7-4 キラと妖精女王
ご愛読、ありがとうございます。
今回はアンナが引き連れて来た妖精女王とキラの話です。
アンナの泣き落としでアキラの店に行くことになったキラと妖精女王。どうなることやら。
謎の空間 <アンナ>
「ちょっと待て!なぜワラワが帰らねばならぬのだ」
キラが連れて来たブラウニーがごね始めた。
「あなた、私に助けてって言ってたじゃない。どういうこと?」
なんでこの人助けてあげようとしてるに逆らうの?
「実はこいつ妖精女王で、手伝ってやるって付いて来たんだ」
「妖精の女王なの?なんでそんな人が、あんたの手伝いをしてるのよ?」
「あれ、お前、泣いてねえじゃねえか。どういうことだ?!」
あ、やばい。今から泣き直すわけには行かないわよね。
「まあ、いい、とにかく、その魔法に詳しい人に会いに行くぞ。女王も妖精の国に帰る訳じゃないから付いて来い」
「仕方が無いのう。面白いのだろうな?」
なに、この二人、最初と随分感じが違うんですけど。
キラは両手を着き出し、ゲートを開ける。
アキラの店 レオンの部屋 <コトネ>
ここにはレオン様とノルンさんと私がいる。
「ロキと通信が繋がりました」
いきなりノルンさんが何の抑揚も無く言いました。
「何て言ってるんだ?」
レオン様は昨日から寝ずに心配していたので、慌ててノルンさんに抱き着くようにして聞きました。
「戻るそうです」
「へっ?」
事件を予測していたレオン様は、その答えに素っ頓狂な声を出しました。
『レオン様!ただいま戻りましたあ!!』
従者通信で私にも聞えるようにアンナの声が聞えました。
『アンナ!どこにいるの?ケガはしてない?』
『あ、お姉ちゃん、丸一日、何も食べてないから食堂に行く。すぐ来て』
アンナの声は少し疲れたような感じですが、元気そうです。
「食堂ですって、行きましょう」
レオン様は私が話すよりも早く食堂に向かいました。
レオン様はアンナも愛おしいと思ってくれているらしいです。
アキラの店 食堂 <レオン>
食堂の扉を乱暴に開ける。
アンナが居た!!
「アンナあ!!大丈夫か?!」
食卓に座っていたアンナを抱きかかえる。
「レオン様、私は大丈夫だから。でもお腹が空いてるの、何か無いかな?」
俺はアンナを降ろすと朝シャラが、用意してくれたおにぎりを収納庫から出す。
「これを食べなさい。そうだ、お茶も出そう」
お茶を出してカップに入れてやる。
「こいつが蘇生魔法を知ってる奴か?」
横を見るとアンナの向かいに座って居た遺跡で出会った少年が聞いて来た。
「お前がアンナをさらった奴かあ!!」
俺は拳を握ると少年の顔を目掛けて振りかぶった。
俺の頭は少年の姿を見たとたん沸騰した。
「待って!、レオン様!!」
俺の腕にアンナがぶら下がった。
「なぜ止める。こいつはアンナをさらったんだ」
「レオン様!!落ち着いて下さい!そんな怒りに任せた拳を振るったら、この家が吹っ飛んでしまいます!」
俺に遅れて部屋に入って来たコトネの言葉に、自分の拳を見ると濃縮された霊力の渦を纏っていた。
少年を見ると恐怖に震えていた。そりゃこんなので殴ったら欠片も残らず消し飛んでしまうわ。
俺自身、こんな力を秘めていたのかと思うと怒りも静まってしまった。
まだぶら下がっているアンナを優しく降ろした。
「レオン様・・・」
「もう落ち着いたから大丈夫だ」
俺は拳を見る。恐ろしいくらい荒ぶっていた霊力も大人しくなっていた。俺自身怒りで我を忘れることなどなかったため、注意しないといけないと気を引き締めた。
「な、なんだこの力は、遺跡で見た時はこんなことはなかっただろう」
「レオン様は普段は必要な力しか使わないのです。あなたもレオン様の怒りに触れないようにする事です」
ビビる少年に俺も知らないことをさも当然のように話すコトネ。そういや前にもそんなことを言っていたような。
「キラ、・・ムグ・・先に迷惑を掛けた事を・・モグモグ・・謝りなさい」
アンナはおにぎりを頬張りながら少年に謝罪を要求する。
「申し訳なかった。お前達の力を過小評価して調子に乗ってしまったようだ」
キラと呼ばれた少年は素直に頭を下げた。
「君は魔人で受肉精霊のようだが、君のやったことを説明してくれるか?」
「俺はお前達の言うところの魔人だった。俺は死んで魂となって魔界を出て放浪していたようだ。魂の時の記憶はない。俺の魂は妖精女王に拾われ、精霊の力と霊力の体を貰い、今のこの姿となった」
え、妖精女王がこいつを作ったのか。
「で、妖精女王は今どこにいる?」
「そこだ」
部屋の隅の食器棚の影を指差す。
「わ、ワラワは悪くないのだ。許すのだ」
ピンクのひらひらを来たブラウニーが居た。これが妖精女王?
「良いか?続けるぞ」
「ああ」
妖精女王は観念したのか隅から出て来て、キラの横に座った。
「俺は両親や兄弟たちに会いたかったが、今の姿で皆の前に出る訳に行かない。それで生き返る方法を探したが、妖精王国には無かった。魔界でも聞いた記憶が無かった。俺は外の世界に蘇生魔法があると聞いたので、女王に連れて貰って外の世界に出た。それが遺跡だ。そこで作業員らの話を盗み聞きして、第二皇女の眷属にすごい魔法使いがいると聞いた。
そこで第二皇女に妖精女王が催眠暗示をかけて、遺跡に眷属を連れて来させた。
魔法使いの実力を見るため、俺の造った空間に誘き寄せて、催眠暗示と幻影魔法で作った魔獣と戦わせた」
あの魔獣は催眠暗示と幻影魔法の産物だったのか。通りで魔石が出ないはずだ。
「そこでアンナが力はともかく巨大な霊力量を持つことが解った。そのままアンナをさらうとお前達が強すぎて危険なので、お前達の拠点で隙をついてさらうことにした。
アンナに催眠暗示をかけて妖精女王を助け出すように仕向け、俺の空間に連れて来た。
しかし、アンナは蘇生魔法は知らなかったし、食料を補給できないし、蘇生魔法を知っている者がいるかもと言われて恥を忍んでここに来たわけだ」
蘇生魔法を知るのはヤヌウニさんの事か?
俺は念話でノルンにヒンデンブルグさんとビスマルクさんを呼ぶように従者通信で伝えた。
コトネにはアキラさん達にアンナの無事を知らせに行かせた。
そしてヤヌウニさんに手が空いたら来てくれるように頼んだ。
そこにゴロからミラが来たと連絡があった。すぐに食堂に連れてくるように言った。
アンナの食事が終わったみたいなので、風呂に入って寝るように指示する。
ヒンデンブルグさん達が来たので妖精女王と面会、状況の説明。
「左様でしたか。陛下は共犯でしたか。申し訳ありませんでした。陛下も謝って下さい」
「ウー、済まなかった、許せ」
「改めて、謝罪と謝礼をさせていただきます。さあ、陛下帰りましょう。皆が待って居ります」
「いやだ。帰らんぞ。あのような退屈なところに帰れるか!」
女王とヒンデンブルグさんとの押し問答が始まった。
ミラとジェリルとゴロがやってきた。一応アンナの事はゴロから説明させた。
取敢えずキラのやったことをミラに説明した。
「キラ君、魔人国の王女のミラさんだ」
「何!魔王様に娘はいない。何者だ!」
「はあ、何こいつ。私の事知らないなんて、余程、田舎の奴なの」
ミラはいきなりの知らない宣言に御立腹だ。
「俺は王子だったのだぞ。無礼者!」
「父上に男の子はいないわ!」
キラとミラはにらみ合っている。
「二人共落ち着け。魔人国は一つだけなのか?」
「そうよ、人口が減って今は一つになってる」
俺の問いにミラが答える。どうして話がかみ合わない。
二人は王族だと言うのにお互いを知らないと言う。
「ワームホールを通ると時間が狂うことはないのか」
「ワームホールは三次元に干渉しないから時の進行は一定のはずだ」
今度はキラが答える。そう言えば三次元に干渉するのはゲートだけと言ってたな。
「ミラの父親は何代目だ?」
「第三十九代魔王だ」
「何、三十九代だと馬鹿な!」
キラが驚いた顔で聞き直した。
「キラの父親は何代目だ?」
「・・・第三十七代魔王だ」
キラは下を向いた。あることに気が付いたようだ。
「聞いたことがある。三十七代目に神童と言われて、十二、三歳で亡くなった王子が居たと」
ミラはキラを見つめていた。同情したのかもしれない。
「いずれにせよ五十年以上昔の話だわ」
キラは泣いているようだ。残酷な真実に気付いてしまった。
「では俺の知ってる人はもういないのか?俺の魂は五十年以上も彷徨っていたのか」
「三十七代の年代の人はいない」
ミラはそう結論付ける・
そこにヤヌウニさんが来た。
「ゴメンよ。ちょっとサクラじゃ手に負えない患者だった」
遅れた言い訳をすると泣いているキラを見た。
「君かい、蘇生魔法を探している子は?」
「もういいです。生き返ってももう誰にも会えない」
俺はヤヌウニさんにキラの説明をする。
「それがいい。蘇生魔法なんて縛りが多くて使えたもんじゃない」
うちの子のためにも聞いておきたいな。
「うん、レオン殿が聞きたいのか?簡単に条件を教えてやろう。
心臓停止後三十分以内だな。
死因が除かれていること。病気の原因やケガ、出血が多いときは血もいる。
魂に生き返る意志があること。
脳が無事なこと。脳が死ぬと記憶や人格を戻せないことが多い。
まあ、大雑把にこれくらいだ。どうだほぼ不可能だろう」
現代のAEDのようなものか?と後でアキラさんが言っていた。
ちょっとハードルが高いな。
キラは泣いているので妖精女王の方を見に行く。
「どうですか?」
「いや、帰らないの一点張りで困ってます」
ヒンデンブルグさんは心底困ったように唸っている。
「妖精王国をここへ持ってきませんか?」
ビスマルクさんがいい手を思い付いたとばかりに言う。
ヒンデンブルグさんがとんでもないとばかりに手を振る。
「何を言っているのだ。人間の世界につながるなど考えられん」
「ここは面白いのか?」
女王は乗り気の様だ。
「はい、ここは錬金術、鍛冶屋、革加工、服飾など我々の本分となる生産及び技術がある場所です。さらには工場を増築したので人手も要ります」
「よし、見学に行くぞ。ビスマルク、案内せよ」
ああ、行ってしまった。ヒンデンブルグさんが泣いてるぞ。
暫くするとアキラさんがやってきた。
「やあ、妖精女王が来てブラウニーを増やしてくれると言ってくれるんだが、どういうことかな」
俺はアンナの事件のあらましをアキラさんに告げた。
「女王のいたずらには注意すべきではあるが、工場を作った以上人手は居るんだよね。それにこの店には秘密が多いから広く募集する訳にもいかないから」
まあ、アキラさんの工場なんだから俺が口を出すべきじゃないから。
「君が魔人かい?興味があったら魔道具でも作ってみないか?」
アキラさんはキラに近付くと問いかけた。
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この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。
次回はレオン達が大災厄に対して軍団を立ち上げようとする話です。




