5-1 高等部入学
ご愛読ありがとうございます。
水曜には全然間に合いませんでした。すみません。
本編もようやく5章に入ります。5章はレオンが武闘大会新人戦に出場する話です。
レオンは魔獣狩り、海賊討伐、薬草採取で入学までの時を過ごし、ついに入学の時が来たのである。
アキラの店、<ジェリル>
海賊討伐の後始末を済ませ、帝都に入ったアタイはレオンから連絡場所として聞いたアキラの店の前に立った。
昨日帝都に着いたが時間が遅かったので宿を取り、朝一番に店に来たのである。
『ここがレオンが指定した店か。レオンもアタイを待っているんだろう』
朝早いので店を開けたばかりのようだ。まだ客はいない。
「済まない、アタイはジェリルと言う。ここにレオンがいると聞いて来た」
開店準備をしているおばさんにレオンの事を聞いてみた。
「レオン君かい。レオン君はここにはいないよ」
何だと!?そんなはずは・・・。そう言えば内壁の中の寮に住んでるようなことを聞いた覚えがある。
そうだ。アタイは内壁の中に入れないから、ここが連絡先になるような話をしていたな。
「そうだった。奴は内壁の中だった。アタイが来たことを連絡してくれ」
「私はそこら辺の事はよく分からないから。ちょっと待ってね。シャラちゃんいる!?」
隣の治癒院だか、治療室やらに向かって声をかける。
「なにっすか?ゾフィーさん」
ドアを開けて隣の部屋から若い女が出て来た。
「この人がね、レオン君に用事らしいのよ」
「その恰好はジェリルさんっすね。聞いてるっすよ」
「そうか、ではレオンに連絡を取ってくれ」
アタイがそう言うとシャラって女が難しそうな顔をする。
「確か、今日は高等部の入学式っす。お昼過ぎないと連絡は無理っす」
「そうなのか?あいつは学生だったのか?」
「まあ、ここでは開店の邪魔っすから奥に行きましょうっす」
そこに奥から中年のドワーフが出て来た。
「そいつがレオンの言ってたレベル6か?」
「そうみたいっす」
「おい、おまえ、その背中の剣を見せてみろ」
全くドワーフと言う奴は遠慮というものを知らない。こんな剣を見られたら何を言われるか?
「いや封印されてるから、見せる訳には・・」
帝都に入るときに剣は鞘から抜けないように封印される。出る時に封印が破れていたら金を取られる。
「心配するな。鍛冶屋は再封印することが出来るんだよ」
「あんたら!開店準備の邪魔だから、奥に行っとくれ!」
店番のおばさんに怒られたので、一瞬ビクッとなったドワーフがこっちに来いと手招きする。
渡り廊下を通ってすぐの部屋に入るとそこは鍛冶場だった。
「レオンから海賊と派手にやり合ったと聞いた。ちょっと剣を見せてみろ」
アタイは背中の剣を降ろしてドワーフに見せる。
ドワーフは封印を破ると剣を抜く。
「なんだこりゃ!まるで鋸じゃねえか。すげえのとやり合ったんだな」
そうなのだ、ヘスティアとの戦いで、剣の刃がギザギザになってしまっている。
「治るのか?」
「まあ、治らないことも無いが、打ち直すか、新しくした方が良いな」
やはり内部までダメージが行ってそうだ。そうなると曲がったり折れたりするかもしれん。
この剣には愛着がある。新しくするより打ち直して貰った方が良いか。
「打ち直すとどれくらいかかる」
「まあ、三日で金貨一枚というところか。レオンの連れなら金は要らないぞ」
「金は海賊討伐の報奨金や帆船が結構高く売れたから大丈夫だ」
あの後ブロイセンから帝国兵が来て、討伐の状況と分捕り品(主に帆船)を確認して貰った。
そしてブロイセンに行って、レオンの分と合わせて、報奨金と分捕り品の売価を貰った。
「二階に部屋があるから休んでいてくれ。おーい!この人を二階の空いてる部屋に案内してやってくれ」
え、現れたのは何と小人妖精だった。
「よ、妖精が何でいるんだ?」
「屋敷妖精くらいどこにでも居るだろう」
アタイの驚いた様子を怪訝そうに見て言って来る。アタイは初めて見たんだが?
「アタイはレオンに分け前を渡さないといけないんだ」
「しかし、あいつも学校があるから休みにしかこちらに来れん。まあ、ゆっくり待つんだな。ここなら宿泊費も食費もいらないぞ」
どうもレオンは休みだけこちらに来る様だ。このまま世話になって良いのか?
「ああ、そうだ。アタイはジェリル。あんたは?」
「俺はコニン、炉の準備をしている若いのがツーレクだ。何かあったら言ってくれ」
「ここにはあんたらだけか?」
「いやたくさん居るが、昼飯の時にでも紹介するよ」
アタイは屋敷妖精の後ろについて部屋に案内してもらう。
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ハイデルブルグ学園 <レオン>
入学式が終わって、俺達は教室に戻った。
なぜか俺は三人掛けの机の真ん中に座らされ、右にフェリ様、左にルシーダが座っている。
今は、自己紹介の最中だ。
「フェリシダス=リヒトガルドじゃ。皆よろしくな」
軽い、あまりに軽い自己紹介だが誰も咎めない。皇族の威厳なのか?
次は俺の番だ。教壇に居る若い女教師が「次!」という。
俺は立った。
「ヴァイヤール王国から来ました。イエーガー伯爵の三男、レオンハルト=イエーガーです。よろしくお願いします」
一気に教室が騒がしくなる。小声であの首狩りのとか、三男ってミソッカスって言ってなかったかとか留学生がなぜ殿下の横にとか聞こえる。やはり父や俺の事はここでも知られているらしい。もう慣れたけど。
「静かに!」
女教師の一声で教室は静まった。
「次!」
俺が座ると隣のルシーダが起立する。
「ルシーダ=ヘルムフルトです。ユグドラシル聖皇国から来ました。フェリ様の護衛をしています。よろしくお願いします」
そうか、ルシーダはフェリ様の護衛をしていたのか。だったらフェリ様が中央に座った方が良くないか?まあ、いえる雰囲気じゃないけどな。
「次!」・・・
自己紹介が終わると明日からのカリキュラムが説明される。
授業は明日からなので、今日はこれで終わりだ。
「さあ、訓練に行くぞ」
フェリ様が俺の右手を引く。
「フェリ、先にご飯でしょう」
ルシーダがフェリ様を牽制して俺の左手を取る。
「もう食堂の開く時間か。仕方が無い」
騒いでる俺達の前に一人の男が立つ。
「殿下、宜しければ僕とお食事でも致しませんか?」
「うん、ファイザーか、毎日のようにうるさい!去れ!」
毎日フェリ様にアプローチしているのかご苦労なことだ。
「しかし、そんな弱小国家の、しかもミソッカスと呼ばれる男と食事するぐらいなら僕と・・・」
ファイザーは必死だ。何とか皇族と繋がりを持ちたいのだろう。
しかし、しつこくするのは逆効果だと思うぞ。
「レオンハルトさんって殿下の何なんですか?」
今度は金髪縦ロールの女が参戦してきた。いつの間にか俺達の周りには人垣ができていた。
「こ奴はワシの剣術指南役じゃ。お前らが思うような色っぽい話ではない!」
中等部から一緒に来た生徒なので、皇族と言っても遠慮がない。
「レベル1が剣術指南役っておかしくないですか?僕はレベル3なので僕の方が相応しくないですか?」
「馬鹿者!!レベルだけで強い奴に習っても、ワシが強くなれる訳ないじゃろがあー!!」
フェリが怒りを振りまいて来たので、人垣が潮が引くように無くなって行く。
俺達は教室を出て寮の食堂に向かって歩き出した。
「なんでお前は言い返さない!」
おっと、怒りの矛先が俺の方に来た。
「俺が言っても水掛け論ですよ。実戦で証明しないと」
俺がそう言って愛想笑いをしているとフェリ様が意地の悪い笑いを浮かべる。
「そうじゃ、お前は来月の武闘会新人戦に出よ!」
「それは良いですね。賛成です」
ルシーダも間髪入れずに賛成する。
「ええ、今年は出ないって言ったじゃないですか」
武闘会新人戦は秋に行われる本来の武闘会の前哨戦で、一年生の代表決定戦の意味を持つ。武器は剣のみで魔法や長柄の武器は禁止だ。
俺は一年生の間は自分の能力向上に当てて、来年から参加しようと思っていた。
「駄目じゃ!わしの剣術指南役として、良い所を見せて来い」
やれやれ、宮仕えの身では仕方が無いか。
「分かりましたよ。出れば良いのでしょう」
「あら、出るだけでは駄目ですよ。優勝しないと」
ルシーダが煽ってくる。何だこのエルフは!?。
「そうじゃな。優勝して来い。命令じゃ!」
「相手を死なせるわけにはいかないので、外気功は使えないんですよ」
海賊戦の後、三式戦”飛燕”まで使えるようになった外気功は、非常に危険なのだ。
それに魔法みたいなもので使うのは卑怯だろう。
「ワシに剣術だけで、どこまで戦えるか見せてみろ」
「優勝できなくても怒らないでくださいね」
溜息しか出ないわ、こりゃ。
「馬鹿者!戦う前から負ける気でどうする」
俺が二人に虐められていると、食堂の入り口に居たコトネとアンナが・・うん、もう一人いる?
俺の従者二人と一緒に初等部の制服を着た少年がいる。
「ジーク!なぜここに居るのだ!」
フェリの知り合いらしい。
「だって、コトネがここに行くって言うから・・」
少し顔を赤らめながら、ジークと呼ばれた少年はフェリ様に説明する。
「コトネ、どういうこと?」
「はい、ジーク様の学園に居る間の護衛を頼まれまして、受けました。レオン様の負担が少しでも軽くなるようにと考えました」
「ちょっと、ここで話すのは邪魔になるわ。中に入りましょ」
ルシーダが混み始めて来た食堂の入り口に、たむろする俺達に注意した。
俺達もそれに気付いて、中に入り、手を洗い、食事のトレーを貰って席に着いた。ここの食事は先払いなので有効期限の入ったカードを提示すれば金銭の授受はない。
「こいつは私の弟、第四皇子のジークフリートよ。それでなぜコトネさんを護衛にしたの?」
食事をしながらジーク様は成り行きを話し出した。
「実は昨日寮に行って、姉上に言われたようにコトネに俺の剣術指南役になってくれるように頼んだのだ」
コトネを見ると「断りました」と冷たく言う。
ジーク様は焦ったように話を続ける。
「それで、どうせ生徒の中から護衛を選ばなきゃいけないし、それならコトネに頼めばいいじゃんと」
ほう、皇族には生徒を護衛に選ぶ風習があるのか。
「受けました。学園に居る間だけと伺いましたので、でも寮に付いて来るとは聞いていません」
コトネはじろりとジーク様を睨む。
フェリ様はハハーンと納得した顔になる。俺でもわかる。一目惚れと言う奴だ
「実力は確認したの?」
「もちろんだ!コトネは近衛のレベル4に勝ったし、イエーガー伯爵家に仕えているし、何回か人助けで褒美も貰っている。それにこないだブロイセンの近くの村で海賊を退治したそうだ」
それは嬉しそうにコトネの事を語る。でもこないだの海賊退治がもう伝わっているのか。
じゃあ、ジェリルも帝都に着いたかな。
フェリ様とルシーダが俺の顔を怖い顔で睨んできた。どうしたのかな?
新人戦に出場することになってしまったレオン。訓練に明け暮れることになります。
おまけでジェリルの日常も?




