3-5 三男坊 帝国に旅立つ
済みません。遅れました。予定より物語が進まないので焦っています。
いよいよ、レオンが帝国に旅立ちます。
助けを求めて寮の俺の部屋に逃げてきた聖女候補生ジュリア、俺は留学先の帝国まで彼女を連れて行くことにした。
馬車の手配をした俺は、留学の挨拶をすべく実家に向かってノルンを歩かせた。
アポは取ってなかったので、今日はアポだけで終わるだろうと思っていた。
実家には妹のリーナしかいなかったので、執事のヨハンに都合を聞いて面会日を予約した。
「お兄ちゃん、私も来年初等部入学だから帝国に行くよ。待っててね」
リーナは俺の後を追いたいらしい。
「母さんが許さないだろ。そんなことは自分で稼げるようになってから言わないとな」
「お兄ちゃんが養ってくれたらいいじゃないの。いっぱい稼いでるんでしょう」
こないだの買わされた金貨十三枚の服がいけなかったらしい。俺を甘いと見て寄生するつもりなのか?
「おまえなあ、俺の役に立たないと養ってあげないぞ」
「大丈夫よ。私がそばに居るとお兄ちゃん嬉しいでしょう」
うーん、傷つけないように言わないと嫌われちゃうぞ。
「俺の所にはコトネもアンナも居るから大丈夫だ」
リーナの頬がプーッと膨れた。
「もう、お兄ちゃんなんか嫌い!!」
えーっ、なんで怒られるんだよ。俺は落ち込みながらアキラさんの家に帰った。
「ハハハ、君は大志を抱いてるくせに、妹の御機嫌が悪いくらいで悩むんだねえ」
アキラさんは応接室の対面に座って膝を叩いて笑っている。
「笑わないでくださいよ。妹にはなぜか頭が上がらないんですよ」
「君は兄弟全員に弱いんじゃないかい?」
「まあ、そうですけど。俺はレベル1で従者の兵士にも馬鹿にされていましたが、兄弟たちは俺を馬鹿にすることはありませんでした」
二階ではゴロと遊ぶコトネとアンナが居た。
「ヤヌウニさんに挨拶したら学生寮に帰るから用意して置いて」
「「はーい」」
三階に行く俺の後をゴロが着いて来た。
「オイラも帝国に行くぞ。置いてっちゃ駄目だからな」
「ああ、お前も俺達の仲間だから心配するな」
ヤヌウニさんの部屋の扉をノックすると「入って」とすぐ返事があった。
扉を開けるとベッドの向こう側に座るヤヌウニさんとベッドにひれ伏すお尻が見えた。
「ずっとこうなのだ。助けてくれるか?」
聞くとヤヌウニさんを誤解していたジュリアが、謝罪の為にこうして平伏しているらしい。
「ジュリアさん、いい加減頭を上げてヤヌウニさんに挨拶したらどうですか?」
「いいえ、教祖様を信じられなかった私に挨拶など・・・・」
「私はもっとフレンドリーに接して欲しいと言っているのだが、これだ」
ヤヌウニさんも話が出来なくて困っている。
「ジュリアさん、金字教であったことを相談されてはどうですか?」
ジュリアさんの顔がこちらを向いた。
「・・・・・よ、よろしいのでしょうか?」
「俺はそのためにヤヌウニさんに会わせたのですよ」
「ありがとうございます」
「ヤヌウニさん、また来ますね」
「ああ、またな」
俺は寮に戻った。
次の日、また学園長室に行った。
学園長とロンメル少佐の正面に座ると早速学園長が書類を渡してきた。
「これが卒業証書よ。卒業おめでとう」
「ありがとうございます」
「ああー、言い忘れたんだが、君にはある高貴な人から剣術指導の要請が来ている。今回の留学要請もそこから来ていると考えてくれていい」
ロンメル少佐が言いにくそうに言って来た。
「どんな人で、拘束される時間はどれくらいですか」
さすがに無制限では生活に支障が出る。
「放課後2、3時間の予定だ。部活動の範囲と思って貰えばいい。休日は無しで良い。その方に気に入って貰えば学費や寮費も支給されるだろう。申し訳ないが、具体的な名前はまだ出せないのだ」
まあ、それぐらいならエリーゼとエイトに費やしてきた時間ぐらいで済むな。問題はない。
「それから君の従者を寮に住まわせるのは問題ない。ただ、部屋数が限られるので早いうちに申し込んだ方が良いらしい」
「いつまでに申し込めば余裕があるでしょうか」
「それは解らんが申し込みは、入試の合格発表のある3月15日から始まるからなるべくこの日に近い方が良いだろう」
まあ、計画通り行けばそのくらいには着けるだろう。最悪、ノルンに乗せて貰えば大丈夫だ。
その日の夜、エイトが寮の部屋に現れた。
「お前、帝国に留学するんだってな」
「ああ、どこからか知らんが、俺の事を推薦してくれたみたいだ」
「僕達友達だよな?」
「ああ、一年の付き合いだが親友だと思ってるよ」
エイトは涙ぐんでいる。
「今まで、会いに来れずに済まない。折角お前に教えて貰ったのに進級できなかったのが悔しかったんだ」
「俺もお前にどう言えばいいのか分からなかったから御相子だな」
「いつ出発するんだ?」
「来週早々だ。なにせ遠いからな」
「エリーゼ様に教えてもいいか?」
「もちろんだ」
それから俺達は2時間ほど話し合って別れた。
次の日一般的な休日で、俺が実家に面会予約を入れた日である。
実家では家族が全員集まっていた。
父、母、長兄、次兄、姉、妹そして俺、家族全員が集まったのはいつ以来の事だろう。
妹が生まれてすぐに長兄が王都で、学生生活を送り始めたからそれ位からかな。
家族全員から祝福と激励を受けて、俺は感極まった。
妹から泣いたことを馬鹿にされたが暖かい時間が過ぎて行った。
最後に父が俺に向かって言った。
「お前はこの国に帰るのか?」
その問いにはまだ答えられない。貴族派の反乱の時この国の小ささを知った。俺はもっと大きく羽ばたきたい。
「解らない。もし俺の望む場所があればそこに行くかもしれない」
「まあ、好きにしろ。戻るのなら連絡しろ。何とかしてやる」
「ありがとう」
父はニコッと笑って俺の背中を叩いた。
昼食を実家で取って帰ることにした。今度の旅は2カ月近くなりそうなので準備も半端ないのだ。
寮に戻るとエリーゼが来た。
部屋に招き入れると護衛のお姉さんが着いて来ていない。どういうことだ?
何も話さない。目も潤んでいるみたいだ。
コトネとアンナを従者部屋に入れて、彼女をテーブルに座らせると話し始めた。
「あんた帝国に行くんだって?」
「ああ、来週には出発します」
「この国に帰ってくるの?」
「解りません。向こうでやりたいことが見つかれば、帰らないかも知れません」
多分この国に帰ってくることはないだろう。
大粒の涙がテーブルに落ちる。
「あんたはずるいのよ。私がこんなにあんたが、好きになってるのに気付かない振りして・・」
「貴族の俺達には言っても詮無い事です」
貴族の結婚は家が重要視されるので、個人の感情は無視されることが多い。
彼女の場合も俺との結婚が、無理と判断されれば他人との結婚を勧められる。
エリーゼは暫く泣いていた。
「・・ねえ、思い出が欲しいの」
ドキッと心臓が躍る。いくら鈍い俺でも彼女の言う意味は解る。護衛を連れてこなかった意味も。
俺も思春期の男だ。彼女を抱きたい。
「・・・・・・」
何かが俺にブレーキを掛ける。
「どうしたの。私じゃ嫌?」
彼女は立って、上着のボタンを外し始める。
俺達の世界では処女にあまり価値はない。避妊魔法が普及しているので、成人すれば男も女も自己責任である。
俺も彼女の前に立つ。
そして肩を両手で掴んで、ボタンを外す手を止める。
「済まない」
俺は頭を下げる。
「私に恥をかかせる気?」
彼女の眉がつり上がる。
「君は俺を愛してくれているが、俺はそうじゃない。不純だ」
彼女は驚いた顔をして俺を見る。
暫くすると大きなため息を吐いた。
「全く、こんな時まで真面目で、あんたらしいよ」
彼女は上着のボタンを嵌め直した。
「しらけちゃった。今日は帰る。でも来年、何としてもあんたを追いかけて帝国に行ってやる」
そう言うと彼女は部屋を出て行った。
彼女が前向きになってくれたのなら良かった。
******
数日後、俺は近衛に馬車を取りに行く。
「おう、来たな」
いつものおじさんが馬車を用意してくれていた。
「それでな預かった期間があまりに短いので、もう一台の馬車をお前にあげても良いと言うことになった」
俺は一台の馬車を預けるのに3台の馬車を預かり代金の代わりに渡してある。
「でも俺が渡したのは馬車だけで、馬は付いてなかったですよ」
「良いんだ。馬は余ってるし、馬車も余り気味で維持費がな」
「ならば貰って行きます」
俺はノルンを呼んで一台をアキラさんの所に運んでもらう。
もう一台は俺が寮に運ぶ。
寮ではコトネとアンナが荷物と待っていてくれた。
荷物を積み込み寮を出る。
たった一年だったが、住んでいた寮に別れを告げる。
アキラさん宅にはすでにノルンが着いており荷物の積み込みをしていた。
「おはようございます」
俺は家に入ると家具類を次元収納庫に入れて行く。錬金に使う設備はすでに入れてある。
外でトランクを持ち上げているアキラさんに声を掛ける。
「アキラさん、家の中のものは終わりました」
「ああ、ありがとう。ここも買った時の10倍の値段で売れたし、向こうでもいい家に住めそうだよ」
アキラさんの家はいわゆる事故物件だったので買いたたいて購入したのだった。
俺達が悪霊を払ったので、値が上がったと言う訳だ。
よく見るとシャラがアキラさんの倍以上の荷物を運んでいる。さすがホムンクルス、パワーが違う。
後はジュリアを変装してアキラさんの馬車に乗せる。
金字教が諦めていると助かるんだけどな。
俺とアキラさんは少し離れて出発した。
俺達が西門を出るまでは何も無かった。
西門を出て暫くすると俺の馬車を馬に乗った青年が追い越して行った。
「あれはキャミール!!」
現れたキャミールの目的は・・・。
次回から帝国への旅路に色々な事件が振りかかります。




