6-5 遺跡探索(3)
ご愛読有難う御座います。
今回は探索の終盤と探索が終わって、あちこちで起きるドタバタ劇です。
遺跡探索で謎の部屋に転移させられたレオン達、襲い来る魔獣達を倒すと出口らしきものが見えた。
一方、オリンポスのヘルメスは戦力を整え、フェリからあるものを奪う気で準備していた。
遺跡謎の空間 <レオン>
出口から漏れる明かりは、地面を照らしていない。俺達のライトの魔法が地面を照らしているに拘わらずだ。
「俺が先に入ります。フェリ様達はここで待機していてください」
明かりが漏れているのに中の様子はこちら側から一切見えない。不思議な出口だ。
いや、俺達が出口と思っているだけで、他の物かもしれない。
まず、俺は収納からロープを出す。
二m程を出口に投げてみる。ロープは壁との直線上で見えなくなる。
感触からこの先も同じ高さで地面が続いていることが解る。引いてみるとそのままのロープが出て来た。
取敢えず、危険は無さそうだな。
俺が振り返ると心配そうに眺めるフェリ様、ルシーダ、コトネ、アンナが居た。
俺はロープの先端をコトネに持たせて、ロープを引きながら出口に顔を入れる。
白い何もない空間だ。真下の地面以外何も見えない。
さらに一歩踏み出すが景色は変わらない。
もう一歩踏み出せばその中に全身が入る。深呼吸して一歩を踏み出す。
世界が変わった。いや、世界が変わったわけではない。景色が変わったのだ。
大理石の柱が並ぶ荘厳な空間、その外には雲のような物が床の高さにある。
床も大理石だ。奥の方には神像のような物が並んでいる。
振り返るとロープを持ったコトネ達が、これも不安そうに周りを見回している。
出口に入ったことで全員が違う場所に転移したようだ。
「よく来たね」
神像の方から声がした。神像の下に誰か座っている。
ゆったりとした古代の服を着た金髪の若者が居た。
フェリ様が走る。まるで最愛の人を見つけたように。
「初代様ですよね。私はフェリシダスです。言われた通りに眷属を率いてやってきました」
何か、うさん臭いものを感じるのだが気のせいだろうか?
「よく来た、フェリシダスよ。待って居ったぞ」
色々聞きたいことはあるが俺に発言権があるのかが解らない。
フェリ様は初代様の目前で跪いた。俺達もフェリ様の後ろに跪いた。
初代様はそのままの姿勢で何も言わない。暫く沈黙が続いた。
「初代様、私をここに呼んだ理由を聞かせて頂きたく存じます」
フェリ様は沈黙に耐えかねたように口を開いた。
「理由か、特にはない。しいて言えば大災厄が近付く中、わが子孫の実力を見たかった」
「それでいかがでしたでしょうか?」
フェリ様は、初代様の言い様に驚いていたが、グッと堪えていた。
「うむ、満足だ。大災厄の折には、そなたが指揮を執るが良い」
大災厄とはヴァルハラの事だよな。やはり帝国が中心になって戦うということか。
「父が存命ですが?」
そうだ。現皇帝が居るのにフェリ様が指揮は取れないだろう。
「気にするな。奴は内政向きで戦いにはなじまぬ」
うさん臭さが解った。初代様に感情が見えないのだ。
「私にできるでしょうか?」
「後ろに控える眷属が助けてくれるだろう」
無責任だな。見たとこ受肉精霊みたいだけど、ヤヌウニさんに比べると存在感が薄い。
「戦いに置いて、どのようにすれば勝てるのでしょうか?」
「さあな、俺には解らん。後ろの男にでも聞け。そいつの方がよほど準備しているぞ」
おいおい、何の為に呼び出したんだよ。
「ご苦労だった。帰り道を用意してやる」
のそっと起き上がると両手を広げた。
「お待ちください。また遺跡に来れば初代様に会えるのでしょうか」
「道はもう閉じた。必要な時は俺が会いに行く。さらばだ」
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遺跡の外の宿営地 <レオン>
俺達は遺跡の麓の広場に居た。唐突に戻ってきた。初代様もミラみたいな空間魔法を使うのか?
周りが騒ぎ始めた。俺達はフェリ様のテントに入れられた。
『ロキよ、初代様の正体が判ったか』
千年前の人物である。まともであるはずはない。
『受肉精霊だろうが魂がすり減っているのか、分けたのか。存在が薄い。現世にはほとんど影響を及ぼせないと思う』
「レオン、何をしておるのじゃ」
フェリ様が俺の顔を覗き込んでいた。
ああ、びっくりした。従者通信をしてたとは言えないな。
「少し、考え事を。初代様はなぜ俺達を呼んだのでしょう?」
「ワシに大災厄の時に指揮権を与えると仰ったでは無いか」
でも試練もしょぼかったし、何にもくれなかったよね。
「正直拍子抜けです。アンナ、お前は最後の部屋はどう思った」
自分に話を振られると思ってなかったのかあたふたしている。
「えっと、初代様以外に同じような感じのがいっぱい居ました。それに感じが魔獣ぐらいの強さでした」
やっぱりか。
「どういうことじゃ。説明できるか?」
フェリ様が納得できぬと言う顔だ
「その前にコトネはどう思った」
今度はコトネがあたふたしてる。可愛いぞ。
「あの、私は判りません」
「考えることを人に任せちゃいけない。最近、考えて俺に意見を言うことが減って来たぞ」
「はい、申し訳ありません。率直に言うと呼び出しといて、何もくれないんだと思いました」
おお、良く言った。でも初代様ラブのフェリ様が睨んでるぞ。
「それでレオンはどう思うのじゃ?」
おお、コトネを怒らなかった。いいですね。
「魔獣達も初代様も幻影じゃないかと思います。まだ試練は終わってない。そう感じます」
「意味が解らんぞ。なぜそんなややこしい事をする必要があるのじゃ?」
フェリ様が首を捻る。
「さあ、それは俺にも解りません」
俺は初代様じゃないから分りませんよ、そんな事。
フェリ様は明らかに不機嫌な顔をする。コトネにも言ったけど、自分でも考えようね。
その時半泣きのブルックスやアデライーデ達が現れてフェリ様は囲まれてしまった。
「フェリシダス様あ、ご無事でよかったあ、私の首も繋がりましたあ」
「フェリシダス様を見失ったのはウェルバルのせいです。罰するならウェルバルにして下さーい」
「ワシが悩んでおるのにうるさいわ。このボケどもぉ」
こりゃ収拾がつかんわ。
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アイスレーベン某所 <ヘルメス>
「王女が出て来ただと!それで何か、何か持っていなかったか?」
「そこまでは確認できませんでした。ただ荷物を片付け始めているので、明日朝からアイスレーベンに帰るのではないかと思われます」
部下の報告は遺跡に動きがあったことが解る。
「出て来たのか。こんなに早く見つかるとは思わなかったぞ」
荷物の量から言って二、三日掛かる予定だったはずだ。それが一日で帰るということはあれが見つかったのに違いない。
「おい、全員に出撃の用意をさせろ。夜明けに出発して例の場所に陣取るぞ」
「はい、分かりました」
本来なら夜襲をかけたいところだが、遺跡には隠れる所がたくさんあるから、逃がしてしまうと大変だ。それに夜襲に向かないうるさい奴らがいるしな。
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フェリ様のテント <レオン>
俺達は夕食後フェリ様のテントに呼び出された。
「皆、明日帰ると言っておるが、どうしてじゃ」
フェリ様、あんたが行方不明になったからに決まってるじゃないですか。
「フェリ様に危険があったので適切な処置と考えます」
フェリ様はムッとした顔になる。
「ワシは遺跡の探査をほとんどしておらんが?」
我まま言わないでよ。
「初代様も道を閉じると言っておられたではないですか」
「つまらんのじゃ。折角外に出られたのじゃ。もっと面白い事をしたいぞ」
「フェリ、我まま」
ルシーダが呆れている。
「アタイも退屈だ。なんか面白い事無いのか」
初代様の所に行けなかったジェリルもフェリ様に同調し始めた。
明日は朝起きてから朝食を摂って、テントを片付けて、十時ごろにアイスレーベンに出発の予定だ。
フェリ様達の相手をしている暇はない。
それに何かするにしてもブルックスさんとアデライーデさんが許す訳が無い。
ということで諦めて貰おう。
******
帝城 皇妃の居間
フェリの行方不明の件は、まだ皇帝には届けられていなかった。
「フェリシダスは大丈夫であろうか?」
「安全な遺跡ですし、護衛もたくさん付いてます。大丈夫です」
皇帝は早い時間から皇妃の部屋に来てフェリシダスの心配をしていた。
「でも何かあったらあの子は・・・・」
「もう、何回目ですか!いい加減にして下さい!」
皇帝が同じことを何回も聞いてくるので皇妃がちょっと切れた。
「でも・・」
「あの剣術指南役も付いてますから、何があっても大丈夫です」
皇妃は宥めるつもりだった。
「あのレオンハルトとか言う若造か。もしかしてフェリは・・」
「ちょっと好意を抱いてるようですね」
皇妃がしまったと思ったが後の祭り。皇帝の顔が真っ赤になる。
「あのガキ!、許さんぞ!フェリはお父様のお嫁さんになると言っておったのだぞ」
「そんな幼い頃の話でしょう。フェリも成人しましたし、恋の一つや二つして当然でしょう」
皇帝の顔が今度は青くなり顔を両手でおおった。
「フェリー!、パパを見捨てないでくれえ!」
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アイスレーベン某所 <ヘルメス>
まだ薄暗い夜明け前、八台の幌馬車が用意され、うち六台には満員の人が乗っている。
「良し、出発だ」
部下が俺の馬車に走って来た。
「アーレス様とヘスティア様がいません」
「何い!」
主力の奴らがいなくては出発できんではないか。
「探せ!」
そういやあいつら昨日酒盛りをしていたな。
「おい、昨日酒盛りをしていた部屋を見て来い!」
部下が戻ってきた。
「居ました。でも動かそうとすると暴れるので、手古摺ってます」
「人数を連れて行って、戸板かなんかに乗せて担いで来い」
「はい」
「デメテル様がでかい寝具を持ち込んで、馬車一台を占領してます」
「おのれ!静かだと思ったらそんなことを!ええい、四、五人一緒に詰め込んどけ」
後で騒がれるとまずいな。
「乗せるのは女兵士だぞ。男は入れるな」
なぜ俺がこんな苦労をしないといけないんだ。あいつら、これが終わったらゼウス様にチクってやる。
もう周りが白々としてきた。早くしないと大勢で移動するのが、目撃されてしまう。
それを皇女たちに知られたら警戒されるじゃないか。
「よし、出発だ。静かに出ろよ」
馬車が動き始める。
「ヘスティアのバカヤロー!!」
「アーレスの弱虫がー!!」
夜明けの街に二人の寝言がこだまする。
もう嫌、誰か代わって。
次回は、オリンポスの襲撃を受けるレオン達の予定です。




