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2-10 三男坊 幻獣に会う

松の花を取っていたら幻獣が現れます。どうする。

 錬金術師の家の悪霊を退治した俺達は、錬金術師から新たな依頼を受けて山脈に来ていた。


 昼まで掛かって集まったのが約200g、依頼は1kg以上、先が長いなあ。

 それにコトネの消耗が激しい。急峻な崖を降りたり、登ったりしているのだから仕方が無い。


 昼食後にコトネが俺に近寄って来た。

「今日は私に膝枕してください」

 昨日アンナに膝枕で休ませたので言って来たのだろう。

「ああ、良いよ」


 今日はアンナはコトネが採取している間、休むことが出来るので、あまり疲れてはいない様だ。

「お姉ちゃん、ずるいアンナも」

 アンナがコトネを呼ぶのに色々と試行錯誤していたが、最近はお姉ちゃんになったらしい。


 コトネが俺の膝を枕にしたので自分もと騒ぎ出した。

「あなたは昨日して貰ったでしょう。今日は我慢しなさい」

「ううー」

 アンナは聞き訳が良い。甘えたくても我慢する。


「こっちに来なさい。俺にもたれて休むのが良いよ」

「昨日お姉ちゃんがして貰った奴。やるー」

 岩に持たれて座る俺、アンナは俺の肩に頭を乗せて、寝る体制になった。


 俺はこの娘達に何が出来るのか?何をしてあげればいいのか?良く分からない。少なくとも自分で幸せな道を選ぶことが出来るようにはしなくちゃな。

 まあ、焦っても仕方が無い。コトネが大人に成るまでだ。まだ時間はある。

 まずは意見を聞いて貰える力と思い付いたことを実現できる金だ。


 そんなことを考えていたら急に睡魔が襲ってきた。

 いかん、いくら山の上で魔獣が居ないからと言って、小屋も無いのに全員が眠ってしまう訳には行かない。

 コトネとアンナが俺に寄りかかっている状態なので、動けない。

 俺は自分の太ももをつねって、痛みで眠るのを防ぐ。


『御主人、大きな魔力が近付いてくる。アンナが起きないから詳しくは解らん』

 ロキが俺に知らせる。

「起きろ!!」

 大きな声を出してゆすってもコトネもアンナも眠ったままだ。

 二人を地面に寝かせて、起き上がる。


「どれくらいに居る?」

『詳しい事は解らんが10秒以内にはここに来る』

「ノルン!戦いやすい形状になって二人を守ってくれ」

 ノルンは羽の生えた豹に変身して二人の前に身を置いた。黒鷲では、接近戦に不利だと見たのだろう。

『御主人!来た』


 俺の目の前の空中にそいつは現れた。

 大きさは中型犬位、しかし姿は四つ足だが、既存の動物とは明らかに違っていた。

 顔は猿、手足は虎の模様、胴体は茶褐色、そして尻尾は蛇みたいに毛が無い。

 幾つもの獣を会わせたような感じだ。


 そいつは言葉を話した。

「あれ、起きてる。鷲が居なくて豹が居る。どうなってんの?」

「お前がこの娘達を眠らせているのか?起こせ!!」


「精神エネルギーをおくれよ。そしたら起こしてやる」

『御主人、こいつは幻獣だ。然程強くない。殺せば術は消える』

 ロキの言葉が聞えたのか、幻獣はパッと後ろへ跳ぶ。


「オイラを殺す気か?精霊を飼ってるのか?」

「この娘達を起こしてくれれば殺さないし、話も聞いてやる」


 幻獣は警戒を緩めない。

「ホントにホントか?。嘘ついたら針千本飲ますぞ」

 子供か?。


『この幻獣の頭は子供程度だ』

 そう言うことか。


「本当だ。まずは術を解きなさい」

「分かったよ。はい、解いた」

 素直だ。


「ノルン、起こしてくれ」

 ノルンがコトネの顔を舐めるとコトネが起きた。


 目の前に豹の顔があったものだから、キャーと言って、後ろに跳んだ。

「コトネ殿、私だ、ノルンだ」


「ああ、ノルンさんかぁ。びっくりしたよぉ」

 冷汗をぬぐっている。普段冷静だからあわてたコトネも可愛い。ギャップ萌えと言う奴か。


「済まなかったな。アンナ殿を起こして貰えないか?」

「分かりました。アンナ!起きて」

 コトネがアンナをゆすって起こす。アンナがウーンとか言って起きた。大丈夫そうだ。


「約束だぞ。精神エネルギーをくれ」

 幻獣は俺の近くまで来た。精神エネルギーが欲しくて警戒を忘れている。

「どうすればその精神エネルギーをお前に渡せる?」


「眠って、夢を見て、そこから吸い上げる」

 これは困ったぞ。寝るのなら夜まで待って貰わないとな。

「今は眠れない。夜でも良いのか」


「いやだ。待てないよ」

「これ、わがままを言う出ない」

 ノルンがこちらに来た。


「おまえも精霊か?お前も精神エネルギーを貰ってるんだろう?」

 幻獣はノルンに興味を抱いたようだ。

「私はこのレオン様に従属して居るのでな。特に何もせずとも念話を通じて、余った精神エネルギーを貰っておる」


「ええ、いいなそれ。なあ、オイラも従属させてくれ」

 幻獣が俺の足にまとわりついて来た。

「おまえをか?」

「なあ、いいだろ。オイラも精神エネルギーを探して、歩き回るの面倒臭いんだよ」


 俺は一ついい手を思い付いた。

「それなら、一時間以内にこの袋いっぱいに魔力溜りにある雪代松の花を摘んでこれるかな?魔素が抜けた奴は駄目だぞ」

「なんだ、そんな事か。もっと大きな袋でもいいぞ」

 幻獣の首に大きめの袋を掛けてやるとすぐにすっ飛んで行った。


「レオン様大丈夫でしょうか?」

「出来なければ従属させずに済むし、出来れば依頼が終わるからな」

 俺は自然と口角が上る。


「レオン様、笑顔が怖いです」

 おおっと、だが幻獣は俺の従者に術を掛けたのだ。少しは働いて返して貰わないとな。


「ところで幻獣ってなんだ?魔獣とは違うようだが」

『幻獣と言うのは、神のいたずらと言われる生き物で、我々精霊と似ている所もある。

 わしら精霊は姿を基本的には持たない意識生命体だが、奴らは現在この世界に居る動物を合わせたような姿をしておる。

 わしが住んでいた山にも上半身が鷲で、下半身がライオンのグリフィンと言う奴が、何回か姿を現したことがある』


 ロキが説明するとノルンも付け足した。

「魔獣と違って人を襲うことはめったにない。ただ、人の精神エネルギーを就寝している時に奪っていくらしい。人が夢の内容を忘れてしまうのはそのせいらしい」


「アンナも夢を忘れるよ。あの子が食べちゃったの?」

「何回かはあるかもな」

「ええー、やだー」

 アンナは夢を食われるのは嫌らしい。まあ、ロキが食べてるのかもしれないが・・。


 幻獣は30分程度で戻ってきた。

 袋は松の花でいっぱいになっていた。


「どうだ従属したくなっただろう」

 幻獣は鼻の下を前足でこすりながらドヤってくる。


「どれどれ」

 俺は一個一個調べて行く。

 八割方は合っていたが、他の松の花や魔素の無いものが入っていた。


「これじゃあ合格点はやれないなあ」

 俺が言うと怒った顔になって、俺が取り除いたものを凝視していた。


「もう一回だ。今度はちゃんとやる」

 空になった袋を乱暴にひったくるとまたすっ飛んで行った。


「だから言ってるのに」

 コトネは自分の活躍の場を取られたことが、悔しいのか幻獣に文句を言っている。


「まあ、そう言ってやるな。一回で1kgは集まってる。依頼達成だ」

 俺は幻獣を従属させてもいいかなと思えてきた。薬草とかを採取させても良いな。


「しかし、不思議です。普通の人間は、幻獣とか精霊とか一生会わない人ばっかりじゃないですか。

 なぜレオン様はこんなにも寄ってくるのでしょう」

 コトネが不思議そうに顔をかしげた。


『それはな、わしを従属させたからじゃよ。

 わしが居たからノルンも御主人に興味を持った。

 ノルンが説明しなければ、幻獣も従属しようとも思わなかっただろう』


「あなたが元凶なのね。ホント最悪!」

『そ、それはちょっと言葉が過ぎよう』

 コトネの口撃にロキもたじたじだ。

 精霊達にはお世話にもなってるからそれぐらいにしてあげて。


 幻獣が戻ってきた。

「どうだ、今度は間違いないぞ!」

 首にかけた袋を俺の前に出す。


「どれどれ」

 中を確認すると今度は間違いなく雪代松の花で、魔素も十分含んでいる。

「うん、合格だ」


 俺はつい、幻獣の頭を撫でていた。

「おお、なんか気持ちいいぞ」

 嫌がるかなと思ったが、気持ち良さそうにしている。


「じゃあ、従者にしてくれ。どうしたらいいんだ」

 精霊の二人は名前を付けたら従者になった気がする。


「君、名前はあるのか」

「そんなものはないぞ」

 今まで一人で暮らしていたんだから名前も必要ないだろうな。


「じゃあ、うーーん・・ゴロでどうだ?」

「ゴロが俺の名前か?いいぞ、でもなんでだ」

 神様の名前で適当なのがなかったから、本人の様子を見て名付けたんだが・・。適当とは言えないよな。

 うん、なにか体の中を駆け回ったような?


「素早くて勇ましそうな様子を見て、雷のようだなと思ったんだ」

「雷か、雷ってゴロゴロ言うもんな。オイラはゴロだ。よろしくな」

 何とか納得してくれたか。良かった。


「ねえ、あなたゴロって言うの」

 俺の後ろからアンナが顔を出した。


「おう、かっこいいだろ、・・あう!!」

 アンナがゴロに抱き着いた。

「柔らかくて気持ちいい」


「おい、放せよ」

 ゴロはアンナに乱暴なことはしていない。いい奴なんだな。

「私もいいかしら」

 コトネが参戦した。ゴロを撫で回す。


「「うわー!モフモフ!!」」

「おい!助けろ!」

 ゴロが流石に助けを求めてきた。


「コトネ、アンナ、降ろしてあげなさい。ゴロにはまだ働いて貰わないと」

「「はーい」」


 俺達はさらに東の方に移動しながら松の花の採取を続けていた。

 ゴロのお陰で早々に10kgが集められたので、帰ろうとしていた時である。


「レオン様、大きな魔力が近付いて来ます」

 アンナが報告する。


「速いです。もう見えます」

 アンナが指さす方向を見ると大きな鳥のような物が近付いてくる。


 あっという間に俺達が居る岩場に降り立った。

『グリフィン殿か?!』

「あ、おっさん」

 ロキとゴロが同時に声を掛ける。


 強者の風格を称えたグリフィンであった。

「懐かしいな。ウエルフェルトの精霊殿か。ぬえもどうした。人間に捕まったようではないな」

「ぬえって言うな。オイラはこの人間の従者になったんだ。そしたら強くなった」

「そう言えばぬえにしては、頭一つ抜きんでているな。精霊殿も存在が増している。不思議なことよ」

 ゴロはぬえって種類の幻獣らしい。


「ぬえじゃねえんだ。ゴロって立派な名前があるんだ」

「そうか名前を貰ったか。良かったな。後ろに居るのも精霊か?魔獣の力を取り込んだか?」

「ノルンと言う名を賜った。お見知りおきを」


「ふむ、ぬえの小僧に会いに来たら、とんでもないものを見せられる。二人の獣人も普通の獣人ではあるまい。人間お前は一体何なのだ?」

 そんなことを言われても解らないよ。

次回、グリフィンに紹介された人に会いに行きます。

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