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3-9 三男坊 魔獣の大群に襲われる

竜神池に向け、歩くレオン達を襲う魔獣の大群。レオンはどうするのか?

 ハイホーの街の祭りに巫女の護衛として参加することになった俺達、ヤヌウニさんが嫌な予感を感じているがどうなることやら。


 竜神の森は直径が数十km、竜神池まではおよそ一時間半、竜神池から先が竜神の住処と言われる。

 輿で運ばれる巫女のリシエがそんなことを教えてくれた。


 竜神池までの道の両側には暗い森が連なっている。

 ふと俺は奇妙なことに気が付いた。


「リシエ、どうしてこの道には草が生えていないんだ?それにあまりに真直ぐだ?」

 普段人の通らない道に草が生えていない。それに道が一直線で遠くに池の水面が確認できる。

「本当かどうかは知りませんが、この道は竜神の吐く息が作ったと言われています。今でも年に何回か竜神池から息を吐くそうです」


 竜のブレスってこんな所まで届くのか?なにか、眉唾っぽい。

 ハイホーの人達は竜神の実在を信じているようだ。もしかするとグリフィンのような幻獣かもしれないな。

 大昔の記録に出てくるのだがそこからの目撃例はないらしい。


「竜神様に会えると良いのですが」

 リシエはそんなことを言う。

「俺は竜神に会うのは遠慮したい」

 そんなものと出会ってもどうしたら良いか分からないよね。


「レオン様!、魔獣が後ろから接近してきます!!」

 突如、列の後ろに居たアンナが叫ぶ。

「距離と数は、種類が解るか!?」

「距離500m、数は50以上、オオカミかゴブリンくらいです・・速度が速いのでオオカミだと思います」


 まだ歩き始めて30分位だ。竜神池までは一時間かかる。

 このまま竜神池まで逃げようとしても3分も掛からずに追いつかれる。

 さすがにこの数で追いつかれると俺達はともかく、リシエや担ぎ手を守り切れないかもしれない。

 どうする?ノルンを使うか?


 その時担ぎ手の二人が乱暴に輿を降ろすと竜神池に向かって走り始めた。

「ここに居た方が安全です!!逃げないでください!!」

 俺は叫ぶが必死に走って逃げて行く。

「レオン様、今度は前からも魔獣が来ます。数は同じくらい。距離は800m。多分オオカミです」


 俺は倒れてしまった輿からリシエを助け起こしていた。

「なに!?仕方ない、ノルン!!来てくれ!!」

 ノルンは近くに居たのですぐに来た。


「ご主人、どうする」

「黒鷲になってくれ。竜神池に行く」

 俺はノルンに収納庫から魔力を注ぐ。

 ノルンは見る見るうちに巨大な黒鷲になる。


「リシエ!!この鷲は俺の仲間だ!背中に乗るんだ!!」

 先に乗って自分達が摑まるロープを鷲の背中に張ったコトネがリシエを引っ張り上げる。

「アキラさん、シャラ!!あなた達も乗って!!」

 二人が乗ったのを確認して、アンナを放り上げて俺も乗る。


「ノルン!先に行った二人を拾えるか!?」

『時間が無い!足に摑まらせる!』

「それでいい、頼む!」

 ゴロが俺の肩に来た。当然と言う顔をしている。

 ノルンの黒鷲は大きく羽ばたいて飛び上がった。


 すでに逃げ出した二人は100mは先に居たが、真っ直ぐな道で前にもオオカミが見えたので引き返していた。

「おおーい!!この鳥の足に摑まって下さーい!!」

 ノルンは二人の前に降りたが二人は怯えて動かない。

「早く!!魔獣がそこまで来ていまーす!!」

 二人はおっかなびっくりで足に両腕を回して爪に乗った。


「ノルン!!行ってくれ!」

 再びノルンが飛び立った。すぐそこに街の方から来たオオカミが来ていた。

 オオカミはノルンの後を追い始めた。


「よし、いいぞ」

「街に戻らないのですか」

 オオカミの様子を見ていた俺にリシエが言う。

「街にオオカミを連れて行く訳には行かないよ」

「そ、そうですね」

 リシエも納得してくれたようだ。


 しかし、どういうことだ。こんな数の魔獣の発生は初めてだ。

 いや、一度ある。魔人のミラの姉のヘラが魔獣を集めた時だ。

 誰かが仕組んだ?

 いや、今はそんなことを考えていられないな。


「アキラさん、シャラ、俺達は竜神池にある少し広い場所にオオカミを集めて殲滅します。手伝って貰えますか」

「もちろんっす。まかせるっす」

「ゴーレムで良ければ手伝うよ。いやあ、体が若返ったからか、なんかこう燃えるね」

「師匠、それは言ってはいけないっす」

「ああ、そうだったね」

 この二人には緊張感がそがれるよ。


 ゆっくりは飛んだが、オオカミどもを1km程引き離して、竜神池のお祈り用の広場に到着した。

 広場は岬の様に池に突き出しており、先端には高さ1m位のお祈り用の台があった、

 ノルンを白鳥に変身させてリシエと輿持ちの二人とアンナを乗せて池で泳がそうとしたが、アンナも戦うと言う。


「アンナ、大丈夫か?」

「大丈夫、精霊魔法を使えるようになったから」

 アンナはアキラさんと一緒にお祈り用の台の上に跳びのった。

「ノルン、頼んだぞ。状況を見て、もしかの時には彼らを頼む」

「分かりました」

 ノルンは沖に泳いでいった。


 コトネはすでにワンピースのメイド服を脱ぎ捨て、スキンアーマーの準備が出来ていた。


 アンナもコトネに習って服を脱ぐ。


装着アタッチメント

 シャラも発泡セラミックの鎧を装着した。


「クリエイト・ゴーレム」

 アキラさんもゴーレム4台を錬成した。

「すまんね。4台で精いっぱいだ」


「ありがたいです」

 俺も刀を抜いて臨戦態勢だ。


 俺は道の途中では森の中からも含めて360度敵に囲まれてしまうのでリシエ達を守り切れないと判断した。しかし、ここならば敵は一方向だけからしか来ないので対処が楽だ。


 ゴーレムを数十m前に配置した。作戦はこうだ。

 ゴーレムが打ち洩らした敵をアンナが精霊魔法で倒し、接近した敵を俺、コトネ、シャラが倒す。


「来たぞ!!戦闘開始!!」


 百頭を超えるオオカミが岬に殺到する。


 岬の入り口に居るゴーレムが腕を振り回してオオカミを粉砕していくが、隙間が大きいのでほとんどのオオカミが突破してくる。


「サラマンダー・パルス・ビーム」

 アンナの指先から断続的なビームが発射される。ミラにブーストを受けた時より魔力量が少ないので、連続ではビームを打てない。

 しかしあの時の相手はドラゴンだったが、今回はオオカミだ。

 次々と撃ち抜かれて消えていく。


 それでも2/3は抜けて俺達の所までやってくる。


 右のシャラは黄金のメイスでオオカミを叩き伏せる。

 中央の俺と左のコトネは刀で斬る。


 シャラのメイスが徐々に間に合わなくなってきた。それでも後ろにはアキラさんとアンナが居るので、抜かれないように必死でメイスを振っている。

 フルプレートメイルなので、牙は体には届いていない


 コトネも手足を噛まれることが多くなっている。スキンアーマーで怪我がないとは言えストレスが大きい。


 俺も自分の場所だけで精いっぱいで他をフォローする余裕が無い。

 すでにオオカミが俺達に近付きすぎてゴーレムも精霊魔法も使えなくなっていた。


「アキラさん!私に摑まって!」

 アンナが叫ぶ。

 アキラさんがアンナにしがみ付く。

「シルフィー・レビテーション」


 アンナの今の力では、二人で宙に舞うのは厳しい。

 池の方に飛び上るが高度は徐々に落ちてくる。


「アキラさん!ごめん、もう無理」

 アンナとアキラさんは落下する。

 アンナの魔力が枯渇したのだ。


「あれ、水が無い」

 アンナ達が落ちたのはノルンの翼の上だった。

「ノルンさん、ありがとう」 

 二人はノルンの背中まで歩いて、リシエ達と合流した。


 数が減り、後に守るものが無ければ俺達は自由に動ける。

 コトネは右に左に魔獣をひらりひらりと躱しながら敵中に突進し、斬りまくる。まさに水を得た魚だ。

 一方シャラは一直線に敵中に突進して魔獣を叩き潰していく。まさに猪突猛進。

 二人は柔と剛を体現しているようで見ていて気分が高揚する。


 俺はと言うと二人の残した敵をただ潰していくだけだ。

 俺達は魔獣の殲滅に成功した。


******


 ノルンから降りた三人にはノルンやゴロの事を秘密にするように約束させた。

 それから儀式を行ったが竜神が現れることはなかった。


 儀式の間にコトネとアンナとゴロにオオカミの魔石の回収を頼んだ。

 俺はアンナが魔力枯渇で探索出来ないので一番後ろで見張りをする。


 儀式が終わって俺達は全員が集まって帰りをどうするかを話始めた。

 このまま帰れば、歩いて儀式場に来ていないことがバレる。ノルンで飛んできた分一時間は早いのだ。

 しかしアンナの探索が使えない状態でもう一度はきついものがある。


「なぜですか?レオン様の活躍を皆に話せば良いでしょう」

「そうですよ。我々の命も助けてもらったことですし」

 リシエと担ぎ手の二人は、このことを話したくて仕方ないみたいだ。

「でも俺は、あまり目立ちたくないのだ」


「レオン君、もう君は親の元を離れて自由なんだ。あれもこれも秘密にする必要もないと思うが」

 アキラさんが今の俺の立場を説明してくれる。

 そうか今は有名になっても、ヴァイヤール王家に縛られる心配はしなくて良いのだ。

「分かりました。もう俺は自由なんですね。だったら君達の真実を話して貰って構わない」

 簡単に話し合いが終わり、俺は服を着たコトネ達が祈り代の近くに居たので、そちらに近付く。


 歩いている俺にリシエが近付いてくる。

「あの、レオン様・・」

 リシエが俺の腕を取り、体を寄せてくる。俺は体を離しながら返事をする。

「なんだい」

「私をおそばに置いて頂けないでしょうか」


 少し驚く、唐突な告白なのか。彼女の真剣な眼差しは決して軽い気持ちで言っているのでは無さそうだ。

「それはどういう意味かな?俺はまだ修行中の身の上だから結婚はしないよ」

 彼女が傷つかないような言い訳をする。

「いえ、彼女たちのような従者でも構いません」


「君は彼女たちのような俺の役に立つ能力はあるのか?コトネは剣術と家事全般が出来る。アンナはいろいろな探索と精霊魔法が使える」

「私には・・あ・り・ません。でも私はこんな小さな町で一生を過ごすのは嫌。外の世界で自分の力を試してみたい」

 彼女は涙を溜めている。


「自分のことを言うのはおこがましいが、俺は必死で勉強した。必死で剣術を覚えた。何とか人に勝るものを身に着けたのだ。君も外に出たいなら、外に一人で出られるくらいの力を身に着けることだ」


「私には出来そうもありません」


「ではそう言うことだ」


 俺はコトネ達の方へ体を向ける。慰めても意味がない。

 コトネ達は祈り台の上で景色を眺めているみたいだ。

 俺は彼女たちに声を掛けようとした。


 池の中央で大きな泡が次々と現れては破裂するのを続けている。あれは何だ?

次回、レオン達の前に現れた異変は何なのか?

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流されず、キチンと厳しく言えるレオン素晴らしい。
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