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3-6 三男坊 金字教と山賊と戦う

迫る金字教の追手、レオンはどうする。

 家族や友人との別れを終え、帝国への旅を始めた俺達にジュリアを追う金字教の追手が追いすがる。


 話は王都の西門を過ぎた頃に戻る。

 アンナが幌馬車の中から御者席に頭を出し、俺に話しかけた。

「レオン様、今西門を出た騎馬の集団があります。中に前に寮に来た金字教の学生達も混じっています」

「ニルドとキャミールか?」

「はい、全部で二十人です」

 アンナの探索能力も随分上達したようだ。


 あいつらやっぱり俺を着けていたか。

 アキラさんの家に居る時もジュリアには、窓の近くに寄るなとか外に出るなとは言っておいたので、まず奴らがジュリアを発見していることはないはずだ。

 恐らく西門の衛兵から見えなくなったら止めるつもりなのだろう。


 俺はヤヌウニさんを通じて馬車の距離を詰めるように指示する。

 そうだ、ゴロには少し隠れていてもらおう。彼は見つかるとそれだけで騒ぎになるからね。


 街道は右に曲がり、衛兵からは手前にある林で俺達が見えなくなる。

 十頭ほどの騎馬が俺達を追い越していく。

「キャミールか」

 俺達の馬車の前に馬を止めてキャミールは剣を抜いた。

「馬車を止めて、降りろ!!」

 近くに居た旅人たちが一斉に逃げる。


 さすがに驚いた。こんな王都の近くで剣を抜くとは・・。

 王都内では剣を持ち歩く事さえ禁止されているというのに何と考えているんだ。

 俺は後ろの箱に入れてあった剣を出し、抜刀する。

「こんな王都の近くで盗賊か!!」

 俺はキャミールに叫ぶ。


 何か言おうとしたキャミールの後ろに居た騎馬のフルプレートメイルの騎士がキャミールの頭を殴りつける。

 キャミールは見事に落馬する。

 プギャッ!!

「お待ちください!!剣を抜いたのは間違いです。剣をお納めください!!」

 騎士が下馬して頭を下げる。


「我々は金字教教会の神殿騎士です。我協会の秘技を知った聖女候補生が脱走したと訴えがあり、ここに居るキャミールがあなたがその女を匿っていると申しております。つきましては馬車を調べさせて貰えないでしょうか?」


「この男は学園寮の我部屋を家探ししたにも関わらず、まだそんなことを言っておるのか!!私はこれでもイエーガー伯爵家の三男レオンハルトだ。あまりに無礼を重ねると王都で布教できなくしてやる」

「へ、キャミールどういうことだ?」

 騎士は慌ててキャミールに確認する。


 剣を鞘に戻しながらキャミールは言う。俺も刀を鞘に入れる。

「ジュリアはこいつに匿われているんだ!!こいつはジュリアを外に逃がそうとしているんだ!!」

 そこに後ろの方からニルドがやってくる。

「後ろの馬車には若夫婦と親夫婦だけでした」


「変装しているんじゃないのか?!」

 キャミールが食いつく。

「いや、顔をしっかり見せて貰ったが、変装している様子は無かった」

 ニルドはやや、疲れ気味に言う。


「じゃあ、こっちに居るんだ!!こっちを探せ!!」

 キャミールは俺の方を指差しながら喚く。

「申し訳ないが我々の上司がこの男に捜索の許可を出しているんです。中を確認させてもらえませんか?」

 ニルドはキャミールを振り返ってから俺に申し出た。


「探すのは良いが居なかったらどうする。流石に温厚な俺も我慢できそうにない」

「その時にはこの男をいかようにもして下さい」

 騎士の隊長らしき男がキャミールを指差す。

 キャミールの顔に怯えが走る。


「解った。探すが良い。お前達、邪魔にならないように出て来なさい」

 コトネとアンナを馬車から降ろしてやる。


 騎士の一人が馬車の中に入って調べるがこちらの馬車にはジュリアは乗っていない。

「中には誰も居ません」

「そ、そんな馬鹿な!もう一度調べてくれ!絶対にいるはずなんだあ!!」

 キャミールが叫ぶ。


「イエーガー殿、失礼をした。ではこいつを・・!」

「どけー!!」

 キャミールが剣を抜いて俺に向かって駆け出した。


 ビュッ!!

 俺はキャミールの剣を身体を捻って避けて、拳を彼の顔の中心にねじ込む。

 グシャッ!!

 不気味な音がしてキャミールが吹き飛ぶ。

 騎士の一人が彼を受け止め、その手から剣をもぎ取る。失神しているようだ。


「これで終わりで良い。では解放して貰うぞ」

 俺はそう言うと娘達を馬車に乗せ、出発の用意をする。

 騎士たちは鼻の曲がったキャミールを馬に乗せると素早く去って行った。


「アキラさんに出発すると伝えてくれ」

 アンナが馬車の一番後ろまで行って、御者席のアキラさんに叫んだ。

「アキラさーん!!出発しまーす!!」


「おーい!!オイラを忘れたら嫌だぜ」

 ゴロが慌てて馬車に駆け込んだ。


 ノルンが化けた叔父さんの顔がサッと開いてジュリアが顔を出した。

「もう大丈夫でしょうか」

「街道に居る時はノルンさんの中に居てね」

 アキラの要請に「はい」と言ってノルンの顔がジュリアの顔を覆った。

 ジュリアはノルンの体の中に入る形で変装しているのだった。


 ******


 数日後ようやく国境近くまでやってきた。

 朝、この旅のために作った家を見上げた。


 一階が台所と居間と男の寝室と体を洗う流し場がある。二階には女性用の寝室がある。

 家に繋げて馬小屋があるのだが二頭用だったのだが、急遽四頭用に改造した。

 寝藁や飼葉、水などの使用量が倍になったので、途中の村で補給したりした。


 今は朝の飼葉や水を与えるのにコトネとアンナとノルンが働いている。

 ジュリアが出て来てコトネ達の手伝いをしようとしているが、アキラさんに隠れているように言われる。

「ドワーフの国に入るまで油断しないでね」

 ジュリアは渋々家の中に入って行く。


 一応、街道から直接見えない所に家を建てたが油断はできない。

 居間で朝食を摂り、少し休んだら出発だ。


 昼前の事だった。

「1km先に二十人ほどの人間がいます!!」

 アンナが叫ぶ。

「山賊かな?アキラさんにも連絡して」

 コトネが後ろの馬車に連絡する。


 アキラさんと対応について話をする。

「ここは俺達が行こうかねえ」

「え、アキラさんが戦うのですか?」

「あんまり強そうでもないし、俺とシャラで大丈夫じゃないか?」

 アキラさんは自信満々で言う。


 そのまま馬車を300m位まで近づけて、後は俺達とアキラさん達で行くことにした。

「ノルン、ヤヌウニさん、もし俺達がやられたらジュリアをお願いします」

 俺は後の事を二人に頼んで徒歩で接近した。もうここからでも相手の悪意は確認できた。


 相手は林の中に隠れているようだった。

 出てきて貰う方が都合がいいので大声で叫んだ。

「お前ら山賊か!?出て来ーい!!」

 街道で大声で叫んでいるのが男女四人で、一人は明らかに子供だ。アンナは後ろで身を隠してます。


 山賊は俺達を甘く見たのか、ぞろぞろと姿を現した。

「なんだお前ら、幌馬車二台と言ってたよな。どうなってる?」

「馬車は置いて来たみたいですねえ」

 禿げ頭の巨漢と横の細長いのが話してる。

 俺達のことは早くに分っていたようだ。


「おい、お前達!武装解除してそこに座れ!」

 俺が叫ぶと奴らは大笑いをした。

「ガキが何を言ってやがる。お前達も殺されるんだ。今のうちにお祈りでもしときな」

 巨漢の言葉が終わる前にシャラが駆け出す。


「シャラさん?!」

 俺はびっくりして後を追う。

「アタッチメント!!」

 シャラが叫ぶと彼女の体光り輝く。光が収まると彼女は白地に青い縁取りのフルプレートアーマーを装着していた。そして右手には金色に輝くメイスが握られている。


 彼女がメイスを振ると細長い奴が二つに折れて飛んで行く。

 俺も彼女の後を追うように山賊の群れに突入する。

 俺は数人を斬り群れの後ろに出る。山賊を逃がさないようにだ。

 その間にも山賊が折れたり潰されたりして飛んで行く。シャラってすごいんだな。


「矢だ!矢で撃ち殺せ!!」

 巨漢が叫ぶ。しかし矢は飛んでこない。林の方を見るとコトネがドヤ顔してる。

 タネを明かせば従者通信で、隠れてる山賊の位置をアンナがコトネに連絡して、殲滅したのである。

 もう山賊の残りは六人まで減っている。


 山賊の内二人が元の位置で、のんびり見ているアキラさんを見つけ、襲い掛かる。

「クリエイトゴーレム!!」

 アキラさんが叫ぶと二つの土の塊が起き上がり人の形になった。

 土人形は山賊に抱き着き締め上げる。


 バキッ!ボキッ!


 嫌な音を出した土人形が二人を放すと地面に二つの肉の塊が出来た。


 コトネも参戦したため、すでに山賊は巨漢一人になっていた。

「お前、仲間はいるのか?アジトは?」

 俺は殴りかかろうとするシャラを止めて巨漢に聞く。


「あ、あ、・・・ぐああ」

 巨漢は壊れかけていた。俺は彼の頬に思い切りビンタを見舞う。

 正気を取り戻したのか、剣を振り上げて斬りかかろうとした。

 俺は剣を持った右手の肘から先を斬り落とした。

「アアアアアアア!!俺の手があ!!」


「仲間とアジト?」

 俺は彼の首に刀の刃を当てて聞いた。

「ほらぁ、早くしゃべらないと血が流れ過ぎて死んじゃうよ」

 後でシャラが呆れて見ている。

 こういう奴は根こそぎ潰しておかないと後悔することになる。イエーガー家の教えだ。


「あ、あっちだ。仲間はもういねえ」

 林の奥を指差す巨漢。

「ゴロ、ちょっと来てくれるか」

 従者通信でゴロを呼ぶ。


 ゴロに巨漢が指さした方向の探索を依頼する。

「オイラに任せな」

 すっ飛んで行った。アンナが解らないから人はいないのだろう。


 ゴロは十分位で帰ってきた。

「小屋があったけど、人は死んでるみたい」

「死んでる?」

「うん、女の人」


 俺はゴロに案内されて小屋に行った。

 小屋の中には二人の裸の女の死体があった。

 傷だらけで元の顔が解らないぐらい変形していた。逃げられないようにアキレス腱を切ってあった。

 多分今日の朝くらいまでは生きていたのだろう。

 俺は死体を収納庫に入れて皆の元に帰った。


 すでに巨漢は殺されて、他の山賊と一緒に穴に埋められていた。

 俺は二人の遺体を出して治療してみたが死体に変化は無かった。

 結局、ヤヌウニさんとジュリアにお祈りして貰って埋めてしまった。

 二人の縁者を探すことも山賊を通報することもしなかった。


 今のヴァイヤール王国では俺達が山賊扱いになる可能性もある。

 自分の領土か、王都付近くらいしか正常な扱いはして貰えない可能性が強いのだ。

 山賊も貴族派の残党だろう。今の王国にはそこまで手当てする力はないのだ。

次回はドワーフの王国へ入ります。

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