6-2 遺跡探索に出発
ご愛読有難う御座います。
いよいよ、遺跡に出発する一行。いろいろ準備に奔走します。
帝都の北で先史時代の遺跡が見つかり、夢で呼ばれたというフェリについて行くことになったレオン達。何やら不穏なことを企む第一皇子とヘルメス。
帝城近くのレストラン <ヘルメス>
第一皇子の呼び出しでここに居るのだが、第二皇女の遺跡探索日程が解ったかな。
あの遺跡は我々が探していたものに間違いはないだろう。出土した魔道具もそれを裏付けている。
ただ肝心な物が無いのだ。
我々も秘密裏に遺跡に潜ってみたが、見つけることが出来なかった。
こうなったら第二皇女が探し当てたら、それを強奪するしかない。
来たようだな。
扉を開けて現れたのはやはりフランツであった。
「おい、ヘルメス、皇帝が三男坊に面会を求めたぞ。どうするんだ!」
「まあまあ、落ち着いて下さい。まずお座りになって」
やはり、あのレオンハルトと言う男は、俺が推し量ることのできない力を持っていると考えた方が良いな。
ゼウス様がわざわざアーレスを使って腕試しをするはずだ。
「相手は成人したばかりとは言え、貴族の子息です。娘に剣術指南をするとあっては黙って居れないのでしょう」
フランツは不器用にガタガタと椅子を引き、着席した。
「皇帝があいつを認めたならフェリシダスの戴冠が近付くのではないか?」
だから帝笏がお前を認めることはないって。
「さあ、帝笏が何をもって皇帝を定めるのか、凡人たる私に分るはずもありません」
今までの皇帝を見る限り、帝笏の指名は間違っていない。だから帝国はこんなに強大に成れた。
だから候補がお前ひとりになっても選ばれないんじゃないかな。
「それよりも探索日程は解りましたか?」
「それよりとは何だ!?俺にとっては死活問題なんだぞ!!」
「皇帝はまだまだ、お元気です。今から次期皇帝を考えていたら疲れてしまいますよ」
こいつもそうだが第二皇女まで焦っているように見受けられる、なぜなんだ?
フランツは仕方ないと言うようにため息を一つ吐いた。
「フェリシダスは学園が夏休みに入ったら、一週間から十日間で探索するらしい」
それを最初に言えよ。日程はかなり余裕を見ているようだ。帰りを狙うより遺跡で張り込んだ方が良さそうだな。あいつと従者がいる以上、相当な手練れを用意せねば。
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帝城 謁見の間 <レオン>
「皇帝陛下、皇后陛下、御出座しィ」
侍従の声が響く。俺は下座で跪いている。
あー緊張する。我慢しろ・・この国で成り上がるなら皇帝に顔を覚えて貰えれば有利だ。
顔を伏せているので解らないが正面の玉座に着席した気配がする。
「ヴァイヤール王国 伯爵 フリードリヒ=イエーガー殿の三男 レオンハルト=イエーガー殿であります」
侍従が俺の紹介をする。
「うむ、直答を許す、表を上げい」
これが皇帝の声か。思っていたより若いな。レオンは視線を上げるが皇帝の胸の辺りで止める。皇帝の目を直接見ることは無礼とされている。
「フェリシダスとジークフリートの剣術指南役、難儀を懸ける。二人からは思わぬくらいの上達を果たしているように聞き及ぶ。そなたの師匠はどなたであるか?」
「は、私の師匠はホウライ国の貴族ヨシムネ=トクガワと申します。師匠はホウライ国で刀術をシンタン国では気功術を収め、旧イエーガー領では農業指導や土木技術も披露されました」
「ヨシムネ=トクガワとな、それは新しいセイイ大将軍の名前ではなかったか?」
皇帝は俺と言うより侍従に聞いたようだ。それよりセイイ大将軍ってなに?
「はい、数カ月前のシンタン国の便りにその名前がありました。何やらこちらで武者修行したことも伝わっています」
「やはりそうであったか。お前はセイイ大将軍に手ほどきを受けたか?」
俺は焦った。そんな大層な役職は聞いたことが無い。
「いえ、師匠は親と兄弟を流行り病で失ったから、戻って家を継ぐとしか聞いておりませんので、そのような役職を聞くのは初めてで御座います」
「まあ、言っても解らないだろうから言わなかったのだろう。ホウライ国を統べるのはミカドで、実務として国を治めるのがセイイ大将軍だ。まあ、実質的な王と言って良い」
ええ、そんな高貴な人だったの、知らなかった。
「知りませんでした。高貴な方だとは思っていたのですが」
「まあ良い、お前の刀術の素性が怪しいものではないと解ったが証拠はあるのか?」
「はい、師匠と別れる際に刀をいただきました」
この部屋に入るときに預けたので手元にはないけどな。それにコトネの預かり賃だと言うのは内緒だ。
預けてあると言ったら侍従が持ってきた。
皇帝は左手で鞘を握り、右手で柄を握り、自身の顔の前に持ってくる。
左手の親指で鍔を押す。鯉口を切ると言う奴だ。
チャキッ
ハバキが顔を出す。そこにはトクガワ家の家紋が彫られている。
うむっ。納得したような声を出すと右手で刀を抜く。鞘を侍従に渡す。
両手で柄を持って、刀身を縦にして顔の前に・・・・。
ニ、三分、刀をじっくりと眺める皇帝。横に座った皇后が声をかける。
「陛下!」
「う、・・・うむ、済まぬ」
皇后に謝る皇帝。鞘を受け取り、名残惜しそうに刀身を鞘に納め、侍従に渡す。
「確かにトクガワ家由来のものだ。西大陸にはこれを超える物は無いくらいの逸品だ」
皇后さまがホッとした表情を見せる。自分の子が学んでいる武術が怪しいものでないと知って安心したのだろう。
「そなたには数々の武勇伝があるがこの刀を使ったのか?」
「はい、すでに何人か斬っております」
「そんな‥そうだ、刀を朕にあず・」「陛下!!」
皇帝は皇后の一声で黙ってしまった。この皇帝は皇后さまの尻に敷かれているみたいだ。
後でフェリ様に聞いたが、皇帝は刀剣のコレクターらしくて、俺の刀が欲しくて仕方が無かったみたいだ。
「遺跡探索ではフェリの事をお願いします」
「分かりました。この身に変えましても王女様を守ると誓います」
皇后さまのお願いにこれくらいは言っとかないと駄目だよね。
「レオンハルト殿は高等部を卒業したらどうするおつもりですか」
続けて皇后が俺に質問した。
「私には一つの試練があります。それが終わらないと次に進めないのです」
「お父上との対戦ですか」
ああ、そこまで調べてるんだ。そうだよな、娘を預けるんだから。
「はい」
「そなたの能力であれば、帝国に残れば、相応な地位が得られるであろう。それも考えておいてくれ」
皇帝が俺を必要な人材と思ってくれたようだ。有り難い。
「はい、有難うございます」
そしてどうやら剣術指南役として合格したらしい。
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アキラの店 厩の前 <レオン>
「今日はたくさん積み込んだねえ」
野宿用のテントや寝袋などを幌馬車に積み込む俺の後ろにアキラさんが居た。
「明日から遺跡探索に向かうのですが、皇女様や近衛兵の人達と一緒ですから、収納庫を見せる訳にもいかないでしょう」
アキラさんは羨ましそうに俺達の旅の準備を見ている。
「また、皆で旅にでも出たいねえ」
「おい、遺跡探索ってなんだ!」
いつ来たのかジェリルが顔を出した。
俺は皇女と遺跡探索に行くことを説明した。
「アタイも行く、仲間外れはひどいぞ」
いやこれは公務だからと説得したのだが、それ位で引き下がるジェリルではなかった。
結局皇女の許可次第ということで、待ち合わせ場所の北門まで一緒に来ることになった。
「レオン様なぜ断らなかったのですか」
コトネの機嫌が悪い。
「お前もジェリルの押しの強さは知ってるだろ」
「レオン様は女に弱いのよ」
アンナが横から口を出す。
何で、俺ばかりが責められる。
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帝城 近衛兵駐屯地 <フェリ>
「姫様、ベッドは無理です」
初めての旅行でテンション爆上げのワシに近衛の女騎士アデライーデが駆け寄った。
「なぜじゃ。ベッドが無ければ眠れぬではないか?」
巨大なベッドを召使たちに運ばせるフェリにアデライーデが必死に応対している。
「姫様用に小さいですが寝台はご用意いたしますので、そのベッドは諦めてください」
いつの間にかベッドの後ろに荷物を抱えた召使たちが列をなしていた。
「ああ、ウェルバル、おまえ姫様にどういう説明をしたんだ!」
そばで知らん顔でながめていたウェルバルにアデライーデは文句を言う。
「ああ、ハイ。持って行きたい物は持って行ったらいいんじゃないかと」
「馬鹿者!!お前は遠征を何と心得ているのだあ!!」
アデライーデは激高しているのにウェルバルはノホホンとしている。
「ちゃんと駄目なものはアデライーデさんが駄目って言いますからと言ってありますよ」
アデライーデは手を額に当て俯いた。
「ほら、殿下があんまりいっぱい持ってくるから、アデライーデさんが頭を抱えちゃったじゃないすか」
「ワシのせいだと言いたいのか?」
「え、違うんすか?」
ワシはウェルバルの頭をゲンコツで殴る。
「イテテ、暴力反対っす」
そこへ旅行鞄一つを下げたルシーダが現れて、ワシの荷物を見渡す。
「フッ」
そそくさと荷物を預けに行きおった。
ウー、ワシはどうすれば良いのじゃああ!!
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帝都外壁 北門 <レオン>
旅立ちにはいい天気になった雲は無く、風も柔らかなさわやかな日だ。
すでに王家の馬車は到着しており、俺はフェリ様にジェリルの事を報告した。
「ほう、そなたの傭兵仲間か。・・・海賊退治の時に一緒に戦ったのか、それは頼もしい」
すんなり同行を認めて貰えた。
近衛の人達とも顔合わせしなきゃいけない。何かあった時に敵味方の区別がつかないからね。
まず、今回が初めてのアデライーデさん、護衛対象者が女性ということで選ばれたそうです。
そして責任者のブルックスさん。部下のウェルバルさん。そのほか十七名の近衛兵。
配置は一番前が騎兵が二名、次が近衛兵六名を乗せた幌馬車、俺達の幌馬車、騎兵二名、殿下の馬車、騎兵一名、近衛兵七名を乗せた幌馬車、騎兵二名となっている。
殿下の馬車にはフェリ様、ルシーダ、ゲルトルート、考古学者のギュンター博士が乗っている。
ちなみに俺達は俺、コトネ、アンナ、ジェリルの四人だ。
さあ、行こう遺跡まで二日の行程だ。
「おーい待てえ、待ってくれ」
ジーク様が馬に乗って来た。
「ウェルバル!!こいつを城に放り込んで来い!!」
フェリ様は馬車から顔を出すことも無くウェルバルに命じる。
「やれやれ、こんな役ばっか!」
ウェルバルはジークに馬を寄せると同時にジークの馬に飛び乗った。
ジークから手綱を奪うと馬の方向を180度回す。
「昼までには追い付くっすから、昼飯を取って置いて欲しいっすぅ!!」
帝城に向けて自分の馬を引きながら馬を走らせる。器用なもんだ。
「おーい、誰か止めろお!!」
ジークの叫びが遠くなっていく。その速度で走られたら飛び降りも出来ないな。
さあ、気を取り直して出発だ。
次回は遺跡に到着して探索を開始する予定です。




