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5-5 迫りくる悪意

ご愛読ありがとうございます。

今回はレオンにクラスメイトが挑んできます。

 レオンの周囲に頼もしい仲間が集まり始めた。しかし、レオンの敵もその正体を現し始めた。


 ジェリルはレオンが来た翌日には、魔獣狩りに出発した。コトネと訓練した成果を試したいそうだ。

 ミラも工房の二階に部屋を貰って、そこにゲートを作って、その日のうちに去って行った。

 二人共また戻ってくるので、部屋を開けておいてくれと言っていた。


 レオンはミラが帰る前にコトネと別々に暮らすようになったため、次元収納庫をコトネにも使わせられないか相談した。

 ミラが言うには次元収納庫はワームホール内に物を収納しており、ゲートのみでこの世界と繋がっているそうだ。二つまでなら同一ワームホールにゲートを設定できるそうで、コトネにもゲートを付属して貰った。


 アンナが私にもと言ったが、ゲートが三つ以上同じワームホールにあると、ワームホール自体が崩壊するので却下された。


 レオンは聞きそびれていた次元収納庫の容量を聞いてみた。ミラは嬉しそうに話してくれた。

「容量は無限だよ。だってワームホール内は高次元だから、三次元の物体なら容積が無くなるから無限に入るの。それこそ地球でも太陽でもなんなら銀河系だって入れられるわ。でもゲートには限度があるから・・そうね直径五十m位までなら入れられるかしら・・・試したことはないけど」

 ミラの言葉の意味を解って居そうなのはアキラ一人だけだった。


 ******


 レオンとコトネも休みが終わって、また学園に通う日々が始まる。


 最初の授業が終わった休憩時間、フェリとルシーダはトイレに行って、机にはレオンが一人で座って居た。

 レオンの目の前にファイザーが立ち、話し掛けて来た。

「今日の放課後、校舎裏に来い。決闘だ」


 おお、決闘。こんな行事が高等部にはあるのだろうか。でも放課後は駄目だな。

「放課後は殿下の訓練があるから駄目だ」


 レオンは顔を上げてファイザーの顔を見た。決闘を申し込むにはテンパった表情だ。

「じゃあ、昼の休憩だ」


「分かった。昼食後、三十分からでいいか」

「それでいい。一人で来い」

「うむ」

 クラスメイトの四、五人が聞いていたようだが、レオンは気にしない。


 レオンとフェリとルシーダは並んで、食堂の一つ離れた机で昼食を食べた。警備上の問題でフェリの座る場所は決められている。


 レオンは学校の食堂で昼食を食べた後、フェリたちに言った。

「俺は用事があるから先に行きます」

「決闘に行くのか」


 フェリは知っていた。クラスメイトが聞いていた時点で、フェリの耳には入るだろうなとレオンは考えていた。

「はい、一人で行きます」

「わかった」


 レオンが去った後、フェリが立ち上がる。

「ルシーダ、行くぞ」

「一人で行く、言ってた」


 ルシーダの反論に言い返す。

「たまたま、同じ方向に歩いていくだけじゃ」

「ならば仕方ない」

 ルシーダも納得したようだ。


 校舎裏 <レオン>

 校舎の裏、そこにはすでにファイザーが居た。

「お、おまえ、卑怯だぞ。他の奴に話したのか?!」

 現れた俺に向かって叫ぶ。ファイザーの周りには三十名ほどの学生が取り囲んでいた。


「教室の真ん中で大声で話したんだ。聞いてたやつもたくさん居たんじゃないか」

 よく見ると木剣を持っている奴が五人居る。


「ファイザー!、一対一じゃないのか?」

「これは制裁だ!レベル1の癖に皇女を騙して剣術指南になれるはずがないだろう」

 ファイザーが構えると他の四人もレオンに木剣を向ける。


 さてどうする。ボディブローでは吐いちゃうなあ。

「木剣を構えろ!」

 ファイザーが叫ぶが俺は素手のままだ。


 周りから「卑怯だな」「だまし討ちだよな」とか聞こえる。

 五人の学生は周りの声が聞えたのか、かなり焦っているようだ。


「そっちから来ないなら、こっちが行くぞ」

 俺がそう言うと敵は木剣を構えなおした。焦った様子も無くなった。


「一式戦”隼”」

「ガッ」

「グァッ」

「グォッ」

「アアッ」


 俺は一番端に居る相手に瞬時に間合いを詰め、掌底で顎を突き上げる。同じようにしてファイザー以外の四人を片付ける。そして元の位置に戻る。


 四人が順次倒れる。

 彼が瞬きする間の出来事なので、ファイザーには何が起きたのか理解できない。

「貴様!何をした!」


 周りからドヨドヨとした声が聞こえ始めた。「見えたか?」「かすかに」「見えなかった」・・・。

 ファイザーはどうしてよいか分からなくなったようだ。声のする方向に顔を向けている。


「対峙中によそ見をするのはいただけないな」

 レオンの声にハッとして、ファイザーが正面に構え直す。


 レオンにとってレベル3以下の実戦経験の乏しい人間など、相手にならないくらいには修行を積んできた。

「もう、降参したらどうだ」


「そんなに強いなら、さっさとやったらどうだ」

 ファイザーは覚悟を決めたようだ。


 実は俺は困っていた。山賊や海賊なら遠慮なく殺せば良いのだが、同級生となるとどうしていいか分からない。

 一応話し合うために子分らしい四人を倒したが、ファイザーは話合いに乗ってくるような様子はない。

 俺の学生生活は中等部の一年だけ、しかもエリーゼとエイトを鍛えるのに労力を割いていたので、他の生徒との付き合いはほとんどないのだ。

 このまま、ファイザーを倒してしまったら、この先ずっと敵対してくるのではないか?うーん悩むなあ。

 そうだ、まず敵対する理由を論破しよう。


「君はレベル1が剣術指南をするのが気に入らない様だが、見せた通り、俺は殿下の剣術指南に適任だ」

 どうだ、これで俺が剣術指南をする理由が理解できただろう。ぐうの音もでまい。


「やかましい!ヴァイヤール王国の奴が帝国で何の役に立つんだあ!!」

 おっと、今度は出身地で攻めて来たか。それならば・・・。


「君の言うことは初代皇帝の理念に反する。初代皇帝はていこ・・・・」

 俺の言葉を遮って後ろから叫ばれた。

「やかましい!!そいつはお前に嫉妬しておるだけじゃ!早く楽にしてやれ!」


「・・・はい」

 フェリ様の言葉で俺はファイザーの顎を打ち抜いた。

 五人共軽い脳震盪を起こしているだけなので、意識はあるが立てないだけだ。五分もすれば立てるだろう。


 俺とフェリ様とルシーダは教室に向け歩いていた。

「お前は全く、何をしておるのやら」

 フェリ様が呆れ気味に言う。


「しかし、クラスメイトと仲良くするためには、話し合わないといけないかと」

 俺は弁解したがフェリ様は気にも留めない。

「あんな男は無視するか、力でねじ伏せるかじゃ。解ったか?」

「はい」


「しかし、帝国には問題を決闘で解決する風習があるのですね。驚きました」

「はあ?」

「そんなのない」

 瞬時にフェリ様に呆れられ、ルシーダに否定された。


 俺の考え方は間違っていたのか?


 ******


 数日後、帝城の近くのレストラン <ヘルメス>

 ヘルメスはフランツ皇子から呼び出されレストランの個室で待っていた。

 多分、イエーガーの三男坊の話だろうとあたりは付けているが、ちょっかいをかけたのだろうな。


 やがて、フランツが現れ、料理も運ばれてきた。


 食事後。

 フランツは自分が食べ終わった瞬間、まだ俺が食べてるのに唾を飛ばしながら話し掛けて来た。

「ヘルメスよ。あのイエーガーの三男だが、普通じゃないぞ」

 それはそうだろう。あのアーレスと引き分けたのだ。

「どうかされましたか?」


「どうもこうもあるか!武闘会に出ると言うので、次官の子が同じクラスに居たのでけしかけたのだ」

 ああ、あのレベル3のガキか。

「どうしました」


「五人でかかったのに、触ることも出来ずに伸された」

 そりゃそうだろう。その子も可哀そうに。

「それはすごいですねえ」


「まずいのだ。フェリシダスがそんな奴を見つけてきたことが分れば、陛下の、いや皇帝への評価が上ってしまうのだ」

 フェリシダス様が上ろうが下がろうがお前に皇帝の目はねえよ。

「左様ですか?それはさぞかしご心配なことですね」


「だからお前が武闘会の活躍を邪魔しろ」

 俺を指差してきやがったよこの馬鹿。

「私がですか?」

 一応驚いた振りはしておこう。


「馬鹿か、お前が勝てる訳ないだろう。強い奴を雇って闇討ちをすればいいんだ」

「帝都内でそんなことをすればすぐに捕まりますよ。しかもレベル3が全く相手にならないなら、レベル5以上を集めないと闇討ちなんかできませんよ」

 さすがに無理があるだろう。考え直せ。


 フランツは顎に手を当て、少し首を捻って考える。やめとけ、考える頭なんか無いんだから。

「ふむ、そこら辺はお前に任せる。うまくやってくれ。あ、言っとくが金は無いからな」

 こいつ丸投げしやがったよ。


「では頼んだぞ」

 やはり、金を払わずに出て行った。


 もうゼウス様に言って縁を切らして貰おうかな。


 そこでノックがして、若い男が入って来た。

「ヘルメス様、面白いことが分りました」

「なんだ。あの店の事か」

 ヘルメスは若い男に座るように促した。


 着席した男は話を始めた。

「アキラの店と呼ばれる店ですが、安いポーションを広めているのは間違いなくその店です。あと治療院が併設されていますが、魔法は使わずにポーションで治療しているようです」

「薬草の供給を止めたのではなかったのか」

 薬草が無ければポーションを作りようがない。


「それですが、あの店は薬草を仕入れていません」

「何!そんなことはあるまい。何からポーションを作っていると言うのだ」


「ポーションを調べてみましたが上等な薬草から作られています」

 いよいよ解らん、どうなっているのだ。

「先程話題になったレオンハルト=イエーガーが立ち寄っています」

 あいつがあの店に関わっているのか。


「そうかあいつは傭兵もやっているからな。薬草とかにも詳しいのかもしれん」

 あいつが採取しているのか。だが奴は学生だ。そうそう薬草採りに行ってはいまい。

「奴が店に入るときには薬草は持っていませんでした。と言うか薬草を持ったような人物は確認されてません」


「そうなると最初から出来上がったポーションを持っていたのか?」

「それはないと思います。聞き込みをしましたが引っ越して来た時には幌馬車二台で荷物もそんなになかったようです」

 もっと調べる必要があるな。こちらの商品の売れ行きが悪くなった以上、最悪潰さなくてはな。


「もっと調べてくれ。店の中の人員も当たってくれ。ああそうだ。その治療院をやっているのはヴァイヤール王国から逃げた聖女ではないのか?」

「治療に当たっているのは中年の南方系の女で、助手に若い女が居ますが特徴が異なります」


「いずれにせよ、帝都内では荒事は難しい。そう言えばイエーガーの三男には従者が居たな」

「はい、女児が二人、魔獣狩りに行った時もついて行ったようです」


 ヘルメスはニヤッと笑った。

「次に三男が魔獣狩りに行くタイミングを知らせろ」

 フフフ、その女児を狙えば、そんなに強い奴でなくても何とかなるか。フフ。

次回はコトネに神獣人が話し掛けます。

二回目の魔獣狩りに出かけます。

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