと思います。戦う気のない者に味方する気はありません。今回の戦争も帝国軍が恥をかかない程度にはする自信はありますが、無駄なことはやりたくないのです」
「帝国の為に戦うことが無駄だと言うのか。この非国民が!!」
筆頭秘書が俺を罵るので、言ってやる。
「私はヴァイヤール王国民ですから非国民には当たりませんね。それと国軍の援軍の準備はされているのですか?四分の一以下になった国境守備隊じゃあどうしようも無いですよね」
「わ、私は文官だ。軍のことなど知らん」
また自己都合で言って来るな。
「ではなぜ、軍の予算を文官が使っているのですか?あなた達に責任は無いのですか?」
「やめんか、そんなことを言った所で事態は改善せん。君はどうすれば戦ってくれるのかな」
丞相も俺を戦わせたいみたいだ。そりゃこの戦争に負ければ、帝国は一気にただの大きな国になってしまうな。でも上から発言は気に入らない。
そこでフェリ様が吠える
「陛下、もっと危機感を持ってください!!あなた方の言ってることはレオンに戦争の責任を押し付けてるだけじゃありませんか」
ジーク様も応援する。
「僕は、帝国がこんな国とは思ってなかった。他所の国の学生に戦わせるだけでも恥ずかしいのに。なんでそんなに偉そうに言えるんだ!!」
良いぞ、もっと言ってやれ。
「すまん」
いきなり元帥閣下がいきなり土下座した。
「言うても詮無い立場だが、何とか手伝って貰えないか。兵達には何の落ち度もないのだ」
可哀そうに祭り上げられただけの元帥だ。予算の銅貨一枚も動かせない立場なんだよな。
「分かった!もう朕も我慢できぬ。丞相よ!、本年度の予算を組みなおせ。軍に往年の予算、いや往年の倍の予算を振分けよ!元帥よ。何とか聖金字教国の野望を阻止できる軍隊を作り上げよ。レオンハルトよ、時を作ってくれ。戦える軍隊を作るための時を!!」
皇帝は立ち上がり、丞相と元帥に命令した。
「仕方ありませんな、ルードヴィッヒ!!予算会議を開く、直ちに関係部署を招集せよ!」
「はい」
「ロンメル!至急、国軍最低五千をバルドゥール王国に派遣、一週間以内に兵站を繋ぐ。解ったか!!」
「解りました。請求書は財務局に叩きこんで置きますね」
四人は急いで執務室を出て行った。
流石は皇帝だ。鶴の一声で全部決まってしまった。しかし、これはもしかして利用された?
皇帝は満足そうにうん、うん、と頷いている。
「それで君はどうしてくれるのかな」
「その気にさせた責任は取るつもりです。先発した国境守備隊とバルドゥール王国の様子を教えてください」
「王国軍と国境守備隊は二日後王都エーレンフリートの手前で合流して敵軍と戦う予定だ」
「自分は学業があるので週末には敵軍を襲撃します。まあ弱体化を目的に戦いますのでご安心ください」
「味方と合流しないのか?」
「はい、私を使える将軍は存在しないかと思います」
皇帝は呆れたように俺を見ていた。
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アキラの店 食堂 <レオン>
「バルドゥール王国は王都エーレンフリートでの籠城を選んだようだ」
ヤヌウニさんが報告してくれた。
「では帝国軍はどうなるのですか?」
合流して敵と戦う段取りだったはずだ。
「二日後には会敵するはず、一蹴されるだろうのう。帝国軍の数が少ないので、野戦を回避したのだろう」
本来の帝国軍なら一万を超える兵を送っているはずが四千だからな。王国も信頼できないのだろう。
「王国軍はどれ程居ますか?」
「まあ、千五百と言った所だろう。各地から兵を集めておるようだが間に合わんだろう」
籠城するにも少ない。王城ぐらいしか守れないだろう。
これも軍事を帝国が肩代わりする契約なのだから仕方ないか。
「では四千で勝てるくらいまで、敵を弱体化させる必要があるのですね」
「それがだ、敵軍が少数精鋭でゲリラ戦を仕掛けておってな。すでに数百人を失っておる」
ああ、ここまで帝国軍は弱いのか。これでは二日後に辿り着くのは何人になるのか。
「レオン様、このままでは敵軍の半数以下の帝国軍で、勝てるようにしなければなりません。出来ますか?」
コトネが心配そうに俺に聞く。
「もともと俺は敵軍とまともに戦うつもりはないよ。いくらコトネやジェリルだって、一人で千人とは戦えないだろう」
「それではどうするのですか?」
「敵の指揮系統をズタズタに切裂いてやる」
俺は簡単に作戦を説明した。
「奴らに獣人はいない。君達の長所を生かすんだ。そうだ、ジェリル達は神狼族として戦って貰う」
「神狼族の手柄にしていいのか?」
ジェリルがちょっと複雑な顔をする。
「ああ、神狼族を上げて、俺達を手助けしていることにしている。俺は獣人の株を上げたいのだ」
「ビーストグローでの初陣ですね。燃えます」
ノアが言うと他の三人が頷く。
神狼族は戦闘民族だ。戦争と聞いて怖気づくことはない。
次の日、昼食を食べた俺達はノルンに乗って出撃した。
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この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。
次回はいよいよ敵と戦います。




