7-7 少女たちの訓練風景
ご愛読、ありがとうございます。
今回は新しい少女たちを含めた訓練風景です。ちょっと悪ふざけもしていますが。
夏休みもあと一週間で終わる。レオン達の訓練も仕上げにかかっていた。
帝都近くのいつもの草原 <レオン>
少し高くなった地面に六人の獣人少女が並んでいる。
中央に立っている猫耳少女が両手を前に突き出して叫ぶ。
「ビーストグロー!!」
六人の少女の前にそれぞれ魔法陣が現れる。
魔法陣に魔力が注がれる。自分で注いでるのはコトネだけだ。後の五人は俺が注いでいる。
魔法陣の直径が大きくなりながら少女達に向かっていく。
「「「「「「変身!!」」」」」」
各々が腕を回したり複雑な動きをしながら叫んだ。
魔法陣が少女たちを包み込む。
少女達の体が毛に包まれると着ていたガウンのような服が消え、幅の狭いブラとショートパンツ姿になる。
ブラとショートパンツにはコトネが赤、ジェリルが黒、その他青、黄、緑、ピンクの色がついている。
服は俺が収納庫に入れた。
少女たちが左右対称になるポーズをする。その途端背後で爆発が起こり、彼女たちの衣服と同じ色の煙が立ち上る。爆発はアンナが起こしている。
俺の横で泣いている男が居た。身長は俺より低い、眼鏡をかけたうだつの上がらない顔をしている。
「これで良かったですか」
俺は男に聞いた。
「まさか異世界に来て、「神獣レンジャー」の変身シーンが生で見られるなんて感動です!」
この男の名はマサユキ=ヨシムラニ十八歳。名前で分かる通りアキラさんと同じ転移した日本人だ。
本人の紹介によると三代続いたチューナー(魔導車のような物を早く走れるように改造する仕事)で重度の特撮オタク(等身大のヒーロー物限定?)らしい。言っていることが良く解らない。
彼はこの世界に来て、神狼族の村に辿り着いた。そこで奴隷のような仕事をして飢えを凌いでいたがジェリルがノルンで村に帰って来たことで道が開ける。
ジェリルが言った”アキラの店”この言葉に食いついた。
アキラは日本人に違いないと思い、ジェリルに頼み込んで付いて来た。
店に来てからはコニンさんと意気投合して鍛冶屋をやっているようだ。ただアキラさんとは転移した時代が、四十年も違っているので話が合わないらしい。
今回の事はコトネ達の変身の話を聞き、是非と土下座でお願いされた。
アキラさんもなぜかやってやってくれとお願いされたのでやったのだが、色違いの服や色違いの爆発に
苦労した。
まあ、服はカリシュさんとレーニャに作って貰ったから俺は金を出しただけだが、煙の色付けは苦労した。最終的には着色したチョークの粉を爆発でまき散らすようにした。
始めはいろいろな色の煙を探したが見つからなかった。黒か灰色か白しかなかった。
誰かが爆発に色を付けると言う発想をしてくれたので、じゃあ、埃をまき散らすように色粉をまき散らせばいいじゃんということで、チョークにする粉に絵の具で色付けするとうまく色が着いた。後は見栄えする量だ。何回か実験してようやく納得できるものが出来た。
マサユキさんが泣いて喜んでくれたので良しとしよう。
しかし、日本と言う国は子供向けの演劇でこんなことをやるらしい。俺には想像もできないすごい世界だ。
「レオンよー!もういいか」
ジェリルが焦れて来たので訓練の許可を出した。
今は新たに仲間になった神狼族の少女達がビーストグローに習熟して来たところなので、気功の修行を始めた。
ビーストグローの状態で気功の修行をすると習得が早いようだ。
神狼族の五人はもう内気功を覚えている、コトネは三式を覚えた。
ジェリル以外の四人はレベル3か4で変身後はジェリルと同じで白銀の体毛で体が覆われる。もう三週間訓練しているのでビーストグローの力はほぼ発揮できる。
アンナだがビーストグローにはあまり興味がないようだ。どうしてか聞くと接近戦はどうやってもお姉ちゃんに勝てないからと言っていた。自身は精霊魔法を伸ばすつもりらしい。これで魔法に覚醒したら恐ろしいことになりそうだ。
神狼族の四人はレオンの夏休みが終わったら店の店員をやる予定である。
四人は十三~十四歳で体形もジェリルのようなムキムキではないので威圧感なく店員が出来そうだ。
夜にはアキラやシャラから接客や商品について学んでいる。
ジェリルの選定基準だが、神狼族の女は十五歳で成人するとすぐに結婚を決める風習があるので、成人前でレベルの高いものを選んだらしい。
よく来てくれたなと聞くと街に憧れているから説得は簡単だったと言った。じゃあ、親はと聞くと月に大銀貨一枚を払うと言ったらすぐに承諾してくれたと言ってた。
田舎の人間は現金に飢えているんだな。
基礎の訓練に変わったようだ。コトネが剣術の型を教えている。
アンナはゴロやノルンと精霊魔法の訓練をしている。
そろそろ昼食の準備を始めるか。木陰にシートを広げる。
今日の礼にとマサユキさんが昼食と用意してくれることになっているので、俺は手伝いに徹する。
「何を作るのですか?」
「冷や汁って言うのを作るんだ。日本に居る時に良く作ったよ」
彼は日本で小さな工場で父親と二人で仕事をしていたが、夏の暑い日にはよくこれを作って食べたそうだ。
彼は魚を焼き始めた。帝都には生魚はまず入ってこない。焼いているのは開いて干した魚、アジって言ってた。
俺は鍋にあらかじめ彼が用意した味噌やゴマなどを混ぜたものを入れ水に溶かしていく。
魚が焼けたのでマサユキさんが身をほぐし始める。そしてほぐした身を味噌を溶かした鍋に投入する。
俺は夏野菜の胡瓜や大葉を切って用意する。
アンナが手伝いに来てくれたので器に店で炊いて来たご飯を盛って貰う。
食べ盛りの少女達なので量が多いので大変だ。
少女たちが集まってくる。
「ごめんなさい。お手伝いもしなくて」
「コトネは先生をしていたから仕方ないよ」
コトネはご飯を盛った器をマサユキさんに渡す。
マサユキさんが鍋の中身をご飯にかける。
神狼族の少女達は箸が使えないのでスプーンだ。
俺が野菜をその上に乗っけてジェリルに渡す。
「ありがとよ」
次が身長が高く痩せているノア、十四歳でレベル4。
「ありがとうございます」
次が少しふくよかなナル、十四歳でレベル3。
「ありがとうございます」
次は中肉中背なハビ、十三歳でレベルが4。
「ありがとうございます」
最後が少し背が低いロッケ、十三歳でレベル3。
「ありがとうございます」
言葉遣いは最初タメ口だったが、店員教育のお陰で丁寧な言葉となった。ジェリルは変わらないが。
皆がシートで車座になって食べ始める。
「おいしい」
「すっごくうまい」
などと声が上がってマサユキさんもご機嫌だ。
「だけど里に帰れなくなっちゃうよ」
「それ、こっちにいると上げ膳据え膳だし、お風呂も毎日入れるし、それでお金がもらえるんだよ、帰れるわけないよ」
「その代わり、命がけで戦う日が来るんだ」
「でも里に居たら生きるのに命がけにならないといけないから」
「アタイが稼いだ金、入れてるからちょっとはマシになっただろ」
「えー、私達まで降りてこないですよ」
「どれくらい入れてたんですか?」
「月に金貨十枚ぐらいかな」
「すごいそんなに入れてたんですか?信じられない」
「私、金貨なんて見た事無いです」
「里に帰ると言えばお前ら気を付けろよ。お前達はここに来た時と比べると素の状態でも倍以上強くなってる。喧嘩なんてするんじゃねえぞ」
「そうなんですか?ジェリルさんやコトネさんを見てると強くなった気がしないんですけど」
「そうだよねえ」
コトネは訓練の先生をしているので年下でもさん付けだ。
彼女たちは内気功を覚えたことで、男のレベル4ぐらいなら変身しなくても勝てるぐらいにはなってる。
イエーガー領を出た時のコトネぐらいにはなってると言うことだ。
ビーストグローの状態で訓練することがいかに効率が良いかということだろう。
昼食後は戦闘訓練に入る。神狼族の少女達は魔力が半分くらいまで減っていたので収納庫から補充して置く。手持ちの魔力も減って来たのでそろそろ補充を考えないとな。
俺はこれまで戦闘経験と訓練で四式まで会得できた。ようやくヨシムネ先生の域まで達したと言う事だろう。
五式については先生も会得出来なかったものなので、慌てずにやりたい。だけど最悪大災厄までには何とかしたいとは思っている。
戦闘訓練はジェリルとコトネの相手を交互にやらされて疲労困憊だ。
ここんとこ、ずっとこの調子で体を休める暇がない。
夕方、幌馬車に乗ってアキラの店に帰る。
帰ったらすぐに風呂に向かう。汗をかいた体は服が張り付き、気持ちが悪い。
俺とマサユキさんとノルンとゴロが男湯に入る。
女の子たちは女湯に行く。
帝都の水は北の山脈から流れ出た水を水道橋で、位置エネルギーを失わないように引き入れられている。
その水を風呂場の上のタンクにいったん溜めて、各所に水を分配している。
風呂には火属性の魔石で湯を沸かす装置が取り付けられており、ブラウニーたちがちょうどよい温度に整えておいてくれる。
俺達はまずシャワーを浴びるがシャワーは水しか出ない。今は夏なので水でも構わないが、冬は湯船から直接湯を貰う。
俺は体を洗った後湯船に浸かり、フーっと大きく息を吐く。体がほぐれて行くのが良く解る
俺の目の前をゴロが犬かきで泳いでいく。
「こら、風呂で泳ぐなよ」
「だって、オイラ足がつかないんだぜ」
「じゃあ、縁に摑まってろよ」
「ホーイ」
ゴロは縁に摑まって浮いていた。
ノルンは端っこで幸せそうな顔で座っている。
こいつは人間の生活を満喫してるんだろうな。その目的で俺の従者になったんだよな。
マサユキさんもリラックスした顔をしてる。
「ああ、毎日風呂に入れるなんて、神狼族の里に居た時は考えられなかったよ」
奴隷同然の生活をしていたらしいから、それは仕方が無い。
風呂から上がると体を拭くタオルと着替えが用意されている。脱いだ服は既に洗濯に回されている。
ブラウニーには感謝することを忘れてはいけない。
不思議なことにゴロとノルンは風呂から上がった瞬間に乾いている。精霊種は自分の外観をある程度変化させられるので、こういう芸当も出来るんだろうなと納得して置く。
女の子達の声が聞こえる。彼女たちも風呂から上がったようだ。
「そんな恰好で出てっちゃダメェェェ!!」
アンナの声がするので女湯の方を見ると新入りの四人がパンツ一丁で出て来た。
大きさも形もいろいろなふくらみが目の前で揺れている。そして着替えは脇に抱えてる。
「あんた達は何回言えば分かるの!ちゃんと着替えてから外に出るの!」
四人の前に出たアンナは急いで服を着たらしく、服装が乱れていた。
「ゴメン」
四人のリーダー格のノアが謝るともう一度女湯に入って行った。
「神狼族の里でもよく見たよ。独身男には目の毒だねえ」
マサユキさんが儲けたみたいな顔をしていた。
俺も久しぶりなので、まあ、儲けと思っておこう。
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この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。
次回は夏休みも終わります。




