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3-12 三男坊 世界樹を見る

エルフの国の首都に着きました。

 エルハイホ共和国を出て、ユグドラシル聖皇国に入国した俺達、山賊退治の話に尾鰭が着いているのに驚いた。


 国境を抜けて暫く行くと低い山を越える。国境警備員の説明によるとそろそろ見えるはずだ。

「レオン様、あれ見て!!」

 アンナが遠くを指差す。

「おお!」


 はるか遠くに青く見えるのは巨大な木だ。まだ行程が一週間以上も離れているのによく見える。

「あれが世界樹ですか?」

 コトネも顔を出す。

 馬車を脇に止め、全員で眺める。


「聖都ヘルムフルトに世界樹はあるんだけど、それがらみの素材がたくさんあってさ、それを買いに行きたいんだよね」

 アキラさんが聖都に寄りたいと言っていたのは素材のためだったんだな。


「わしらも世界樹を近くで見たいと思っておったのだ」

 コニンさんも聖都には行きたいらしい。それは俺も同じだ。


 先を急ぐ商人たちからは変な顔をされたが、俺達は初めて見るのだから仕方が無い。

 しかし、見飽きないとは言え、いつまでも見ている訳にもいかない。先を急ごう。


 聖都までの道のりは盗賊も魔獣も出ず、よく整備されていた。

 国境から8日目に聖都に到着した。

 ここから見る世界樹は巨大だ。太さだけでも数百mはありそうだ。

 広葉常緑樹のような感じだ。冬でも青々としている。


 俺達は正門でまた止められた。

「レオンハルト=イエーガー殿ですね。執行部から御引止めするように言われております。こちらの建物でお待ちいただけますか?案内の者がすぐに来ます」

「どういった御用でしょうか?」

「お話をお伺いしたいとのことです」

 まあ、偉い人に顔は覚えて貰った方が良いよね。

「分かりました」


「それってレオン君だけで良いの?俺達は先に行って良い?」

 アキラさんが門兵に聞く。門兵は上司に伺いを立てに走っていった。

「アキラさん?」

「どうせ、俺は素材を集めにうろつくから、君達とは別行動の方が良いでしょ。ゴロを連れて行くから連絡は取れるよ」

 門兵が戻って来て、俺がいれば大丈夫だということだった。


「君達はどうする?」

 俺と同じ馬車に乗っていたヤヌウニさん、ジュリア、ノルン、コトネ、アンナに聞く。

「私はアキラさんと行く」

「あまり、顔を見られるのは・・・」

「私は馬車が必要なら馬車の操作をします」

「私はお供します」

「私もレオン様と行く」

 いつものメンバーとなった。


 馬車が去って行くのを見てから俺達は待合室に移動する。

「レオン様、どうしてお受けになったのですか?」

 コトネは俺の考えを理解しようと思って、分からない時にはすぐ聞いてくる。

「ヴァイヤール王国を出て頼る人もいないから、色々な人と顔を繋いでおいた方が、何かあった時に助けて貰えるかも知れないだろ」

「なるほど、分かりました」


 その時である。アンナが俺の後ろに隠れる。

「前に私を叩いた人と一緒に居た人の魔力が近付いて来ます」

 コトネが俺の前に立つ。

「剣を!」


「落ち着け!こんなところで剣を抜けるか!」

「でも」

「大丈夫だ。殺気を感じない」

 扉の近くに立っていた門兵の一人が俺達の動きに緊張している。

 槍を構えていないので放置して置く。


「やあ、懐かしいな」

 扉から入って来たフルプレートメイルのおっさんの顔を見て、アンナが俺にしがみ付く。

 コトネは俺の前で両手を開いて、俺には危害を与えられないように気を配る。

「ウェインさんでしたね」

「そう怖がらないでくれ。悪い事をしたと思っているから」

 彼はミュラー伯爵の所に魔獣狩りに行ったときに会った”青い衝撃”と言う傭兵団の一人だ。彼の仲間は獣人差別主義者でアンナがひどい目に会った。ただ彼の耳はエルフのものであった。


「あなたはエルフ族でしたか。それでどういう御用でしょうか?」

「俺は教皇親衛隊のウェインだ。姫様がお会いしたいそうだ」

「あいつらは?」

「アニー達か?あいつらは王国で護衛に雇った傭兵だよ。俺は獣人差別なんかしてないぞ。信じてくれ」

 確かに彼とルシーダからは乱暴はされていない。

 ここで差別行動をしても彼らに利益はあるまい。ルシーダの居る所まで案内してもらうことになった。


 馬車に乗って街の中心に向かう。

 家の造りや雰囲気はヴァイヤール王国とそんなに変わらない。

 世界樹は街から少し離れた場所にあるみたいだ。中心に在ったら街が日陰になるか。


 うん、もう中心部は通り過ぎたよな。

「どこまで行くんですか?」

「もう少しだ。執行部や幹部の家は世界樹の近くにある」

「日陰に住んでるんですか?」

「いや、そこまで近くじゃない」

 そう言えば10分位馬車で移動してるけど、世界樹に近付いた感じがしない。

 どれだけ大きいんだ。遠近感狂うわ。


 さらに5分ほど移動すると高さ5m位の壁が続いてて、中央に大きな門がある。

「この中には一般人は入れないんだ。もちろん君達は姫様の招待客だから大丈夫だよ」

 俺達は門を潜り、壁の中に入る。

 壁の中は街とは違ってキノコのような形の家が通りに沿って建てられ、その奥にはひときわ大きな建物がある。


「あの大きな建物にお姫様がいるよ」

 アンナは頭を馬車の外に出して外を眺めている。

「分かるのかい?」

 ウェインさんが少し驚いている。

 アンナは振り返って「うん」と頷く。


 車止めで馬車から降りて、使用人に応接間まで案内される。

「ここでお待ちください」

「俺は教皇様にお知らせする」

 ウェインさんは部屋から出て行こうとする。


「教皇様もこちらにいらっしゃるのですか?」

「さあ、俺には解らんが着いたら連絡を寄こせと言われている」

 俺が聞いた言葉にあいまいな返事が返ってきた。俺が驚くのは、教皇がこの国の最高権力者だからだ。


 ウェインさんとすれ違うように、護衛の女性二人に付き添われたルシーダが部屋に入って来た。

「半年ぶりになりますか。お元気そうで嬉しいです」

 俺達は起立してお辞儀をした。やはり耳が長くなってるし、年も若く見える、顔も美しくなった。

「姫様に置かれましても、ご壮健そうで安心いたしました」


 ルシーダは座ると俺達に着席を促した。最初に遭った時と違って所作が上品だ。

「今日、こちらに来て頂いたのには、訳があります」

 そりゃそうだ。訳もなく呼ばれても困る。


「まず、あなたのハイデルブルグ学園への留学ですが、私が帝国の第二皇女に推薦いたしました」

「はい?」

 彼女と話したのは一時間くらいだっただろうか。それだけで俺を推薦?

「当然、なぜと思われるでしょう」


 彼女は一息入れてまた語り始めた。

「私は第二皇女より剣の指導者を探してほしいと頼まれていました。彼女と私は学園で同級生でしたので。私は夏休みに魔獣の討伐に出ることにしていましたから、傭兵の中で探そうとしていました。

 そこであなたと会い、直感でこの人だと思いました。それであなたの事を調べ始めました。

 私の直感はしばしば当たるのです。


 王女を魔獣から救い、4人のレベル3の暗殺者を倒し、王太后を守る戦いではレベル5を倒し、最近では20人の山賊を討伐しましたね。

 もちろん、あなたがレベル1のミソッカスと呼ばれていることも知っています。

 第二皇女もレベル2なのに攻撃魔法が使えないので、あなたに指導をお願いしたいのです」


 要するに俺と同じような境遇にいる第二皇女を育てろということか。こればかりはレベルの高いものを呼んでも意味がないな。


「話はこれだけではないのです。私はワルキューレの一員です。強い戦士を探してヴァルハラに送らねばなりません」

「そのワルキューレとかヴァルハラって何ですか」

 俺は何のことか意味が解らなかった。


「ヴァルハラは聖戦の戦場、ワルキューレは神の戦士を探す者と思ってください」

「その戦士が私だと?兄や父に頼んだ方が良さそうですけど」

 強さで言えば俺よりニコラウス兄か父の方が適任だろう。


「確かに今の時点では御父上やお兄様の方がお強いですが、ヴァルハラは3年後くらいです。その時あなたはそれ以上の強さを持っていると確信しています」

「買い被りですよ。確かに3年後に父に追付くのを目標にはしていますが、難しいです」

 俺にそれを期待されても困ると言うのが本音だ。


「それでは困るのです」

 部屋に30歳くらいの冷たい顔の女性が入って来た。背の高い帽子を被って服装もルシーダよりも派手だ。

「教皇様!」

 ルシーダが椅子から降りて膝を着く。


 俺もそれに倣った。しかし、コトネはきちんと膝を着いたがアンナが動かない。

 目を閉じて幸せそうに寝ている。話が長くて退屈したのだろう。

『コトネ!アンナを』

 俺は慌ててコトネに従者通信をした。


「良いのです。寝かしておきなさい」

 教皇様は叱らなかった。俺とコトネはホッとした・・って従者通信が聞えてる?


「あなたが自分が巻き込まれないようにしようとするのは解りますが、この大陸全土が戦場になります。あなたはこの娘達やご家族・友人を守らねばなりません。必然的に戦わざるを得ないのです」

「そんなことが・・・」

 俺が強くなるための理由が厳しくなってきた。今まで負けても貴族だったのに・・・。


 教皇は言うだけ言うと去って行った。

「ふう、緊張しました」

「教皇様って私のひいひいおばあ様なのですよ」

「え、でも30代ですよね?」

「フフ、百歳を軽く超えてます」

 俺はのけぞった。エルフは長生きだとは聞いたが、そんなに若い時代が長いのか?


「彼女はハイエルフと言うエルフの進化した種族なのです。次は私だと言われてますが、進化できる自信はないですね」

「ちょっと考えることが多すぎて頭を整理したいです」

「はい、今日はこれでおしまいです。またハイデルブルグ学園で会いましょう。言い忘れてましたけど私も同級生ですから」


 俺達は従者通信でノルン達の位置を聞き、そこまで送って貰った。

次回いよいよ帝国に入る予定です。

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