7-3 アンナ怒る
ご愛読、ありがとうございます。
今回はアンナが大攻勢に出ます。
謎の空間に閉じ込められたアンナ、レオン達はミラを待ってアンナを助けようとする。
一方、アンナは自ら脱出しようと悪戦苦闘する。
アキラの店 食堂 <レオン>
夕食が済んでアンナ救出はミラを待つしかないのだが、皆解散せずに食堂に残っていた。
食堂のドアを叩く音がする。
「どうぞ」
アキラが入室許可を出す。
ドアを開けたのはこの家のブラウニーの代表者ビスマルクさんだ。うん、後にもう一人いるな。
「皆さんが大事件を抱えていることは知っておりますが、どうかこの者の話も聞いて頂きたい」
アキラさんが「良いかな」と俺に聞く。
アンナの事も心配だが、我々の世話をしてくれているブラウニーの事もおろそかには出来ない。
「もちろんです。どうぞ」
ビスマルクさんの後ろから出て来た男は、鼻髭がW字になったブラウニーだった。
俺は二人を向かいに座らせると話を聞いた。
「わたくし、妖精王国の宰相ヒンデンブルグと申します」
そんな国聞いたことないぞ。アキラさん知ってる?
彼の方を見るとうんと頷いた。
「妖精の国、聞いたことはありますが、どこにあるのかとか実態は知らないですね」
うーむそうなのか。
「仰る通り、妖精国は空間の狭間にあって常人の知るところではありません。しかしここに侵入者があったのです」
「それは空間魔法の使い手と言うことですか?」
俺は空間の狭間と聞いて思い付いた。
「そうだと思います。それでその侵入者がですね。・・我らの女王をさらって行ったのです」
女王をさらった。俺は言い方は悪いが興味を持った。
「しかし、王国に入ることは例え空間魔法の使い手であっても、そう簡単には出来ないのです」
ヒンデンブルグの話では普通の肉体をもった者は入れない魔導具が、ゲートに仕掛けてあるそうだ。
俺は遺跡で会った少年を思い出していた。彼は受肉精霊ではなかったか?
もし、彼が犯人ならやっぱり帝国の初代皇帝ではないんじゃないか?ということはフェリ様も騙されている?
「それはいつの話で、さらわれた理由は解りますか?」
俺が考えている間にアキラさんが聞いてくれる。
「一週間前に事件は起きました。理由は女王の能力ではないかと思います」
「女王は人を操ることが出来るのです。そんなに強力ではないのですが、眠っている時などにその能力で何かをさせるように誘導するくらいなのです」
「それは夢で指示するとかですか?」
フェリ様とアンナの話に合致する。
「そうですな、誘導された人間は夢だと思うかもしれません。それでですがビスマルクから聞いたのですがあなた方の稀有な能力で女王を探し出して貰えませんか?もちろんそれに見合うお礼は致します」
俺達の能力が稀有かどうかは知らんが、恐らく犯人は同一人物だろう。
「分りました。どうも我々が直面している問題と原因部分で重なっているようです」
俺は遺跡探索から今日のアンナの失踪、空間魔法の使い手を待っていることまでを説明した。
「お話からすると二つの事件に我々の女王が関わっている可能性が高いですな。その少年は何を狙って事件を起こしたのでしょう?」
ヒンデンブルグは今まで進展の無かった捜査に少し光明が見えたことに喜んだ。
謎の空間 <アンナ>
ロキさんが私に話しかける。
『アンナ、アンナ・・・寝たふりをしたまま起きろ。奴が来た』
今、何時なのかな?レオン様は?ムニャムニャと口が動く。
『これ、寝たふりをしてろと言うのに』
目が覚めた私は魔力探索で周りの様子を確認する。受動だからあいつには分からないはず。
あいつは私の顔を覗き込む。寝ていることを確認しているようだ。
「寝ていると静かなのだが。催眠誘導では複雑なことはさせられんし、心を折って俺の言うことを聞かそうと思ったがうまく行かん」
私の周りを歩きながら小声でブチブチとこぼしている。
『奴が隙を見せたらわしが合図をする。レーザーをぶち込め』
うーん、それだと小人精霊を助けられないんじゃないかなー。
仕方ない。
「ねえ君、キラ君って言ったけ。私をどうする気?」
『あ、バカ』
キラはビクッとして私の方を向いた。
「お前、起きてたのか?」
「お前じゃない、”アンナ”、教えたでしょう」
私は丁寧に訂正してあげる。
「ふん、籠に入れと言っているだろう」
「もう名前を呼んでって言ってるのに。ま、いっか。あんな籠では私を閉じ込められない。解ってるでしょ」
キラはウッって顔をする。私の力を測りかねていたのね。
「今みたいに空間に閉じ込めて置けば、何も出来ないだろう」
「そうね。でもそれじゃあんたのやりたいことも出来ないんじゃない。話し合わないと何も解決しないわ」
レオン様とお姉ちゃんはしょっちゅう話し合ってるもんね。解決してる気もしないけど。
キラは私の顔を見た。話す気になったのかしら。
「お、俺は、死んでしまったのだ。今の体は精霊の力を借りて、霊力で作った。俺は生き返りたい。お前ほどの力があれば蘇生できないか?」
そっかー、まあ、受肉精霊って事は解ってたけど。
「ゴメン、それは私には出来ないよ。出来るかどうかは知らないけど、詳しそうな人なら知ってるけど」
ヤヌウニさんなら知ってそうな気がするんだよね。
「まあ、そんなに期待はしてなかった。だから閉じ込めて修練させればと思ったんだ。で、その人は紹介してくれるのか?」
そうねえ、やっぱり。
「ブラウニーを釈放してくれる。そうしたら紹介するわ」
「そんな事、信用できるか!」
キラはゲートを開くと去って行った。
『アンナ、どうしてわしの言うことを聞かんのだ』
ロキさんが私を責めるんですけど。
「だって、ブラウニーを助けないと駄目だし、殺したからと言って私達が助かるか分かんないでしょ」
『まあ、ダンジョンではないから奴を倒したからと言って、地上に帰れる保証はない』
「でしょう。だから私とあのブラウニーが帰れることを考えないとね」
『ふむ、奴と話すことに依ってそれを引き出そうとしていたのか。アンナ、お前大人に成ったな」
本当は何も考えてなかったけどね。
「大丈夫、大丈夫、そのうちミラさんが来るよ」
『なぜ、分かるのだ』
「ミラさんはね。私の魔力を追って王国にも帝国にも来たのよ。探してくれるわよ」
『餓死する前に見つけてくれればじゃろう』
「ああ、言わないでえ。お腹空いたよう」
昨日の夜から何も食べてないことを思い出した。えーっと日付は変わってないよね?。
アキラの店 レオンの部屋 <コトネ>
何も進展がないまま朝を迎えてしまいました。私もレオン様も一睡も出来ませんでした。
他の人達には休んでもらいました。ジェリルさんにはミラさんの部屋で休んでもらい、ミラさんが来たら一緒に居るゴロが私達に連絡をくれることになってます。
ノルンは寝る必要が無いので、ここに居てロキに三十分置きに連絡をしてくれています。
残念ながら一度も通じていません。
ヤヌウニさんも寝る必要が無く、定期的に私達にスタミナ回復の魔法を掛けてくれます。
ドアが開きました。シャラさんです。
「ゴメンっす。両手が塞がっててノックが出来なかったっす」
シャラさんは皿におにぎりを山盛りにして、更に右手にはお茶を持ってきてくれました。
「ありがとうございます」
私は自分達のカップにお茶を注いで、レオン様に差し出します。
「ありがとう」
おにぎりを頬張っているレオン様にもさすがに疲れが見えます。
私もシャラさんに礼を言い、おにぎりを頬張ります。
不意に涙が溢れます。
「どうしたっすか?大丈夫すかっす?」
「いえ、大丈夫です」
私は思い出しただけなのです。一年半前、何も先の事が解らずにいるのに、前途に希望を抱いてイエーガー領を三人で出たことを。旅の途中で食べたおにぎりの事を。
アンナ、あなたは今どうしているの?けがはしていない?お腹は空かしていない?
そう思ったら勝手に涙が出て来て止まりません。
「アンナはきっと大丈夫だ」
レオン様が私の頭に手を置いて力強く言ってくれました。
「はい」
手で涙をぬぐって、アンナの無事を信じることにします。
謎の空間 <アンナ>
「おい、起きろ!」
『アンナ!奴が来た。おきろ!』
「起きてるわよ!お腹に響くから大きな声は出さないで!」
こんなにお腹が減ってるのに寝れる訳が無いでしょ。キラは私の正面に立ってたわ。私の機嫌が悪いから驚いているみたい。
「お、おまえ、蘇生魔法を使える奴を紹介できるって言ってただろ。もっと詳しい事教えろ!」
「嫌よ!、もうお腹が空き過ぎて何も考えられないの!」
私が拗ねるとちょっと困った顔をした。これは?
「お前腹が減るのか?」
「当たり前でしょ!あんたと違って生きてるんだから。もう生きてる時のことを忘れちゃったの?」
「そうか、そうだったな。人間は食べないと死んじゃうんだな」
キラは落ち込んじゃったみたい。こいつ、死んだばかりじゃなかったの?。まあいいや。
「すまん、食料を用意するのを忘れた」
「はあ、バッカじゃないの!こんなかわいい子を飢えさせるなんて、男の風上にも置けないわ!」
お腹が空いてイライラするから余計に腹が立つ。
「いや、そんなつもりは無かったんだ。腹だ減るという感覚が無かったから、つい」
キラは焦って言い訳を始めた。行けるかも?これは責め時ね。
「言い訳は良いから食べる物を用意して!早く!」
「だからここには無いんだ」
「無かったら買って来ればいいでしょ」
ふふふ、女の子に切れられたときの対処を知らないのね。
「いや、金が無いんだ。俺はほら魔人だから」
「それなら連れてくるなって話よね。どうするのよ」
「そう言われても・・・」
そろそろね。
「ああ、私が死んじゃっても良いんだ。ウエーン」
止めよ!泣き真似をしてあげるわ。
「ど、どうしたら良いんだ。おい、泣くな、おい、どうしよう」
おお、頭抱えてパニックになって来た。
「エーン、おうち帰るう。エーン、エーン」
「分かった。戻ったら蘇生魔法の奴に会わせろよ」
それだけで許す訳無いでしょ。
「エーン、ブラウニーも一緒じゃなきゃ嫌だああ」
「分かったって、あいつにもう用はないから一緒に連れて行くよ。な、だから泣き止んで」
完全に私の術中ね。
「本当?」
「本当だとも。ちょっと待ってろ」
キラは慌てて、ゲートを開いて去って行った。
『アンナ、恐ろしい奴』
ロキさんがビビってるよ。泣き真似をしながら舌を出す。
「お母さんには通用しなかったけどお父さんにはよくやったんだ」
『お前の父親には同情するよ』
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この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。
次回はキラがアキラの店に来ます。




