5-2 訓練の日々の始まり
ご愛読ありがとうございます。
今回はフェリたちの訓練が始まります。
入学式を終えたレオン達は訓練の腹ごしらえをするため寮の食堂に食事に来た。そこにはコトネとアンナとフェリの弟のジークが居た。
ハイデルブルグ学園 寮の食堂 <フェリ>
ワシはジークから聞いた海賊退治の事を問いたださずには居られなかった。
「レオンどういうことじゃ!海賊退治など聞いておらんぞ!」
「話すようなことじゃないと思いまして」
おのれ、とぼける気か。
「話せ!」
「あ、はい。ちょっと前に傭兵に登録して、魔獣狩りにブロイセンに行きまして、その帰りに・・」
ぬう、傭兵登録う。
「ちょっと待て!傭兵登録に魔獣狩りじゃと?」
「あ、駄目ですか?」
「駄目ではないが、なぜワシを誘わんのじゃ」
そんな面白そうなことをなぜワシに言わんのじゃ!!
「皇女殿下が傭兵に登録するのですか?許されないと思いますが」
「その通り、フェリのわがまま」
おのれ、ルシーダまで言うか!
「クッ、まあいい、続きを話せ」
形勢不利じゃ、話題を変えよう。
レオンは魔獣狩りの帰りに少年に助けを求められて、海賊討伐をしたことを話した。
「そうするとそのジェリルと言う女と三人で、二十人の海賊を倒したわけか」
「そうなりますね」
疑問が頭に浮かぶ。
「どうしておぬしは帝国に任せようとしなかったのじゃ」
「え、でも帝国に通報してたら、全員攫われるじゃないですか。敵もそれを見越して計画を立ててるし」
「普通はそう思っても自分の命は賭けんもんじゃ」
「でも助けられなかったら、滅茶苦茶後悔すると思うんですよね。もちろんコトネ達が危ないと思ったらやめますけど」
こいつは余程の大物か、ただの馬鹿じゃ。
しかし、なぜかこ奴に惹かれるワシが居ることも確かじゃ。ということは大物の方かも知れんな。
うん?、ルシーダの奴、ウルウルとした目をしおって・・いや、そんなことはない。
「さあ、訓練をするか」
ワシは食事が終わったので食堂を出て、武闘館に行こうとする。
「いえ、こちらです」
レオンが言ったのは中庭の方向だった。
「武闘館ではないのか」
「俺は武闘館のようなところで戦ったことは無いので、外でやります」
「なるほど、実戦的。流石」
ルシーダもやる気になっているようだ。
中庭のスペースの開いた場所に来た。
「ここで良いでしょう。まず気の練り具合を見ます」
「良し、ハアアア!」
ワシは体の中心軸に気を集めて行く。いくつかの気の塊を感じることが出来る。
「かなり訓練されましたね。随分気が練られています」
隣で同じように気を練るルシーダ、コトネ、ジーク、アンナ。
一番小っちゃいのからすごい気を感じる。アンナと言ったかこいつは何者なのじゃ?
「ルシーダさん、ジークフリート殿下、あなた方も訓練されるのですか?」
「ルシーダはどうせワシと一緒に居るのだ。ついでに頼む。ジークは知らん」
フフフ、ジークの奴、泣きそうな顔をしておるわ。
「姉上!、コトネに頼めと言ったのは姉上じゃないかあ。姉上からも頼んでくれえ」
ククク、ジークめ、涙目になってきおった。これ以上はいじめになるな。
「仕方ない。レオンよ。申し訳ないが、こ奴も一緒に居ることを許してくれ」
「分かりました。ですが期限があることですし、フェリ様の練度に会わせてやりますよ」
卒業までの三年しかないからの。ワシの訓練が遅れたら意味がない。
「それで良い」
「姉上!ありがとうございます」
ヒヒヒ、感謝せいよ。
布を木に吊るして簡単な更衣室を作る。制服から稽古着に着替えるのだ。
「気を練る練習は帝城に帰ってからお願いします。次は木剣を振ってみて下さい」
レオンの従者が皆に木剣を配っておる。え、え、え、どこから出て来た。誰も持っていなかったはず。
そう言えば、更衣室にした布もどこから出たのじゃ。
「どっから出したのじゃ!!」
思わず叫んでしまった。レオンは少し困った顔をしたが、従者たちは驚きもしない。
「ここに隠して置いてたんですが、まずかったですか?」
隠してあった?いきなり出て来たように思ったが気のせいか。
「いや、いきなり出て来たように思ったから聞いただけじゃ」
「まず柄を両手で持って、振りかぶって振り下ろして。その時、剣の刃と剣の軌道が同じになるように意識して。はい1,2,1,2,・・・・・」
ワシ達は一列に並んで剣を振ったが、レオンの従者たちは別の事をしていた。
コトネがアンナに打ちかかって、アンナが足さばきでそれを避けて、自身の有利な位置に行く練習らしい。
確かアンナは十歳、今のワシから見てもかなり高度な練習をしている。
「フェリ様!、刃筋が乱れてる。もっと集中して!」
「分かった」
折角練習しているのに・・・十歳の女の子に嫉妬してどうする。集中じゃ。
ワシも剣の練習をしてきたが刃筋を意識して素振りをしたことはなかった。もともと帝国の剣は斬るより叩き付けることに主眼を置いている。敵は鎧やスキンアーマーで武装しているのが当たり前だからだ。
「刃筋が通ると剣も狙った所へ行きますし、相手に与えるダメージも最大になります」
レオンはそう説明してくれた。
ワシも二十分位振った頃から刃筋が通るということを実感し始めた。空気抵抗が減り、剣筋がぶれないのだ。
ワシの中等部までの訓練でほぼ基本は出来ているようで、一時間後、足さばきの訓練、二時間後足さばきをしながら刃筋を通した攻撃をする訓練をして、順調にステップアップして今日の訓練を終了した。
今まで、ワシを教えてくれていた剣士は、より強く、より速く、しか教えてくれなかった。当然、身体強化レベルの高い方が強く速いのだからそれ以上に強くなれるはずもなく、ワシは諦めの境地となっていた。
そこにルシーダが持ってきたレベル1が活躍している話、魔獣に襲われている王女を助け、四人のレベル3の暗殺者を打ち据え、果てにはレベル5を倒したという。
信じられなかった。この世に存在する絶対的な強さの基準の身体強化レベルを覆す男。ルシーダは、その男に会った時に何度か話をしようとしたそうだが、雇った傭兵がぶち壊したそうだ。
ワシは我慢できずに留学の打診に使者を出した。その男はそれに乗ってくれた。そして、今、目の前に居る。
ワシの前途を照らしてくれるであろう男が・・・。
この男の話が聞きたい。もっと一緒に居たい。ああ、胸がドキドキする・・・・・・・。
武闘館の方から男が二人歩いて来た。
「殿下、そろそろ帰ろうぜ。俺、腹減ったし」
ウェルバルだ。全くこの男は主人の思いを推しはかろうとは思わぬのか。
「全く、探したぜ。練習だって言うから武闘館に居ると思ったら、こんなところに居るんだもんな」
「こらウェルバル!、口を慎め。申し訳ありません、姫様」
ブルックスが注意するがウェルバルには暖簾に腕押し、糠に釘だ。
「うん、お腹空いた」
お前は欠食児童か。ルシーダは緊張するような場面ではおしとやかなお嬢様だが、普段はぶっきらぼうな子供のような性格だ。
「なあ、コトネ、帝城で一緒に夕食を食べないか?。もちろん、帰りは寮まで送るから。なっ」
獣人の娘をナンパする男もいる。
「お断りします」
ジークの願いを一蹴するコトネ。こりゃ脈ないな。
「そんなこと言わずに」
ああ、もうこいつは、初恋なのかは知らないが。
「ほら、しつこいと嫌われるぞ」
「え、嫌いになんか・・アタタタ」
ジークの耳をつまんで引っ張って行く。
「レオン、また明日も頼むぞ」
「はい」
レオン達は軽く手を振る。
別れるのは寂しいが、これからは毎日会えるのだ。ムフ♡。
******
寮のレオンの部屋 <コトネ>
寮の食堂が開くまであと二時間ほどあるので、レオン様の部屋に来ていた。
「お姉ちゃんも早く体拭いて、洗濯物を出してね」
スッポンポンになったアンナが私の稽古着に手をかける。
「自分でやるから!」
最近、女の体になったからなのか、レオン様の前で裸になるのが恥ずかしい。一年前は平気だったのにな。
従者部屋で体を拭く。ふと目が胸のふくらみを見る。小さい、ジュリアさ・・、今はサクラさんか、に比べると半分もない。男の人は大きいのが好きって聞いた。私もサクラさんみたいになれるのかな。
ガチャ!!
「お姉ちゃん!いつまで体拭いてるの。早くしないと洗濯出来ないでしょ!」
扉を開けてアンナが顔を出した。
「キャッ!」
私は小さく叫んだ。
「お姉ちゃん?どうしたの?」
私はとっさに胸と前を手で隠していた。それがアンナには不思議だったみたいだ。
「何でもいいけど早くしてね」
「はい」
なさけない。アンナに注意されるなんて・・・。
急いで着替えて部屋を出て、アンナの持つ籠に洗濯物を入れる。
「ごめんなさい。お願いね」
「今は洗濯場が空いてるから、ご飯までに洗っちゃうね」
アンナは一年前は何も出来なかったのに、もう一人で家事が出来るようになったんだ。
「手伝おうか?」
「大丈夫だよ。今までお姉ちゃんにして貰ってたから、今度は私がやる番だよ」
アンナが成長している。最近、レオン様の事で頭がいっぱいでアンナの事を見ていなかったんだ。
ちょっと涙が出て来た。
アンナは籠を抱えて部屋から出て行った。
そうだ、話してとしておかないと。
「レオン様、お話があります」
今日貰ったであろう教科書を開いて、予習をしていたレオン様がこちらを向いた。
「うん、何だ」
「最近、私の霊力量が増えたように感じるのですが、以前にも似たような感じがありました」
「ふむ、それって海賊討伐後じゃないか?」
どうやらレオン様には心当たりがあるようです。
「そう言われればそうですね」
「俺が外気功の三式戦”飛燕”を会得したからじゃないかと思った」
「気と霊力に関係が?」
レオン様は難しい顔をしている。
「今の所、俺が思ってるだけ何だが、気と言うのは霊力の発現の方法の一つじゃないかと考えたんだ。アンナも精霊魔法が使えるようになったのは、俺が外気功を使えるようになってからだ」
「霊力ですか?」
レオン様は霊力について分かったと言うのでしょうか。ヤヌウニさんでもあまり解ってらっしゃらないようだったのに。
「ロキやノルン、幻獣のゴロ達精霊種は俺達の精神エネルギーを糧としている。でも精神エネルギーってなんだ?」
「そう言われれば良く分からないですね」
そう言われても大雑把に人間が出す何かぐらいにしか思ってなかった。そう考えると魔力に比べて、霊力とか気って良く分からない力だ。
「まあ、今度の休みにでもヤヌウニさんやアキラさんに相談してみよう。何か分かるかも知れない」
「それが解ると何かいいことがあるんですか?」
「俺の外気功も進むかもしれないし、従者たちも段階が上がるかも知れない」
私も神獣人の力を封印したまま強くなれるのだろうか?
「はい」
その頃のジェリル。
「暇だ。錬金術や鍛冶屋を見ていてもつまらんし、なにか、面白い事でもないかなあ」
次回はジェリルの退屈しのぎとレオン達の鍛錬方法の目安の探求です。




