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8-2 混乱する帝国

ご愛読、ありがとうございます。

今回は属国に攻め入ったオリンポスによる帝国の混乱です。


 大災厄に向け準備をするレオン達、一方オリンポスは周辺国家への侵攻を開始した。


 ハイデルブルグ学園 教室 <レオン>

 朝の授業の始まる前の教室は騒がしい。

 軍の強化を皇帝にお願いしているフェリ達であるが皇帝はまだ動いていないようであった。

「どうでしたか?」

「まだじゃ。軍が平和ボケしておると言うことが、信じられんらしい」


 ここ数十年、三十年前の災厄以外、属国にも侵攻されたことのない帝国軍は、明らかに緩んでいる。

 軍事費は削られ、満足な訓練も行えないらしい。それでも上層部は帝国軍の精強を信じているらしい。

 元帥に再び軍の権限を与えることは、膨大な予算を軍に取られることになり、日々予算の奪い合いをしている文官たちには、許せないことなのだそうだ。

 これって俺がいくら頑張っても無意味じゃないのか?。


「もう、フェリ様達を馬車に詰め込んで、逃げることを考えた方が良さそうですね」

「ちょっと待て、帝国を見捨てるつもりか?」

「戦うつもりのない国と心中するつもりはありません」

 フェリ様は頬を膨らませるが、俺にだって守らないといけない人たちがいる。危機感も持たずに戦争に飛び込むやつとは付き合えない。


「なに、なに、武闘会の話?」

 後ろの女生徒が何を聞き間違えたのか、武闘会の話と思ったらしい。俺達は声を潜めていたので聞き間違えたのだろう。

「そうだね。今週末から武闘会が始まるからね」

 適当に話を合わせて置く。大災厄の話はまだ公には出来ない。


 武闘会は三年生七人、二年生七人、一年生は二人の十六人のトーナメントで行われる。今月は一回戦八試合が行われる。

 俺もこの週末に試合が組まれている。


「レオン君は誰と戦うの?」

「確か、二年のマルガリーテさんとか聞いたけど」

「女性が参加って珍しいね」

 女性の場合、スキンアーマーを含む魔法が禁止なので、身体強化だけでは筋肉量で不利になるので、まず出場しないんだ。


 適当に話を合わせていたら先生が来たので、話は途切れた。



 リヒトガルド帝国 帝城 フェリの居室 <フェリ>

 帰ったら再度軍への支援をお願いするつもりだったが、陛下(ちちうえ)は緊急の会議で帰ってこない。

「何が起きたんだ?」

 ジークも不安そうだ。

「分からん、もう二時間ぐらい会議してるのじゃ」


 ドアが叩かれ、隅っこに立っていたメイドが誰何する。陛下のメイドだった。

 許可を出すと部屋に入った。

「陛下が執務室でお呼びです。ジーク様と一緒に執務室までお願いします」


 執務室に入ると陛下が頭を抱えていた。横に我関せずな顔をした第一皇子(フランツ)が居た。

 私達に気付いて顔を上げた。

「揃ったようだな。お前達に隠しても仕方が無い。単刀直入に言おう。バルドゥール王国にハーヴェル諸国連合が攻め込んだ。我が国は援助を求められている」


「敵の規模は?どういう状態ですか?」

 バルドゥール王国は倍の規模を持つ王国だが、我が国に防衛を任せているので軍備は大きくない。


「敵の規模は七千、すでに国境の町は幾つか落とされている。もちろん、我が国も四千の兵を送る準備をしている」

「四千ですか?第六~第九までの国境守備隊を合わせたら二万は出せるはずですよね」

 過去、帝国は敵の侵攻に対して圧倒的な軍勢で蹴散らせてきた。それを相手より少ない軍勢でどうするのか?


 陛下は言いにくそうにしていたが口を開いた。

「相次ぐ軍事費削減で国境守備隊の規模は四分の一になっておる。兵站もそれぐらいでないと続かないのだ」

「それは属国からの軍資を他に流用していたと言うことですか?なぜそんなことを、我が国の根底に関わることではないですか?」


 帝国は属国に軍事力を提供する代わりに金や特産品などを徴収している。まともな軍事力を提供できないと判れば属国が離れて行くのも当然なのだ。

「呆れて物が言えません。この戦で負ければ帝国は終わりですよ」


「フェ、フェリシダス!何を言ってるのだ!!帝国が終わりなどと!この大バカ者が!!」

 フランツが立ち上がって私を罵る。

「兄上、我が国は海賊退治も出来ず、国民に不安を与え、つい、この間は私の警護もまともに出来ませんでした。そのうえ属国に見放されれば、どこに私達の立つ瀬がありましょう」

 フランツはこの国が軍事で成り立っていることを知らないのか。さらに何かに怯えているようだが・・。


「へ、陛下の威光を示せば賊もひれ伏すであろう」

「では第一皇子の威光で賊軍をやっつけてください」

 ヒッとフランツは縮こまる。臆病者が偉そうにするでない。


「フェリ、兄妹喧嘩をしている暇はない。朕が言いたいのは帝国の未曽有の危機にお前達の意見を聞きたいのだ。フランツどうだ?」

 陛下はまず兄に意見を聞いた。

「やはり、北部国軍を動員するべきかと思います」


「もちろん国軍も出すが、輜重を用意したりしていると一か月は掛かってしまうのだ」

「それではどうしようも無いですか」

 フランツにも属国からの徴収が無くなれば帝国が傾くことは解るらしい。


「フェリはどうか?」

 陛下が言おうとしていることは解っている。陛下は私の客分であるレオンを動かしたいのだ。彼と彼の眷属なら千人以上の働きが出来るだろう。しかも移動も大鷲ですぐ出来そうだ。

 しかし、彼は異国の人間だ。帝国の属国の為に戦わせるのは筋が通らない。


「国軍はすぐに出発させてください。輜重は整えながら追わせればよろしいかと。輜重の集配は帝国の要の金を使った文官どもにやらせればよろしいかと思います」

「う、しかし慣れぬことをやらせるのは効率が悪かろう」

「未曽有の危機ではなかったのですか?輜重を集めて馬車に乗せることぐらいはできますよね」

 どうだ言い返せまい。


「ジーク、お前はどう思う」

 あ、誤魔化した。


「私は姉上の意見に賛成ですが、念のためレオンハルト殿に・・」

 あ、馬鹿!

「ジーク!馬鹿どもの尻拭いにレオンを使うな!コトネが死んでもいいのか?!」

「あ、駄目です。今の無しで・・」


「うむ、レオンハルト殿なら戦闘に加わらなくても眷属を使って空から偵察も出来るな。良し、お願いしてみよう。明日使いを出すことにしよう」

 くそー、無理やりだな。


「ご苦労だった。会議を再開するか」

 陛下は私達からレオンの参加の打診があったことにしたかったに違いない。おのれえ!!


 陛下はいそいそと部屋から出て行った。

「姉上え、申し訳ない。つい・・・」

「馬鹿め、コトネに恨まれるぞ」

「ええ、そんなあ」

 ジークは半泣きで後悔するのだった。


 ******


 ハイデルブルグ学園 学生寮 レオンの部屋 <レオン>

『・・・と言う事で、明日皇帝から登城要請が来るだろう』

「条件とか分かりますか?」

『いや、まだ話し合われていない。レオンの要望を聞くつもりではないか』

 ヤヌウニさんから帝城で行われた会議の内容が明かされた。


「では引き続き、バルドゥール王国、ハーヴェル諸国連合、エドゥアルト王国、聖金字教国について調べて貰えますか」


 ヤヌウニさんは要所にゴロや新たにブラウニー達を潜入させ、情報集めをしていた。

 始めはヴァイヤール王国に潜入させたブラウニーからエドゥアルト王国が侵略されたことを察知し、そこから探索の手を広げて行ったのだ。


 既にオリンポスの首領が聖金字教の教皇であることも知れた。

 後はこの戦争に参加するかどうかだ。


「アキラさんはこの戦争はどう思ってますか?」

 ヤヌウニさんを通してアキラさんの意見を求めてみる。

 ・・・・

『アキラは今なら諸国連合軍なので強くない。参加した方が良い。ただ一月もすると聖金字教国軍が現れるかも知れんからそれとは戦うな。戦うなら週末のみの参加を勧める。間違っても帝国軍の傘下には入るなと言っておるな』

「ありがとうございます」


「レオン様、戦争に行くのですか?」

 コトネが心配そうに聞いてくる。

「うん、そうだな。この戦争に帝国が負けると属国からの突き上げが始まって混乱してしまう。俺達がいる間ぐらいは落ち着いていて欲しい」


「だから戦うと言うのですか?」

「そろそろ俺も立たないと埋もれてしまうからな」

「いよいよ、世に出るのですね」

「まあな。少し早い気もするが、帝国が混乱するとまずいからな」

「私も頑張る!」

 コトネとアンナが張り切り始めた。


「一度、アキラさんのお店に行って皆に話しをしないとな」

「ジェリルさん達も誘うのですか?」

「そうだな、ゴロやノルンもだ」


 ジェリルはまだアキラの店に居たので、神狼族の少女達と参戦してくれるように頼んでおいた。

 詳しくは明日夜に話し合うつもりだ。

 取敢えず今日は明日の皇帝との話し合いの大筋を相談した。


 ******


 帝城 謁見室 <フェリ>

 やられた、まさか朝からレオンを呼び出すなんて、前もって話しておくことが出来なかった。

 幾らレオンでもこの国の上層部が勢ぞろいしてプレッシャーを掛けてくるのだ。唯々諾々と受けざるをえまい。


 私とジークは皇帝の椅子の横に並ばされている。すでに帝国議会の面々約五十名が右側に軍部の幹部約五十名も左側並んでいる。

 レオンが入って来た。うん、まるで動じてないではないか?何も聞いておらぬはずだし、準備も出来ていないはずなのに・・。


「皇帝陛下並びに帝妃陛下のおなありぃー」

 侍従が皇帝の・・なに、母上まで呼んだのか。普通は政治向きの事で帝妃を呼ぶことはない。何処までレオンにプレッシャーを掛けるつもりなのだ。


 皇帝と帝妃が着席した。レオンは正面で跪いている。


「レオンハルト=イエーガーよ、面を上げい」

「はい」

 レオンは顔を上げた。なに皇帝の目を見ている?普通は胸の辺りを見るようにするものだ。


 侍従が何か言おうとしたが帝妃が制した。

「レオンハルトよ。なぜここに呼ばれたのか分かるまい」

「いいえ、見当は付いております」

「何!?」

 そんな!分かるはずがない。上層部しか知らないはずなのだ。何か、勘違いをしている?


「では、言って見よ」

 皇帝は意地悪そうに言った。レオンを追いつめるつもりだ。

「はい、ハーヴェル諸国連合軍がバルドゥール王国に攻め込みました。さらにはエドゥアルト王国が聖金字教国に滅ぼされました。陛下に置かれましては私にバルドゥール王国の手当てをさせようとされているものと推測いたします」

 文武の幹部が騒ぎ始める。エドゥアルト王国のことなど私も聞いていない。

 皇帝も焦っておられるようだ。今回の事を言い当てた事で情報の真実味が増している。


「エドゥアルト王国の事は朕も聞いておらぬ。何時の事だ」

「ハーヴェル諸国連合が攻め込む二日前の事です」

「この二つのことに繋がりがあるのか?」

「はい、聖金字教国が企てたことに御座います」

 謁見室は騒然となり、皆がレオンに注目し始めた。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回からはいよいよレオンが世に出るために奮闘努力を開始します。

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