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3-14 三男坊 レベル6と戦う

ようやく帝国に着いたと思ったら

レベル6に襲われたレオン達、無事に切り抜けることができるのか。


2024/4/21 誤字修正

 俺がリヒトガルド帝国に入った途端に、身体強化レベル6のアーレスに挑まれることになった。

 コトネとノルン以外は先に行かしたが、果たして俺は生き残ることが出来るのか。


 奴の得物は長さ2mはあるツヴァイハンダーだ。軽く振るだけで音速を超えてくる。


 コトネが近付いて囁いた。

「レオン様、最初から全力でやって下さい」

 俺はいつも全力のつもりだがコトネはそうは思っていない。俺が敵に合わせたり、周りに気を配ったりしていると思われてる。

「解ってる」


「もう、いいか?初手はお前に譲ってやるよ。さあかかってこい」

 アーレスは余裕を見せて剣を肩で担いでいる。


「コトネ、下がって」

「はい」と言って下がるコトネ。

「お嬢ちゃんが後四、五年経ってたらお相手してあげるのにねえ」

 アーレスは軽口を叩く。


「一式戦”隼”」

 最初から最高速度で突っ込む。

 一番避けにくい、腹を目掛けての突きだ。


 奴は驚いた表情をするが、すぐに片手で剣を振り下ろす。

 奴の方が速い。解っていたことだ。

 俺は半歩右にステップ。俺の左を奴の剣が通り過ぎる。


 狙いを胸に変更してさらに突っ込む。

 奴は左手で剣を回すと俺の胴を目掛けて、そのまま跳ね上げる。

 切り返した剣が俺より速い。

 かろうじて剣で跳ね上げてそのまま奴の後ろに抜ける。

 再び距離を取った俺達。


「初手は俺に呉れるんじゃなかったっけ」

「悪い、余裕なかったわ」

 奴の顔が真剣になってる。


「初めてかな。命の危険を感じたのは。お前本当にレベル1か?」

「そうさ、正真正銘のレベル1だ」

 俺の中で何かが目覚める。


 今度は距離が短い。さっきの半分だ。

「一式戦”隼”」

 しかし相手は正眼に構えている。さっきより早く対応できる。


 突っ込む俺に対して、奴は剣を振り上げ俺の頭を狙う。

「二式単戦”鐘馗”」

 俺は左腕で頭を庇う。

 奴の剣の方が速く俺の頭に届く、この威力では硬気功は役に立つまい。


 ギャリーンッ!!

 奴の剣は俺の左腕に沿って滑って行く。

 俺は右手一本で逆胴を抜く。


 今回やっと使えるようになった二式には二種類の技がある。

 前に使った複戦は、剣を延長する刃を気が形成する物。

 対して単戦は、左腕に沿って気が剣を形成するもので盾の役割をする。

 今回は単戦で相手の剣を受流す剣技”朧月”をやった。


 片手で斬った逆胴は鎧を少し切り裂いただけだ。

 また距離を取る。

 手数は奴の方が倍は多い。接近戦は分が悪いのだ。

 だから一撃離脱の戦法を取っているのだがうまく行かない。


「やるなあ。この鎧に傷を付けたのはお前が初めてだ」

「そりゃ、どうも」

 ち、喜んでやがる。このバトルジャンキーめ!


 そういや、コトネが全力でやれって言ってたよな。

 どういうことだ?ヨシムネ先生からは力を抜いて、自然体でって言われたしなあ。

 そういや俺、今力んでないか?速く走りたいとか、速く振りたいとか。

 先生は斬る瞬間、受ける瞬間に力を入れるように言われたんだっけ。

 そうか全力って言うのは、力を目一杯使うことじゃない。要所要所で鋭く使うことだ。


 一つ剣の理に気付いた俺は刀をぶら下げたまま、すり足で相手に近寄って行く。

 奴の間合いに入った瞬間、”隼”剣を上げ、懐に飛び込む。

 奴も油断はしていない八双から袈裟懸けに振り下ろす。

 ”鐘馗”!!左腕で受け流す。

 そして右腕を伸ばして心臓へ突きを撃つ。


 ガッギャーンッ!!左腕の衝撃を受流せない。なんて力だ!

 突きは軌道が逸れ、奴の左肩に。

 俺自身は右に吹き飛ばされる。


 俺の視界が回転する。何とか二回転で姿勢を安定させる。

 立ち上がった俺は追撃を警戒するが、奴は棒立ちでいる。


 奴は鎧が剥がれ、血が滴り落ちる。

 結構深手を与えられたらしい。

 俺は正眼に構えて奴を待つ。


「クッソーッ!!」

 奴は吠えると剣を振り上げようとする。

 途中までしか上がらない。


 見ていた奴の仲間がアーレスに群がり、治療にかかる。

 アーレスの気が萎む。

「今日の所は、引き分けにしといてやる。今度会ったらタダじゃ置かないからな!」

 アーレスは馬車に連れて行かれた。


「コトネ、俺達も逃げるぞ」

「はい」

 奴らが慌てているうちにノルンを鷲に変え、飛んで逃げた。


「レオン様」

 コトネが背中からしがみ付こうとするので、その手を振り払った。

「え、」

 コトネが驚く。今まで俺に邪険にされたことのないコトネは混乱している。


「すまん、アバラがニ、三本折れてる。触らないでくれ」

「大丈夫ですか?」

「自分で自分に治癒魔法は掛けられない。ジュリアに直して貰わないと」

 魔法陣は自分の正面を向くので、けがをした状態ではうまく魔法は掛けられない。


 俺達の馬車は分かれ道からそう遠くない所に止まっていた。

 合流するとすぐにジュリアに治癒魔法をかけて貰う。

「骨は付きましたがまだ完全ではありません。三日は大人しくしていてください」


「良く生きて戻ってくれた。君がいなくなったらこれからの人生が、凄くつまらないものになってしまうからな」

 アキラさんは涙ぐんでる。俺はアーレスの事を話した。


「そうか、敵の正体は解らないのか。君だけを狙ったんだから第二皇女がらみかもしれん。君達は先に帝都に行った方が良いな」

「どうしてですか?」

「俺達が人質に取られたら、レオン君が不利になるだろう」

 アキラさんがジュリアに説明する。


 帝都まではあと四、五日で着くので、その分の食料などを収納庫から馬車に積んだ。

 あれ、アンナが出て来ないなあ。

 置いて行ったから怒ってるのかな?


「アンナ、皆より先に帝都に行くことになったから、お出で」

「レオン殿、アンナは泣き疲れて寝て居るのだ」

 馬車の中からヤヌウニさんの声がする。

 そうだよな、まだ十歳だもんな。


「アンナ、起きて、帝都にビューンって飛んで行くよ」

 アンナは目をこすりながらヤヌウニさんの膝から上半身を起こす。

「・・レオン様?・・レオン様ぁ!!」

 アンナは俺に抱き着いて来た。痛てて、そこは駄目。

 俺はすぐに引き剥がして、お姫様抱っこに持ち替える。

 左脇は治療したばっかりで、触られると痛いんだよ。


「この抱っこは伝説のお姫様抱っこ!」

「伝説なの?」

「悪い魔法使いに捕まったお姫様を英雄が救い出す時にする抱っこだって、村の隣のお姉さんが言ってましたぁ」

「そうなの?」


 まあ、否定はしないでおこう。夢見る十歳だからね。

「英雄とお姫様は結婚して幸せに暮らすんだって」

 ニコッと笑う。うん、可愛いぞ。

「そうなんだ」

 言ってる間にノルンの黒鷲に飛び乗った。


 国を出てからアンナが明るくなったと言うか、甘えるようになってきた。

 恐らく王都では軟禁状態みたいな暮らしだったから、解放感があるのかもしれない。


 二時間ほどで帝都の正門前に到着する。

 近くの林の中に着陸してノルンを馬に変身させる。

 適当に荷物をノルンに積み込む。


「レオン様、ちょっといい服に着替えてはどうですか?」

「そうだな。これじゃあ、貴族の子供に見えないか?」

 ちょっとは貴族に見える服装に着替えて正門に向かう。


 特に正門では調べられることも無く、通過できた。

 門を潜って驚いた。幅広いメインロードが、はるか先に見えるお城まで繋がっている。

 普通の国は大軍がお城に来ないように狭くしたり、迷路のような仕掛けを作る。

 余程、防衛に自信があるんだ。


「あそこに案内所があります。行先を聞いてみましょう」

 コトネが先に立ってノルンを引っ張って行く。

 門のすぐ横に門番の詰め所に併設された、案内書と書かれた場所に行く。


 格子の奥に受付嬢が居て案内をしてくれるようだ。

「ハイデルベルグ学園ですか。この通りを真っ直ぐに行くと内壁の門が見えますね」

 え、あれはお城じゃなく内壁の門なの?

「そこにも案内所がありますのでそこでお伺いになられた方が良く分かると思います」

「分かりました」

「あ、申し訳ありませんが内壁の中に入るには、審査がありますのでご注意ください」

「は、はい」

 ふう、緊張した。根が田舎者なので、都会的な感じに慣れないんですよ。


「どうされますか?」

「学生寮の受付まであと一週間くらいあるから、内壁の門の近くに宿を取ろう。アキラさん達も待たないといけないからな」

「第二皇女様に挨拶をしておいた方が良くはないですか?」

「帝城に行くの!?そうだよね。到着したことは連絡入れないとだね」

 俺達ははるか先に見える内壁の門に向かって歩き始めた。


 十分ぐらい歩いたところでアンナが遅れ始めた。

 しまった。何も考えずに歩いてた。アンナが俺の歩幅で歩いていたらそれは疲れるよな。

「その路地に入るぞ」

「どうしたんですか?」

 コトネが聞いてくる。


「馬車を出す。ちょっとアンナが可哀そうだ」

「レオン様、大丈夫だよ」

 アンナは疲れたそぶりを見せないがちょっとね。正門があんなに簡単に通れるならボロ馬車を出してた。

「収納庫を見られる恐れがあります。アンナをノルンさんに乗せましょう」

 コトネの言うことが正解だ。どうも俺は頭が回っていないな。

「そうしようか」

 ノルンの背中の荷物を整理してアンナの座れる場所を作った。


「アンナ、お出で」

 アンナが両手を上げて歩み寄る。

 俺は脇に手を入れ、ノルンの背中に抱き上げる。

「どうだ座りにくくないか?」

「大丈夫、ありがとう」

 なんか一気に育った気がする。まあ、気のせいだろうけどな。


 気付かなかったけど獣人や亜人が結構歩いている。

「今気づいたけど、獣人や亜人が多いな」

「はい、半分はそうですね」

 獣人はやっぱり犬人と猫人が多い、ドワーフやエルフも歩いている。


「おい、あそこの店は猫人がやってる」

「本当です。獣人が店を出すなんて・・」

 パンに肉や野菜をはさんで売ってる店だ。

 ヴァイヤール王国では信じられない事だ。しかも人族がそれを買ってる。


 アキラさんは厳しい事を言っていたが、ここが俺の求めていた場所かもしれない。

 そう思うと気分が高揚してくる。


 ノルンを鳩に変え、大きな荷物を収納庫に入れる。門の近くで宿を探した。

 中くらいのランクを狙って入ってみる。

 肉付きの良いおばさんが出て来た。

「ツインで一部屋で朝食夕食付、一人銀貨5枚」

「一週間泊まるからもうちょっと負けてよ」

「じゃあ、一週間で金貨一枚、これ以上負からないよ」


 えーと、3人で一週間、銀貨5枚×3人×7日で105枚で、銀貨5枚お得か。

「分かりました」

「前金で頼むよ」

 俺は金貨を差し出す。


「キャンセルしてもお金は戻らないよ」

 おばさんはそう言って契約内容を書いた紙とカギを渡す。

「二階の5号室だよ。食事は6時から8時まで、朝も6時から8時までだ。遅れたら無しだからね」


 俺達は部屋に入った。

 ゴロに宿の場所を連絡して、アキラさんに伝えて貰う。

3章は終了です。

次回から帝国が舞台のレオン達の生活です。

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