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3-7 三男坊 ドワーフの国へ

いよいよ、ドワーフの国へ入ります。

 金字教の追手を誤魔化し、山賊を殲滅した俺、ドワーフ国との国境へ向かった。


 俺はシャラの鎧の事をアキラに聞いた。

「ああ、あれは発泡セラミックの鎧で胸にかけたペンダントに魔法式が仕掛けてあって、シャラが合言葉を言うとそこらの土や石から合成されるんだ。測ったことはないけど鋼鉄よりも強く、軽いのが特徴さ」

「それより俺のクリエイトゴーレムを見てくれたかい。あのサイズなら二十体位は出せるんだ」

 この人は普通の錬金術師ではないとは思っていたが、それどころではなさそうだ。


 ドワーフの国は正式にはエルハイホ共和国と言い、王はいないらしく大統領と言われる人が治めているらしい。工業国で革加工、縫製業、中でも鉄の加工業が盛んで、原料を輸入して加工品を輸出することで国が潤っている。


 共和国への国境は谷を仕切って作られている。向かって左側が共和国への入り口で右側がヴァイヤール王国への入り口になる。双方とも入ってくる人しか管理していない。


 街道もそうだったが旅人が全くいない。国境の通路に入ると誰もいない。

 このまま通り抜けたら怒られそうなので、詰め所に声を掛ける。

「通っても良いかぁ!!?」


 あわてて詰所から兵隊が二人飛び出てくる。背が低いががっしりしている。おお、ドワーフだ。

「お、お前達、ヴァイヤール王国から来たのか!?」

 兵隊が俺に槍を構えて詰問してきた。

「そうだけど・・?」


「この街道には山賊が居たはずだ!どうやって来たんだ!!」

 そう言うことか。あいつらが居たから街道に人が居なかったんだ。だからここも開店休業状態だったのか

 言っちゃっても大丈夫かなあ。でもいずれ解ることだからなあ。

「山賊はやっつけたよ。もう全滅」

「ええーっ!!」


 二人の兵はお互いを見て頷きあった。

「ちょっと待て!」

 一人の兵が詰め所に駆け込んでいく。これはちょっとまずいかも・・・。


 すぐに詰め所に行った兵が四人の兵を連れてやってきた。

「君が山賊を退治したと言うのは本当か?」

「そうだよ。二十人居たけど一人残らず殺したよ」

 中で偉そうな兵隊が俺に聞いて来たので正直に答えた。


「ちょっと待っててくれ」と言って偉そうな兵隊と二人の兵が、向かい側のヴァイヤールの詰め所に入って行った。


 向こうの詰め所からも五人の兵隊が出て来た。こっちの兵隊はやっぱり人間なんだ。

「俺はここの国境警備隊隊長のバジタ曹長だ。君が山賊を討伐したと言うのは本当か?」

 やっぱり一番偉そうなのは話しかけてきた。


「俺はレオンハルト=イエーガー、イエーガー伯爵の三男だ。山賊は一人残らずやっつけた」

「首か・・いや、イエーガー伯爵の、左様ですか。なぜそのような格好で?どこへ行かれるのですか?」

 やはり父は”首狩り”の方が有名なのか。格好は面倒だから庶民のような恰好をしてるんだよ。

「恰好は護衛もいないので狙われないようにだ。帝国に留学に行く」


 後の方で首狩りとかミッソカス囁いてる。俺って結構有名人なんだな。悪い意味で。ちょっと傷つく。

 その後、山賊の死体やらアジトやらを聞かれたので、答えると兵が二人確認に馬で走った。


 確認が終わるまで待ってくれと言う事なので、昼食にしよう。

 入国税を共和国側の兵士に払い、国境を超えた所にあった広場にかまどを作り、昨日夜に作った食事をかまどで温めるふりをしてから食べる。収納庫に入れてあるから温かいままなんだけどね。

 食べ終わった頃に確認に行った兵士が帰ってきた。


 山賊の脅威がなくなったことを確認した両国の国境警備隊の兵たちは俺達に礼を言いに来た。

 彼らの話によると一週間ほど前に山賊が出たのだが、街までの道に居るので連絡が出来ない。この詰め所に居るのは七人でとても山賊とは戦えない。取り敢えず応援を求めに大回りの道で行かせたのだが二週間はかかると言うことだ。


 共和国に応援を求められないのかと聞いたのだが、他国で軍事行動をするには王や大統領の許可が居るらしい。

 この街道は共和国にとって西側への輸出入の通り道で大きな損害が出ているそうだ。


 ただ街道の途中の村や町には、このことは知られているはずなのに何で知らなかったのか不思議がられた。

 だって、夜は野宿ばっかりだし、食料や飼葉、水は収納庫にあるから補給しなくていいし、今度からちょっとは寄るようにしよう。


 すでにヴァイヤール側や共和国側に連絡が出ていると聞いて、しまったと思った。

 俺が金字教徒のいない南側の街道にいることが解ると、金字教に疑念を持たれないかと言う事である。

 追い掛けるか?とも考えたが双方の連絡を途絶することは不可能である。

 まさか帝都までは追って来るまい。放って置こう。


 俺達が出発の用意をしているとドワーフの曹長が寄って来た。

「君達、帝国に行くのに南回りで来たと言うことは、共和国に何か用事があったんじゃないですか?」

「そう、共和国の工芸品にも興味がありますが、刀を研いで貰えないかと考えている」

 一応手入れはしているがプロにメンテをして貰った方が良いかなと考えている。

「カタナ、東洋の刀剣ですか。それは珍しい。一度見せてもらうことは出来ませんか?」


 俺は馬車から刀を出してくる。

「これは美しい、まさに芸術品。これはそこらの鍛冶屋では無理です。私の大叔父が鍛冶屋をやっておりますので一度ご相談ください」

 曹長はさんざん眺めた後、惜しそうに鞘に入れ俺に戻した後、住所と名前を書いて渡してくれた。

「私の名はガイゼル、ここで私の名を言えば良くしてくれます」

「ありがとう」

 俺はそう言って国境を後にした。


 ******


 数日後、ようやくエルハイホ共和国の首都ハイホーの正門にたどり着いた。

 今日明日はホテルに泊まって観光としゃれこもうと思って正門を通ろうとした時だった。

「レオンハルト=イエーガー様の御一行でいらっしゃいますか?」

 いきなり門の兵隊に声を掛けられた。


 この国は獣人差別が緩そうなので、コトネとアンナが御者をしていたので、俺は幌の奥から返事をした。

「そうだけど」

 なんでここに居ることが知られているのか、ちょっとびっくりしたけど国境警備隊からの連絡だなと思い付いた。


「実は大統領から山賊退治のお礼がしたいと申されまして、こちらでホテルを用意いたしましたのでご案内します」

 断る理由も無かったし、アキラさんも了解してくれたので、兵士の先導でホテルに行く。


「「おお!」」

 コトネ達が驚いているので俺も顔を出してのぞくと正面に二階建ての大きな、それこそ国賓が宿泊するようなホテルがあった。

「ええ!!」


 車止めまで誘導されて御者まで降ろされる。

「あのー馬の世話をしないと行けないので」

 コトネが玄関に立つホテルマンに話しかける。

「こちらの者が責任をもってお世話いたしますのでご安心してください。さあ、中へどうぞお嬢様」

 あのコトネがお嬢様って言われて舞い上がってる。


「ああ、コトネ、刀を研ぎに出すから持っておきなさい」

 俺は刀を持つとコトネにも言った。

「レオン様、右手と右足が同時にでています」

 コトネが小声で注意してくれた。舞い上がっていたのは俺もだった。

 ついこないだまで貧乏男爵の三男坊だったんだから仕方ないよな。うん。


 アキラさん達は慣れているような様子だ。

 こういう機会がよくあったんだろうか?


 俺達は部屋に案内された。

 部屋割りは夜営と同じで男女別にした。

 俺とアキラさん、ノルンで一部屋、コトネ、アンナ、ヤヌウニさん、シャラ、ジュリアで一部屋だ。

 部屋は俺達が二部屋続きの部屋で女性陣は三部屋続きの部屋で部屋も調度品もすごく豪華だ。


 部屋に入ると窓を開け、ゴロを呼ぶ。

「お待たせぇ」

 ゴロが元気よく入ってくる。

「俺達は刀を研いでもらいに行こうと思っています。どうしますか?」


「そうだな。俺も知り合いを訪ねて見るか。若返ったのを見たらビックリするぞ」

 アキラさんそんなのカミングアウトしても大丈夫なんですか?

「私もレオンさんに着いてって良いですか?」

 ジュリアが俺に着いてくると言った。

「ここには金字教無いし良いんじゃない」

 ジュリアは町娘の格好をさせてある。


「じゃあ、ヤヌウニさん、留守番お願いします」

「分った。馬車の旅で体が硬くなってるだろうから思いっきり伸ばしてこい」

「はい」


 ホテルを出る時に6時から大統領との夕食会があるので戻って欲しいと言われた。

 何事も経験だと思って承諾した。


 ******


 俺とコトネ、アンナ、ジュリアの四人は、ホテルで聞いた道をたどっていくと、あった。

 鍛冶屋と聞いていたが金属加工品を扱う店だった。

 店に入ると入り口近くに店番のおばさんがいた。

「国境警備隊のガイゼルさんから聞いて来たのですが、ラドムさんはいらっしゃいますか?」

「居ますが、どういった御用でしょうか」

 在宅らしい良かった。


「剣を二本研いで頂きたいのですが」

「それにラドムを指名するのですか」

 少し驚いたように言われた。ラドムさんと言うのは余程の人なのだろうか?

「少し特殊な剣なのでガイゼルさんがラドムさんに頼んだ方が良いと言われまして・・」


「ガイゼルがねえ。剣を見せて貰えるでしょうか?」

 袋から俺とコトネの刀を外から見えないようにした袋から出す。

「これなんですけど」


 おばさんはハッとした顔をして奥を向くと叫んだ。

「親方ぁ!!親方ぁ!!お客さんでえす!!東洋の刀ですよぉ!!」

 奥でガタッガタッと音がしたと思ったらお爺さんが走って出て来た。

「刀だとぉ!!本当か?」


「これがそうか?」

 おばさんから刀を取り上げるとすらっと鞘から抜いた。

「おお、本物だ。しかもこれは・・わ、ざ、も、のだ」

「手入れはしてますが、人を斬ってますので研いで頂きたいなと思いまして」


「これで人を斬ったのか?」

「はい」

 また奥からドドドと七人のドワーフが出て来た。

「刀だってぇ」「見たいよぉ」「親方が持ってるのがそうか?」「かっこいいな」「ハイホーハイホー」

 ラドムさんの後ろに人垣ができる。

「テ、テメーラァ、仕事しろぉ、馬鹿野郎!!」


 ドワーフたちは奥に引っ込んだ。

「すまねえな。刀って言うのは鍛冶屋にとってそれ位の価値のあるもんなんだ。東洋の鍛冶屋がこれでもかってぐらいに手間暇かけて作り上げた芸術品と言っても良い」

 ラドムさんは抜き身の刀を飽きることなく眺めている。

次回、大統領から難題が出されます。

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