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4-12 帝都物語

ご愛読有難うございます。

4章はこれで終わります。第5章は武闘大会新人戦の予定です。

 海賊を討伐して、薬草採取などをしながら、ゆっくりと帝都に帰ってきたレオン達。入学式まであと三日となっていた。


 ******


 帝都は大きい、外壁の直径でも約二十km位はある。内壁でも直径六kmもある。ヴァイヤール王国の王都が内壁の中にすっぽり入ってしまうほどだ。人口も外壁の中だけでも五十万人を超える。

 建国して千年、国土は拡大し、周辺国は皆同盟国となった。外壁まで届いた敵もいない。

 緑も多い、いたる所に大きな公園があり、常緑広葉樹が植えてある。治安も良いので小さな子供が遊んでいたりする。

 水も豊富だ。北側にある山脈から流れ出る水を引いて帝都を網羅する水道が引かれている。あちこちに人工の泉が作られ、いつでも清潔な水を飲むことが出来る。もちろん下水も完備だ。

 帝都の周囲には食料や日用品の材料を担う田園地帯、鉱山、海と繋がった運河など立地条件も非常に良い。


 帝国には爵位が無い。

 文官、武官には職制に応じて、一品官から九品官までが割り当てられ、最低初等部を卒業しないと任官出来ない。もちろん、在野で目立った功績を上げた者にも、任官できる道は用意されている。


 これらはすべて歴代皇帝の偉業による。


 なぜ、優秀な皇帝が続くのか、秘密がある。それは皇帝を選ぶのが人ではないからだ。

 皇帝が受け継ぐレガリアの帝笏、それこそが初代皇帝の残した超級魔道具(アーティファクト)だ。


 皇帝は皇太子を選ぶ時に帝笏に相談する。帝笏が認めた者以外は皇太子に成れない。

 皇太子がいない場合、皇帝が死ぬもしくは執政できなくなった、或いは老害などで不相応となった時などに、次の皇帝を帝笏が臣民に公表する。

 ある皇帝が帝笏を恐れ、城壁の下に埋め固めたが、いつの間にか復活して次の皇帝を臣民に伝えた。

 帝笏の選ぶ皇帝は初代皇帝の血を引いていて、能力がふさわしいと認められたものだ。


 フェリシダス=リヒトガルドはそれを目指している。


「姉上!、剣術指南役を雇ったってホントか?!」

 フェリの部屋の扉を乱暴に開けた少年が言った。

「ジークか。ノックしなさいって言ったよね。弟だからっていつまでも甘えてるんじゃないよ!」

 ジークフリート、フェリの同母弟で十二歳。


「ずるいぞ!俺にも指南役を付けろ!」

「何言ってんのよ。なんで私があんたの世話をしなきゃならないの?あんたとは皇帝の座を争うライバルなのよ」

 二人は口喧嘩が趣味の仲が良い関係だ。皇帝を決めるのが人間ではない以上、いがみ合ってはマイナスにしかならないのだ。


「ワシは同級生のルシーダに紹介して貰ったのだ。おまえも今年から初等部だ。友達を作れば良いだろ」

 帝国では学業・人間関係も皇帝の重要な要素と見なされ、皇族でもそれをおろそかに出来ないのだ。

「なんであんな美人が、姉上と仲が良いのだ?くやしいぞ!」

「そう言えば、指南役の従者なんだけど、ルシーダの話じゃかなり強いらしいよ。あの娘も初等部へ押し込んだからあんたの同級生になるよ」


「よし!、紹介してくれ」

 いきなり機嫌が良くなるジーク。

「いやよ、自分でやりな」

 今度は暗くなるジーク。


「うう、じゃあ、名前は?」

「え、・・・えーとねえ、うーん・・・忘れた。テヘっ、でも猫獣人だからすぐに分かるよ」

「ね、猫獣人なのか?」

「すっごく可愛らしい女の子だよ」

「お、女なのかあ?!」

 こうしてコトネも知らぬうちに巻き込まれていくのであった。


 ******


 アキラの家に帰ってきた三人とノルン。

 見るとアキラの家は様変わりしていた。

 一番左のスペースが治療院になってた。ジュリアがやってるのかな?大丈夫なのか?

 真ん中と右が薬、革製品、武器などを売る雑貨屋として開店していた。


 雑貨屋には入って左側が薬屋で中央が革製品、服や下着、鍋や釜、奥に刃物、武器などが並べられている。

 店番が知らない中年の女性だったので裏に回ることにした。

 厩舎の方に回ると二台の幌馬車と四頭の馬がいた。綺麗に手入れされていた。

 人が居ないのを確認してノルンを人型にして、馬車を収納に入れる。


 渡り廊下の扉から中に入るとコニンの鍛冶場が見え、コニンとツーレクが作業していた。よく見ると小人妖精が手伝っていた。

 忙しそうだったので軽く挨拶をして通り過ぎた。


 次の部屋はカリシュとレイニャの作業場となっている。カリシュは洋服をレイニャは皮を加工していた。ここにも小人妖精がいる。

 レオン達を確認するとレイニャが駆け寄ってきた。


「お帰りなさい。裏から来たんですか?」

「ただいま帰りました」「ただいまあ」

「ただいま、店番の人が俺の知らない人だったから、店から入るとまずいかなって」

「ああ、ゾフィーおばさんに紹介しなくっちゃね」

 レイニャは十五歳、コトネより少し背が低いがドワーフなので体のつくりはがっしりしている。


「レオンさん、皆さん、お帰りなさい。もうすぐお昼だし、食堂に集まるのはどう?」

 レイニャの母親のカリシュがレオン達を誘う。

「ありがとうございます。じゃあ、アキラさんに挨拶して食堂に向かいます」

「うちの人も呼んでおくからね」

 そう言ってカリシュは夫のコニンを呼びに鍛冶場の方に歩いて行った。

「私は片付けてから行くね」

 レイニャも作業場に戻って行った。


 レオン達は一番奥の部屋に向かう。

 扉を開けると王都の作業部屋より大きなスペースに錬金の道具が並べてある。

「うわ!、」

 いきなり何かが飛びついて来た。


「レオン、久しぶりだな」

 ゴロかあ、幻獣のぬえのゴロだ

「十日ぐらいだろ。オーバーだな」


「レオン、お帰り。薬草は取って来てくれたか?」

 シャラが出迎えてくれた。

「ああ、たくさん取れたぞ」

 後ろでアンナがドヤ顔をしてる。


「レオン君の採った薬草で作ったポーションはここでも人気だよ」

 アキラさんもシャラの後ろから出て来た。

「薬草はあとで必要分出しますよ」


 話をしながら食堂に行くと長い黒い髪の若い女性がいる。向こうを向いているので顔は見えない。

「うん、誰ですか?」

 レオンがアキラに聞いた時、その女性が振り向く。

「え、え、ジュリア・・なのか?」


「分かりましたか?サクラです。よろしくう」

 ジュリアだった女性は自己紹介をする。

「どうしたんだ?え、サクラ、その髪の毛は」

「私もいつまでも引きこもっているのは嫌なので、ちょっと変装してみました。これならパッと見、金字教の人達にも解らないと思います」


「そうか、治療院をやっているのか。でサクラなのか?」

「はい、名前も捨てました。どうせ元が孤児なので気にする人は居ません」

「ヤヌウニさんは?」

「私が怪我の治療しかできないので、ヤヌウニさんがメインで、私は手伝いながら病気の治療を教えて貰っています」


「ヤヌウニさんは名前は大丈夫なのか?」

 ヤヌウニ=クラウスは金字教の教祖なのだ。

「はい、南の方では結構ある名前なので、姓を名乗らなければ大丈夫だそうです」


「レオン殿、帰って来たのか。ご苦労さん」

 後ろからヤヌウニに声をかけられる。

「どうですか治療院は?」

「サクラの事もあるし、金を稼がねばな。ここは良いぞ。こんな薬が欲しいと言うと、アキラがすぐに作ってくれる。おかげで客が引きも切らん。ウッハウハじゃ」

 何百年も一人で過ごしてきたこの人は、人との触れ合いが嬉しいらしい。


 食事の後、レオンは魔獣狩りや海賊討伐の話をした。

「ちょっと待ってくれよ」

 アキラが胸で腕を組みながら顎に手を当てる。

「なんですか?」

「その海賊の女頭領、ヘスティアって名前なんだよな」

「はい、そうです」

 レオンはなぜ名前に拘るのか分からなかった。


「オリンポスって、組織があったよな。それでヘラ、アーレス、ヘスティア、これって俺が前に居た世界の神様の名前なんだよ」

「神様の名前?」

「ギリシャって国があって、そこの神話に出てくる神様がいる山がオリンポス山、主な神様が十二柱でゼウス、ヘラ、アポロン、アテナ、アフロディーテ、アーレス、アルテミス、デメテル、ヘパイストス、ヘルメス、ポセイドン、ヘスティアだ」

 指を折りながら神の数を数えるアキラ。


「どういうことです?」

「つまり、オリンポスの首領か幹部に俺の世界からの転生者か転移者がいて、そいつが組織の名前やコードネームを考えたと思うのが自然だ」

「でも、ヘラは本名ですよ多分」

「それがヒントになって考えられたと思う」


「じゃあ、オリンポスにはアーレスやヘスティアのような奴が、まだ居るってッてことですか?」

「そう思った方が良い。アーレスやヘスティアはあまり有名じゃない。ゼウス、アポロン、アテナ、ポセイドン辺りが有名だから、そいつらはもっと強いかもしれない」

「そいつらが俺の前に現れないことを祈りますよ」


 レオンは考えた。オリンポスはレオンの事をどれくらい知っているのだろうか。ヘラの事はレオンが倒したとは知らないはずだ。アーレスはレオンを狙って来た。ヘスティアはジェリルが中心となっているので大丈夫か?。組織の目的も解らなければ、アーレスがなぜレオンを襲ってきたのかも解からない。そもそもレオンの周りで、悪さをしなければ関りも無いのだが・・・。


 ******


 その日、早めの夕食をアキラさんの家で食べ、学園の寮に帰ってきた。

「レオン様、そちらの部屋に行って良いですか?」

「そろそろ寮に人が入り始めている。昼間ならともかく日没後はやめた方が良い」

「なぜですか?」

 レオンが言いにくそうに言うのでコトネがさらに聞く。


「そ、それはだな。ゴホン、お前は気付いてないかも知れないが、お前はすでに成人と見間違うぐらいに成長した。誰かに勘違いされても困る」

「私は構いません。」

 レオンは少し驚いたようだ。


「アンナ、先に帰ってなさい」

 アンナは首を傾げながらも命令通り先に戻った。


 レオンは周りを見て誰もいないことを確認して言った。

「俺が構うのだ。お前はこの一年で魅力的になった。間違いがあっては困るのだ」

「それは私が身籠るということでしょうか?」

「馬鹿、そこまでは言ってない」

 レオンは真っ赤な顔になり脂汗を浮かべている。


「はっきり言おう。俺はお前が好きだ」

 今度はコトネが真っ赤になる番だ。

「しかしだ、この感情がずっと続くのかどうかは解らん」

「私はレオン様が好きです。もし子供が出来ても一人で育てます。レオン様に迷惑はお掛けしません」


 レオンは困った顔をする。

「先走るな。さっきも言ったように俺はお前が好きだ。お前の魅力に抗えないこともあるかも知れん。しかしだ。それ以上にお前の傷つく姿は見たくないのだ」

「いつまで待てばいいのでしょうか?」


 レオンは天を仰いだ。

「俺は貴族だ。親が決めれば嫁を取らねばならん。お前のことを一番にすることは、出来ない可能性が高い」

「私は妾でも愛人でも構いません。そばに置いて欲しいのです」

 コトネは嬉しそうにそう言う。


「そうだな、お前が成人するころ、俺も一人前になっているだろう。その時に俺もお前も愛し合っているならお前を迎えよう。それまではお前に手は出さない」

「分かりました。私はそれまでレオン様に嫌われぬように勉強も武道も邁進します」


 コトネの目から涙があふれる。レオンは焦った。

「どうした。苦しいのか?」

「いえ、嬉しいのです。レオン様に好きと言って貰えた。頑張る目標が出来ました」


「そうか、俺も自身の力で運命を切り開いて見せる」

「はい」

次回は3から4章の登場人物の紹介の予定です。

早ければ水曜日には第5章を開始したいと思います。ご期待ください。

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