4-5 妖精の館
アキラ達が拠点となる家を探します。
レオンは第二皇女フェリの剣術指南役に就任した。
一方、学園初等部への入学を決められたコトネは、納得しがたい感情を持て余していた。
レオン達が帝都に着いてから五日後の午後、ようやくアキラ達が帝都に到着した。
従者通信で到着する日が解っていたので同じホテルを予約していた。
「やあ、ようやく着いたよ」
アキラさんはニコっと笑った。
「寂しかったっす」
シャラとレイニャとジュリア、コトネとアンナが抱き合う。
女の子が固まってスキンシップをする。
馬車の一台を分解して厩舎に置くように指示してから、アキラとレオンは馬車で出かける。
アキラの帝都での拠点となる物件探しだ。
不動産屋への道すがら、これまでのレオンの活動を説明する。
「第二皇女の剣術指南役か、良いじゃないか。帝国の上層部へのパイプが出来た訳だ」
「上層部と話すことがあります?」
「多分ね。そうなって貰わないと予定が狂う」
「どういうことです?」
「そのうち分るよ」
「それより、魔動車に興味があるね」
「そうだよね。あれが不思議で」
「多分だけどね。ゴーレムを使ってる」
「え、ゴーレム?」
「そう、魔法陣の印刷に成功したようだ」
「おっと、着いたようだね」
馬車は不動産屋に到着したので、レオンの疑問ははぐらかされた。
アキラは幾つかの候補を不動産屋に提示され、回ってみることになった。
王都の家も大きかったが、アキラの求める家がさらに大きいのにはレオンも驚いた。
大金貨数百枚の物件なのだ。ちなみに大金貨一枚の価値は百万円以上だ。
アキラは一通り回ったが気に入らない様だ。
「これで終わりかい?」
「もう一軒あることはあるんですが、いわく付きなんですよね」
不動産屋はあまりお勧めできませんと言って来る。
「悪霊でも出るのかい?」
「まあ、そこまでは行かないようなんですけど、物が無くなったり、小人が現れたりするそうです」
「家付き妖精じゃないのか」
「いえ、ブラウニーはいたずらはしませんよね」
「グレムリンかレプラコーンかもしれんな」
「どうもグレムリンらしいと噂されています」
「まあ、行って見ましょう」
レオンは幌馬車の中に居たので、アキラがまたいわく付き物件に手を出すのかと頭を抱えた。
人間の家に住む小人妖精の種類は多いが、これは性格によると思われているので、実際は一種類かもしれない。
家事を手伝ってくれるブラウニー、酷いいたずらをするグレムリン、物作りが得意だが気に入らないことがあるといたずらで返すレプラコーンの三種類が一般的である。
最近は帝都でも見ることはないらしい。
そうこうしているうちにその物件に着いた。
「ここがそうなんですが」
不動産屋が玄関のカギを開ける。
今まで見た中で一番大きい、もともとは店舗であったみたいだ。
「レオン君、何かわかるかい?」
「アンナがいないから分りませんよ」
「そうかあ、でも立地と間取りは気に入ったよ。一通り見てみるか」
アキラはそう言って中に入って行く。レオンはこの人は悪霊に取り付かれそうになったことを、忘れているのだろうかと呆れていた。
前後二棟がある
前一階は店舗、後一階には倉庫と作業スペースがあり、屋根付きの通路で前後が繋がっている。
前二階は、4家族が住める部屋と台所がある。後ろ二階は二十人ぐらいの従業員用の部屋と食堂と台所に使える広間がある。
「良し、ここにしよう」
「でも、何かあったら私達が困ります」
アキラはマイペースにそう話すが不動産屋が難色を示す。
「どうせ、何かあるとしたら夜の事なんだろう?」
「ブラウニー以外の妖精は、基本夜活動しますが、グレムリンだと命が危険です」
不動産屋が危険をアピールするが、アキラは動じない。
「取敢えず、今晩泊まってみるよ。カギを貸して置いてくれる?」
「警告はしましたからね。何かあっても責任は持てませんから文句言わないでください」
鍵を乱暴にアキラに渡す。
不動産屋は仕事柄、貴族を相手にすることも多い為、帝国をバックにつけている。そのため発言が強気だ。
その後、不動産屋を店に送り、コトネとアンナとノルンとゴロを連れて妖精屋敷に戻った
「うーん、結構たくさんいるみたい」
店舗の一階で天井を眺めるアンナにアキラが聞く。
「妖精の種類とか分かる?」
「解んない。だって妖精に会ったことないもの」
「アキラさん、妖精がいると分かってて、ここを買うんですか?」
「シャラさんが呆れてましたよ。前にひどい目に会ったのにって」
レオンとコトネに呆れられるアキラだが、興奮しているようだ。
「だって妖精だよ。会って見たいと思わないの?君だって精霊や幻獣を集めてるでしょ」
「いや、それはやむを得られぬと言うか・・・」
ハイテンションのアキラにレオンは言い負かされる。
「この屋敷の中って、何年も放って置かれた割に綺麗ですよね」
「ブラウニーだよ。絶対彼らが掃除していてくれるんだよ」
コトネの言葉にアキラのテンションはさらに上がる。
確かに、床や窓枠に埃が溜まっていない。備え付けの家具には白い布が掛かっているが、埃は掛かっていない。
「アンナ、妖精がどこに居るか判るか?」
「上の方、奥の建物にも居るみたい」
「アキラさん、と言うことだけどどうする?」
「そうだねえ、我々が友好的であることを伝えたいねえ」
ゴロがレオン達の前に飛び出した。
「なあ、オイラが行ってこようか。上に居んだろう」
「ゴロか、良いかもな。人間が直接行くより話しやすいはずだし」
「じゃあ、ここに俺達が住みたいから、話をしたいって伝えてくれるか」
「分った、行って来るぜ」
<ゴロ視点>
二階に上がったけど奴らはいない。上の方から気配がする。屋根裏かな?
ここが屋根裏に上がる階段か?部屋と部屋の間に細い階段がある。
階段を登って行くと妖精の気配が強くなる。
「おーい、オイラはゴロって言うんだけど、誰か居るかなあ」
「話すことはない。出て行け」
奥の方から男の声が聞こえる。確かブラウニーって女じゃなかったか?
「話す気が無いならこちらにも考えがあるぞ」
こういう交渉は相手になめられたら駄目だってヤヌウニさんが言ってた。
屋根裏部屋は暗く、明り取りの窓の辺りだけが明るい。
「お前は幻獣か?なぜここに居る。下に来た人間と関係があるのか?」
「ああ、その人間は仲間だ。彼らは精霊や幻獣と一緒に暮らしている。お前達も役に立てるなら一緒に暮らしたらいい」
「俺達は人間にひどい目に会った。信用できない」
そうか、人間にも色々いるからな。
「それじゃあ、ずっとこのままいるつもりなのか?人間が居なければ霊力の補給もままならないだろうし、この家は人間の持ち物だ。追い出されるぞ」
「う、それはそうなのだが・・・」
「取敢えず顔を見せろ。話はそれからだ」
奥の方からぞろぞろと十数人の小人妖精が顔を出す。彼らは身長が1mに足りない。
「人間が俺達を養ってくれると言うのか?」
小人妖精は全員男で顔の殆どを髭が覆っていた。
「むさくるしい奴らだな。お前達家付き妖精は、皆特技を持ってるんだろう。それで人間と共生したらいい」
一人が前に出て来た。
「俺は革の靴が作れる。それでも良いのか?」
「ああ、革加工の専門家のドワーフがいるそいつを手伝えば良い」
もう一人出て来た
「俺は鍛冶が得意だ」
「ああ、鍛冶屋のドワーフもいるぞ」
全員が出て来て一斉に何が出来るか喋ってくる。
「ああ、もう下の人間と話し合え。一人ずつ聞いていられるか!!」
あまりに一遍に話しかけてくるものだから癇癪を起した。やべ、怒られるかも。
「ちょっと待ってろ裏の建屋に居る奴らも連れてくる」
一人が先に走っていった。
なんて単純な奴らだ。あれだけ警戒していたくせにもう気を許してる。
まあ、その方が楽で良いんだけどな。
おっと、レオンに報告しておかないと怒られるぜ。
<第三者視点>
一階店舗部分、総勢32名の小人妖精がアキラの前に集まった。
裏の建物には女性型の小人も居たようで男女の比率は半々だった。まあ、彼らの繁殖は人間とは違うので男女比はあまり関係ない。
前の建物に男が多かったのは、ここを訪れた人間にいたずらをして追い出すためであった。
「えーとですね。ここで私達は錬金術・鍛冶屋・服飾・革加工を行い製品を売ります。そして治療院を併設します。皆さんにはこれらのお手伝いとこの家の維持、および家事をして頂きたいのですがよろしいですか?」
小人たちはワイワイガヤガヤとしていたが、暫くすると最初にゴロと話していた小人が一人前に出た。
「我々は幻獣や精霊と一緒に暮らしているあなた方を信用することにした。どうか我らの思いを裏切らないようにして欲しい」
「もちろんです。私は最終的にあらゆる人種や精霊、幻獣などが、楽しく一緒に暮らせる世界を目指したい」
ちなみにブラウニーやらレプラコーンという名は人間が勝手につけた名前で、そんな区分はないそうだ。
アキラは不動産屋で必要な手続きをして、屋敷を手に入れた。アキラは前の姿の時に錬金術で大金を稼いでおり、銀行には、まだまだお金が残っていた。
次の日からは屋敷を住めるように、仕事が出来るようにして行った。
レオンも収納庫に入った。アキラの荷物、コニン一家の荷物を屋敷に並べた。
レオンは午後からコトネの入学許可証と入寮申請書を貰って来た。
結局、荷物が片付くのに三日かかった。
レオン達は入学入寮申請の日が来たのでハイデルブルグ学園に出向いた。
コトネもレオンも問題なく入学、入寮できた。
ハイデルブルグ学園は巨大だ。初等部と高等部は数百m離れているので、コトネは不満だ。
アキラさんから屋敷から通ってはどうかと打診されたが、レオンは皇女を屋敷に呼びたくなかったのでことわった。
それにレオンはそろそろコトネと同じ部屋に寝るのは限界だなと感じている。
いよいよ帝国での学生生活が始まります。




