4-2 帝国の皇女(2)
今度はレオンが帝城に出向きます。
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帝国に着いたレオンは第二皇女に到着したと連絡した。その日の午後には皇女が現れ、雇ってもらえそうだった。
皇女は慌ただしく来て、慌ただしく帰って行った。
「おばさん、大丈夫ですか?」
ホテルの支配人のおばさんが中庭の入ったところで腰を抜かしていた。コトネが立たせて埃を払ってやる。
「あんたら帝族の方と知り合いなのかい」
レオンが答える。
「初対面ですよ」
「あたしゃ、こんな近くでお目にかかったのは初めてさ。もう、心臓が止まるかと思ったくらいにびっくりしたよ」
まだ呼吸が整わないのかハアハア呼吸をしている。
「朝、到着したことを帝城に知らせたのですが、早速来られたようです」
「どういう関係なんだい?」
「さあ、どこまで公にしても良いのか、俺達には分からないので」
「そうね、でも気を付けなさいよ。帝族の帝位争いには巻き込まれないようにね」
そう言っておばさんは自分の持ち場に帰って行った。
この国の帝位争いは熾烈なものなのか?
それならそれで望むところだ。レオンはひそかに思った。
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フェリシダス第二皇女(愛称フェリ)は帝城に着くとお供の二人に今日の事を下問した。
「ウェルバル、おまえ、レオンハルトをどう思った?」
「避けられない斬撃を送ったつもりでしたが、いつの間にか俺の横に居たって感じですかね。今までの試合や乱取りとは勝手が違いました」
「ブルックスはどうか?」
年上の方はブルックスという名前らしい。
「彼のレベルは明らかに1でした。それなのに速度はレベル4を上回り、明らかに手加減をしていました」
彼はレベルを鑑定できるらしい。
「エーッ!俺って手加減されてたの?」
「うるさいわ!」
フェリはウェルバルに怒る。
「奴は使えそうじゃな。ワシの弱点である武が改善されれば、皇帝の地位も近くなると思わぬか?」
「そうですな。彼の強さの秘密を手に入れれば、頭脳ではすでに他の皇子様達を凌いでおられますからな」
「ルシーダも都合のいい男を探し出してくれたものよ」
「姫様もレベル4なのですから、筋肉ムキムキになったら強くなれるのに・・」
ウェルバルがやれやれと言う感じでチャチャをいれる。
「馬鹿者!!誰が女を捨ててまで強くなりたいと申したか」
ウェルバルの足をゲシゲシと蹴っ飛ばすフェリ。
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ここで少し身体強化レベルについて述べて置く。
身体強化レベルとは十歳から十二歳位になると魔力回路が筋肉・骨・腱・皮膚・内臓などを作り変え、通常の数倍から数十倍の力を出せるようになる、その力の強さの基準である。
作り変えには時間が掛かるので、一度に大きな魔力量を必要とする魔法と違って、外部からの魔力供給で出来るため、本人の魔力量とレベルの数値に関係はない。
女性の場合、筋肉量・体の頑健さ等からレベル数の実態は男性の半分と言われる。
ウェルバルの言った筋肉を鍛えればというのは、筋肉の量を倍にすれば力も倍になることを言っている。
女性にはスキンアーマーという全身鎧化の魔法を簡単に使えるものが多い為、攻撃魔法を使えない者は接近戦を選択することがある。
レベル数が強さの基準として使われているが、前記した体の造りによるばらつきがあることも事実で、レベルが2違えば勝てないと言われているのはそのせい。
この世界のレベル強者に勝つためには、まずそのものより高いレベルの者を用意するのが常識となっている。
その為、レオンがレベル4に勝つことは不思議なことと受け取られる。
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夕食後。
「レオン様、皇女様はレオン様の指導を受けてどうするつもりなのでしょう」
コトネはレオンに対する疑問は、そのままにしておけない性質なので質問する。
「さあな、彼女が必要としていることが、レベルではない強さの向上にあることが解るだけだ」
レオンは今は皇女に深入りせずに居場所の確保になればと思うだけだ。
レオンはこの国の上層部とコネを持って置きたいと思っている。意外と簡単に持てそうなので、ちょっと拍子抜けの思いもある。
「レオン様、明日は一人でお出掛け?」
アンナが明日の予定を聞いて来た。何かやりたいことでもあるようだ。
「ああ、帝城に恐らく昼までは留め置かれるだろう。遅くなるようだったら従者通信で連絡する」
「お姉ちゃんと街にお出かけしたい」
「うーん、受付のおばさんに子供だけ外に出て大丈夫か、聞いてからにしろ」
レオンはエルハイホでは子供だけでも大丈夫だったが、帝国ではどうだろう。少し危険な気がするがコトネがついていれば大丈夫かな。
「やったー!お小遣いちょうだい」
レオンは王都でアンナ達が軟禁状態だったことに申し訳ないと思っている。なるべく自由にさせてやりたい。
銀貨二枚をコトネに渡す。日本で換算すると二千円くらいだ。
「お昼でも食べてお出で。ノルンは連れて行くんだぞ」
「はーい」
ノルンは普段は隅っこで、俺達の生活を見守っている。それで十分楽しいらしい。
「ご主人、任された」
今は鳥の姿で、他人が来たら窓から逃げることにしている。
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次の朝、レオンは入城許可証を持って帝城に出向いた。
昨日の窓口に行くと昨日の叔父さんが座っていた。
「やあ、今日は許可証持ってるんだ。じゃあ、奥の門の手前の建物で案内をお願いして」
「ありがとうございます」
門からは壁に挟まれた大きな通路があり、ドン詰まりの左側にはまた門がある。
その門の手前に小さな建物があり、その窓口に許可証を出した。
「この場所に案内をお願いします」
ここには若いお姉さんがやはり軍服を着て座っていた。
「左側に回ってそこの魔動車に乗って下さい」
レオンに許可証を戻してそう言った
左に回ると馬の無い馬車が置いてあった。
若い軍服を着た男が、馬車の前の席に乗り込み、レオンに話しかけてきた。
「さあ、乗って。書類を見せて貰えるかな」
馬車に後席に乗って許可証を渡した。
「第二皇女の所ね。さあ行くよ」
「お願いします」
許可証を戻して魔動車は走り始めた。
レオンにとって魔動車は初めての体験だ。
通路はすべて石で舗装されていて、木製の車輪の音は馬車とあまり変わらない。
通路の両側には数百mに渡って、白い壁黒い屋根の建物が綺麗に一直線に並んでいる。
「ここには帝国の役所が集まっています」
御者がわざわざ説明してくれる。
「・・はい」
レオンは王都で一年暮らして来たので、田舎者は卒業できたと思っていたが、まだだったようだ。
魔動車は建物の列の中央付近で、北に行く通路に曲がる。
すぐにまた壁と門があり、それを潜るとまた、景色が変わった。
すぐ左には三階建てぐらいの大きな建物、右には五階建ての大きな建物が見え、その奥には鉄の柵が見えその中では色とりどりの花が咲き誇っていた。その奥には優雅な二階建ての建物が見えた。
「左が政治を取り仕切っている議事堂、その奥は近衛隊の駐屯地、右がパーティや催しを行う多目的ホール、その奥に迎賓館がある」
ヴァイヤール王国の王城とは何もかもスケールが違う。
この国には勝てない。そうレオンは思った。そう思わせるように案内しているのだろう。
黒く塗られた鉄柵の閉じた門の前に着くと魔動車は止まった。
「入門許可証を見せてください」
駆け寄ってきた衛兵がレオンに言った。
レオンは許可証を渡す。暫くすると門が開けられ、許可証も戻された。
花咲く庭を通り数百mの幅を持つ建物の前に着いた。
車を降りて中から出て来た執事らしき男に許可証を求められ、渡した。
「伺っております。中へどうぞ」
導かれるままに中に入ると、だだっ広いホールと奥に二階に繋がるV字型の階段がある。
「ゲルトルート!レオンハルト様をフェリシダス殿下の執務室にご案内なさい」
ゲルトルートと呼ばれた中年のメイドが俺の前に立つ。
「ではご案内いたします」
百m程歩いたところでメイドが扉をノックする。
「フェリシダス殿下、レオンハルト様をご案内いたしました」
「うむ、ご苦労入って貰ってくれ」
レオンはソコハカと疲労感を感じるのであった。
帝城を尋ねてから十数分しか経っていないはずだが、レオンには数時間にも感じられたようだ。
ソファに向かい合って座るフェリとレオン。
「よく来た。どうした?疲れているのか?」
「田舎者にはこの城は疲れます」
「そうなのか。良く分からんが?わしは産まれた時からここで暮らしておるでのう」
部屋の隅に控えるメイドの口角が、少し上がった。
「実はお前の為人などは、ルシーダがある程度調べてくれている。
ただ、お前がエリーゼ姫との結婚を蹴って帝国に来た意味が解らん」
レオンは自分がレベルの事でイエーガー家のミソッカスと呼ばれていたこと。
兄達に勝ちたくて剣も勉強も必死でしたこと。
貴族派のクーデターの失敗で、王がイエーガー家を取り込んで、ヴァイヤール王国の最終兵器に位置付けた事。
その一環でエリーゼとの結婚が考えられたこと。
エリーゼと結婚すると兄姉に永遠に追い付けなくなること。
ヴァイヤール王国では獣人に自由は無く、従者たちに幸福を授けられない事。
自分が強く目立つことは、王国に最強兵器の一つとして拘束されてしまう事。
等を説明した。
「なるほど、お前も厄介な性分じゃのう。つまりお前が貴族派のクーデターを防止したことで、兄姉が公爵になってしまって、お前がいくら頑張っても追いつけなくなった訳か」
「いや私が直接止めた訳ではありませんが・・・」
「なぜじゃ、侯爵一派の悪政を暴き、貴族派の乾坤一擲の策、王太母拉致を食い止めたのはお前じゃろうが。それが無ければレベル7も爆轟の魔女も活躍できまい」
「それはそうですが・・」
「わしがヴァイヤール王なら一番の功績はお前に授けるがのう。全く人は派手なものに目を奪われる」
フェリはこいつはミソッカス扱いと王国の拘束を恐れて、自分をさらけ出すことが出来ぬのだ。権力者には御しやすい性分ではあるが、逃げる可能性もある諸刃の剣と思った。
フェリの思いは、問題はこいつの巨大な才能に誰も、その父も自分でさえ気付いていない。こいつを横に侍らせられたならわしは皇帝となり、この大陸に覇を唱えられるのではないか?ということだった
「殿下、何かおかしなことでも?」
ヤバイ!顔に出て居ったか。フェリは反省する
次回、コトネとアンナが帝都をブラブラ歩きます。




