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3-2 三男坊 正月を祝う

レオン達はアキラの家で正月を祝います。ヤヌウニが悲惨な未来を予言します。

 俺は実家で成人の儀を終わらせて成人となった。そして母にようやく俺の実力をみとめさせることができた。


 アキラの家 応接間

 アキラとヤヌウニが向かい合って座っている。


 アキラは頭をぼりぼり搔きながらヤヌウニに話し出した。

 アキラはシャラがようやく妻になることを承諾したので、上機嫌であったのだが、ふとヤヌウニが千年近い沈黙を破って姿を現したことに不吉な予感がしていた。


「申し訳ありません。お時間を取らせてしまいまして」

「大丈夫だ。何の用かな?」


「ヤヌウニさんが人前に出て来た理由が知りたいのです」

「寂しくなっただけでは駄目か?」


 アキラは目を伏せて大きく息を吐いた。

「あなたは何かの変化を感じてたのではないですか?私は魔力に微妙な変化が出ているように感じているのです」

「流石、転移者だな。早晩お主も気付くだろう。この星は悪魔の大王に狙われているのだ」


「あ、悪魔の大王ですか?どこからやってくるのですか?それは!!」

 アキラは腰を浮かした。

「まあ、すぐにどうこうということではない。早くても二年後ぐらいだと思う。お主ならわかるだろう。何百年も太陽から大きく離れて見えないのにある日、突然現れる星を」


 アキラは暫く考えて答えを見つけた。

「彗星、ほうき星の事ですか!?」

「そうだ。この世界では悪魔の星と呼んでいる。30年程前今度来るのとは別の奴が来た時には、この星はほうき星の通った跡に突っ込んだ。空は流星が飛び交い、地上には魔獣があふれ出た」


 アキラは立っていられなくなり、再び腰を落とした。

 アキラはその時代を生きてきた。魔獣に追われ物陰に隠れて、やり過ごした記憶がよみがえる。

「30年前の様になると言うのですか?」

「いや、今回はもっとひどいことになるだろう。下手をすれば人類は滅ぶ」


「ほうき星の何がいけないのですか?」

「ほうき星は長い尾を引くのは知っておるだろ。あれは邪悪な魔素と霊素の塊だ。それがこの星に降り注げば、魔獣が跋扈し、悪魔が現れる」


「今回はそれが起きると言うのですか?30年前の規模以上で!」

「そうなると私の内なるものが言うておる」


 アキラは絶望した。幸福の頂点から絶望に落ちて行ったのだ。

「まあ、そう構えるな。それだけなら私は出てきていない。希望はある」

「もしかしてレオン君がそうなのですか」

 ヤヌウニがレオンに着いて来た以上そう言う事なんだろうとアキラは思った。


「彼だけではない。これ以上は私にも解らん。だから見てみたいのだ、人間の可能性をな」

 アキラはレオンを出来るだけ助けて行こうと決断する。

「そうだ。レオン殿にはこのことは内緒だ。明かすと未来が変わる」

「ではなぜ私に教えたのです?」


「レオン殿には日本人の君の力が必要になる。君には彼の近くで彼を支えて欲しいのだ」

「私が彼を支えることが未来につながるなら精一杯やります」

 ヤヌウニはにやりと笑う。

 彼女はアキラには良いタイミングでレオンの後援を頼もうと思っていた。それが自分から来てくれたので手間が省けたのである。


 ******


 アキラとヤヌウニが恐ろしい未来を語った次の日。

 新年の寿ぎは学園寮のコトネ達にもやってきた。

 年末にレオンに買って貰った服と靴を身に着けて、燥ぐコトネとアンナそれを微笑まし気に眺めるレオン。


「アキラさんの家で新年の祝いをする。我々も誘って頂いた。一緒に行こう」

 お昼前にシャラが新年のお祝いをすると呼びに来てくれたのだ。年末から約束してあったので待っていた。

「「はい」」

 アキラさんの家ならあまり遠慮しなくて良いので二人は大喜びだ。


 ノルンの馬車で子供達とシャラを乗せてアキラの家に向かった。

 街のあちこちで新年を祝う飾りが飾られている。赤い実を付ける常緑樹の枝を丸く組み合わせて、玄関のドアにぶら下げるのだ。

 飾りを見るだけで、少し気持ちが高揚する。


 アキラさんの家に玄関から入るとアキラさんが出迎えてくれた。

「やあ、明けましておめでとう」

「え、それはどう返せば良いのですか?」

「これは日本の新年の挨拶だから覚えなくて良いよ。日本では新年の始めの方をお正月って言って、一年の計画を立てたり、氏神様に初詣に行ったりするんだよ」


 アキラさんは俺達には転移者であることを隠さなくても良いので、日本の風習を再現して楽しんでいるのだ。

「おせち料理って日本の正月の定番があるんだけど、材料がほとんど揃わなくて出来なかった。でも餅は何とか作れたよ。さあ、食べよう」


 応接間のテーブルには白い球を押しつぶしたようなものが皿に盛られていた。

「手で食べるの?」

 椅子に座ったアンナがアキラさんに質問する。

「まずね。手元の皿に餅を一つ取って、こうやってちぎって、このきな粉か餡か砂糖醤油を着けて食べるんだ」

 アキラさんが食べ方を実演する。


 早速やってみるアンナ。餅を人る大皿から取ってくる。

「暖かいんだね」

「冷えると固くなっちゃうからね」


 餅をちぎって、きな粉を着け、口に入れる。不安そうに見守るアキラさん。

「甘くておいしいよ」

 安心してフーと息を吐くアキラさん。

「いやー、日本の物が受け入れられるか心配してたんだ」


 アンナに続いて俺達も食べ始める。

 大皿の餅は次々と俺達の腹の中に入って行く。

「すごくおいしかったです。餅は米から作るんですか?」

「本来は種類の違う米から作るんだけど錬金術で似たものを作ったんだ」


 少し、食休みをしているとアキラさんが掃除をしたテーブルの上に大きな紙を広げる。

「これは双六と言って、サイコロを振って出た目だけコマを進めて、先にゴールした人が勝つゲームだ」

 紙を見ると線で繋がった枠が、外側から真ん中に向かって渦巻きの様に書いてある。枠の中には一回休みや3枠進むなどが書いてある。最終的に魔王を倒してゴールとなる。


 ヤヌウニさん、ゴロ、ノルンも参加して双六が始まった。

 途中に伝説の剣と伝説の鎧を獲得するイベントがあり、大人にはハンデがあるので子供がリードする。

 最終枠でプレイヤーがサイコロ3個で魔王がサイコロ2個、魔王より大きな目が出たら上がりだ。

 子供枠はアンナ・コトネ・ゴロだ。


 結局一位ゴロ、二位アンナ、三位コトネと狙い通りとなったようだ。

 三位までには賞品のお菓子を配った。

 ゴロに負けたアンナが悔しそうだった。

「ねえ、もう一回しましょ。今度はゴロには負けないわ」

「へへへ、オイラには勝てないけどやってやってもいいぜ」


 夕食の用意があるのでアキラさんとシャラが抜けて2回戦が始まった。

 なんとかアンナが勝ったので、双六は終わりになった。


 少し騒いでるとシャラが夕食が出来たというので、テーブルを片付けて食事の用意をする。

 夕食のメインはハンバーグと言う肉料理らしい。

 しかし、出て来た皿の上には、手の平位の小判型の変な物体だ。


「これがハンバーグですか?」

「そうだよ。美味しいから食べてみてよ」

 アキラさんの勧めで食べてみるとこれがおいしい。


「これはおいしいですよアキラさん」

 俺がそう言うとアンナやコトネも食べ始めた。

「「おいしーい」」

 二人もご機嫌だ。


 その後皆で雑談をしながら過ごした。

「俺は今年で15歳ですよ」

 俺が言うとコトネが言う。

「私は12歳です」

「私は10歳に成ったよ」

 アンナ。

「私は19歳となってるっす」

「俺は21歳ということで」

 シャラとアキラさんはサバを読んでる。

「私らは解らん」

 ヤヌウニさん・ゴロ・ノルン・ロキだ。


 夜も更け、俺達は二階の部屋で寝ることにした。年末に最低限の家具は運び入れたので寝るくらいはできる。

 従者用の寝室も併設されていた。アンナははしゃぎ過ぎたのか体を拭くとすぐに寝てしまった。


 コトネが寝る用意をして、ベットの横に立った俺の正面に立った。

「レオン様、報告があります」

「何かな?」


 コトネは恥ずかしそうにモジモジしながら言った。

「つ、月のものがありました」

 え、・・そうか、コトネが女になる準備が始まったと言うことか。


「そうか、おめでとう。あの、・・大丈夫か?」

 処置とか聞かれても解らんぞ。ヤヌウニさんやシャラでは分かんないだろうな。

「はい、処置の仕方や用品は、アヤメさんから指導を受けていますから」

 そうか、アヤメさんはちゃんと考えてくれてたんだな。ほっとした。


「それで、それでですね。あの、」

 珍しく歯切れが悪い。どうしたんだ?

 俺がウン?と言う顔をしているとコトネは思い切ったような顔になった。


「神獣人の事が不安で怖いんです」

 コトネはただの獣人ではなくこの世で十二人しかいない神獣人だと言われている。魔人ヘラの時に神獣人になろうとしたが、暴走して俺に襲い掛かったことがあった。


「大丈夫だ。俺が付いてる」

 あの時も何とかなったし、大丈夫だろう。

「あの、抱き付いても良いですか?」

「ああ、いいよ」


 コトネは俺にくっ付いて手を背中に回した。

「レオン様、背が随分伸びてます」

 コトネは顔を上げていった。コトネも背が高くなった。腹の上の方に当たる二つのふくらみも大きくなっている。


「コトネも大きくなってるぞ。スキンアーマー用の服も新しくした方が良いな」

「はい、胸もお尻も窮屈になってきました」

「明日はさすがに王都の店も開いてるだろうから、材料を買いに行くか」

 年末年始は休む店も多いがもう新年の気分も抜ける頃だろう。

「はい」


「アンナもそろそろ必要だろう」

 アンナもほぼ毎日、コトネにしごかれているので、スキンアーマーぐらい使えるようになるだろう。

「アンナはまだ新調するのはもったいないです。私のお古を直して着せます」


「任せるよ」

 コトネはその後十分ぐらい抱き着いていたが、落ち着いたのかアンナの横に寝に行った。

レオンが学園に行くと同級生から冷たい視線を浴びます。

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