6-1 発見された遺跡
ご愛読ありがとうございます。
第六章の始まりです。新しく発見された先史時代の遺跡の秘密を巡ってオリンポスとレオンの争奪戦が始まります。
武闘会、本戦への出場が決まったレオンと仲間達は毎日の訓練に精を出します。
帝城近くのレストラン <第一皇子フランツ>
おのれえ、あの王国出身の無能者め、新人戦で優勝してしまったではないか。皇帝が興味を示せばフェリシダスの株が上ってしまう。
そんなことを考えているとドアがノックされ、ヘルメスが入って来た。
「遅いではないか!!」
悪びれた顔もせずに席に着くヘルメスに罵声を浴びせた。
「おやおや、ご機嫌斜めでございますねえ。どうされました?」
解っているくせに惚けおってえ!!
「決まっている!王国のレベル1の事だ。何とかしろと言っただろ!」
「そう、唾を飛ばさないでください。料理も来ますのでそれから話しましょう」
俺を馬鹿にしてやがるのか?何か自信有り気だ。不気味な奴め。
料理が来た。こいつを呼び出せば、最高級の料理がタダで食えるからな。うーんうまい。皇帝はケチだからなかなか豪勢な料理は食えないからな。
「それでレオンハルト=イエーガーの事ですが、奴に勝てるような傭兵が居りませんし、従者を狙ったのですがこれも強い。並みの傭兵では勝てませんでした。おかげで部下が一人死んでしまいました」
「そ、そうか。それでどうするつもりだ」
部下が死んだのか?怒っていないだろうな。
「今の所、正直打つ手がありません。強い傭兵を雇えば目立ちますし、奴らも警戒してか帝都を離れません」
「帝都内では無理なのか?」
機嫌が悪そうなので恐る恐る聞いてみた。
「私も帝都内で商売する以上、ここで騒ぎを起こすわけにはいきません」
「そこをなんとかできないのか?」
あ、怒った。そんな怖い顔をするなよ。
「そこまでおっしゃるならご自分でやられたらどうですか?」
「そんなこと言うなよ、な」
ふーと大きなため息を吐きやがった。
「おまえ!今、俺に向かってため息を吐いたな。許さんぞ!」
「では、今後のお付き合いはやめましょう。それがお互いのためのようです」
そう言って席を立った。馬鹿にしやがって!待てよ。付き合いが無くなるということは・・・。
「まて、か、金は、金はどうなるのだ」
俺は立って奴を引き留めた。
「もちろん、終わりです」
「俺は次期皇帝だぞ。それを邪険にしていいのか?」
「帝笏に選ばれたのなら連絡をください。では、失礼します」
ああ、このままでは縁の切れ目が金の切れ目となってしまう。・・・おおそうだ!
「折角いいネタを拾ったのだが、要らぬと申すか?」
奴は座り直した。果たして奴の気をひけるのか?
「お聞かせ願えますか?」
「実は帝都の北で大規模な先史時代の遺跡が発見された」
奴の顔色が変わった。よし食いついたぞ。
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ハイデルブルグ学園 武闘館
季節は春から夏に移り、帝国では季節風と海流の関係で、どんよりとした日が続く。
今日も朝から降った雨で普段使う練習場はぬかるみ、用をなさなかった。
<フェリ>
ワシは不機嫌だ。
「今日も練習は出来んぞ。お前達もご苦労なことだ」
周囲に居る見物客に皮肉を言う。
レオンが優勝してから見物客が増えた。練習方法を盗みたいのであろう。
「寮の談話室を借りる。行くぞ」
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ハイデルブルグ学園 高等部学生寮 談話室 <レオン>
談話室とは寮に住まう生徒と近親者などの訪問者が面会する場所である。今回は王女であるフェリがレオンを訪問したという形で借りることが出来た。
基本、内輪の話をする部屋なので密談も可能だ。もちろん高度なセキュリティなどは無いが。
そこにいつもの六人が入った。
六人掛けの長机にフェリ様とジーク様、ルシーダ、向かい側に俺と二人の従者が座った。
「話がある」
フェリ様は大仰にそう言った。
「実は帝都の北で先史時代の遺跡が発見された」
遺跡なんて俺達に関係あるのか。
「我々と関係があるのですか?」
コトネが俺の心の声を聴いたのかそう尋ねた。
「それがだ。ちょっと興味深いことになって来たのじゃ」
フェリ様の話を要約すると遺跡は先史時代の住居跡がそのまま埋まった状態で見つかった。
遺跡は巨大で幅1km奥行きが2kmもある。問題はその中に宗教施設らしいものが発見され、そこから多くの魔道具らしきものが発掘されたらしいのだが、それが忽然と消えたのだ。
「それで調査をさせておったのじゃが、どうにも解らん。あの第一皇子が関わったと思うのじゃが、きれいに証拠がない」
「それで我々にそれを調べろと?」
「いや、いかにお前達でも専門外であろう。やって欲しいのはその宗教施設の探索じゃ」
「探索ですか?」
「そうじゃ。アンナの力を借りたい。アンナにはワシ達が解らぬことも探索できるのであろう」
「それはそうですが、その建物はすでに調査されているのではないですか?」
「調査員の話を聞いて、なぜか腑に落ちんことが多くてな。施設の大きさの割に中でやられてたと思われることの規模が小さいのじゃ」
「我々が入れるのですか?アンナだけ貸せと仰るならお断りしますが」
コトネとアンナは狙われたばかりだからな。それは解って貰おう。
「うむ、調査では危険はなかったそうじゃが、お前の気持ちもわかる。そこで後二週間で夏休みじゃ。皆で行こうと思っておる。皇帝の許可は取れたぞ」
娘をそんな所に行かせるなんて何を考えているのだ。
「物好き」
ルシーダは遺跡を調査するのが物好きだと言いたい様だ。
「何を言うか。これで何か有意義なものを発見できれば、ジークより皇帝に近くなると思わんのか」
「姉上ずるいぞ、俺を置いて行く気か」
本人を前に言っちゃうからもめるんだよ。
「駄目だ二人に何かあると皇帝候補にロクな奴が残らん」
ほら言い合いが始まった。二人はモメだしたが、なぜフェリ様が行きたがるのか、それが解らん。
弟のジーク様はコトネの同級生だし、現皇帝は四十台、何も無ければ治世はあと二十年は続くと思うし、何を焦ってるんだろう。
「俺達だけで行くと言うのはどうでしょう。フェリ様が行かせるのだし、殿下の手柄になるじゃないですか」
「却下じゃ。ワシが行かねばならんのじゃ」
「なぜですか?意味が解りません」
「意味不明」
「わからずや」
俺、ルシーダ、ジーク様から責められるフェリ様だが、流石に顔色が変わってきた。
「そう皆で責めるでない」
「では理由を教えてください」
「笑うなよ。いいか、笑うなよ!初代様がワシを呼んだのじゃ!」
「「「「「?」」」」」
皆がポカーンとなった。アンナは何のことかわかってない様だが。
「初代様と言うとアレクサンダー=リヒトガルド様ですか?」
「そうじゃ。初代様が遺跡にお前の眷属を率いて来いと言ったのじゃ」
「夢?」
「そうじゃ夢で言われたのじゃ。それからすぐに遺跡が見つかったから迷っておったのじゃ!」
ルシーダさんが当たりだ。それでか。まあ、何かあるとは思ったけど。今の時代でも夢のお告げはよく聞くし、霊界との通信と言う人もいるぐらいだ。そうそう無視は出来んだろう。
「なんだ夢の話か。姉上も迷信深いのだ」
「お前はワシの眷属ではないから着いて来るな」
「そんなあ。姉上、初代様、ごめんなさい。連れて行って下さいよ」
「眷属と言うのは?」
「うむ、やはりワシが選んだお前達じゃと思う。ルシーダとレオン、それからレオンの従者。この四人だと思うのじゃ。ブルックスやウェルバル、ゲルトルートは信用できるがワシが選んだわけではないからな」
ルシーダは学友兼学内での護衛だ。ブルックス、ウェルバルは護衛の兵士、ゲルトルートは専属メイドだ。
「分かりました一緒に行きましょう」
「そうじゃろうな。夢の話では行くとは言えんわな」
あれ、行くって言ってるのに。
「レオン、行く、言ってる」
ルシーダの言葉にびっくりしたように俺を見るフェリ様。
「ええ、いいの?本当に?」
フェリ様は驚いて地が出ている。彼女ののじゃ言葉は対外的な見栄で喋っている。本当は普通の喋り方だ。ルシーダとよく似ている。
「本当です。お前達も行くだろう」
「「はい」」
「まさか一回で信じて貰えるとは思わなかった。嬉しい」
「フェリ、言葉、戻ってる」
「え、・・嬉しいのじゃ。これでいい?」
これには皆が笑った。
「俺はどうなるのだ?」
一人蚊帳の外に置かれたジーク様が怒ってるが、身内の話はフェリ様に任せておこう。
「まず、皇帝に許可を得るのじゃ」
「そんなの許してくれるわけない。姉上も一緒に頼んでよ」
この姉弟は仲が良いくせに反発しあうと言う困った人たちだ。
「なぜ、ワシが?甘えるでない」
「それじゃあ母上に姉上が危ない事をするつもりだと話に行こうっと」
こういう争いは俺達の居ない所でやって欲しい。
「ふん、やってみい。全く剣術修行にも潜り込みおって」
「あれは助かっておるぞ。三カ月でクラスの順位が随分上がったからな」
「本当はコトネに会いたいだけじゃろうが」
「う、」
可哀そうに急所を突かれて、顔が真っ赤だ。
そろそろ止めてやるか。
「そろそろ護衛の方が迎えに来られます。練習場に参りましょう」
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帝城近くのレストラン <フランツ>
向かい合う席に座る俺とヘルメス。
「今日はどういった御用でしょうか」
今日はヘルメスは下手に出て来た、横流しした魔道具が役に立ったようだ。
「フェリシダスが魔道具の行方を探っておるのだ。大丈夫か?」
「大丈夫ですとも。証拠も残ってないし、追跡も出来ないようにしてあります」
俺はホッとする。こんなことがバレたら城から放り出されるからな。
「そうか、良かった。フェリシダスが遺跡に潜ると言っていたので、心配して居ったのだ」
「何と第二皇女が?それで随行人員は誰ですか?」
なぜそんなことを聞くのだ。もう遺跡には何も残っておらぬのに。
「エルフとあの三男坊を連れて行くとか言っていたようだ」
「なにかありそうな予感がします」
「そうなのか?」
搾りかすの遺跡に何があると言うのだ?
「それでいつ向かうのですか」
「日は聞いていない」
途端に渋い顔になる。
「わ、わかった。調べて連絡する」
「お願いいたします」
途端に笑顔になりやがった。
最近、こいつが怖くなってきた。けど金も欲しいから縁は切れないよなあ。
次回はレオンの皇帝との面会、そして遺跡への予定です。




