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2-12 三男坊 錬金術師と食事する

ヤヌウニとゴロはアキラの家に住むことになる。そしてアキラの家で夕食を食べることになった。

 俺は、錬金術師の依頼で採取に来たが幻獣を従者にしたり、グリフィンに紹介された人間に会ったりした。

 紹介された人間は何と金字教の教祖だった。


「でも千歳には見えませんね」

 俺が言うとヤヌウニさんは微笑んだ。


「私の治癒魔法には再生魔法もあるから、年を重ねたら再生していたのさ。肉体を失ってからは姿は変わらなかった。

 それより、レオン殿は優しいのだな。この娘達の幸せを得るために戦っておるのだな」

 ヤヌウニさんの目が怪しくなってきた。あれはエリーゼが俺に甘えようとするときの目だ。


 ヤヌウニさんの体形はエリーゼよりはるかに大人びていて、あれに接近されるのは危険だ。

 彼女は一気に距離を縮めてくる。


「レオン様に近付いちゃ駄目です!!」

 コトネが間に入って両手を広げる。


 俺が左に避けたことによって、ヤヌウニさんはコトネもろともダイビングする形になった。

 俺は手を伸ばしてコトネを抱きとめる。結果ヤヌウニさん一人でダイビングした。


 のそーっと起き上がったヤヌウニさん。

「ひどいよ!私も受け止めてよ」


 もう聞くことも無いし、というか金字教の深みには嵌りたくない。

 俺はヤヌウニさんの甘え声を無視した。

「依頼者も待ってることだし、そろそろ戻ります」


「・・・・よし、私も一緒に行くぞ」

 ヤヌウニさんは握り拳を胸の辺りに引き寄せて、決心したように言って来る。


「え、どこに行くんですか」

 俺は驚いて間の抜けた顔で聞き返す。


「君の所に決まってるだろう。うふ♡」

「困りますよ。寮にはもう入れませんから」


「君はこのぬえを飼うのだろう。私も一緒に・・なに、食事もいらないし、金は掛からん」

「あなたと一緒に居たら金字教に殺されますよ」


「大丈夫だよ。もう私を覚えている奴はいないし、なんなら変装も出来るぞ」

 ヤヌウニさんのその顔は子供になったり老婆になったりした。

「久しぶりに人間に会って、人のぬくもりを思い出したのだ。また一人になるのはさみしい」


「迷惑ですって、俺は未成人なんですよ。責任取れませんし、メリットもないでしょう」

「ならば、ぬえを使って情報を収集すると言うのはどうじゃ。王室や近くの国の情報も収集しよう。君の将来のためにはずいぶん役立つと思うが」


「そんなのゴロが居れば済むじゃないですか」

「残念だがぬえ・・ゴロか、彼では分析が出来んから、欲しい情報を手に入れることは難しい」


 確かに国を出ようとしている俺にとって、他の国の情報は喉から手が出るくらい欲しい。

「ゴロ、お前は出来そうか?」

「オイラは城や家の中に気付かれずに侵入するくらい軽い軽い。街に居てもやることが無いのなら、このお姉ちゃんと一緒にレオンの為に仕事するのは大歓迎だ」


「ほれ、ゴロもこう言うておる。連れて行け」

「ウーン、仕方ないなあ。でも役に立たなかったり、俺の邪魔になったら追い返すからね」

 まあ、金は入るから最悪王都で部屋を借りればいいか。なんか俺、最近状況に流されてないか?


 俺はゴロとヤヌウニさんを連れて王都に向かった。

 また、人のいない森の中に降りると馬車を用意した。


「ヤヌウニさんとゴロは日が暮れるまでここに居て貰えますか。居場所を確保したら連絡します」

 馬車が小さいのでヤヌウニさんを乗せられないし、ゴロは見られるわけにいかない。俺は二人を待たせて王都に入った。


 錬金術師のアキラさんの家に着いた。

「ただいま戻りました」

 玄関にシャラが迎えに来てくれた。

「早いっす」


 中に招き入れられた俺達は、テーブルを挟んでアキラさんと話した。

「早かったね。特別な移動方法があるんだろうね。まず、物を見せてくれるかい」

 アキラさんは移動方法を深く聞くことはなかった。


 アキラさんに言われて松の花をひとつかみアキラさんの前に置く。

「これだ。魔素も十分に入ってる。ああ・・・」


 アキラさんは感激しているようだ。

「今まで、これを魔素を保ったまま、ここへ持ってくる術が無かった。ようやくだ。ありがとう・・」

「10kg以上取れたと思うのですが、全部ここに出しますか?」


「待ってくれ。金は先に払うが1kgずつ欲しいんだ。一回に出されても魔素を散らしてしまう」

 俺は、1kgを測って袋に入れアキラさんに渡した。

「じゃあ、これが金貨百枚が十袋だ。残りの松の花はシャラに取りに行かせる」


「シャラ!地下の部屋で成分の抽出を始めるんだ」

「了解っす」

 シャラは松の花を持って地下室へ向かった。


「アキラさん、ちょっと相談に乗って欲しいんですが、よろしいですか?」

「ちょっと待ってくれるか?抽出を手伝わないと。君達も来るか?」


 アキラさんは地下に向けて歩き始めた。

 俺達はハイと返事をしてアキラさんに続く。


「ウワー凄い」

 地下室の光景を見たとたん、アンナが走り出そうとしたので、俺は肩を抑えて静かにさせる。

「アンナ、危ないから走っちゃ駄目だ」


 山脈に行く前は何も無かった地下の空間に所狭しと実験器具が並べてある。

 シャラは銀色のツボに砕いた松の花を入れていた。


 シャラは続けて黒い粉や黄色の液体を入れる。

「必要な成分を取り出しやすい性質に変えるんだよ」


 カップの水?をツボに入れ、魔導コンロに火を入れる。

 アキラさんはその化学変化を説明してくれたが欠片も解らない。


 ツボが煮立ってくるとシャラが横にどいて、アキラさんがツボの正面に来た。

「これからが錬金術師の真骨頂だ」

 ツボの上に見たこともない複雑な魔法陣が現れ、魔力が注がれる。


「これで必要な成分の魔素が抜けにくくなったから、後は安定するまで放置する」

 アキラさんはシャラに二言三言指示をして戻ろうと言って来た。


 アンナとコトネは三角形のガラス容器や太い管の中に細い管が、らせん状に入ってる器具を興味深そうに眺めている。俺も何に使うのか興味はあるが、二人を連れてアキラさんに続く。


 席に戻る。

「どうだった?あれはこれから作る薬の一成分を取り出す過程に過ぎないんだが」

「錬金術って、材料をツボかなんかに入れて、魔法を掛ければ出来上がるのかって思ってました」


「まあ、治癒ポーションなんかはそれに近いけど、不純物を濾し取るぐらいはしないと商品にはならんよ」

「そうでしたか。結構手間がかかるんですね」

「そうじゃないと君達も金を出したくないだろう。それで相談とは」


「実は山に行って、松の花を取っていたのですが、どうにも効率が悪く、約束の量を取るのを難しいなと思った時に幻獣と会いまして、採取を手伝って貰ったのですが、その条件が王都に住みたいと言うことでした。

 それにもう一人、元人間の精霊が引っ付いて来まして、それも王都に住みたいと言って来ましてどうにも困ってまして」

 歯切れが悪い事この上ないくらいの歯切れの悪さだ。


「悪さをしなければこの家に住んでいいよ。二階と三階は使う予定はないからね」

 アキラさんは軽く言う。


「幻獣と精霊ですよ。本当に良いんですか?」

「何なら君達もどうだい。安くしとくよ。俺はさ、秘密があるから他人と深く付き合えない。君達だったらすでに俺の秘密を知ってるんだから問題ないだろう」


 アキラさんの秘密、それは異世界転移者であること、そしてシャラは禁断のホムンクルスであることだ。

 アキラさんは秘密を共有できる人間を求めていたようだ。

 そこに秘密を持つお節介野郎が来たと言うことだ。


 早速、アキラさんの家を確認する。

 三階は使用人用の小さな部屋が十二部屋、二階がゲスト用の部屋が二部屋、広間が二部屋だ。

 掃除がされていないので三階の二部屋を娘達が掃除する。俺はその間に寝具や服を買いに行く。


 夜になったのでノルンにヤヌウニさんとゴロを迎えに行って貰う。

 大きなフクロウになったノルンは二人を連れて来てくれた。


「へえ、馬も精霊で変形できるんだね」

 アキラさんはノルンを出迎えて驚いていた。


 ヤヌウニさんには着替えを持って行ったので、着替えて貰ったのと、正体が外でバレるといけないので、中年の女性になって貰ってる。金字教の教祖はずっと若いままだったそうだ。


「彼女が金字教の教祖だったの。ふーん」

 こちらはあまり驚かない。どっちかって言うとこちらの方が衝撃が大きいと思うんだが。


「師匠!この子を見てると抱き着きたくなるっす。どうしてっすか?」

 ゴロはシャラに抱きつかれそうになったので、俺の後ろに避難している。


「この人達が今日からここで暮らすんだねよろしくね。そうだ今日はお祝いって事でうちで食べてってよ」

「そんなこちらがお世話になるのに申し訳ないですよ」


「そんなこと言わずに、シャラ、ご飯を用意するよ」

 断れそうもないので娘達と礼を言う。


「ありがとうございます」

「まあビックリすると思うよ」


 食事を作って貰ってる間、俺達は三階のヤヌウニさんとゴロの部屋を確認して貰った。

「十分良い部屋だ。まあ、この格好なら誰も気付かないから昼間は散歩できるしな」

「オイラは雨風が当たらずに寝られればどこでも良いんだけど。いい部屋で嬉しい」


 暫くして・・・。

「なんかいい匂いがしてきた」

 アンナがクンクンと匂いを嗅いでいる。

 俺達には感じられないのだが、だいたい、台所は一階でここまで匂うもんだろうか?


「本当に匂います。今まで嗅いだことのない匂いです」

 コトネまで言い出した。


 そのうち俺にも匂うようになってきた。すごく食欲が刺激される匂いだ。

「これはたまらんな。降りてみるか」


 一階に降りるとすでに食事が用意されていた。

 皿に盛ったご飯に黄色いシチューのような物がかけてある。

 どうやら匂いの正体はこのシチューの様だ。


「これはカレーライスと言う料理だ。イエーガー領で米を作り始めたので作れるようになった。さあ、座って食べてくれ」

 アキラさんが自信満々で紹介する。


 スプーンですくって食べると、・・うまい!!少し辛いけど気にならない。

 あっという間に皿が空になる。


 娘達を見てみると二人共、皿を空にしていた。

「すごく、おいしかったです」

「おいしい!!」


「これは俺の故郷、日本で若者が好きな三大料理の一つだ」

「へえ、こんなうまい料理が他にもあるんですか?」


「俺の生まれた国は、食にすごく貪欲で世界中からおいしいものを集めて、自分達に合うように改良するんだ。これは元はインドと言う国の料理だ。残る二つは、欧州生まれのハンバーグと中国生まれのラーメンだ」


 俺達はお替りをして腹いっぱいで寮に帰った。

 アキラさんと言うか、日本人は食を探求する人たちなんだろうか?


 三大料理には一言ある人もあるかと思いますが、アキラさんの思い込みと言うことで勘弁して下さい。

次回、レオンの所にレナ・カトリーナの姉妹が尋ねてくる。

そして若返りの薬の効果はいかに?

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