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2-14 三男坊 進級する

済みません。コロナで大幅に予定が狂っています。

 俺はアキラさんの話の中で、父さんとの戦いで勝っても負けても国に縛られることになるとほぼ確信した。


 おれが悩んでいるとシャラがお茶を持って現れた。

「難しい話をしてるっすか?私もゴロと遊ぶっす」

 シャラもコトネ達と遊ぶのにホールに行った。


 アキラさんは嬉しそうにシャラの姿を目で追う。

 転移前の恋人と重ねているのだろうと思う。


 アキラさんの野望はシャラと結婚することだが、シャラの気持ちに任せているのであまり芳しくない。

 それはシャラの人格を形成に協力して貰った少女に原因があるようだ。

 俺としてはうまく行くように祈るしかないのだ。


 それより俺の事だ。

「俺はどうすれば国外に出られると思いますか?」


 俺の言葉にアキラさんは暫く考えた。

「うん、難しい問題だね。君が学歴と野望を叶えようとするのは。

 御父上との戦いを王室を秘密に出来ない以上、王室の影響を排除するのは不可能だろう。

 ヴァイヤール王国最強と言われる君の御父上に勝つ最強兵器を国外に出すとは考えにくいね」


 俺が頭を抱えているとヤヌウニさんが口を挟んだ。

「話を聞いているとレオン殿は詰んでるな。学歴を諦めて夜逃げする他は無さそうだ」

「夜逃げするにしたって、もう少し歳を重ねないと子供じゃ外でやっていけませんよ」

 と言うことで逃げるなら高等部に上がってからだな。もう少し時間はあるから逃げる場所とか考えるか。


「アキラさんの居た日本の貴族は自由があったんですか?」

 俺の問いにアキラさんはニコって笑った。

「日本に貴族は居ないよ。と言うか居なくなった。日本は戦争でこっぴどく負けちゃって、それまでの体制を民主主義って言う政治形態に替えられたんだよ」


「民主主義って何ですか?」

「日本で言うと二十歳以上(アキラが居た頃の話です)の国民が政治をする人を選ぶんだよ。これの良い所はふさわしくないことをした人は、次に選ぶ時に選ばなければ良い」


「王とか大臣を国民が選ぶんですか?信じられない」

「まあ、王は政治をしない国のシンボルとして活動しているし、大臣は、選ばれた人を議員って言って、それが議員の中から選ぶんだけどね。それで自由に議員を選ぶために言論の自由があるんだ」


「言論の自由ですか?それは?」

「例えばこの大臣は駄目だとか、この政策は間違ってるって、話し合って良いんだ。その結果、国民に嫌悪感を持たれて選ばれない」


「へえー、じゃあ国民は幸せなんです」

「そうとも限らない。例えば国にお金がないのに国民に金貨を配りますと言って、議員に選ばれたらその配った金貨で造るはずだった橋が出来ないとか困るだろう」


「選ぶ方も賢くないと駄目なんですね」

「そうだね。教育には力を入れていたよ。だから、この国よりもずっと豊かで幸福だとは思うよ」

 アキラさんは遠くを見るような目をしていた。


 その日はアキラさんの家で昼食を頂き、夕方まで日本の事を教えて貰って寮に戻った。



 それから時は過ぎ、期末テストも終わり、三年生への進級試験を受けた。

 今日は結果発表日だ。


 校庭の掲示板に向かって歩く三人がいる。

 誰も話そうとしない。緊張しているのは余裕のない顔でもわかる。


 少し離れた所からでもわかる。

 掲示板に張られた紙は二枚、一枚目は二年生への進級者だったはず、それには五名の名前が見えた。しかし二枚目、三年生への進級者には一人の名前しか書かれていない。

 進級者は一人しかいない!?


「そんな?・・・・」

 エイトが悲痛な声を出す。


 エイトは三人の中では成績が劣る。でも学年6位だ。

 自分だけが受かる可能性は少ないと見ているのだろう。


 俺達は走った。

 俺が最初に掲示板の二枚目の紙の前に立つ。


 俺の名前だ。

 ”三年生への進級試験合格者”

 ”レオンハルト=イエーガー”


 エイトとエリーゼは進級できなかった。


 二年生への進級者だろう。俺達の横で燥ぎ始めた。


 エリーゼは大粒の涙を溢れさせている。

 四か月間一緒に勉強して頑張ったが、ここで道が分かれてしまった。


「いつまでもここに居ると他の受験者に邪魔だ。戻ろう」

 俺は二人に言った。


 二人はとぼとぼと着いてくる。寮までの道がとてつもなく長く感じる。

 やっと寮の前に着くとエリーゼが俺の前に立った。


 なにか言おうとしているようだが言葉が出ない様だ。

「・・・・帰るわ」

 そう言い残して馬車の方へ駆けて行った。


 エイトを見ると怖い顔をしていた。何か俺に言いたいのか?

「エイト・・」

「何も言わないでくれ!」

 エイトはそう言って自分の部屋に走っていった。


 こういう結果は考えてなかったな。また三人が一緒に学園に通えると思っていた。

 部屋に戻る前に少し落ち込んだ気持ちを整えなければな。


 部屋の扉を開けるとコトネが駆け寄ってきた。

「レオン様、いかがでしたか?」

「もちろん、受かったよ」


「おめでとうございます」

「おめでとう」

 アンナが走り寄って抱き着いて来た。


「寂しそうなお顔でしたので心配しました」

 コトネが部屋に招きながら言う。よく気の付く子だ。


「エリーゼ様とエイトは進級できなかった」

「一緒に頑張って来られたのに残念です」

 コトネは少し涙ぐんだ。ずっとこの部屋で頑張って来たのを見て来たのだ。


 その日昼食を取ってから一人で、アキラさんの家に行った。


 アキラさんやヤヌウニさんにエリーゼやエイトの対処を相談したかったからだ。

 流石に二人をそのままにしておくのは気が引けた。


 アキラさんは錬金の仕事が忙しそうだったので、二階の部屋でヤヌウニさんに聞いてもらうことにした。


「それはその子たちが頑張るしかないな。勉強の仕方とか聞いてくるようならば相談に乗ってやるが良い」

「俺からは何もしなくていいと?」


 ヤヌウニさんは退屈そうにしていた。

「そうだ。進級するレオン殿がどう声を掛けると言うのだ?下手すると嫌味に聞こえるぞ」

「でも、友人関係が壊れそうで心配です」


 ふん、ヤヌウニさんはつまらなさそうに鼻を鳴らす。

「レオン殿はこれから無数の出会いと別れを繰り返す。その一回に過ぎん。そう思うことだ」


 俺は年が明ければ三年生になってすぐに卒業試験、そして高等部への入学試験がある。多分成績優秀で免除されると思うがな。

 エリーゼとエイトは二年生のまま、来年度は三年生として一年を過ごす。


 もう学園の勉強だけなので、彼らも今までの様に友人も作らずに勉強する必要もない。あえて俺と友情を深める必要も無いわけだ。

 それに俺も高等部になれば亡命先を考える必要がある。父と戦えば結果がどうであろうと王家に拘束される。


「話は変わるが、最近ゴロに王城を見張って貰っているのだが、近々帝国の使者が来るそうだ」

 帝国は正式名をリヒトガルド帝国と言い、北西に国を二つ隔てた所にあり、国土・人口・国力などヴァイヤール王国の倍以上の力を持つ国で、この西大陸の中で最大の国だ。


「帝国が何をしに来るのでしょう?」

「解らん。まあ、二千kmも離れた国だ。軍事的な圧力とかではないだろう」

 帝国は国家間の調停とかはやっているが、ここ百年以上戦争を他国に仕掛けたりはしていない。

 皇帝も平和を好むと聞いている。


「詳しいことが解ったら念話でもして下さい」

「解ったが、ゴロは帝国までは行けないから使者が来てからの話になると思う」

「了解です」


「そう言えば帝国って、帝都にも多くの獣人が住んでるって聞いたことがあるんですが?」

 俺は亡命先としての帝国はどうか考えていた。


「私も籠っていたから詳しい事は解らん。それも調べておこう」

「お願いします」


 それから少し雑談をして階下のアキラさんに会いに階段を下りた。


 アキラさんはちょうど応接室で休憩していた。

「やあ、忙しくしていてすまないね」

「いえ、今はよろしいでしょうか」


「ああ、今日の仕事は終わったから大丈夫だよ」

 俺は進級テストの結果を話した。


「それはヤヌウニさんの言う通りだね。君は強くなくてはいけない」

「それは強くなれるように訓練していますけど」


「いや俺の言ってるのは精神的な強さだ。君が目指す道は優しさだけではたどり着けない道だ。友人の態度によっては切捨てる強さがいる」

「切捨てるのですか」


「そうだ、邪魔になるものは排除していくべきだ」

 俺はエイトがしつこくすり寄ってくる様子を思い浮かべた。しかし、俺は最後まで彼を見放すことは出来ないように思う。

「俺にはそう簡単に割り切れないようです」


 アキラさんはフーと大きく息を吐いた。

「そうだろうね。見ず知らずの俺の事も助けたくらいだ。これからも何人分もの苦労をしょい込んで進むんだろうね」

「済みません」


「いやそれが君の生き方だ。恥じるべきではないよ。

 俺は君の為に出来ることはやるつもりだ。なんでもいい、相談や頼みごとがあれば言ってくれ」

「ありがとうございます」


 ふと、顔を上げると扉の所でシャラが微笑んでいる。

「師匠とレオンさんは仲がいいっすね」

 お茶を持ってきてくれたようだ。


 お茶を俺とアキラさんの前に置いた。

「私も座っていいっすか?」

「ああ、どうぞ」

 俺がそう言うとアキラさんも頷いた。


 シャラはアキラさんの横に腰掛けた。

「私、レオンさんに聞きたいことがあるっす」

「なんですか?」

 改まってシャラが俺に向き合った。


「コトネちゃんやアンナちゃんは幸せになれるでしょうか?」

「幸せになれるかと言うのは、本人の努力が大きいです。俺は彼女たちが幸せになれる環境を用意したいとは思っています」

 俺は今の俺の気持ちを正直に答えた。


「私は人間じゃないっす。それなのに師匠は幸せにしてくれるって言ってくれるっす。今のままでも幸せなのに何の努力もしないで、幸せになるっておかしくないっすか?コトネちゃん達にも申し訳ないっす」

 どうもコトネ達が獣人差別で苦労してるのに自分だけが幸せになって良いのか悩んでるみたいだ。

 アキラさんがいるのに変なことは言えないし、よく考えて返事をしないとなあ。


「まず自分が幸せになることを考えて欲しい。コトネ達もシャラが同じ悩みを持って欲しいとは思ってないよ。あの子達は俺が幸せになれるように育てていくよ」


 シャラは目を閉じて考えている。

「うん、私、幸せを得られるように考えるっす。ありがとう。相談できる人が居るって嬉しいっす」


 俺は年が明ければ成人して、三年生になる。




次回、ただ一人三年生になったレオン、0章から2章までの登場人物紹介。

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