4-4 フェリの愛、コトネの愛
フェリはレオンを指南役にします。
エ、寮には従者が一人?どうするコトネ?
傭兵アニーはコトネの過去を聞き、自身の行いを見直すことにした。一方、皇帝になる為、レオンの強さを手に入れようとしていた第二皇女フェリは、レオンの才能の大きさに触れ強さだけでは物足りなくなっていた。
帝城フェリの執務室<フェリ視点>
ワシはいよいよ奴の強さの秘密を聞かねばならん。
「レオンハルトよ、おまえの強さが、身体強化レベルではないとするとなんじゃ?」
「この大陸の東の果てホウライ国をご存じでしょうか?」
「東洋の国じゃな。聞いたことがある」
「その国では尚武の志が高く、特に刀と言われる剣で戦って強くなることが、ステータスとなっております。特に剣をその職業にしようとする者は、それこそ四六時中剣の練習をしており、その技術は凄まじいものとなっております。そのような国からの来訪者であるわが師ヨシムネ先生は、最強の流派、羽生新陰流の達人です。また先生は西の大国シンタン帝国でクンフー道の極意”気”を習得し、その二つを私に授けてくれました」
聞いたことがある。それがワシのものになるのか。
「その二つがお前の強さの秘密と言う訳か。それをワシに教えることは可能か?」
「お教えすることは可能ですが、習得できるかどうかは殿下の才能によります」
ぬう、ワシが覚えられんと言うか?いや、ここで腹を立ててはならぬ。
「ワシに素質が無いと抜かすか。面白いぞ。どのくらいの期間が必要じゃ?」
「私は二年で剣術はほぼ覚えましたが、”気”は半分くらいです。後は先生がお国に帰られたので、自分で外気功の一式から五式までの内、今の所二式まで覚えました」
「二年か。まあ、高等部は三年ある。それまでには何とかなるか」
「殿下は女性ですから、スキンアーマーが使えると思います。それを併用すれば”気”は使わなくてもレベル4位までは、勝てるようになるかと」
「レベル5に勝てるようにせよ」
ワシはレベル5に勝ちたいのだ。
「それでは”気”も覚えて頂かなければいけません」
「望むところじゃ」
どんな厳しい訓練もやり遂げて見せる。それが皇帝への道なのだから。
「それで訓練ですが、放課後二時間、週末は出来ていない部分を宿題とします」
「へ!?」
それだけ、それだけなのか?
「それで強くなれるのか?」
「高等部の勉強もありますし、内容を濃くすれば大丈夫でしょう。私も勉強や工事の手伝いの合間にやりましたから」
こいつ、本当に大丈夫か?もしかしたら天才過ぎて、人に教えられないとかじゃないのか?
「少し、この場で”気”について教えることが出来るか?」
「・・分かりました、では気を実感してもらいましょう」
奴がワシの真正面に来た。近い、少々恥ずかしいぞ。
「まず、陰門を意識してください。次は丹田、へそのすぐ下です。次は鳩尾。次が喉、次は額です。どんな感じですか」
「特に何も感じないが???」
何をするつもりなのか?
「では、背筋を伸ばしてじっとしてください。私が気を送ります」
ワシの額に手の平を当てた。暖かくてすごく気持ちがいい。
あれ、額に何かの力が・・額が一杯になると喉へ、同じように鳩尾、丹田、陰門、五つの点に力が溜まっている。
奴の手が額から離れる。ああ、もっと触っていて欲しい。
「どうです。最初言った五つの点に力を感じますか」
「は・・い」
あの人がハンカチを出した。
「このハンカチを持ってください」
上端を両手で開いたハンカチをたるまさないように持った。
「力を回してみましょう。まず右手を通って、ハンカチを通して、左手に力がやってきました。また体の中心に戻します。そうしてぐるぐる回しましょう。ハンカチを伸ばしてみましょう」
畳んだ折り目の付いたハンカチに気が回ると折り目が消えてまっ平になる。
あの人がテーブルの真ん中に盛ってあった果物かごから、リンゴを取出しワシの前に置く。
「ではここにリンゴがあります。これをハンカチで切って見ましょう」
わたしがハンカチをそのままリンゴの上に降ろすとハンカチがリンゴを切って行く。
「キャーッ」
メイドがあまりの出来事に悲鳴を上げる。
扉の外で待機していたウェルバルとブルックスが勢い良く入って来る。
「イエーガー!!お前なにを・・・」
リンゴが二つに割れて倒れた。
「姫様、これは一体???」
ブルックスが信じられないと言った顔で私を見ている。
私もあまりのことにハンカチから手を離すとハンカチは幾重にも折れて落ちる。
「今、ハンカチでリンゴを切ったようにお見受けしましたが・・・」
「はい、切りました」
「そんなこと有り得ないっすよ」
いつの間にか体の中の気が散ってしまったみたいだ。
「このボケ!!気が散っちゃったじゃないか」
ウェルバルの足をまたゲシゲシ蹴っ飛ばす。
「レオンハルト・・レオンと呼んでよいか?」
「はい、大丈夫です」
「あなたを私の武芸指南役に指名します」
「お受けいたします」
「そうですね、給金は月に金貨五枚で良いですか」
「ええ、俺金貨二枚っすよ」
「ウェルバル!!うるさい黙ってろ!!」
ウェルバルはブルックスに引きずられた扉の外へ行った。
「はい、過分な扱いありがとうございます」
「寮にはいつから入るのじゃ」
「15日に入寮申請ですからそれからになります。うちは従者が二人居りますので、急いで従者付きの部屋を確保しないと取れないと聞きましたので」
うん、従者が二人?
「確か、従者は一人しか認められんぞ」
「ええ、困ったな」
首を捻るレオンはなかなか可愛いぞ。もしかすると・・・。
「レオン、従者は幾つじゃ」
「十二と十歳です」
それならば良し。
「では十二の方を初等部に入れよ、十歳の方を寮に入れよ」
「でも猫獣人でして・・・」
「構わん、見た目優秀そうじゃったし、学園にも獣人は一割は居る」
「初等部の学業は習得していますし、獣人にも門戸を開放しているのなら」
おお、レオンが嬉しそうじゃ。レオンは従者に優しいんじゃろうな。
「では、明日、入学許可証と入寮許可証を用意して門番の衛兵に預けておく。昼過ぎには出来るじゃろう」
どうじゃ、ワシに感謝せいよ。
「ありがとうございます」
ヨシヨシ、って何をワシは浮かれて居るのじゃ。いかんぞ。冷静に対処せねばな。
「よいよい、ワシの野望を果たすためじゃ。お前には期待しておるぞ」
「はい、あ、そう言えば聖皇国から帝国に入った時に、レベル6のアーレスって奴に襲われたんですけど、殿下に心当たりはありませんか?」
「アーレスなあ、知らんぞ。まあ、お前を呼んだことはバレてたから、そうなると心当たりがあり過ぎて解らんがな。・・・ちょっと待て!!レベル6と戦ったのか。なぜ生きてる」
「何とか引き分けに成りましたが、今度会ったら負けません」
戦いの内容を詳しく聞いたが、掛け値なしのレベル6を相手にしたらしい。それと互角とは”気”を身につければワシでもレベル5に勝てるかも知れんな。
レオンは気の練り方を教えて帰って行った。もちろん昼飯は食わせたぞ。ワシは優しいからな。
もっと奴に教えて欲しいことが、いっぱいあるのじゃがよその国の貴族をそうそう帝城に呼べるわけもないし、ワシもそうそう城を抜け出す訳にもいかん。せめて奴が寮に入れば、いろいろ用事を作って会いに行けるのに。なぜか奴の事を考えると胸がドキドキする。そうかワシが早く強く成りたがっておるのか。
「今日は珍しく殿下が、乙女みたいな顔をしてましたね」
「殿下が初恋か?信じられんが」
ウェルバルとブルックスはフェリを生暖かい目で見るのであった。
******
ホテルに戻ったレオンはコトネに学園入学を伝えようとしたが、まだ帰ってなかった。
一時間ぐらい待つと二人が帰ってきた。
<コトネ視点>
ホテルの部屋の扉を開けると、すでにレオン様が帰っていてベッドに腰掛けていた。
「ただいま帰りました」
「レオン様、ただいまぁ」
アンナが私を押しのけて、レオン様の隣に座った。
「今日は公園で遊んだんだよ。レオン様、ブランコって知ってる?」
「ああ、小さい頃近くの木に作って貰ったよ」
アンナは今日あった出来事を順に話している。
「・・それでね、アニーさんとライオンの叔父さんが喧嘩してて」
「アニーってあのアニーか?魔法使いの?!」
「そうだよ。また魔法を使おうとしたんだけど、お姉ちゃんが”タイガ―クロー”ってやったら魔法が消えちゃった」
「そうか、タイガ―クローを使ったのか」
やばー、タイガ―クローは神獣人の技だ。封印するって言ったのに、忘れてた。
レオン様は私の顔をじっと見ている。
アンナの話が終わってから、レオン様が私達に話があると言って、私もそばに座った。
「実は、学園寮の話だが、従者は一人しか認められないことが解った」
「え!?」
それって私かアンナがレオン様と一緒に居れないということ?
「そこでコトネには、初等部に入って貰おうと段取りをしてきた」
どういうこと、私が離れて暮らすの?そんなの嫌!。
「アンナ、おまえ一人で、今までやってきた仕事をしなきゃいけない。出来るか?」
「やる、出来るよ。でも・・」
「私が邪魔ですか?」
レオン様がそんなことを思うはずがない。解ってる。こんなこと言って、困らせるだけだ。
やっぱりレオン様は少し眉根を寄せた。
「コトネは神獣人を封印するんだろ。なら俺の横に居るために剣術だけじゃ駄目だ」
「でも私も強くなってきました」
認めて欲しい。俺の横に居ろって。
「自分でもわかっているはずだ。お前は最近伸び悩んでる。一人でやることに無理が来ている」
「それは・・・・・でもレオン様だって」
レオン様は一度顔を伏せてから、もう一度顔を上げて私を見た。
「俺は外気功を五式まで習得するするつもりだ。「五式を手に入れた時、お前は無敵だ」とヨシムネ先生に言われた」
「でも、ヨシムネ様も四式までしか習得できなかった」
「俺にはそれしかないんだ。もう、俺は遠慮しない。何事も全力で取り組む」
「私が神獣人になれば良いのですか?それなら五式までの訓練が可能だと?」
「お前に必要なのは、精神力の鍛錬だ。それは俺と居ては出来ない。
それにアンナのスキルアップのために家事をさせる必要もある。お前はすでに十分なスキルを持っているだろう」
そんなこと言われたらもうどうしようもない。アンナのためにも私のためにも学園に行くべきなのだろう。
私はなぜこの人と同じ道を歩もうとしたのだろう。
次回、アキラ達が帝都に到着します。




