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5-6 魔獣狩りの帰りに襲われた

ご愛読ありがとうございます。

この回ではコトネと神獣人の魂との話・魔獣狩りとその帰りの事件となります。

 武闘会新人戦への出場を決めたレオンに対して、第一皇子フランツと奴隷商人?ヘルメスが妨害を企んでいた。


 学園初等部寮 <コトネ>

 5月も近付いたある日の夜、寮には湯舟はもちろんシャワーも無いので、体を濡らしたタオルで拭き、夜着を着た。着替えた下着とタオルを洗濯して、窓際に干す。


 今日も気を練る訓練をしよう。ベッドの上に蓮華座で座り、体の縦の中心に一本の線を引く、気の流れを意識しながら九字を切る


「りん、ぴょう、とう、じゃ、かい、じん、れつ、ぜん、ぎょう」

 胸の前でそれぞれに対応した印を結び、解く、アヤメさんに習った気の練り方だ。


 元々は密教と言う宗教の山岳修行者がやっていたらしい。彼らも気を操って奇跡を起こしたそうだ。

 寝る前にこれをやると精神が集中できて、いい気分で寝られる。


 気と言えばアンナがすごい。あの子は集中しなくても私の数倍の気を練ることが出来る。末恐ろしい子だ。将来、賢者とでも呼ばれるんじゃないかと思う。


 さあ、寝るぞ。ライトの魔法を解除してベッドに横になる。

『コトネ、コトネ』

 私は飛び起きた。誰が私を呼んだ。今まで聞いたことのない女の声だった。


『ワラワの声が聞こえたか』

「あなたは誰、どこにいるの?」

 寮なので大きな声は出せない。周りを見ても誰もいない。そう言えば従者通信みたいに頭の中で声がした。


『ワラワは先代の神獣人の魂じゃ。お前が神獣人の力を使えるようになったから話し掛けて居る』

「先代様ですか」

 え、神獣人の力に魂があるんだ。


『そうじゃ。お主に話がある』

「何でしょうか?」

 ロキさんとか知らなかったらパニックだよ。


『お主はワラワの力を使うつもりはないのか?』

「神獣人にならないって事ならそうだよ。私は私のまま、強くなる」

 私は力の化け物になって生きるつもりはない。それはレオン様にも言った。


『なぜとは問うまい。お前はあの男と同じ場所・同じ時を生きたいのじゃな』

「あなたの期待を裏切ることになる。ごめんなさい」

 私の事を解ってくれるみたいだ。ありがたい。


『謝ることはない。ただ、このままではいずれお前の心と体を砕いてしまう』

「どういうことですか?」

 私、死んじゃうの?まだ、レオン様と一緒になってないのに。


『神獣人の力はお前が思うほど小さくない。お前はその力を使えるだけの器になったが、その力を維持しようとすると心と体を神獣人にする必要がある』

 私の顔は青ざめていることだろう。ドワーフの国で見た神獣人のようには成りたくない。


『慌てるな、方策はある。だからお前に話をしておるのだ。しかしお主なら力に溺れることはないと思うがの』

「な、何ですか?!どうすれば?!」

 私は不安に押しつぶされそうになって叫んでしまう。もし、あんな化け物になったらレオン様に嫌われる。


『これこれ、近所迷惑じゃ。静かにせえ。方策じゃが、幻獣や受肉精霊が居るじゃろう。そいつらに力を分ければ良い』

「そんなことが出来るの?」

 ゴロやノルンさんに力を分ければ、私は神獣人から解放されるの。


『出来るじゃろうよ。ただ、無制限に分けると相手が死ぬからうまく制御しないと駄目じゃ』

「それって私でも出来るんですか?」

 私は少しずつゴロやノルンさんに力を分けることになった。


 神獣人の魂がグヘヘと下品に笑ったが私には聞えなかった。


 ******


 五月も近くなった休みの日、帝都の近くで魔獣狩りが実施される。

 ジェリルにタグを渡して、昨日のうちに受付をして貰った。レオン達は朝早く帝都を出て、ノルンに乗った。

 今日の魔獣狩りはザルツブルグで行われる。馬車で四時間くらいの距離だ。


 レオン達はザルツブルグの手前で黒鷲のノルンから降りて、そこからは歩きだ。

 一時間ほど歩いて魔獣狩りの会場に着いた。


 会場近くでレオンはアンナを呼び止めた。

「アンナ、観覧席では兵隊さんの近くに居なさい。うさんくさいやつがいる」

 レオンは時々こちらを見ながら、話しをする二人組を意識している。


「あいつらだね。解ったよ。でももう私もあんな奴らには負けないよ」

 アンナは鼻息荒く答える。

「あいつらだけではないだろう。仲間がいると思え」


「レオン様、捕まえてきましょうか?」

 コトネもアンナのことになるとタガが外れそうになる。

「俺達を見てただけで拘束するのか?やめてくれよ」

 コトネはレオンに怒られたと思ってシュンと項垂れる。


 レオン達はアンナを観覧席に送ると控室に向かった。

「おい、ちょっと待ちな」

 ガタイのいいおっさんに呼び止められた。


 取敢えず返事をするレオン。

「何でしょうか」

「お前ら、剣も持たずにどこに行くんだ?」

 レオンは収納庫から剣を出すのを忘れていた。


「ええっと」

 口ごもるレオン。

「剣はこちらに」

 コトネが死角で収納庫から剣を出してレオンに差し出した。


「なんだ、お嬢ちゃんが持ってたのかよ。なら良いが。・・お前らハイエナじゃねえだろうな?」

 レオンはなんとなく語感で分かるが、取り敢えず聞いてみた。

「ハイエナって何ですか?」


「ハイエナって言うのは死んだ奴の狩った魔獣の魔石をかっさらっていく奴の事だ」

 ああ、やっぱりそうかとレオン。

「違いますよ」

 否定したが信じてくれるかどうか。


「おう、あんた、また来たのか」

 不意にレオンは後ろから声をかけられた。


 振り返ると三十台のフルプレートアーマーの叔父さんがいた。

「あ、お久しぶりです」

「来るんじゃなかったか?俺の分は残しておいてくれよ」


 叔父さんは黄昏た表情で片手を揚げ、三番目の控室に歩いて行った。

「あ、あんた、三番目に出るのか?」

「そうですけど」

 ガタイのいいおっさんは青ざめた顔でレオンを見ていた。


「すまねえ、初心者だと思って・・・」

「良いですよ。だって二回目ですから」

「え、・・・・」


 目を剥いて驚くおっさんを残して三番目の控室に入った。

 椅子が置いてあるだけの控室に入ると、ジェリルと三十台の叔父さんが居た。


「おう、着いたか。ちょっと待てよ。タグを返すからな」

 ジェリルが自分の袋に手を突っ込みタグを取り出した。


 レオンはジェリルの横に行ってタグを受け取って、コトネにも渡した。

「登録ありがとう。助かったよ」

「良いって事よ。アキラの店では世話になってるからな」


 ジェリルはアキラの店が気に入り、先週も宿泊している。

 魔獣狩りの登録もその時に頼んだものだ。


 一番目が始まり、今日は死人も出ず順調らしい。

「あれ、今日は三番目は四人だけか?」

「そうらしいな。最近少ないんだ」

 レオンの問いにジェリルが不思議そうに答える。


「あのなあ、お前がほとんど狩っちまうから、皆二番目に行っちまうんだよ」

 叔父さんが投げやりになっている。


「そうなのか?」

 ジェリルに自覚はない様だ。

「お前、やたら素早く全部狩っちまうから、俺達の実入りがねえんだよ。だからお前が登録した日は、二番目に行くか、登録をやめたりしてるんだよ」

 叔父さんはため息を吐く。


「そうか、コトネと訓練してから調子が良くってさ。今ならヘスティアを逃がすことはないと思うんだよ」

 ジェリルがドヤ顔だ。


 二番目も終わったらしい。


 レオン達は狩場に出た。

 扉が開くとミノタウロス五頭とオーガが四頭出て来た。


 コトネとジェリルが走る。二人は群れの中に突っ込んで行く。

 俺と叔父さんはゆっくり群れに近付く。


 結果ジェリルがミノタウロス三頭とオーガ一頭。

 コトネがミノタウロス一頭とオーガ二頭。

 俺がオーガ一頭、叔父さんがミノタウロス一頭だった。


「いつもこんな感じで緊張感薄れるよな」

 叔父さんは魔石を拾って戻って行った。


 魔石を交換して外に出ると、出口を警戒する兵士の横にアンナが居た。

 四人でザルツブルグで昼食を食べた。

 そのあとジェリルは駅馬車で次の魔獣狩りの開催場所に向かい、レオン達は薬草採取に街道をおんぼろ馬車で行く。


 ******


 ザルツブルグから帝都に続く街道 <アンナ>

「つけて来てるのは八人ね。レベルは大したことないよ」

 私は、魔力探索でザルツブルグからつけて来ている集団を見張っていた。


「薬草を採取する時を狙っているのかと思ったけど、さっきは手を出してこなかった。どのタイミングで仕掛けてくるのかしら」

 お姉ちゃんは緊張するでもなく平然としている。今は私とお姉ちゃんが御者をしてる。


「何者なのか知りたいから捕まえたいな。まあ、実力者が居ないならアーレスの仲間じゃないだろう」

 アーレスって言うのは帝国に来た時にレオン様に戦いを挑んだレベル6だ。


「じゃあ、誰が私達を狙っているの?」

「それを知りたいから捕まえたいんじゃないか」

「あ、そうか」

 私もなっとくだ。


「じゃあ、アンナと二人でレオン様と離れるのはどうでしょう」

「アンナの探索じゃ、お前達だけでも大丈夫か」

 お姉ちゃんの作戦をレオン様がOKした。私の出番ね。


 ちょっと行ったところで小川を見つけた。小川に沿って草原になっており、見通しは効いた。

「ちょっと馬に水を飲ませたいから休憩するね」

「じゃあ、二人で馬の世話をしておいてくれ。俺は薬草でも探してくるよ」

 レオン様ちょっと棒読み、役者にはなれそうもないわ。


 馬車を道の脇に寄せてノルンさんが水を飲める位置に停めた。

 レオン様は小川に沿って、薬草を探すふりをして歩いて行った。

 周囲には敵の集団と私達しかいない。敵の馬車はそのままの速度で私達の方に近付いて来る。


「ノルンさん食べるふりだけで良いからね」

 飼葉を桶に入れて、水を飲むふりをするノルンさんの前に置いた。


 敵の幌馬車が近付いてきた。やっぱり私達が狙いなんだわ。尾行ならもっと手前で停まるはず。

 ちょっと緊張してきちゃった。落ち着いて私。


 あれ、脇を通り過ぎた?と思ったらやっぱりぞろぞろ降りてきた。

 私達を逃がさないように道を塞いだのね。

 こん棒を持った七人の男女が私達を逃がさないように取り囲んだ。


「お嬢ちゃん達、お姉ちゃんたちと一緒に来てくれないかなあ」

 たぶんこの一味の親分かな。へそ出しショートパンツの()()()()が前に出た。

 そして私に手を伸ばしてきた。


「アンナ、この女以外はやっちゃっていいよ」

 お姉ちゃんは私にナイフを渡すと同時におばさんの顎に飛び膝蹴りだ。

 おばさんが吹っ飛んで行った。


「ジェリルさんなら倒れもしないんだけどな」

 いつの間にかお姉ちゃんの手には脇差が握られ、片っ端から斬っていく。


 負けてらんない。私のレーザーも人間位なら貫通するくらいには強化された。

 こん棒を振りかぶった男の胸に穴が空く。


 敵の残りが二人になった時、くるりと回って慌てて馬車に駆け込んだ。

「早く逃げろ!!」「こんなの割に会わねえよ」

 等と言いつつ、一人残っていた御者に叫ぶ。


 グラッと揺れて御者が横に倒れる。

 「やあ」ってレオン様が顔を出す。

 レオン様カッコいい!!。

 馬車の中で二人を倒すと縛り上げた。


 結局、お姉ちゃんが切り殺したのが三人、私が殺したのが一人、生きているのが四人だった。

次回はやっと新人戦の予選が始まりそうです。

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