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3-10 三男坊 竜神と会う

竜神池からとんでもないものが出てきます。

 俺達は竜神への祈りに行く途中、魔獣の大群に襲われた。何とか魔獣を殲滅したが竜神池に異変が・・。


 泡立っていた池の表面が静かになる。

 ここにいる誰もが竜神の出現を想像した。いや、シャラとアンナは想像しなかった。


 何かが水面から上がって来た。

 枝分かれした棒のような角を二本頭に生やした若い男が姿を現した。

 時代遅れの服を着ている。まるで絵本の神様みたいだ。


「オオー」

 全員が感嘆の声を上げた。

「竜神様ですか?」

 リシエが最初に声を掛けた。


 その男は何も返さずにこちらに歩いてくる。水の上をだ。

 近付くほどにその存在が俺達を圧してきて声も出せなくなった。

 やがてコトネ達がいる祈り台の下まで来た。

 自然な感じで台の高さまで浮かぶ。そして初めて声を出した。

「娘よ」


 それがコトネかアンナに発せられた言葉だと分かったがコトネ達は返事が出来ずにいた。

 この男の存在が圧倒的だからでもあるだろう。

「娘よ。神獣人の娘よ」

 初めて彼がコトネに対して声をかけていることが解る。


「な‥何でしょうか?」

 コトネは絞り出すように返事をした。


「わしはお前を迎えに来たのだ。わしと一緒に来ると良い」

 彼は右手を真っ直ぐコトネに伸ばす。手を取れと言わんばかりだ。


 コトネは彼の言葉の意味が解らないのか、身を固くして後ろに下がり始める。

 その時アンナがコトネの前に出て両手を広げる。

「お姉ちゃんを連れて行くな!」

 俺達は身動きが取れないがコトネの周りは圧が緩いらしい。


「邪魔をするな!」

 彼が左手を軽く振ると当たってもいないのにアンナが吹っ飛ぶ。


 俺は慌ててアンナの落下点に急ぐ。一式を使っても動きが遅い。

 アンナは地上に落ちるとバウンドして回転した。

 抱き上げるとまだ息をしている。

「アンナ!アンナ!大丈夫?」

 コトネが大声を上げるが祈り台からは動けないでいる。


 アンナは全身の骨が折れているようだ。この分では内臓にも影響があるだろう。

 俺は治癒魔法の魔法陣を展開して魔力を込める。

「今助けるからな!!」


 治癒魔法はそれらの傷を治していく。魔力の吸収が半端ない。それだけケガの具合が悪いのだろう。

 何とか治療は終了したようだ。しかし、ただ息をしているだけのような感じだ。

「貴様!!許さんぞ!!」

 怒りと焦りが俺を支配する。


「レオン様!!駄目!!これは神獣人です!」

 コトネが俺に叫ぶ。

「わしに向かって許さんと言ったのか。面白いがやめておけ。お前に興味はない。俺は花嫁を迎えに来ただけだ」

 神獣人は俺の事を見ようともしない。


「さあ、娘よ。仮初めの姿を脱いで本当の姿をこのわしに見せてくれ」

 コトネに神獣人に成れと言っているのか。

「今、この姿が私です。それに私の人生はレオン様に捧げると誓っています」

 コトネは神獣人の言葉を否定する。


「100年も生きられない人間に忠義立てをするのはやめよ。わしらにとっては、その男はそこらに居る虫けらと何ら変わることはない。いや、わしの威圧の中それだけ動けるのだ、少しはマシかな。フッ」


「何を言われようと、私にとってはレオン様がすべてです。強制しようとするなら敵わぬまでも死を賭して抗います」

 コトネは腰の刀を抜いて構える。


 初めて神獣人は困った顔をする。

「これは嫌われたものよのう。少し急ぎ過ぎたか?まあ、この男が死ねば気も変わるじゃろう」

 神獣人は上を向いて息を勢いよく吐いた。

「わしの名は竜の神獣人ソーン、その男が死んだらわしを尋ねてくるが良い」


 俺はアンナに掛かり切りになっていた。

 アンナが蘇生しない。傷は治ったはずなのに生命の火がどんどん小さくなっていくような感じだ。

「アンナ!目を、目を開けろ!!ソーンと言ったか、お前、アンナに何をした」

 俺は絶望に包まれる。


「命を削っただけよ。だが、その娘が死ぬと神獣人の娘に嫌われてしまいそうじゃな。それ、命を吹き込むぞ」

 ソーンが左腕を振った。


 アンナの体がビクンと動く。

 アンナが目を開けた。

「・・・・お姉ちゃんは、お姉ちゃんは大丈夫?」

 俺は元気に飛び起きてコトネを探すアンナを見て安心した。


 コトネは動けるようになったか、アンナに駆け寄り抱きしめる。

「アンナァ!!」

「オネエチャァン!!」

 二人は本当の姉妹の様に抱き合いながら号泣してる。


「今日の所はその娘の勝ちだ。遅くとも数十年後にはわしの花嫁になる、大事にしろ。わしはまた眠ることにする」

 コトネに負けを認めたソーンは池の中心に向かって、水の上を歩いていく。


 他の人達が呪縛を解かれたように動き出す。

「レオン君、何があったんだい」

 池に沈んでいくソーンを見ながらアキラさんが言う。


「竜神様ぁ!!」

 リシエがソーンを呼ぶが振り返りもしない。

 ソーンは見えなくなってしまった。


「奴は竜神獣人だ。普通の人間には興味は抱かない」

 俺はリシエに近寄り、現実を教えた。

「竜神様に特別な能力を授けて欲しかったのに。ハァ」

 相変わらず他力本願な奴だな。少しは努力をしろよな。


 そのままアキラさんに寄って、さっきのあらましを伝える。

「そうだったのか。不老で規格外の強さか・・退屈なんだろうな」

「退屈ですかね?」


「精霊や幻獣みたいに不老ってだけですごく退屈してただろ。それに加えて自分と同じ格がいないんだよ。やることなんてほぼないよ」

「成程、そういやあいつ寝るって言ってましたよ。・・あれ、シャラはどうしたんです?」


「え、あ、あいつまだ精神面が弱いから、さっきの威圧で目を回しちゃったんだ」

 アキラさんは地面に突っ伏して倒れているシャラを起こしている。


「え、どうしたっすか?やばいっすよ」

 寝ぼけてるみたいだ。アキラさんが状況を説明している。


「ゴロォ!帰るぞ」

 ゴロはあいつが出て来た時点で森に隠れたみたいだ。

「オイラを置いてっちゃ駄目だぞ」

 すぐに俺のそばにやってきた。


 俺達はノルンに乗って輿を置いてきた場所まで戻った。

 輿は破壊されずに残っていた。

「えーまた歩くのぉ。ノルンさんに乗って行きましょうよ」

 リシエが何か言いだした。

「おまえは歩いてないだろ」

 彼女は頬を膨らませて拗ねているが、相手はしない。


「アンナ、魔力が戻ってたら探索をしてくれ」

「うん、大丈夫。・・・えーっ!!」

「どうした!」

 アンナが素っ頓狂な声を出すので驚いて聞き返す。


「範囲が滅茶苦茶広がってる。軽くで3kmくらい調べられるよ。前は300から500m位だったのに」

「十倍かぁ?今まで精一杯で1km位だっただろ。それでどうだ?」

「周囲に異常はないけど、どうしたんだろ。ミラさんにブーストされた時みたい」


「ソーンが過剰に命を戻したんじゃないか?」

 ソーンが命を戻した時くらいしか原因が思いつかない。

「アンナ、何ともないの」

 コトネはアンナに異常が無いか色々問診している。

 しっかりお姉さんをしているコトネにほっこりする。

 もしかしたら過剰に命を貰ったことで、能力の覚醒が始まったのかもな。


「さあ帰るぞぉ!」

 俺は号令を掛けた。


 ******


 帰ってみると、魔獣の群れの一部は街の方からも見えていたらしい。俺達は死んだ者みたいな扱いになっていたようだ。それが全員怪我も無く帰って来たので大騒ぎである。


 大統領とその子供夫婦かな?とリシエが抱き合っていた。

 担ぎ手の二人もその家族と期間を喜び合っていた。

 俺達も多くの人に囲まれて困っていた。


「魔獣100匹倒したんだって?」

「竜神様に会ったの?」

「どうやったんだよ?」


 俺は道に草が生えない事や魔獣が大量発生に着いて調査したかった。

 しかし俺の周りの人が減らない、祭りをやっているからだ。

 そんなときだった。


「こいつは嘘を吐いてる!!俺はレベル鑑定人だがこいつのレベルは1だ。魔獣に勝てる訳が無い!!」

「本当なのか?レベル1じゃあ、そこらの兵隊より弱いじゃないか!!」

「俺達を騙したのか?ひどいぞ」

 周りが称賛から非難に変わってきた。

 俺は何も言ってませんが。まあ、魔獣は倒したんだがな。


 いかん、コトネさんがお怒りモードになって来た。

 止めようとしたが間に合わなかった。

「嘘なんか言ってません!!レオン様の強さも知らないくせに!」

「レオン様は強いんです!!」

「俺が嘘を言ってると言うのか!!なら証明してみろ!」

 自称レベル鑑定人とコトネとアンナが口喧嘩を始めた。


 ドワーフの身長はコトネとあまり変わらない、子供同士が言い合っているようだ。

 俺も久しぶりにレベル1の事を言われたが、あまり気にはならなかった。

「コトネ、もういい。レベル1は本当の事だし、今日の事はリシエ達が証言してくれるだろう」


「でも、・・じゃあ、魔石を見せるのはどうでしょうか」

 俺はぶら下げているカバンの中身を収納庫の魔石と入れ替える。

「では、これを見て貰いなさい」

 カバンをコトネに渡す。

 コトネはカバンの口を開いて中の魔石を見せる。


「オオーッ」

 周囲の人からため息が漏れる。

 100個を超える魔石なんて見たことがあるものは居ないだろう。

「これで分かった?!」

 なぜかアンナがドヤ顔で威張っている。

 一応鑑定人も納得してくれたようだ。こそこそと逃げて行った。


「アキラさん?」

 さっきまで近くに居たアキラさんとシャラの姿が見えない。

「あそこだよ」

 アンナが指さす。


 祭で出ている露店の前に二人が居た。

 何かの肉串を両手に持ったシャラの横で支払いをしているアキラさんが居た。

「アンナも欲しい!」

 アンナが俺の袖を引く。

「こら、駄目でしょう。我まま言っちゃあ」

 コトネがお小言を言う。


 俺はアンナが甘えてくれたのが嬉しい。

「コトネ大丈夫だ。お祭りだからな。アンナ行くぞ」

「うん」

 アンナが俺の手を握る。もう一方の手をコトネに出すと嬉しそうに握ってくる。

 ヴァイヤールと違って、獣人を蔑視する奴がいなくて自由を感じる。

 今日は二人を甘やかせてやろう。

 俺達がしゃべらないと分かったのか周囲に居た人たちも去って行った


 俺達はアンナのお目当ての店に歩き出す。

次回、ドワーフの国を後にしてエルフの国に向かいます。

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