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6-8 帝都帰着

ご愛読有難う御座います。

帰ってきたフェリやレオン達の話です。

 オリンポスの襲撃を何とか撃退したレオン達だが、フェリは先に帝都に着いていた。


<帝都近くの小さな草原>

 襲撃場所から子の帝都の近くの小さな草原までは直線で約五十km、行きは急いだので十分、帰りはフェリ達を乗せていたのでゆっくり一時間かけて帰ってきた。


 ノルンはゆっくり羽ばたきながらアキラ達が待つ近くに着地する。

「ご無事で何よりです」

 アキラは伏せたノルンの背中側に回って、跪く。


「皇女殿下、レオンの仲間のアキラと申します。この馬車で帝城までお送りいたします」

 降り立ったフェリに挨拶する。

「オウ、頼むぞ」


 幌馬車の中を見られないようにしてフェリ達を乗せる。中にはサクラが待機していた。

「殿下、御怪我はありませんか」

「大丈夫じゃが、少し疲れた」

「左様ですか。では癒しの波動を・・・」


 フェリとルシーダの体が光り輝くと疲れがスーッと引いて行く。

「オヌシ、魔法陣を使わずして魔法が使えるのか?」

「これはあなた方も習っている気功術の一種です」


「気功はこんなことも出来るのか」

 サクラはずっとヤヌウニの指導で医療系の気功術を習っていた。

「気功はね、霊力を使った魔法だから、大体のことは出来るって聞きました」

 幌馬車は帝城に向かって走り始めた。



<レオン達の幌馬車>

 レオン達はアイスレーベンに向かって馬車に揺られている。

「今、フェリ様達が無事帝都に着いたって」

 レオンが嬉しそうに言う。


「良かったです。レオン様、聞いても良いですか?」

 御者をするコトネが難しい顔をする。

「うん、良いよ」


「レオン様アーレスを逃がしましたよね」

「あ、アタイもそう思ってた。鎧を剥いだアーレスならお前が勝てない訳が無い」

 ジェリルも参加してきた。


「あいつ、すでに魔力切れ起こしてたし、大災厄の時、手伝ってくれるかも知れないよね」

 レオンはアッケラカンとしている。

「お前はそう言う奴だった」

 ジェリルは仕方が無いと手を広げる。


「私は、いえ、私の剣は相手の鎧を貫くことが出来ませんでした。どうすれば良いのでしょうか」

 隣に座るアンナに手綱を渡して、幌の中に上半身を入れるコトネ。


「アタイもそれは痛感した。ヘスティアのスキンアーマーを破ろうとすれば、精神統一して全力で剣を振るしかないが、そんな余裕はない」

 ジェリルも同じような感想を持っていた。


 レオンは顔を上げて少し考えた。

「そうかな。君達なら何とかなりそうな感じだけど。まあ、確かにこの鎧は堅かったけど」

 レオンは収納庫からアーレスの鎧を引っ張り出した。

「コニンさんにこれを見て貰えば、何か分かるかも知れないでしょ。ジェリルは気功を使えるようになって来たし、もう少し練習したら良いよ」


 ジェリルがニコッと笑った。

「では夏休み中、練習に付き合って貰おうか」

「げえ、ジェリルの練習はきっついからなあ」

 馬車の中は明るい笑いに包まれた。



 帝城、皇帝の執務室 <皇帝>

「何、フェリが行方不明だと!!」

 俺は驚いていきなり立ち上がったので、ガタンと椅子が倒れる。

「はい、昨日の昼前、遺跡の中でルシーダ様とレオンハルト殿達と一緒に消えてしまったということです」


 昨日の事件が一日遅れで報告された。

 遺跡やアイスレーベンに連絡の魔導具が無いので、馬を乗り継いで連絡してきたのである。


 俺が心配を表に出さぬようにして報告を聞いていると、侍従がドアを乱暴に開き駆けこんできた。

「たった今、フェリシダス様とルシーダ様が帰還なされました!!」

「はあ?、どういうことだ。フェリはどこだ?」

 昨日の昼前行方不明となって、どうしてここに居られるのだ。


「陛下、遺跡探索より帰還いたしました」

 執務室の開け放たれたドアからフェリとルシーダが現れた。

「あ、ああ、おかえり」

 訳が分からずにフェリを見つめる。


 遺跡から最短で来たはずの連絡とほぼ同時に帰ってきたフェリ、どうしても理解できなかった。

 倒れた椅子を直すとフェリに応接用の椅子に掛けるように促す。

 自身もフェリの正面に座った。


 大きく深呼吸して俺はフェリを真っ直ぐに見た。

「フェリ、説明してくれるか」

「はい」

 フェリはルシーダの補足を受けながら説明をする。

 初代様から夢で眷属と一緒に遺跡に行くように言われたフェリ。

 フェリ達は遺跡の中で女神像の台座から初代様の試練の間へ転送され、レオン達とルシーダの活躍で二回の魔獣の攻撃を殲滅し、初代様の座所に再び転送される。

 そこで初代様から大災厄の折は指揮を採れと言われ解放された。


「にわかには信じられんが、わざわざ夢枕に立ったのならその時に伝えて欲しかった。試練は必要なかろう」

 初代皇帝は帝国では神格化されており、崇拝の対象になっている。

「続けます」

 父親のぼやきを流してフェリは続けた。

 これ以上の探索は危険と言われ、その日はテントで眠り、今日帰ることになりました。


 アイスレーベンに至る道でレオン殿の従者が敵の襲撃を探知し、簡易的な陣地を作り防御に徹しました。

 第一陣の敵を防いだところでレオン殿の従者の巨大な黒鷲に乗って脱出しました。

 そのまま帝都の近くまで来て、レオン殿の協力者の馬車に乗り換えて、今、ここに戻れたということです。

 フェリの話を要約するとこのようであった。


「そう言うことか。よく無事で帰ってきた。しかし何者が襲って来たのであろうか?」

「レオン達は敵のレベル6を知っているようでした」

 皇帝は体を乗り出してきた。

「レベル6だと、そんな奴が襲って来たのか。それでよく助かったものだ」


「はい、レオンのお陰です」

「敵はどうなったかわかるか?」

「はい、私の警護にレオンの従者の従者がついておりまして、その者がレオンの従者から従者通信を受けたのですが私が居なくなったことで敵は撤退したようです」


「ややこしいな。それでは敵はお前を狙っていたことになる。・・・おい、すぐに追撃の手配をしろ!。ブルックス達は?、捕虜はいるのか?、早急に調べよ」

「それはレオンの従者を通じて従者通信でブルックスと連絡を取れば早いのではないでしょうか」


 フェリ達皇族には自分の専属の近衛兵以外には命令する権限は与えられていない。従ってそれ以外の兵を動かそうとすれば、俺や将軍などにお願いするしかないのだ。


「では、そのレオンハルトの従者の従者とやらを呼べ!」


 フェリの話から敵よりもレオンに興味を持った。

 探索を得意とする従者。狐獣人でわずか十歳ながら土魔法で石壁を作って陣地にした。

 戦闘を得意とする従者。これも猫獣人で十二歳、とにかく動きが速くて、あのルシーダが動きを追い切れぬほどだと言う。

 友人でレベル6の狼獣人はあの海賊退治で活躍した傭兵だ。

 巨大な黒鷲の従者、フェリとルシーダを乗せて、直線約五十kmの距離を一時間で飛んだ。人語を話す。

 他にも従者の従者と言うフェリ達を癒した少女。御者をした男もいたな。


 僅か十五歳で、学生の身でこれだけのことが出来る男。フェリ達の命が助かったのはレオンと言う男がいたからだろう。剣の腕も頭脳もすごい、更には周りの能力も半端なくすごい。


 フェリはこの男を繋ぎ留めておくことが出来るのか?ルシーダの居る所で確認する訳にもいかないか。

 そこに執務室に入ってくるものが居た。


「レオン殿の馬車は既に帰られたそうです」

 まあ、引き留めておかなかったのだから仕方あるまい。

「フェリ、その協力者の居場所は解るか」

「いえ、聞いておりませんがアキラと名乗っておりました」


 珍しい名前だな。調べればすぐわかるか。

「陛下!」

 侍従の一人が声をかける。すぐに発言を許してやる。

「はい、外郭に”アキラの店”が今期に出来まして、なかなか繁盛いたしておるそうです」

「よし、調査せよ。もしそうならここへ呼べ」


 侍従は部屋を出て行った。

 しかし、五十人規模の襲撃を事前に発見できないとは、帝国の治安維持はどうなっておるのか。



 帝城、皇帝の執務室 <レオン>

 俺はノルンに迎えに来てもらってアキラの店に着いたが、すぐに皇帝の使者が来た。

 今回の騒動で俺の秘密がいろいろ帝国にバレた。さてどこまで話をしようか?


 バレた内容を整理しておこう。

 〇アンナの能力

 〇ノルンの能力と存在

 〇ゴロの存在

 〇従者通信

 〇収納庫の一部


 フェリ様を守る為とは言え、ちょっとバラシ過ぎてるよな。

 フェリ様から秘密が広がっていないと良いが・・まあ、無理だろうな。だって説明できないもん。


 皇帝の執務室に着いた。ちょっと居住まいをただした。

 応接セットに腰掛けた皇帝が立ち上がり、俺の近くまで来て手を差し出した。

 皇帝の横に座っていたフェリ様がニコッと笑う。ちょっと焦るんですけど。


 皇帝は握手をすると俺の肩に手を回した。

「ありがとう。君のお陰でフェリは無事に帰って来れた」

「いえ、それが仕事でしたから。気にしないでください」

 おだてられて口を滑らせないように気を付けなくっちゃ。


「ところで君が帰っていると言うことは、ブルックスたちに連絡は取れないということだね」

「そうですね。もうアイスレーベンには、従者はいません」

 皇帝は応接セットに連れて行き、自分の対面に座るように促した


「まず聞きたいのはフェリを襲った組織とその目的だ?」

「組織の名はオリンポス、今回の目的も組織の目的も解りません」

 俺は正直に答えた。


「ではなぜオリンポスの名前を知っているんだ?」

「王国で貴族派を操って王国を転覆しようとしていた組織です。戦っている中ある人から聞きました」

「ある人とは?」

「言えません。もうこの世にも居ませんし」

 ヘラの事も言えない。ミラに迷惑が掛かる。


「オリンポスとはずっと戦っているのか?」

「はい、帝国に来るときにも襲撃を受けました。腕試しみたいな感じでした。それに海賊もオリンポスの仕業でした」

 俺はこちらの秘密に対してバレないように言葉を選びながら説明した。


「オリンポスは何を狙って海賊をしたと思う?」

「資金集めではないかと思います」

 オリンポスについてはこれでいいかな。


「君のことについて聞きたい。君は個人としては法外な戦力を有していると思うが、なぜかね?」

「自分は貧乏貴族の三男に生まれました。領地の災害で学費を出して貰えなかった俺は傭兵として依頼をこなして学費を稼ぎました。その中で応援してくれる人や精霊、幻獣との出会いを通して仲間が増えて行きました。そしてエルフの国で大災厄の話を聞き、戦力として育てる決心をしました」

 話せるのはここら辺までかな。


「エルフの国では何を言われたのかな?」

「大災厄を戦う一人として頑張って欲しいと言われました」

 まあ、後はルシーダにでも確認してくれ。


「君の戦力はわたしが言えば貸して貰えるのか?」

「私が必要と思えば私と行動するでしょう。ただ、荷物を運べとか、人を送迎しろとかはお断りするかと思います」

「例えばオリンポスを殲滅して欲しいとかはどうだ?」

「彼らの戦力は大きく、未知数な部分も大きいので、簡単に敵対すべきではないと思います」

 無茶を言うな無茶を!!


「最後に自分の身分は学生です。身に降りかかる火の粉は排除しますが、自ら火の中に身を投じることは許していただきたい。フェリシダス様を御救いするために使った能力も、秘密にして頂きたくお願いします」

「いやだと言えば?」

 嫌な顔をする。俺を試すのか?

「今後、フェリシダス様が窮地に陥っても知らん顔をするかもしれません。」

「それは困る。秘密は守ろう」

 良し、言質を取った。

次回で第六章は終了します。

後は登場人物・設定紹介の回をはさんで第七章に入る予定です。

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