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2-9 三男坊 錬金術師の依頼を受ける

年老いた錬金術師に収納庫の秘密がバレてしまう。さてどうする。

 俺は前に交換所で絡んできた少女に頼まれ、錬金術師のアキラを悪霊から解放した。


「シャラ、お茶を淹れなさい。人数分だぞ」

 アキラの指示で弟子少女が台所の方へ行く。弟子少女はシャラって言うんだ。


「シャラが君に迷惑を掛けたそうで申し訳ない。

 君が新鮮な薬草を交換所に持ってくると聞いたので栽培してるのかもなと言ってしまったのが悪かった。

 シャラにはそろそろ自立することを考えろと言っていたのだ。俺も年だからな」

 アキラはフウとため息を吐く。自分が稼げなくなった時のことを考えているのか。


「お弟子さんはシャラさんだけなのですか?」

「あれは弟子ではないのだ。あれは、・・とその前に君は魔法の収納とかを持っているね」

 俺は焦った。なぜバレた。何とか誤魔化さないと。


「その娘さんが持っていた刀を仕舞ったよね。

 恐らく時間が止まっている収納なんだろう。それで薬草を新鮮なまま届けられるんだろう」

 アキラには完全に俺の次元収納庫の事が、完全にバレてる。どうする。


「フフ、レオン君、心配しないでくれ。秘密なのだろう。誰にも言わないよ。ただ、お願いが有る」

 恐らく、目を白黒させ、冷汗をかいてる俺に彼は微笑んで言った。


「どのようなことでしょう」

 このまま脅されて、こき使われたらどうする。そんなことが頭の中を駆け巡る。

「その前に君を安心させるために俺の秘密も話しておこう。済まないがお嬢さんたちも席を外してくれるかな」

 コトネとアンナに台所に行って、呼ぶまで戻ってくるなと言った。


 二人が居なくなるとアキラは驚愕の過去を話し始めた。

「俺は転移者だ。約三十年前、日本と言う国からこの世界に落ちてきた」


 アキラが言うには日本と言う世界からこの世界に来て、錬金術師の才能があったため、前の世界の知識を会わせて、食うに困らなくなるまではすぐだったそうだ。

 しかし、前の世界で愛した女が忘れられずに、ただこの世界になじめずに時だけが過ぎて行った。

 初老の頃、禁忌に手を染める。ホムンクルスの製造だ。

 二十年の時を掛けて、愛した女とそっくりのホムンクルスの製造に成功する。

 それがシャラだ。しかし愛し合うには自分に残された時間が少ない。残されるシャラを思うと如何ともしがたい。


「そこでだ。俺は若返りの薬を作ることを思い付いた。若返ればシャラと同じ時間を過ごすことが出来る。しかしそのための材料が足りないのだ」

 アキラはいかにも口惜しそうな顔をする。

 俺は次元収納庫の秘密以上のアキラの秘密を手に入れた。もう脅される事も無いと思った。


「その材料を手に入れろと言うことですか?」

 少し気楽になった俺はアキラの依頼に集中する。

「そうだ。アララチ山脈に自生する雪代松の花を取ってきて欲しい。もちろん魔素を溜めた新鮮なものだ」


「今の時期にあるのですか?」

「時期的には少し遅いがまだ二週間くらいは大丈夫だ」


 アララチ山脈は旧イエーガー領の西側から北側に伸びる山脈で千m以上の山々が連なる。場所によっては行くのに一か月以上かかる。


「時間が問題ですね。この近くにあるのですか?」

「ああ、山脈の北の方の標高千m以上に自生しているから近い所だと五日で行けるだろう。出来れば採取してから一時間以内の物が最低1kg欲しい。10kgでも構わない」


「それで俺に頼むんですね」

 普通の人間には採取するだけで1日掛かる。次元収納を持つ俺なら可能だ。


「報酬は、1kgで金貨100枚だ」

「引き受けましょう」

 俺は今の生活は金銭的に余裕を持っている。しかし、父に勝った後この大陸を回る予定だ。金はいくらあっても邪魔にはならない。

 ノルンで飛んで行けば一日も掛からない。金貨千枚、やったね。


 俺達は馬車に戻った。

 ノルンは王都の南門に向かって歩き始めた。

「レオン様、錬金術師の依頼を簡単に受けて良かったのですか?」

 コトネはアキラの依頼を短い時間で受けたことを危ぶんだようだ。

「心配するな、俺はあの錬金術師を信用した。なんなら収納庫の事を質にして、俺に強制しても不思議じゃない。でも俺に秘密を教えて、同じ立場に立ってくれたのだ」


 いつものように交換所によって薬草を換金した。そして門の外に出て、2km位離れた森の中に入った。

「大丈夫です。周りに人は居ません」

 アンナの探索報告はいつも丁寧語なんだな。いつもはほぼタメ口なんだが?

「じゃあ、ノルンお願いする」

「分った。魔力を下さい」


 馬車を外したノルンに、ホースで水を器に入れるような感覚で魔力を渡す。

 ノルンの体は形を変えながら徐々に大きくなる。

 馬の形状から鳥のような形に。

「ドラゴンじゃないのか?」

「ドラゴンは人に驚かれますから、ここらに居てもおかしくない鳥の形で行きましょう」


 ノルンは見られたときのことも考えていてくれた。俺はそこまで考えていなかったよ。

 そりゃ、王都の近くでドラゴンが目撃されたら大騒ぎだな。

「魔力はこれぐらいで大丈夫です」

 ノルンはこの辺でよくみられる黒鷲の姿になった。その鷲の体長は1m50cm位だが、ノルンは5mはありそうだ。


 俺は馬車を収納してロープを出した。

 ノルンにロープを掛け、俺達が安定して、その背中に捕まれるようにする。

 ノルンは地面に伏せて俺達が乗りやすいようにしてくれる。

 まずコトネが翼の手前からひょいと飛び上がる。2mの垂直跳びを軽くやってしまう。

 次にアンナを抱き上げてコトネに渡す。

 最後に俺が翼の付け根に回したロープにつかまり、登った。


 俺達はアンナ、俺、コトネの順番で翼の上に跨るように座り、両手でロープを掴んで、両足にもロープを絡めて、伏せてるような恰好で座った。

「良いぞ!行ってくれ」

「しっかり摑まっていてください。上昇します」

 ノルンは鳥の様に羽ばたいて跳ぶわけではなく、魔法で飛ぶのでそんなに揺れない。


 すぐに地面が遠ざかる。

「高度を千m位にします。大丈夫ですか」

 アンナは初めて見る高空からの眺めに興奮している。

「レオン様!人があんなに小さく見える」


 問題は後ろのコトネだ。さっきから俺の腰に手を回して、背中にしがみ付いてる。

 残念なのはスキンアーマーの装備を着けているらしく、柔らかい感触はなかった。

「コトネ、大丈夫か?」

「大丈夫です。目を瞑って居れば怖くありません」

 あまり大丈夫そうじゃないな。これからの事を考えれば、慣れてもらうしかない。

「そうか、すまんが慣れてくれ」

「・・はい」


 ノルンが速度を上げ始めると風の音で話も出来なくなった。

 遠くに見えていた山々が近くに見えてくる。

「ここから西に標高千m以上の山が続きます」

 ノルンは山脈が近付くと速度を緩め、話し掛けてくる。

「アンナ!魔力溜りを探してくれ」

 俺はアンナに指示を出す。ちなみにコトネはまだしがみ付いている。


 取敢えず山の北側を探索していくが、魔力溜りがほとんどない。

 1時間位探索を続けたが無駄に終わった。

 傾斜の緩い部分に着陸して昼食を取った。

 幸い風が遮られる場所だったので、ゆっくりできた。

 アンナが疲れていたので、ちょっと昼寝をさせる。


 岩を背に足を伸ばして、敷物の上に座った俺の足に頭を乗せてアンナが眠る。

 妹のカトリーナがこれくらいの歳だ。もう半年会ってないが元気にやっているのだろうか。


 昼食の後片付けが終わったコトネが俺の横に座った。

「ご苦労さん。コトネは高い所が怖い訳じゃないんだよな」

 そう言うのも、今休憩している所は前は数十m下まで切り立った断崖になっているが、コトネは平気で歩いてる。

「そうですね。私は飛んでいるあのふわふわした感じが嫌です。高い所は別に何とも思いません」


「まだしばらく飛び続けるが大丈夫か?」

「はい、随分慣れてきましたので、レオン様にしがみ付いていれば大丈夫です」

 俺の顔を見てニコッと笑う。なにかあざとい気もするが可愛いから許す。


 それから1時間後、探索を開始したが魔力溜り自体を見つけられずにいた。

「くそー、標高千m以上ってこんなに魔力溜りが無いのか?」

 俺は焦って来た。このまま何も得られなければ全くの無駄足だ。それだけは避けたい。

 雪代松はある。花も着いてる。しかし魔素を溜めてないと意味は無い。

 魔素を溜めると普通の雑草でも回復効果のある薬草に変質する。魔法の付与効果があるわけだ。


 今日は北側を探したが一個も取れなかった。

 早めに休んで、明日は南側を探す。

 しかしノルンが居ないければ、一週間はかかる作業だから、気落ちせずに明日につなげよう。

 起伏の少ない場所を選んで、地ならし、小屋を建てる。


 ずっと探索をしていたアンナはすごく疲れていた。手伝うと言うのを宥めて、俺のベットで横になる。

 俺とコトネの二人でいつもルーチンをこなす。

 夕食を食べるとアンナはそのまま眠ってしまった。コトネが服を脱がして、湯で体を拭いても起きなかった。そのままパジャマを着せてベッドに運んだ。済まないが明日も頑張ってくれよ。

 俺達は明日の準備をして眠りについた。


 次の日は朝から山脈の南側を探索する。

 南側にはところどころに魔力溜りが見える様だ。とは言っても険しい崖とかにあるのでどうするか思案していた。

「私が降ります。少し上で待機してください」

 コトネがそう言うので任せようと思う。バランス感覚は三人の中で一番優れているのだ。


 少し離れた安定した場所にノルンを降ろす。

 コトネはメイド服を脱ぐと俺に預け、スキンアーマーの態勢を取った。

 腹に命綱を着けるとピョンと飛び降りた。

 あまりの事に俺は叫んだ。

「コトネ!!」


 彼女は足の横幅しかない足場に足を縦に並べて着地した。長い尾が忙しく動いている。

 あまり驚かさないで欲しい。

 彼女は器用に断崖を走り抜け、雪代松の花を摘んでいく。

 摘み終わるとほぼ垂直な崖をまるで蜘蛛の様に駆け上がり、ノルンの背中に飛び降り、俺に抱き着く。

 見ているこっちが背筋が凍りそうだ。


 同じように何カ所かを回ったが、魔力溜りの大きさが小さく、生えている松も一カ所に一本か二本で、なかなか量が集まらない。

 これは少し時間がかかりそうだぞ。

次回、錬金術師の依頼が思うように進まない。そこに現れたのは?

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