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7-5 ジェリルがビーストグロー?

ご愛読、ありがとうございます。

今回はジェリルにビーストグローの魔法を使ったらと言う話です。

 アンナ誘拐事件を起こしたキラと妖精女王がアキラの店にやってきた。

 アキラ達は事件を無視して二人の勧誘を始めるのであった。


 アキラの店 食堂 <コトネ>

「アキラさん、この子をこの店に置くつもりですか?」

 私は日頃お世話になってるブラウニーはともかく、今回のアンナの誘拐事件の首謀者の少年を勧誘するなんて許せないと思った。


「コトネちゃん、今回の事件は確かにこの子と妖精女王が起こしたものだ。しかしこの子を野に放って敵にするより、味方になって貰った方が良いと思わないかい」

「それはそうなんですけど割り切れないと言うか、なぜですか?子供ですよ」

 だってレオン様があんなに心配させたのです。許せない。


「うーん、なぜと言われると説明しにくいけど、この子から感じるんだ職人の魂と言うかな。言葉にはしにくいな」

「流石ね。アキラさん、この子は神童って言ったけど、本当に魔国の首席宮廷魔法師に十二歳で就任した伝説の王子よ。・・・この子は魔国に帰れば犯した罪で死罪よ。出来ればここに置いてあげて欲しい」

 ミラが頭を下げる。


「君はどうしたい?すぐに決めなくてもいいが考えてくれ」

「なぜだ。俺はあんた達の仲間を誘拐したんだぞ」

 アキラの言葉に突っ伏していたキラは顔を上げた。


「俺は自分の為に言っている。もうすぐ大災厄が起きる。その時大切な人たちを失いたくないんだ。そのために今から準備している。手伝って欲しい」

 アキラさんの言葉は私も同じだ。レオン様やアンナ、俺の家族、アキラさん達、そして友人達誰一人失いたくはない。


「考えさせてくれ。俺が役に立つかどうかも含めてな」

 キラはシャラさんが用意した部屋に連れて行かれました。



 アキラの店 食堂 <レオン>

 昼食が終わって、今日はアンナがあれだから訓練はやめておくかなとか考えていると。

「おい」

 ジェリルに声を掛けられた。

「うん、何だ?」

 ジェリルはなんかウキウキしてるような。


「コトネのビーストグローの魔法だけどな。アタイも使えないかな」

 ジェリルの尻尾がビュンビュン言ってる。確かめに行こうと言いそうだ。

「まあ、あれは獣人の獣性を前面に出して、強化する魔法みたいだから狼獣人でも可能なのかな?」

 俺はコトネを呼ぶ。コトネの魔法だからコトネが嫌がればどうしようもない。


「何ですか」

 食器を片付け終わったコトネがそばに来てくれた。

「ジェリルがお前のビーストグローを使ってみたいと言ってるんだが、どうだ?」

 コトネは顎に手を当て、考え始めた。


「基本的には獣人向けの身体強化魔法なのでジェリルさんにも使えると思います。でも今日はアンナのそばに居てあげたいので・・」

 さすがにここで変身させて、暴れさせるのは無理と思ったみたいだ。

「魔法陣を収納庫に入れれば良いんじゃないのか?」

 ジェリルは諦めない。思いついたらやらないと我慢できないみたいだ。


「済みません。レオン様、お願いしてもいいですか」

 コトネが頭を下げるので仕方が無い。その場で魔法陣を描いて貰って収納庫に入れる。

「失敗した時のためにもう一枚描いてくれるか?」

 ジェリルが拝む。

「仕方ないですね。まあ、描くだけなら魔力は要りませんから構いませんが」



 いつもの草原 <レオン>

「よし、ここいらでいいか」

「おう、なんかドキドキするな」

 ジェリルが緊張してるみたいだ。珍しいな。


「行くぞ。魔法陣を出したら。正面に立って魔力を注ぎ込め!」

 収納庫から魔法陣を出す。

獣変化(ビーストグロー)!!」

 ファイティングポーズを取るジェリル。

 魔法陣が大きくなり始める・・が明らかにコトネがやった時より小さい。

 魔法陣は消えてしまった。


「どうした?」

「ま、魔力切れだ」

 ハアハア、言いながら座り込むジェリル。


「お前は魔法は発現しなかったのか?」

「聞くな!」

 ああ、やっぱり駄目だったのか。


 しかしレベル6の魔力量でも変身できないとは、スキンアーマーとは使用する魔力量がダンチみたいだ。

「暫く休め、次は俺が魔力を充填してやろう」

「ホントか?じゃあ、すぐにやろう」

 立てない位のダメージの癖して何と言ってるのやら。


「駄目だ!一時間は休め」

「ええーっ!」

 ジェリルはひっくり返った。


 一時間後。

「おい、起きろ!体調はどうだ?」

 ジェリルは大の字になって寝ていた。まあ、その方が回復が早いだろうと放って置いたんだが・・・。


「うん、もう一時間経ったのか?」

 大きな欠伸をするとノソーッと立った。

「うん、もう大丈夫そうだ」

 手指を組んで前に腕を伸ばすと全身の関節をぐるぐる回して準備運動をした。


「良し、やってくれ」

「魔法陣を出して魔力を注いだら声を掛ける。そしたら魔法陣の正面に入れ」

 俺は魔法陣を出して魔力を注ぐ、フレイムスローの三倍以上の魔力量だ。

「ビーストグロー!!」


「入れ!!」


「おう!」

 ジェリルが俺の前に出ると大きくなった魔法陣がジェリルを包む。俺は後方に離れる。

「変身!!」

 ジェリルの黒い髪の毛が銀色に、そして体中に白銀の体毛が生える。

 魔法陣が消えて変身が終了する。


「これがビーストグローか!!、すごいぞ!!体中に力が溢れてる」

 ダダッと走り出した。速い。ジャンプをする。高い。

 シャドーボクシングの様にパンチを打つ。

 バババババッ、パンチが音速を超える。

 回し蹴りを撃つとこれも音速を超える。


 人間に当たったら瞬時にミンチだ。

 こちらに向かって走って来た。

「レオン!!組手だ!!」

 喜びを満面にして俺に言う。冗談じゃない。


「四式”疾風(はやて)”!!」

 俺は慌てて疾風を身にまとう。こんなの硬気功があってもバラバラにされそうだ。

 疾風は体に圧縮した霊力を纏って、高速で強力な攻撃と高度な防御を併せ持つ技だから大丈夫だと思いたい。


 ジェリルの高速な飛び蹴りが次々と俺を襲う。俺は手の平で払いながら、ジェリルが着地した瞬間に右回し蹴りを放つ。

 ジェリルは両腕で防御するが吹っ飛んでしまう。何回転かした後に立ち木にぶつかる。

 木がバキバキと音を立てて折れてしまった。結構太い木だったのに。


 ちょっとやり過ぎたかと思ったがジェリルには塵ほどもダメージが無いらしい。トンボを切って立ち上がる。

「流石だなレオン、面白いぞ」


 俺は対して面白くない。今までジェリルと戦う時には手加減できたのだが、今は無理だ。

 ジェリルが吠えながら突っ込んで来る。もう堪忍して・・・。



 アキラの店 レオンの部屋 <コトネ>

 アンナはお昼過ぎに起きて軽く食事をした後は普通の生活に戻りました。

 今は夕食、入浴が終わって、レオン様の部屋でベッドに三人が、並んで座って話をしています。


 私はジェリルさんのビーストグローの実験結果を聞きました。

「ビーストグローは、成功したんですね」

「ああ、でもジェリル一人では魔力不足で変身できないんだ」

「そうかあ、じゃあレオン様が近くに居る必要がありますね」

 魔法陣も収納庫から出さないとだから一人じゃ無理だよね。


「まあ、そう言うことだな。ジェリルは変身すると白銀の毛になるんだ」

「白銀の狼って幻獣のフェンリルみたい」

 アンナの言う幻獣はロキさんが居た山に何回か来たことがあったそうです。

 アンナはロキさんの記憶を共有したみたいです。


「しかし、変身したジェリルはレベル7を超えてると思うぞ」

「私はどうですか?私もレベル7位になってますか?」

「そうだな。コトネは最近ジェリルとばかりやってるし、変身した時はジェリルに手加減してただろ。ちょっと分からないな」


「じゃあ、明日相手をして下さい!」

 私はレオン様の腕を取って胸を押しつけて甘えます。

「分かった、分かった」

 レオン様は赤い顔で逃げ腰になっています。


「あの、レオン様、私考えたんだけど。魔法陣コピーしまくって、獣人を集めてビーストグローを掛けたらすごく強い軍団が出来るよね?」

 アンナがとんでも無い事を言い出す。そんなことをしたら人族に恐れられるんじゃないかしら。


「面白そうだな。ジェリルに言って神狼族から何人か出して貰うか」

 ジェリルさんに頼むんですか。

「でも、獣人ばかり強くすると人族に警戒されませんか?」

「まあ、ここに住まわせられるだけの少人数だよ。十人くらいかな」


 なぜか怒りが込み上げてきます。

「私も私の生まれた村に行って集めてきます」

 ジェリルさんばかりに手柄は上げません。あれ、私ヤキモチ妬いてる?

 まずいわ、世の中一夫多妻、ヤキモチな女は嫌われます。


「お前の村は貧しいから幼児ならともかく戦える年齢を出すのは無理だろ」

「そうですね。失言でした」

 貧しい村の場合、十歳にもなれば働き手だから村から出さない。私が出された時はたしか六歳だった。

「でもお金を出して奉公させるって手はあるわよ」

 アンナがまた良い事を言う。この子は私と違って応用力があるのね。


「そうね。女の子なら一年に金貨を一枚渡せば働かせられるわね」

 普通の獣人の村は貧乏で現金収入が無いので、街に住む人族なら金貨三枚が必要ですが、金貨一枚あれば一年雇えます。


「ビーストグローは女の子じゃないと駄目でしょ。鎧は駄目だからスキンアーマーが無いと」

 アンナが言ってるのは鎧はビーストグローで防御力は上がらないがスキンアーマーは上がるから有利と言うことです。

「そうね、でもレベルは3は欲しいね」


「それなら、軍に派遣して貰えばいいよ、フェリ様に相談するとかさ」

「レオン様、話を終わらせちゃ駄目です。折角お姉ちゃんと盛り上がってるのに」

「ごめん」

 レオン様はアンナに窘められて少し落ち込んでいるようです。


 結局、ジェリルさんに頼んで数人集め、データを取ることになりました。

 私の魔法がレオン様の役に立つのであれば誇らしいのですが。



 アキラの店 食堂 <レオン>

 次の日の夕食時、俺はアキラさんに妖精女王とキラの事を聞いた。

「妖精女王はここの工場にゲートを作って妖精国と繋げることになったよ。人員は居るだけ使ってくれということだ。キラ君はここで作りたいものを説明したら乗り気でね。やっぱり彼は技術者で職人なんだよ」


 妖精女王の事は解ったがキラの事はよく理解が出来ない。技術者で職人だとなぜ協力してくれるんだ??

 まあ、いいか。キラに生甲斐と言うとちょっと変だが(死んでるからな)見つかってよかった。


「ところでジェリルさんは何処へ行ったのかね?」

「神狼族の里に行って貰いました。ノルンに乗って行ったので、早ければ明日には帰ってくるんじゃないですか」


 今日の訓練には幌馬車で行って、そこからジェリルは、ノルンの黒鷲に乗って里に向かった。

「もし、使えるようなら神狼族の女性を店員として雇えますか?」

「ああ工場が稼働すれば、ゾフィーさんだけじゃ足りないから、増員は考えていたところだよ。うちの秘密を守る為にも身内の方が都合がいい」


「そこいらも条件に加えておきます」

 ノルンに従者通信で連絡して、ジェリルに話して貰えばいいだろう。

「でも、なぜ神狼族の女性を呼ぶのかな?」


 俺は昨日、アンナが言い出した軍団の事を話した。

「なるほど、獣人の前衛だね。後衛については俺も考えてる。まあ、まだ構想段階で詳しい事は言えないがね」

「なんとか大災厄までに兵力を備えたいですね」

「前の災厄の時なら十分な戦力だよ」


 三十年前に起きた災厄の事は俺は知らない。両親はその時は俺ぐらいの歳で傭兵として戦ったらしい。

 俺ぐらいの父が戦えたのなら、俺でも十分戦えると思いたい。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回はオリンポスが戦争準備をする話が中心です。

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