5-7 新人戦予選
ご愛読ありがとうございます。
今回は襲撃された黒幕探しと新人戦の開幕です。
魔獣狩りの帰り、コトネとアンナが襲われた。レオン達は八人中四人を捕えていた。
死んだ四人を埋葬した後、生き残った四人を尋問することにした。
少し開けた街道から見えない場所を探して、そこに馬車を運んだ。
<レオン>
さすがに子供ばかりでは迫力が無いので、ノルンにドラゴンの姿に変身して貰った。
供述の整合性を取るために尋問は一人ずつ行う。
まずはリーダーらしい女性からだ。
足の縄を解き、目隠しを外した。目の前にドラゴンが居ることを知り、逃げようとした。
「いいか、騒いだり嘘を言えば、ドラゴンに食わせる。解ったら頷け!」
頭をこれでもかというスピードで縦に振る女。
・目的は俺の従者の女児二人の誘拐。
・雇った人間は酒場であった男で名前も知らない。
・前金に大銀貨二枚、成功報酬は金貨五枚だった。
・連絡は酒場で行われ、三日前に全員集められた。
・魔獣狩り終了後に後をつけて、女児だけになった時に決行。
・誘拐後は途中の村で受け渡しをする。
他の三人も同じことを言った。
さーてどうするか。俺達を狙う理由を知りたいけど、受け渡し場所に俺達が行ったら逃げられちゃうよね。
そういや、まだ使ったことが無い魔法があったよね。使ってみるか。
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ラントドルフ村 <レオン>
一時間程馬車で帝都方向に向かった所にその村ラントドルフはあった。
村は街道沿いに家が両側に建てられており、幌馬車は黄色い布が入り口に結ばれた家に入って行った。
すると一人の男が出て来て「裏へ回れ」指示をする。
幌馬車が裏へ回ると二人の商人風の男女が出迎えた。
「首尾はどうだ」
商人女が聞くとリーダーの女が幌馬車から顔を出した。
「連れて来たさ」
「見せて貰おう」
「金を見せろ」
商人女にリーダー女が返答する。
商人女が顎で商人男に合図をすると、商人男は懐から袋を出し、中の金貨を見せる。
「降ろしな」
リーダー女の指示で幌馬車から二人の男が縛り上げられたコトネとアンナを降ろす。
「間違いありません」
商人男は商人女に伝えた。
「良し、ご苦労だった。金を持ってどこへでも行くが良い」
「馬車は貰えないのか?」
商人男は金の入った袋をリーダー女に渡し、コトネとアンナを受け取る。
「馬車は足がつくとまずいんでな。処分する」
商人女がそう言った瞬間、コトネとアンナの縄ははじけ飛び、コトネは商人女のアンナは商人男にナイフを突きつけた。
「おとなしくしろ!騒げば殺す!」
コトネのナイフは商人女の首に、アンナのナイフは商人男の脇腹に当たっていた。
不意を突かれた商人男はリーダー女に叫ぶ。
「おい、助けろ!金は渡す」
リーダー女は無視した。幌馬車から俺が降り立った。
「レオン様、家の中にもう一人います」
アンナが叫んだ時、家の裏の納屋の扉が吹っ飛び、中から馬が飛び出した。
商人女がコトネの拘束を振り切り、馬に飛び乗る。
コトネは首を掻き切っている。
しかし首は斬れなかった。
「くそ、スキンアーマーか!」
コトネは服のある部分に当てるべきだったと悔しがったがもう追い付けない。
続いてもう一頭の馬が走り出て、それには男が乗っていた。
その男は剣で商人男の首を飛ばすとそのまま去って行った。
今からでは逃げた二人に追付けない。
「やられたな」
「申し訳ありません」
「向こうが上手だった。仕方ない」
「レオン様ああ」
アンナが商人男の首から出た血で、上から下まで真っ赤になっていた。
「あちゃあ」
俺は上を向き額を叩いた。
納屋の中で馬が一頭死んでいた。俺達に後を追わせないためだろう
リーダー女達に商人男と恐らく彼の馬だったろう死体を埋葬させ、俺は家の中を家探し、コトネにはアンナを綺麗にして貰う。
結局手がかりは何一つ残っていなかった。馬車で足が着くと言っていたのでアキラさんの伝手で調べて貰おう。
リーダー女達には金貨を一枚渡して解散させた。
彼らが俺達に協力したのはティムしたからだ。ヘラがコトネをティムしようとしていたから人間にもできるかなと思ってやったらできた。ただ相当精神を弱らせないと出来ないことが解った。無条件で出来ればそれはそれで恐ろしいからな。
彼らには俺達の事を人に明かさない事、悪い事をしないことを命令して放してやった。
俺達は分捕った幌馬車で帰途に就いた。
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帝都内某所 <ヘルメス>
ここはヘルメスと腹心のものしか知らない場所だ。
椅子に座るヘルメスの前に、以前アキラの店の情報を探った若い男が頭を下げ跪いている。
「ヘルメス様、申し訳ありません。女児の拉致が失敗いたしました」
「ふむ、原因は?」
俺は平静に聞き返す。
「はい、女児たちもなかなかの腕です。特に大きい方は魔獣狩りで、ガララトのジェリルに次ぐ結果を残しております」
「左様か。それは俺のミスだな。情報不足だった。こちらの情報は」
「はい幾分も漏れて居りません」
俺はため息を吐く。
「ゼウス様があれにアーレスを差し向けた意味がようやく解ったよ」
「今後いかがいたしましょう」
「そうだなアキラの店を中心に情報を探れ、出来れば店に此方の人間を入れたい」
「は、そのようにいたします。皇子の方はどういたしますか?」
そうだよあいつが居たよ。ゼウス様は帝国に進出するつもりがあるのか?それによってはあいつも利用価値があるのだが。
「付け届けだけはしておけ」
レオンのお陰でヴァイヤール王国の侵略はほぼ不可能になった。要所要所に顔を出し、こちらの思惑をひっくり返す。今度は帝国での資金稼ぎを妨害しやがる。一体奴は何者なのだ。
待てよ。奴は行き当たりばったりの正義感で行動しているにすぎんのじゃないか。ならば必要以上に敵対すればこちらが割を食うのではないか。
あー、僅か十五歳の男になぜこんなに悩まねばならないのか。もう知らん。
「ああ、ヘルメスが落ち込んでるよ。ウケるう」
いきなり派手な服装の若い女が絡んできた。
「デメテルか、何か用か?」
ゼウス様が何が良くて幹部に選んだのか解らない女だ。
「あんた、ガキにやられてんだってェ!マジ、ナサケネエ!!ギャハハハ」
「やかましい!てめえもガキじゃねえか!」
絨毯の上で笑い転げてやがる。
「お前、何の用で来た?」
「ん、本部に居たけど暇だからぁ、ヘルメスに遊んでもらおうと思ってぇ」
暇つぶしにきただとぉ。
「今だったら本部にアーレスやヘスティアも居るだろう。あいつらに遊んでもらえ」
奴ら若い武闘派は本部に仕事はないはずだからな。
「それがさ、あいつら目の色変えて修行始めて、なんかウザくネ」
「その原因がお前の言うガキだ」
「ええ、そうなのぉ。じゃあさ、アタシの魅力でそいつをメロメロにしたら、ゼウス様に褒めて貰えんじゃね」
何言ってんだこいつ、お前に惚れる奴なんかいねえよ、これ以上問題を複雑にされてたまるか。
「帰れ!お前が居るとややこしくなる」
「ちぇっ、面白くねえの。仕方ない、ポセイドンのおっさんにおいしいものでも食わせてもらうか」
「そうしてくれ」
すまん、ポセイドン。また酒でも奢るからな。
「じゃあ、また来るねぇ」
「もう来るな!!」
デメテルは嵐のように去って行った。
「暫くは情報を仕入れていた方が良さそうだ」
ヘルメスは大きなため息を吐いた。
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五月中旬 ハイデルブルグ学園
一年生の武闘会は毎週末の午後の授業を中止して開催される。ケガをした場合週末で治療できるので、学業に影響が出にくいという事情がある。
武闘会のルールを簡単に紹介しておこう。魔法は禁止で、武器は剣のみ、刃渡り1m、重さが1kg、中心に鉄を通し、弾力のある樹脂でコーティングされる。防具はヘルメット、胸腹腰肩を守る鎧、手甲を装備する。
勝敗は審判が戦闘続行が不可能なケガをしたと認定すると1ポイント、合計2ポイントで勝利だ。
基本公平に勝負できるようになっている。一年生は武器や防具に慣れてないので、別なトーナメントをして、上位二人を秋に行われる全校の武闘会に進出させる。
出場資格はレベル3以上だが、レオンはレベル3以上の実力が認められて出場する。
女性はスキンアーマーが認められないので参加者はいない。
すでにレオンは三回勝利しており、後二回勝てば全校武闘会に出場できる。
講堂特設会場 <レオン>
「良いか、レオンよ、相手はレベル5じゃ。まともに撃たれれば防具の上からでもケガをする。気を付けるのじゃ」
「大丈夫です。任してください」
俺は平静を保ってる。別に相手を軽んじてるわけじゃない。何時でも全力が出せるように訓練した結果だ。
試合場は線で区切っただけの20m×20mの板間だ。
俺と相手の名前が呼ばれると試合場の周りに居た生徒から歓声が上がる。
赤、俺と白、相手は5m程の間合いで対峙した。
審判から「始め」の声が掛かる。
相手が大上段に振りかぶり、突進してくる。俺は右足を引き突進を避けると同時に相手の頭に一撃を食らわす。相手の大振りで切っ先が音速を超えたのか、バーンという音と衝撃波が発生した。
相手はニ、三歩歩いて止まった。
あれ旗が上がらない?
「あの、今相手の頭を打ちましたが」
審判に抗議するが何を言っているみたいな対応だ。衝撃波で俺の打撃音が打ち消されて解らないみたいだ。
仕方が無いので、突っ立ている相手の頭を後からパーンと良い音をさせて叩いてやった。
「赤一本」
今度は俺の旗が上った。
「君!開始線に戻って!」
審判が相手に言うが気を失っているので、身動きしない。
相手の顔を覗き込んでようやく気を失っていることが解ったみたいだ。
「白戦闘不能につき、赤の勝ち!」
会場の様子が?????という感じでどうなったのか解ってないみたいだ。
その後相手が担架で運ばれるのを見て、自滅したのではないかと噂された。
「どうなったのじゃ?」
「衝撃波、失神」
ルシーダは相手が自分の出した衝撃波で失神したと言いたいらしい。
「違いますよ。俺が避けた時に頭に一撃入れたんです。頭を揺らすように打ったんで、脳震盪を起こしたみたいです」
「では相手が止まった時には、もう勝負がついておったのか?」
フェリ様は大仰に驚いている。
今の相手は変化も無ければ工夫もない。ただただ速度と力に頼っただけだった。それならレベル5でも怖くない。
「おい、次の試合が始まるぞ」
フェリ様の声で試合場を見るとレベル4とレベル5の試合らしい。
試合は一方的だった。レベル5の方が片手で剣を振り回し、二の腕とか太ももなど防具の無い所を打ちまくる。刃筋は通ってないので、斬撃として認められてないが、相手に与えるダメージはでかい。
ルールを逆手に取った戦法だ。鎧相手でも有効だろう。
すぐに相手が動けなくなって降参した。
「どうする、来週はあいつが相手じゃ」
「ウーン、まだ実力を隠してる感じですね」
俺は相手がまだ何か隠していると確信した。
次回はレオン達の訓練の結果や新人戦の続きの予定です。




