7-2 夢の世界のアンナ
ご愛読、ありがとうございます。
今回は謎の空間に囚われたアンナを救出しようとするレオン達と少年と戦おうとするアンナの話です。
夏休み中、戦闘訓練のためアキラの店に居を移したレオン達。
夢の中で助けを求められたアンナは、声に引かれて工場の壁の中に消えてしまうのだった。
アキラの店 工場 <コトネ>
アンナが消えた壁を叩いていた私は、フェリ様と同じと言ったレオン様に聞く。
「どういうことですか?なにが起きてるのですか?」
「今朝、アンナが夢の中で助けてという声を聴いたと言ってたな。夢で呼ばれて壁の中に消えるってフェリ様が遺跡に行った時と同じじゃないか?」
レオン様も青い顔をしているが、アンナの行先を必死に考えているようだった。
「ではあの初代様がアンナを?!」
「従者通信が通じない、アンナにもロキにもだ。違う空間に居るのかも?」
「どうしたんだ?」
ジェリルさん達が心配して来てくれた。
レオン様が状況を説明してる。
「そうか。あの時はアタイが置いてきぼりを食らったが・・・」
ジェリルさんがアンナが消えた壁を叩く。
「そうだ!、ノルン、君はロキと離れていても話が出来るんだな。やってみてくれないか?」
レオン様はノルンさんにロキさんと精霊同志のテレパシーのような通信をお願いした。
「やってみます」
叔父さんの格好のノルンさんは目を塞いで集中している。
「・・かなり遠いです。存在は確認出来ますが話は出来ません」
「続けてやってみてくれ」
レオン様の願いにノルンさんが頷く。
「あ、」
ノルンさんが呟くと後ろに跳ぶ。後ろに居たジェリルさんが抱きかかえた。
「どうした?」
「強い力で遮断されました。でも一瞬ですが玉座のような椅子に座る少年が見えました」
それはあの時の初代様?
謎の空間 <アンナ>
なに、ここ??。あの部屋?。
それはついこの間行ったばかりの部屋に似てるけどちょっと違う。
奥の椅子に少年が座ってるのは一緒。でも周りは前に見た貴族の謁見室みたいな感じ。
「あなたが私を呼んだの?」
少年は嫌らしい笑い方をする。
「よく来た。君を呼んだのは俺じゃないが歓迎するよ」
「じゃあ、誰が呼んだのよ!」
私、こいつ嫌いだ!。私の心がこいつを否定する。
少年が手を揚げると少年の後ろの壁が開いて、鳥籠のような物が現れた。
「おい、お前の声に呼ばれて来てくれたぞ」
鳥かごの下に薄いピンクのひらひらが見える。うん、動いた。
え、ひらひらドレスを来た子供・・いえ、小人妖精だわ。
「可哀そうじゃない。出してあげなさいよ!」
「フフフ、お前が代わりに入ってくれたら出してやろう」
「助けて。ここから出して」
助けを求める小人妖精。私は籠に向かってダッシュする。
少年が手を降ろすと壁が塞がって鳥かごは見えなくなった。
「どうする?君が籠に入ってくれたら妖精は釈放してあげるよ」
また言って来た。その手に乗るもんですか。
「嫌よ、私が帰らないとレオン様が悲しむもの」
私は愛されてるんだから。
「あいつが悲しむだと、そんなことがあるわけない。それは君の願望でしかない。今の奴らの姿を見せてやろう」
・・・・・
頭の中に映像が・・。レオン様とお姉ちゃん?二人が仲良く話してる。
「アンナが居なくなって助かったよ」
「本当ですね。あの子対して役に立たないのに、私に偉そうにして嫌いです」
「これからあいつの分までコトネを可愛がってやろう」
「ありがとうございます」
「「ハハハハハ」」
やめて!、レオン様がお姉ちゃんがそんな事言う訳ない。
「いやあ、ミラに押し付けられて困ってたんだよ」
「自分で居なくなったんだからミラさんも何も言いませんよ」
違う!違う!二人は私の事を好きでいてくれる。
『これは幻影の精神攻撃じゃ。御主人がそんなことを言う訳無かろう』
『ロキさん、本当?でも従者通信も返事してくれないんだよ』
ロキさんのことがバレるとまずい気がするので、従者通信で話をしてる。
『違う空間に連れて来られたから繋がらないだけじゃ。さっきノルンのテレパシーを一瞬感じた。御主人はアンナを必死で探しておる』
『そうだよね。レオン様はいつでも私の味方だよね』
『まあ、過保護気味じゃが』
私はいつの間にか座り込んでいた。負けるもんか。
「レオン様もお姉ちゃんも私の事を裏切らないもん」
立ち上がって少年を睨みつける。
「フン、どうだかな。暫く頭を冷やすといい」
少年は立ち上がって壁に向かうとそのまま壁に入って行った。
あ、逃げた。慌てて追いかけて、壁を叩くが、ただの壁だ。
「このー、帰してよ!ねえったら!聞こえないの!」
もうここには気配がない。
アキラの店 食堂 <レオン>
仕事がある人は仕事に戻って貰って、ここにいるのは、俺、コトネ、ジェリル、ノルン、ゴロだ。
「俺はあいつが初代様とは思えなかった」
俺の言葉にコトネが反応する。
「では何者なのですか?」
「ダンジョンとか空間魔法を使うと言ったら・・?」
「魔人ですか」
俺の問いにコトネがすぐに反応する。ジェリルも。
「ミラなのか?ミラが犯人なのか?」
俺はジェリルの反応に苦笑いした。
「いや、ミラ以外の魔人と言うことだ」
ミラはパラレルワールドである魔国から来た魔王の娘だ。ミラもミラの姉のヘラも空間魔法を使っていたし、ヘラに至ってはダンジョンに魔獣を大量に用意していた。
遺跡に現れた少年もダンジョンを作って魔獣を操った。彼を初代様と呼んでいたのはフェリ様だけだったしな。
「ではミラさんに聞けばアンナが行った場所が分かるのですか?」
コトネは場所が解ると思ったようだが、そう簡単ではない。
「解るかも知れんがミラに連絡する方法がない。彼女がここに顔を出すのを待つしかない」
彼女が部屋に設置したゲートを開けられる者はここにはいない。
「そんな、アンナは朝ごはんも食べてないのですよ。あの子はすぐにお腹を空かすから」
コトネは心配性のお母さんみたいになってる。
俺は少し考えをまとめたかった。
「ちょっと情報を整理してみよう。
まず、フェリ様に夢で遺跡に行くように誘導したこと。アンナに夢で助けを求めた事。これはやり方が同じだ。
次に壁にゲートを作って誘導したこと。これも遺跡と同じだ」
コトネが疑問をぶつける。
「でもゲートの穴は見えませんでした」
「それは幻影魔法を使えるのかも知れんな。フェリ様には夢で姿を見せたそうだからな。それに探索の途中でフェリ様が極端に弱気になったことがあった。これはある程度相手の感情を操れるのではないか思う」
ジェリルが指を折って何か数えてる。
「明日だ!!」
突然立ち上がって叫ぶ。
「え、何がですか?」
コトネがびっくりして聞き返す。
「ミラだよ。ミラが来る日」
「なんで分かるんです?」
「あいつはレオンの休みの日に合わせてやってくるんだけど、たぶん魔国のスケジュールをそれに合わせてる。だからレオンが夏休みでもそれに合わせてくるはずなんだ」
ジェリルは真剣に話す。アンナと仲が悪そうに見えたがそうでもなかったみたいだ。
「ジェリルさん、ありがとうございます」
ジェリルがアンナを心配する様子にコトネが涙を浮かべる。
「仲間じゃねえか!アンナは生意気だけどアタイの妹だと思ってるよ。何としても助け出そう」
「はい、必ず」
「ミラはアンナの魔力が解るはずだ。あいつはここもアンナの魔力で見つけたんだ」
アンナ、皆でお前を助けるために頑張るから無事で居てくれ。
謎の空間 <アンナ>
何時間経ったんだろう。ここには水が置いてあるが、それだけだ。あー、お腹が空いた。朝から何も食べてない。
「あいつ、戻ってこないねえ。こんな可愛い子が居るって言うのに」
あいつが座ってた玉座に座って、ロキさんに愚痴をこぼす私。
『可愛いかどうかは別として、アンナを飢えさせて、心を折りに来てると思うぞ』
「別じゃない!って言うか、私は三日や四日位食べなくても平気だよ。村ではよくあったし」
『ウーそんなことを平然と言うでない。悲しくなるではないか』
本当に貧しかったからねえ。兄弟姉妹は何人かいたみたいだけど飢え耐性の強い私以外は、小さいときに皆死んじゃったみたいだし、その子達の分まで頑張るんだから。
「やあ、籠に入る気になったかい?」
不意に声を掛けられて振り向くとあの少年が居た。どっから出て来たんだろう?。
「あんたか。そんなとこに入るわけないでしょ。あ、それとあんたの名前はなに?」
「ああ、俺の名はキラだ。よろしくな」
「やっぱり、初代様じゃなかったのね。あれ、キラって魔人なの?耳が尖ってるし」
ふと顔を観察すると耳が少し尖っている。もしかして魔人?でも人間の感じがしない。
「お前、魔人を知っているのか?」
「ちょっとね。でも私の名前はアンナ、お前じゃないわ」
ハッと気づいたようにキラは顔をゆがめた。
「待て!、お前は主人達に裏切られたんだぞ。なぜ、正気で居られる?」
ようやく自分が掛けた幻影魔法の効果が無いことに気付いたのね。
「そんなの、レオン様とお姉ちゃんと私の絆は、幻影魔法位では壊れないてぇの」
私はドヤ顔で人差し指でチョンチョンしながら説明する。
「馬鹿な!俺の幻影魔法が破られただと!!」
「まあ、フェリ様は騙せてもこのアンナ様には効かなかったみたいね」
『これ、あまり調子に乗るでない』
『せっかくいいとこなんだから邪魔しないで』
ロキさん、うるさいよ。
「ところでこの部屋から出るには、あなたを倒せば良いのかしら」
キラは、はい?と私の方を見た。
「お前ごときが俺を倒すだと。増長するのもいい加減にするがいい」
「私の力を知っているのかしら?」
「では倒してみるが良い。お前の力は遺跡で確認してある」
ああ、遺跡では十分の一も力を出してないんだけどな。
「出でよ!!イフリート!!あいつをやっつけろ!!」
私は火の精霊を呼んでキラを攻撃させる。イフリートは炎を纏った人型の精霊だ。
イヒヒヒ、驚いてる、驚いてる。
「馬鹿な!!元素精霊の召喚だと!!」
キラはイフリートの出現から攻撃までのタイムラグで、とっさにゲートを開いてその中に飛び込む。閉じたゲートにイフリートの炎が弾ける。
『逃げられたではないか』
ロキさんに呆れられた。
「だってぇ、生意気だから派手な魔法を使いたかったんだもん」
『こういう時は素早くレーザーで動けなくしてだな・・』
「判ったからもういいの」
ロキさんのやれやれと言う感情が伝わってくる。モオ!!
『そう言えば、あの小人妖精はどうした』
「いっけなーい。忘れてた」
慌てて集中して探索する。助けてあげなきゃ。
壁の向こうにも何の気配もない。おっかしいなあ。
面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。
この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。
次回はアンナが怒って大攻勢を掛けます。




