7-1 アンナを呼ぶ声
ご愛読、ありがとうございます。
第七章が始まります。来たる大災厄に向け戦闘訓練をするレオン達。アキラの店に帰ったレオン達に事件が起きる。
基本的に六章の続きです。
遺跡探索が一段落し、夏休みの日常が戻ったレオン達、今日も今日とて帝都の近くの草原で戦闘訓練をする。
帝都にほど近い平原
真夏の太陽の下で対峙するコトネとジェリル。二人共スキンアーマー状態だ。
「獣変化!!」
コトネの前に魔法陣が現れ、魔力を注ぐと魔法陣が直径二m位に大きくなって彼女に向かって動き始める。やがて彼女を包むと彼女が白く輝く。
「変身!!」
コトネが腕を回してボクシングのファイティングポーズの様に構える。
彼女の素肌から白い毛が伸び始め、体をびっしりと覆う。やがて虎の縞模様が浮かび上がって変身が完了する。
ビーストグロー、これが彼女の会得した魔法である。筋力が数倍に強化され、全身を気が覆い、スキンアーマーの数倍の防御力を発揮する。
彼女自身、この姿が醜いと思って封印していた経緯があるが、アンナの言葉で目が覚めた。自分が力を出し惜しみしてレオンが傷ついてしまっては本末転倒。流石に神獣人に変身すると制御できない可能性があるので、どうしようもない場合に残しておくことにしたようだ。
ジェリルが素手でコトネに襲い掛かる。最近ジェリルはコトネの技を見切っており、以前のように一方的にやられることは無くなった。しかし獣変化したコトネと戦うのは初めてだ。
コトネに関節を取られるのを牽制した左ジャブを連続で撃つジェリル。爆発のような轟音があたりに響く。アフリカゾウでもノックアウトしそうなパンチだ。
冷静にパンチを紙一重で避けるコトネ、しかしジェリルの右手を警戒して懐には入れない。
ジェリルも右手のパンチが避けられたら懐に入られるので、長いリーチのジャブで距離を取るしかない。
コトネがジャブを左手で弾く、バランスを崩したジェリルはとっさにガードを固める。
しかし、コトネは懐に入ることをせずに後ろに距離を取る。
そして大きく息を吐く。
「ジェリルさん行くよ!」
コトネの姿が滲んだ。ジェリルはスキンアーマーに魔力を全振りする。頭の中で警報が鳴り響く。コトネは下にいた。
コトネの右拳が垂直に突き上げられる。ガードをしていた両手は跳ね上げられ、コトネの拳はジェリルの顎を突き上げる。
ジェリルは宙を舞っていた。
この感覚は懐かしい。確か十歳位の時、兄達の訓練に付き合わされ、飛ばされた時以来だ。
十二の頃にはもう兄達は敵では無くなっていた。
あの時、ヘスティアを追わなかった訳が分かった。ヘスティアもすでに敵では無くなっていたのだ。
海賊退治の時に味わった高揚感は、もうヘスティアから感じられなかった。そう、コトネが居たから。
ようやく追付いたと思ったコトネの背中が、また見えなくなった。面白く成って来た。
草は五cm位で刈り込んである。レオンが飛燕で刈り払った。
そのまま落ちても衝撃は少ないが、ジェリルは頭を下にして手を伸ばし、前転で受け身を取った。
「コトネ、すごいじゃないか」
「お姉ちゃん、すごーい」
「こら!集中しなさい」
レオンに注意されるアンナ。
「はーい!」
蓮華座を組み、アンナが集中する。
気を感じられる人間が見ればとんでもない光景が始まる。
アンナの頭上から天に向かって、体の幅ほどのオーラが立ち昇る。十m程登ったオーラが左右と後ろに回って、尻尾の辺りからまた体に戻って行く。気が循環しているのだ。
遺跡探索でまた一段と気の容量が増えている。
まだ十歳なのにどこまで行くんだろう。レオンはアンナの将来にちょっと恐れを抱いた。
「レオン君!準備が出来たよ」
アキラの呼ぶ声にレオンは振り向く。アキラの操る人間大のゴーレム十体が高速で動いていた。
「行きまーす!」
レオンは片手を揚げ、アキラに合図を送る。
「四式戦”疾風”」
レオンがそう呟くと消えた。アキラの目からは見えなくなった。
レオンがゴーレムの後ろに現れると十体のゴーレムは崩れ去った。
レオンは嬉しそうにアキラに駆け寄った。
「ありがとうございます。大体感覚は掴めました」
「ああ、でも俺には何が何だか。だって君は刀も持ってない」
レオンは何も持っていない。
「所詮、刀は手の延長に過ぎません。だから無くても良いのです」
******
アキラの店 <アンナ>
訓練が終わってアキラさんのお店に着くころには、お日様が沈んでちょっと暗くなってました。
「お風呂、いっきまーす」
私はお姉ちゃんとジェリルさんを誘ってお風呂へ行きます。
お風呂は妖精さん達が沸かしてくれます。
脱衣所に妖精さんが居たのでお礼を言います。
「妖精さん、ありがとう」
「いいえ、感謝されて私達も嬉しいです」
お姉ちゃんとジェリルさんもお礼を言います。
妖精さんは感謝と少しの霊力で、満足して働いてくれるそうです。
ちょっと学生寮に居てくれたらと思いましたが、レオン様のお世話を取られるのはちょっと嫌なので思い直しました。
「ちゃんと洗うんだぞ」
レオン様はアキラさんと一緒に男の人のお風呂に行きました。
レオン様は私をお子様扱いなので、そこはレディとして扱って欲しいです。
お風呂で汗を流してさっぱりしました。
お風呂から出ると脱衣所には私達の着替えがキチンとたたまれて置いてあります。
獣人の私達のパンツは普通の人と違います。なぜなら尻尾があるからです。
ジェリルさんのマイクロビキニはV字型の物です。ジェリルさんは極端なボンキュッボンなので腰に紐を引っ掛ければ落ちません。
お姉ちゃんはこの頃お尻が大きくなったので、ローライズのパンツで尻尾はパンツの上に来ます。スキンアーマー用のショートパンツも同じです。
私はまだお尻がストレートで引っ掛かるところが無いので、カボチャパンツに穴を空けて尻尾を通します。早くお姉ちゃんのようなパンツを履いて、お姉ちゃんとおそろいのスキンアーマーがやりたいです。
「ジェリルさんは魔獣狩りに行かなくて良いの?」
パンツの穴に尻尾を通しながらジェリルさんに聞きました。
「ああ、今月は遺跡探索の護衛で儲けたから行かなくても大丈夫だ」
ジェリルさんはもうマイクロビキニを着ている。
「ジェリルさんってお金貯めてるの?使ってるところ見ないけど」
お姉ちゃんがブラのホックを止めて、クルっと回して乳房をカップに入れる。
「アタイは里に仕送りしてるんだ。田舎だから現金収入が無いからいざという時の為にな」
普通、お医者さんとか、薬とかは現金が要るからでしょうね。
「私の村もそうだったんだろうな。だからヨシムネ様に私を押し付けたんだ」
「でも結果オーライだな」
「ホントにそうだよ。今もド田舎で孤児やってたらと思うとぞっとするよ」
「まあ、生きてネエだろうな。ハッハッハッ」
なんか二人で怖いこと言って笑ってる。
お風呂から上がると夕食が出来てる。ここにいるとどっかのお嬢様になったみたい。
夕食が終わると皆でお喋りをする。
ゴロが白い中型犬に変身している。
「ゴロ、なんで犬になってんの?」
「誰かに見られた時に言い訳できるようにだ。この格好なら昼間に店先で昼寝してても誰も気にしないんだぜ」
ゴロは変身できるようになって嬉しそうだ。今まで夜にしか動けなかったものね。
ノルンさんは一人少し離れてニコニコしてる。彼は人の話を聞いているのが楽しいみたいだ。
ビックリするのがサクラさんが明るく積極的になったことだ。
「この姿になってから。外で見られても平気だし、買い物もできるわ。お師匠様も喜んでくれているんだ」
ちょっとレオン様に引っ付くんじゃないよ。
「でも、レオン様にちょっかい出しちゃ駄目だよ」
「あははは、レオンさんとは身分が違うよ」
そんなこと言ったら私も平民の孤児なんですけど。
ちょっと私が暗くなったのを見てサクラさんが笑う。
「ごめんね。でも帝国なら能力があれば、出世できるからチャンスはあるかも」
レーニャさんが横から顔を出した。
「それホントかあ。でも革職人じゃ駄目?」
う、酒臭い。レーニャさんお酒飲んでる。コニンさん達の方見るとワインの空きビンが並んでいる。ドワーフはお酒が好きだからなあ。
九時頃になるとレオン様が寝るぞと言って、私達を連れて部屋に戻る。
レオン様は成人するまでは、しっかり寝ないと体の成長に良くないと思ってるみたい。
「楽しかったね」
久しぶりにお姉ちゃんと一緒のベッドで寝られる。
「うん、これが一か月続くと思うとちょっと怖いかも」
そうだよ。ここの生活に慣れちゃうと寮に帰ってからがちょっと心配。
寝転んで目を塞ぐと疲れていたのか、すぐに眠ってしまった。
・・・・・
「・・けて」
頭の奥で何か聞える??。夢?
「た・・て」
・・・誰かが私に何か言ってる。
「助けてえ!!」
救助を求める声にビックリして飛び起きると周りは明るい。隣を見るとお姉ちゃんはもう起きてる。
「お姉ちゃん!!何があったの?!」
ベッドから飛び出してお姉ちゃんの所に向かう。
お姉ちゃんはレオン様を起こして、着替えの準備をしてる。
お姉ちゃんはニコニコと笑っている。
「何、変な夢でも見たの?」
え、夢だったの。おかしいな。
「誰かが助けてって言ってたの」
あれ、何でお姉ちゃんがいるの?
「まだ寝ぼけてるのね。顔、洗ってしゃっきりしなさい」
そうかここは寮じゃない。アキラさんの所だ。
やっぱり寝ぼけてたのかな。
朝ごはんを食堂に食べに行く。
ジェリルさんが大声で早くいこうぜとか言ってる。
昨日、お姉ちゃんに何回もやっつけられたのに平気なんだ。
あれ、おかしいな。
自分が自分を外から眺めているような感じがする。
何これ、変!。
「助けて」
また聞える。行かなくちゃ。
私は食堂を出て階段を下りて渡り廊下へ、こちらは錬金部屋・・違うそっちじゃない。
西側の扉を開けると店の裏、空き地だったところに大きな建物が出来た。確かアキラさんが工場って言ってた。
工場に入るとまだそこは使ってないらしく、建築材料が並べてあった。
奥の壁が光ってる。
「助けて」
そこだ。行かなきゃ。
私が壁に手を伸ばすと景色が変わった。
少し前、食堂 <コトネ>
アンナの様子がおかしい。反応が鈍い。
「アンナ!どうしたの?大丈夫!?」
アンナが立ち上がった。倒れた椅子が嫌な音を立てる。
アンナを捕まえようと手を伸ばしたがアンナが食堂を出る方が速い。
階段を下りて渡り廊下へ走っていく。
「アンナ!!、待ちなさい!!どこへ行くの!!」
アンナは振り返らない。工場に入ると奥の壁に突進していく。
「アンナあ!!どうしたのよお!!」
私は泣けてきた。でも行先は壁だ。ここで捕まえる。
「消えた・・・・・」
アンナは壁に吸い込まれるように消えてしまった。
「どうした!!」
レオン様が追付いて来た。
「アンナが、アンナが壁に吸い込まれて行きました・・」
私は壁を叩くが何も起きない。ただ叩いた音が反響するだけだ。
「フェリ様の時と同じだ」
レオン様がそう呟いた。
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この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。
アンナは無事なのか。次回、別空間でアンナが戦います。




