表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/222

4-1 帝国の皇女

4章に入りますが登場人物が多くなるので、文が第三者視点に変わります。

まず、帝国で生活の基礎を整えようとするレオンです。

 何とかレベル6の襲撃から生還したレオン、帝国の第二皇女に到着を連絡すべく帝城に向かうことにします。


 レオン達が帝国に到着した次の日の朝、コトネが門前宿で起きたのは、7時を回ってからだった。

「いっけなーい!」

 自分の隣にはまだぐっすりと眠ったアンナが、隣のベッドにはレオンが眠っていた。


「アンナ!早く起きないと朝ごはんが食べられないよ」

 確か、この宿は8時までしか朝食を準備してくれない。

 コトネは飛び起きてネグリジェの寝間着を脱ぎ棄て、赤い革のブラとショートパンツを付ける。そして壁にかかったメイド風のワンピースを着る。

 コトネはもしかの為に厚着はしない。何時でもワンピースを脱ぎ捨て、スキンアーマーを起動できるように準備するのだ。


 レオンは起きたが、アンナはまだベッドから出て来ない。

「アンナ!早くしなさいってば!」

 レオンは着替えて昨日汲んで置いた桶の水で顔を洗っている。

「コトネ、タオル」

 もう、タオル用意してから顔を洗ってよね。毎回思うのだが言えない。

 タオルをカバンから出してレオンに渡す。


「もう、アンナったら!」

 コトネはようやく起きたアンナのネグリジェをまくり上げ脱がせる。タイツを穿かせて、シャツを着せ、毛糸のベストを着せて、コトネと同じデザインのワンピースを着せる。

「靴下は自分で穿きなさい!」


 レオンが使った水とタオルで顔を洗う。タオルは自分の分くらい用意できるお金は貰っているが、洗ったり乾かす手間がいるので、一枚しか用意していない。

 靴下を穿いたアンナが顔を洗う。


「さあ、ご飯を食べようか」

 レオンが言う。

「まだです。髪を梳かしてください」・・・


 朝ごはんはパンとスープだ。パンは堅いし、スープに具はほとんどない。

 パンを少しちぎって、スープを染み込ませる、そして口に入れる。それがこの食事の取り方だ。


 王都の学生寮の食事も五十歩百歩なので食べられるが、旅の間はアキラさんからおいしい材料を貰えたから舌が肥えたようだ。

 アンナの食べ方が遅い。


「アンナ、どうした」

「レオン様、前に食べたパンがまだあるでしょ。出して」

 旅の途中で食べていたパンは王都のおいしいパン屋で、大量に買って収納庫に入れているものだ。

 アンナはそれを食べたいと言っているのだ。


「何を言っているの!出されたものはきちんと食べなさい。レオン様も食べてるでしょう」

 コトネが怒るのには意味がある。彼女らは生まれた村に居る時には、食うや食わずの生活を送っていたはずである。それを主人が食べている物を食べないなど、コトネには許せることではなかった。


「ごめんなさい」

「よし、素直に謝れたな。コトネを困らせては駄目だよ」

 レオンはアンナの頭を撫でてやる。


 ******


 レオンは帝都に到着した旨の手紙を持って帝城に来ていた。

 帝国はヴァイヤール王国に比べて格上の国なので丁寧な対応が必要だ。

 帝城は内壁と同じような壁に囲まれ、その実体は見えないがその壁の長さから1kmはあると思われる。


 正門は大きく、馬車二台がゆっくり通れて、高さも5mはある。

 流石は帝国である。門番まで着飾っている。黒く丸い大きな帽子、緑色の上着、黄色の線がサイドに入ったズボンそれを背の高い青年が身に着けている。まるで儀仗兵の様だ。


 レオンは言葉を確認して声をかけた。

「あの、済みません」

 声をかけても正面を向いたまま返事をして貰えない。

 すると門の中から「こっちに来て」と呼ばれた。

 普通の軍服を着た叔父さんが窓口から呼んでいる。


「ここは初めてですか。あれは儀仗兵だから、今度来るときは直接ここへ来てください」

「はい、解りました」

 やっぱり儀仗兵だったか。もっと分かるようにしとけよと思うレオンだった。


「で、何の用ですか?」

「私はヴァイヤール王国のイエーガー伯爵の三男、レオンハルト=イエーガーと申します。この度、第二皇女殿下の推薦を受けてハイデルブルグ学園に入学する運びとなりました。つきましては帝都に到着を報告するため手紙をしたためましたので、殿下に届けて頂きたく思います」


 叔父さん兵士はホウと感心した顔をした。

「それは遠い所ご苦労様です。なにか証明するものはありますか?」

「はい、入学許可証で良ければ確認願います」

「拝見いたしますね」


 叔父さん兵士はざっと確認して返してくれた。

「はい、手紙を預かります。殿下からの連絡が有るかも知れません。宿泊場所などの連絡場所は書いてありますか?」

「はい、もちろんです」

 レオンは手紙を差し出す。


「はい、お預かりしました。ところで聞いていいかな?」

 叔父さん兵士は少しくだけて聞いて来た。

「はい、なんでしょう」

「君、首狩りイエーガーの御子息だよね?」

「はいそうですが。父とお知り合いですか?」

「いや、私が一方的に知っているだけ、だって私達の世代では憧れの人ですよ」

「へえ、そうなんですか」

 レオンはまさか帝国にもその名が知られているとは思わず、父の偉大さを再確認した。


 それから首狩りの武勇伝の噂の検証に付き合わされた。

 いつの間にか窓口は兵士であふれかえっており、父の人気を実感するレオンであった。

 いつの時代も剣一本と忠節で、のし上がっていく出世物語は人々の大好物である。


「実際、首狩りって強いのか?」

 後の方で聞いていた若い兵士が疑問を呈したが叔父さん達にやり込められていた。

「強いです。ヴァイヤール王国では比較になる人が居ないくらいに」

 叔父さん達が唾をのむ音が聞えた。


「で、でも子供にレベル7が居るって聞いたぜ」

 さっきの若い兵士がまた突っ込む。

「確かに次男はレベル7ですが、それよりはるかに強いです」

 おお、という感嘆の声が窓口を飽和させる。


 ******


 昼食後、レオン達は特にやることも無いので、ホテルの中庭を借りて剣の練習をしていた。

「コトネ、神獣人の力は使わないつもりか」

「はい、エルハイホで見た神獣人は人間をやめていました。コントロールが難しい以上、頼らない方が良いと思います」

 レオンはコトネがそう言うならあえて神獣人の力は封印しておいても良いと考えている。ただコトネが独立するならその力も必要ではないかとも考えている。まだコトネは幼い、決断はもう少し経ってからでも良いか。


「レオン様、どう?」

 アンナが木剣を振りながら話し掛ける。

「コトネ、刃筋も整って来たし、次に行っても良さそうだと思うけど」

 レオンはアンナの指導者は、コトネにするつもりなので、コトネの意見を聞いてみる。

「そうですね。足腰もブレなくなってきたので良い頃かと思います」


「アンナ、次は足さばきだ」

「えーっ、技をやりたいよぉ」

「技は足さばきが出来てないと出来ないの」

 レオンの指示にアンナが文句を言い、コトネがたしなめる。少し、パターン化の兆しがある。


 その時ホテルの方から支配人のおばさんが駆け出て来た。

「イエ・・ガー・・様、・・・デ、デンカ・・皇・女デン・カがお・見えに・・・」

 過呼吸を起こしているのか、今一言ってることが解らない。


「どうしました?」

 レオンが聞き返すと支配人を押しのけて、胸に紋章をあしらったプレートメイルの若い兵士が現れた。

「失礼する。レオンハルト=イエーガー殿か?」

「はい、レオンハルトは私ですが。御用でしょうか?」

 レオンは隙を曝すことなく慎重に返答する。


 兵士の後ろから可愛い少女と同じ鎧の兵士が出て来た。

 少し背が低く、地味なシャツとズボンを着た少女が名乗った。

「わしはフェリシダス=リヒトガルド第二皇女じゃ。よく来た」

「はは、」

 レオンは跪いて礼をする。コトネとアンナが俺の後ろで同じように跪く。


 後から来た兵士が皇女に耳打ちする。

「おまえ、レベル1の癖にレベル5に勝ったそうじゃな。ルシーダから聞いたぞ」

「それは後ろに居るコトネと二人がかりで倒しました」

「そのチビこいメイドがか?冗談は良い。取り敢えず腕を見せて貰おう」

「はい」


「ウェルバル!お前レベル4だったな。試合って見ろ」

 皇女は最初に来た方の兵士に声をかける。

「レベル1とですか?」

「なんじゃ?」

「やります。やりますから睨まないでください」


 ウェルバルと呼ばれた兵士は俺を誘って中庭の広い部分に出た。

「おい、俺は真剣しかもっていない。ケガをしたく無ければ降参しろ」

「あなたの剣は俺に触れないので、真剣でも木剣でも関係ないです」

 俺は木剣を正眼に構えた。ウェルバルも両刃の両手剣を抜いて構えた。


「やれやれ、どこからそんな自信が来るのかな」

「御託は良い。始めよ!」

 皇女の一声で試合が始まった。

 レオンは相手が構えている所に攻撃すると受けられる可能性が強い事を考え、相手の攻撃時の姿勢を崩して隙を作ることを考えた。所謂、後の先と言う奴である。


「何来ないのぉ?じゃあ、俺から行っちゃうぜえ」

 ウェルバルはレオンの胸の高さで横に薙いできた。受けるなら受けた剣ごとたたっ切るつもりだ。

 レオンは両足を180度に開く、ウェルバルの剣がレオンの頭の上を通過する。

 レオンは姿勢を戻し、まだ体制の戻せないウェルバルの首を後から軽く叩く。


「待った!今のは無し。もう一回」

「何を言っている。戦場ならお前の首はない」

「そんなア。レベル1に負けたってばれたら、兵舎に帰れないですよぉ」

 もう一人の年上の兵士に引導を渡されるウェルバルであった。


「おおお、これじゃ、わしの欲しかったものは、レベルが低くてもレベルの高いものに勝つ技術じゃ!」

 皇女様には認めて貰えたようだ。良かった。レオンは胸を撫でおろす。


「レオンハルトよ。明日から帝城に通え。ここでは話せぬこともある。良いか!」

 皇女に言われて再び跪くレオン。

「はい、解りました」


 レオン達は少し明日の事を詰めてから解散した。

皇女に雇われ、居場所を確保したレオンでしたが、コトネに生き方の変更を迫る事案が発生します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ