4-6 傭兵ギルドに行ってきました
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今回は暇になったレオン達が魔獣狩りに行くため傭兵ギルドを訪れる話です。
アキラは帝都での拠点にまたいわく付きの館を選び、今回はゴロのお陰で小人妖精の従業員まで確保したのであった。
レオンは館の整備を手伝おうとしたが、小人達が手伝っているので出来ることもない。
入学までまだ三週間もあるので、魔獣狩りでも行こうかと考えていた。
寮の管理人に魔獣狩りの事情を聴くと面白いことが解った。
帝国ではダンジョンは軍隊によって管理されており、魔獣が溢れ出すまでダンジョンを育て、溢れた魔獣を傭兵に退治させるということをやっているそうだ。
傭兵が集めた魔石は軍が買い取り、帝国の魔道具工場に卸される。
金を手に入れた傭兵が街で金を使い、街の経済を回す。
軍はほぼ何もしないで魔石の差益で金が手に入る。
帝国は魔道具に必要な魔石が安定供給される。
ただ国が潤うだけのシステムではない。うまく考えたものだ。
傭兵だが、誰でも参加できるわけではない。傭兵ギルドという団体があり、仕事の斡旋や傭兵の質を落とさないように管理するのが仕事だ。トラブルを起こすアニーみたいな奴を排除したりする。
まずは傭兵ギルドに登録しないといけない。
レオン、コトネ、アンナの三人は、外壁の正門近くにある傭兵ギルドに向かう。
傭兵ギルドは結構大きな建物だった。
レオン達が中に入ると五つの窓口と壁際に記入台が並んでいた。
今の時間は空いているのか窓口は一つしか開いてない。
「登録をお願いしたいのですが」
レオンが窓口に座る軍服に身を包んだ女性に声をかける。
「初回登録ですね。先ずこの用紙に必要事項を記入してください」
横に置いてある用紙を指差して答えた。
レオンが用紙の記入内容を確認していると窓口のお姉さんが声をかけてくれた。
「字が書けますか?書けないのなら代筆しますが?」
「いえ、大丈夫です」
「空いていますのでここで書いて頂いても構いませんよ」
名前、性別、本籍、生年、人種、身体強化レベル、身長、髪の色、目の色、職種。
「生年は帝国紀ですか?」
「はい、そうです。他の国のご出身ですか?」
「はい、ヴァイヤール王国から来たばかりです」
帝国紀はよく分からないので、三人とも年齢を言って教えて貰った。
「職種は剣士とかで良いですか?」
「はい、ご自身の得意なことでお願いします」
レオンとコトネが剣士、アンナが探索と書いた。
「えーと、アンナさん。ここは戦闘職を登録しますが、戦闘関係の探索、つまり斥候ですか」
「えー・・」
アンナは言われていることが解らない。
「いえ、斥候とか偵察とは、ちょっと違います。魔法で探索します。30m以上離れた魔獣を見つけることが出来ます」
レオンがアンナの能力をかなり差っ引いて助け舟を出す。
「それが本当ならすごいんですけどね」
お姉さんは信用していない様だ。
「では登録手数料一人小銀貨3枚を納めてください。すぐに死なないか、登録試験を行います」
小銀貨3枚は日本の価値で三千円強、レオンは大銀貨一枚を支払って、小銀貨一枚のおつりを受け取った。
ここで西大陸の貨幣の価値を説明しよう。
西大陸の硬貨は帝国が鋳造している。
その価値は、
小銅貨十万枚=大銅貨一万枚=小銀貨千枚=大銀貨百枚=金貨十枚=大金貨一枚=百万円
となる。なお金貨のみ小がつかないのは、普通の人間は大金貨を見ることも使うことも無いからである。
もちろん、ヴァイヤール王国以東の国々では帝国貨幣の利用は少ない。しかし、帝国近辺との商売をするのは帝国貨幣しか信用されない。
中央大陸では東大陸の大国シンタン国の貨幣も使用しているようで、両替が面倒そうである。
窓口のお姉さんに連れられて、外壁が仕切りとなった大きな裏庭に出た。
お姉さんは裏庭の出口に近い部屋に居た、やはり軍服を着た30位の男に声をかける。
「曹長、登録試験の受験者を連れてきました」
お姉さんが敬礼をすると曹長と呼ばれた男も軽く敬礼を返す。
曹長は俺達をじろっと見る。
「なんだマリア。子供ばっかりじゃねえか」
「はい、傭兵登録に年齢制限はありませんから試験をお願いします」
「しゃーねえなあ」
マリアから登録用紙を受け取ると目を通す。
「うん、ヴァイヤール王国のイエーガーだあ!?お前、もしかして”首狩り”の縁者か!?」
ここでもレオンの父の名前は知られていた。
曹長が大きな声を出したので、興味本位に何人かが集まってくる。
「首狩りの縁者だって」「なんで首狩りが?」
「はい、三男ですが。済みませんが連れもいることですので、試験を先にしてくれませんか?」
「あ、ああ、そうだな。はい、散った!散った!」
集まって来た人達は「何だよ」とか言いつつ持ち場に戻った。
「付いて来い」
木剣を二本持って曹長が裏庭の真ん中に歩いていく。
「まず、レオンハルト、剣士で・・・レベル1?・・そうか、首狩りの家でこのレベルはきついわな」
曹長は勝手にレオンに同情してくれる。
「今から試合をするが、今まで戦闘の経験はあるか?」
「はい、最近では王国とエルハイホとの国境で山賊二十人を退治しました」
「へえ、なんか聞いたわ、それ。あれお前だったの?」
「まあ、俺一人じゃないですけど」
「そりゃそうだろう。じゃあ、戦闘は経験済みということで・・と」
曹長は木剣を一本、レオンに渡して数m離れて構える。
「お嬢ちゃん達は離れてな。・・・さあかかってこい!!」
コトネ達が離れたことを確認してから試合開始を宣言した。
レオンは息を吸うと曹長の小手から面を狙って突進した。
曹長は自身の剣の腹で小手を狙ったレオンの剣を払った。
レオンは剣を引き面を狙ってさらに一歩踏み出す。察した曹長は剣を上げ、レオンの剣を止める。
レオンが下がる。
「よし、もういいぞ。その鋭さなら山賊位なら退治できるだろう。合格!次、コトネ!」
曹長は早くも合格を出した。レオンは探りのつもりだったので、ちょっと欲求不満だ。
レオンはコトネの所に歩いて行き、耳元で囁いた。
「手加減しろよ」
木剣をレオンから受け取ったコトネはちょっと不満げだった。
剣を持った右手を前に向けた曹長と対峙すると始めと声をかけられる。その次の瞬間、コトネは曹長の左脇を通り過ぎていた。
曹長は何が起きたのか分からない。解るのは左の脇腹が痛い事だけだ。
「ああ、あのバカ」
レオンは手で顔を覆った。
「い、今のは、どういうことかな?」
曹長が苦笑いしながらコトネに聞く。
「はい、胴を抜きました。ケガをしないように軽く当てるだけにしたのですが、痛かったですか?」
コトネは「なんでそんな事聞くの?」みたいに首を傾げている。
「合格!」
泣きそうな顔をしながら合格を告げる曹長であった。
「次は、アンナ、君は探索・・魔法の?」
曹長が首を捻っているので、レオンが助け舟を出す。
「この子は魔力を探知します。魔石でもあれば探せます」
曹長はレオン達を連れて、さっき曹長の居た部屋に戻った。
「ちょっと、ここで待っててくれ」
レオンはコトネに向き直った。
「コトネ、ちょっとやり過ぎだぞ」
「レオン様はこれから全力でやると仰いました」
「そ、そうか、そうだったな」
レオンは無自覚に力をセーブする自分に気付いた。
もう、俺はヴァイヤール王国に居た頃の俺ではないのだ。目立たない事を良しとしていたのでは、道は開けない。レオンは強く思い直すのだった。
「コトネ、俺がセーブしなくても良い所で、セーブしていたら言ってくれ」
「はい」
コトネはレオンが自分の忠告を素直に聞き入れてくれたので、自然に頬が緩んだ。
曹長が戻ってきた。後ろにマリアが、木のカップをいくつか運んできた。
曹長はアンナの前に行き、両手を握って突き出した。
「どちらかに魔石を握っておる。わかるか?」
アンナはすぐさま右の拳を指差す。
曹長が拳を開くと右から魔石が出て来た。
「ホー、大したもんだ」
「これからです。レオンハルトさんとコトネさんは部屋に居てください」
曹長とマリアは長椅子を裏庭の真ん中に運ぶ。
アンナを長椅子から10m位離れた位置に立たせる。
「長椅子にカップを置いてその中の一個に魔石を入れます。それを当てて下さい」
長椅子と曹長を布で隠し、どのカップに魔石を入れたのか分からないようにする。
「さあ、当てて下さい」
布を取ると長椅子の上には五個のカップが置いてある。
「左から二番目」
アンナが言うとそのカップから魔石が出てくる。
次は20m離れた位置にアンナを立たせる。
また、曹長が魔石をどれかのカップに入れた。
布を取った。
「一番右」
また当たった。
次は30mだ
『判らないと言いなさい』
布を取った。
「判りません」
レオンに従者通信で言われた通りにアンナが答える。
「そうか、でもすごい能力だ。魔石の取り残しが無くなるぞ」
曹長が手放しで喜ぶ。マリアは少し考えているようだ。
「それっていつでも判るものなの」
アンナに質問する。
「いえ、集中した時だけです」
「そっかー。とにかく三人共合格ね。もう一回、窓口に来てちょうだい」
窓口に行くと真鍮で出来たタグを渡される。
「傭兵として活動する時は、これを身に着けててね。紐を通して首にぶら下げとくのが安心ね」
タグには名前と記号と数字が並んで刻印されている。
「これはあなた達の個人情報よ。魔獣討伐や魔石交換の時に確認されるの。まあ、別人があなた達に成りすますのは難しいわ。
それとあなた達は戦争には十八にならないと行けないから注意して。
魔獣狩りの予定はそこのボードに貼ってあるから見て置いてね。
あ、それとあなた達、今までに魔獣と戦ったことがあるかも知れないけど、溢れた魔獣は別物だから、すぐに魔力回路を食いに来るから注意してね」
マリアの言葉にレオンは今までの魔獣が、人間を襲うが魔力回路を壊さなかったことを思い出した。
ダンジョンから溢れた魔獣と言うのは、高密度になった魔獣がダンジョンの魔力を消費するため、魔力の飢餓状態になっている。それで魔力の不足を補うために人間の魔力を欲するらしい。
傭兵ギルドを出たレオンにコトネが質問する。
「アンナの能力を過小に見せたのはなぜですか?」
「私もっと判ったよう」
「本当の能力を教えたら、軍に拉致されるだろうね」
二人がびっくりしてレオンを見る。
「え、どうしてですか?」
「どうしてえ」
「偵察しなくても1km以上先のことが判るんだよ。軍にとって垂涎の的さ。アンナが自分で自分を守れるようになるまでは秘密にしないと危ないよ」
コトネは何となく解ったようだが、アンナは首を傾げている。
実はマリアはアンナの能力が軍で使える物なら拉致することに躊躇しなかったはずだ。探索距離が短いのと常時探索出来ないので、軍に不要と思われたのだ。
レオン達は明日魔獣を溢れさせるダンジョンに向け、移動することにした。
次回は他の傭兵に混じって魔獣狩りに参加します。




